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地球規模の広がりを見せるHIV/AIDS問題。アフリカなど途上国を中心に、現状と国際社会、市民社会の取り組みの最新情報を伝えるメールマガジン。

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(GAU317号)ザンジバルの教訓:グローバルファンド新規案件形成に向けて

2017/05/21

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★「第317号」目次
●対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・グローバルファンドのザンジバルでの案件形成、3つの課題をどう解決するか?
・ミャンマーでのHIV自己検査:そのメリットと課題
●アフリカの地域別記事
・新たなHIVへの資金を調達するビール税
・HIV、AIDSがインフォーマルセクターを苦しめる
・(ジンバブウェ)改善された男性割礼器具が本格的に導入される見込み
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◆発 行:(特活)アフリカ日本協議会
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・電 話:03-3834-6902
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<対策・課題別・地域別(アフリカ以外)記事>

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ザンジバルでの教訓、他国が次のチャンスを得るための手がかりへ
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【2017年4月27日 ザンジバル(タンザニア)発、執筆:ジェマ・オーベルト記者 Gemma Oberth 】2017年3月20日、東アフリカ・タンザニアの沖合に浮かぶザンジバル島の自治政府は、グローバルファンドに対して結核とHIVのプログラムの継続のために640万ドルを申請した。このうち50万ドルが、「優先的資金手当要望」 Prioritized Above Allocation Request: PAAR とされた。しかし、その詳細については、案件形成過程でしか明らかにならないことになっている。

しかし、この資金拠出申請書作成過程でザンジバルは課題にぶつかった。ザンジバルが2017〜2019年期の第一次申請国の一つであることから、この国の経験は他国にとっても有益なものになるだろう。この記事では、ザンジバルが経験した3つの課題について取り上げる。

課題#1 新データなしの計画書
ザンジバル政府が提出した資金申請書類には、前回のグローバルファンドでの申請以降、ザンジバルでは、HIVや結核プログラムを変更しなければならないような結果が生じた疫学調査はなかった、と記述されている。薬物使用者のHIV感染予防に取り組む「ハーム・リダクション・インターナショナル」のリック・ラインズ氏Mr. Rick Linesは、タンザニアやザンジバルなどでは、薬物注射の新しい、変わったやり方が多く見受けられるようになり、HIV感染が増加しているという。しかし最新データがなく、ザンジバルはプログラムデータや疫学的モデルに強く依存することになる。新たなデータがないと、プロポーザルの作成などに大きな困難を生じることになる、というのがザンジバルの教訓である。

問題#2 プログラム変更に関する制約
グローバルファンドの新しい資金拠出プロセスのもと、ザンジバルは、以前からのプロジェクトの継続という形で、簡易化された申請様式に従って事業の継続申請をすることになるが、一方で戦略やアプローチに関する調査に制限がかかる可能性がある。ザンジバルのHIV陽性者の60%、7,229人は15〜24歳の女性である。介入のほとんどは高い有病率のセックスワーカーや男性とセックスする男性(MSM)などの小規模の集団に対して行われているが、実は若い女性への介入のほうが優先度は高いのである。しかし、新しい資金申請段階ではこういった対象者を変えたプログラムなどの物理的変更は難しい。

問題#3 脆弱な人口集団への圧力
2017年3月、グローバルファンドに関する独立報道機関である「エイズパン」 Aidspan はグローバルファンドが支援する、タンザニアでのレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(LGBT)のためのプログラムは、この人口集団への政府および社会の圧力により、停滞させられていることを報告した。ザンジバルの案件にかかわっている特定のグループによると、これはLGBTだけでなくセックスワーカーや薬物使用者にとっても人権を侵害するものとして、コミュニティ全体に対して影響を及ぼすという。ザンジバル島の対岸のタンザニアでは、グローバルファンドの資金で購入された潤滑油が、「同性間性行為を助長する」として使用を禁止されるという事態が生じている。これはザンジバルでのプロジェクト実施にも影響を与えるであろう。グローバルファンドは、「法的障壁の排除」に取り組むための資金モジュール The Removing Legal Barriers module があり、これをどう活用するかがカギとなる。同じような課題を抱える国々においても、こうした取り組みによって、脆弱な人口集団に対するグローバルファンドからの資金支援を得ることができる。

原題:In a Window 1 application to the Global Fund, Zanzibar grapples with limited data and tensions affecting key populations
出典:Aidspan
日付:2017/04/27
URL:http://www.aidspan.org/gfo_article/window-1-application-global-fund-zanzibar-grapples-limited-data-and-tensions-affecting

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ミャンマーでのHIV自己検査:そのメリットと課題
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【2017年4月25日】ミャンマーのヤンゴンにおいて、特定コミュニティに集中した感染状況(局限流行期)において、HIV予防策の進展状況の中で、新たなHIV検査の技術をどう活用するかに関して、特に男性とセックスをする男性(MSM)とトランスジェンダー女性を対象に、「HIV自己検査」に関する調査が行われた。

世界的に、HIV感染を早期に診断し、HIV治療につなぐ取り組みが強化されている。これは、伝統的なHIV対策に取り残された人々に対して、革新的アプローチを使ってサービスを届けることに活用されている。このようなニーズは、特に男性とセックスする男性(MSM)やトランスジェンダーの女性、その他のスティグマに直面している人々にとって、非常に効果のあるものである。ミャンマーのHIV流行は、MSM、セックスワーカーなど、HIV対策のカギとなる集団に集中しており、また近年行われたミャンマーのHIV国家戦略の改定は、その集団のHIV症例に対する診断の遅れと障壁を減らすことを目的としている。HIVの自己検査は、HIV検査と診断を個人の判断で実施できることにより、鍵となる集団への検査と診断を向上させる一つの方法となり得るかもしれない。

こうしたことを目的として、2015年6月〜9月に、ミャンマーのヤンゴンにて、MSM12名、トランスジェンダーの女性13名に対する綿密なインタビュー、また核となる情報提供者35名を加えたグループディスカッションを含む、形式的、質的調査が行われた。HIV自己検査を含む、その後のHIV治療への継続的な介入について知らせるため、自己検査について被験者がどう感じているか、その意見と理解が引き出された。

HIV自己検査は、自分で検査を行うというものであるため、守秘性が高く、プライバシーが守られるということは、被験者のなかで広く知られていた。HIV自己検査の主な利点は、スティグマを回避できること、クリニックに出向く時間や交通の必要が無いことなどの利便性、痛みのない検査の選択肢があることなどである。これにより、HIV自己検査は多くの被験者によって支持されている。被験者はこれらの利点を、カウンセリングがないなどの自己検査の欠点と天秤にかけている。被験者たちはカウンセリングの欠如が招くであろう、精神的健康状態が悪くなること、HIV治療や監視へ適切に繋がれないこと、またHIVステータスの公表の機会の減少などを懸念していた。一方、被験者たちはこれらの欠点をHIV自己検査への障害としては見ていなかったが、一部の被験者は、ミャンマーの将来的なHIV自己検査の実施に対していくつかの提案を行った。

調査の結論としては、MSMとトランスジェンダーの女性は、HIV自己診断によって与えられる守秘性とプライバシーに対しては好意的・楽観的であったが、HIVのカウンセリングと適切なサービスへ繋げることの必要性についても認識していた。国内においてHIVの優先順位が高くなり、また国際的な援助にアクセスできたことで、ミャンマーでは、HIV獲得へのリスクがある鍵となる集団に対するHIV対策が向上し、HIV治療の有効性も大幅に増加し、HIV自己検査などの新しい機会を開くことにつながっている。

●原題: New HIV testing technologies in the context of aconcentrated epidemic and evolving HIV prevention: qualitative research on HIV self-testing among men who have sex with men and transgender women in Yangon, Myanmar
●出典:The Journal of the International AIDS Society
●日付:25 April 2017
●URL: http://www.jiasociety.org/index.php/jias/article/view/21796

<地域別記事(アフリカ)>
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新たなHIVへの資金を調達するビール税
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【2017年5月1日 カンパラ(ウガンダ)発】東アフリカの内陸国ウガンダの政府は、「エイズ信託基金」 Aids Trust Fund(ATF)の財源確保のために、アルコール飲料やソフト飲料に2%課税する法案の検討を開始した。これは主に国外からの援助に依存している現状を改善するとともに資金不足を解決するためである。
エイズ信託基金は2012年に国会で可決され、HIV感染拡大に対処するために保健省の予算とは切り離されて創設された。

合計240万米ドル(約2億7120万円)が最初の資金としてビールや他のアルコール類に課税される。エイズ・結核の治療に使われる医薬品の年間予算は、900億シリング(約27億円)だが、市民団体は政府に対して医薬品の供給が滞らないように、この2倍の1,800億シリング(約54億円)を要求している。

ウガンダPLWHAネットワーク全国フォーラム National Forum of People Living with HIV/AIDS Networks in Uganda のドロシー・ナソロ氏Dorothy Nassoloは、「基金はドナーの援助によるサービスを受けていない患者のニーズを解決することになる。海外援助の資金はひも付きのことが多いために十分な援助を提供できていない。エイズ信託基金はこうした制約なしで支援することを可能にする。」と話している。

エイズ信託基金は2014年に施行され物議を醸した「HIV/AIDS予防とコントロールに関する法律」のもとで創設された。この法律はとりわけ対策を講じずにHIV/AIDSが拡大するのを法的に規制し、無料のHIV検査とカウンセリングサービスを提供することを定めている。またHIV問題に対する政府の義務と陽性者の権利の保護を定めている。

ウガンダでは、およそ60万人が抗レトロウイルス治療を受けており、そのうちの約90%が米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)やグローバルファンドによる外国援助資金で占められている。一方で母子感染対策には米国政府が100%資金を拠出している。

保健省の事務次官であるダイアナ・アトウィン氏 Diana Atwineは、「この基金は治療と予防、患者のケアにとって必要である。またあまり優先されてこなかった地域で昨年開始されたHIV検査と治療キャンペーンを加速させることにもなる。我々は基金を次の予算で稼働させるつもりだが確信はできない」と述べている。
エイズ支援機構 The Aids Support Organisation (TASO)の事務局長であるベナード・エトゥコット氏 Benard Etukoitは、政府の取り組みを正しい方向への第一歩として称賛し、「ドナーによる資金はあらゆる分野で使われているが、割礼や治療、母子感染の削減に焦点を当て、HIV検査や治療に対する分配が多くなされていなかった」と述べている。

1992年に国家のHIV/AIDS対策の監視役として法律で創設されたウガンダ・エイズ委員会(UAC)によると、2015年12月までにエイズ信託基金に政府から70億シリング(約2億1,000万円)が拠出された。現在、基金はアイルランドの政府援助機関以外すべてのパートナーが脱退したために閉鎖されており、それ以降基金はわずか34億シリング(約1億円)に減少しているという。

原題:Uganda: Beer Tax to Finance New HIV/AIDS Fund
出典:The Monitor 
日付:2017/05/01
URL:http://allafrica.com/stories/201705020214.html 

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(ジンバブウェ)HIV、エイズがインフォーマルセクターを苦しめる
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【2017年4月27日 ハラレ(ジンバブウェ)発】ジンバブウェの国家エイズ委員(NAC)によると、HIVとエイズは国内インフォーマルセクターに大被害を与えている。報告書では、インフォーマルセクターを8つに分けている(小規模の炭鉱労働者、国境の貿易業者、公共の運送業者と製造業者、セックスワーカー、小規模の農業と農業従事者、販売(食品を含む)と理容・美容業、建設業、製造)。「インフォーマルセクターをターゲットとしたHIV・エイズ戦略:状況分析の報告書2017年3月」の資料では、インフォーマルセクターでリスク行動が蔓延していることが明白であった。

報告書によると、リスク行動の15%は、男性に多い多数の性的パートナーで、46%はコンドームの不使用・一貫しない使用が関連している。報告書ではまた、67%の中小企業 SMEs がHIV・エイズの職場プログラムを実施していないことを指摘している。国のHIV・エイズ・結核と癌対策のターゲットに、インフォーマルセクターは含まれていない。現在インフォーマルセクターは、就業者の数、国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)への寄与度を見てもジンバブウェ経済の柱で、経済回復に影響すると考えられるため、ターゲットにこのセクターを含めない影響は大きい。

国境貿易に携わる者は、HIV感染する恐れの高い地域に駐在することがある。その地域では、宿泊施設、食料、交通や娯楽施設が限られているし、インフォーマルセクターで働く人びと、国境近くの住人、被追放者の間で、HIVウイルス感染の複雑なネットワーク網が存在する。また、通常の診療時間に受診できなかったり、地理的に医療サービスや供給へのアクセスが難しい労働者も多い。

また、HIVとエイズに付随するスティグマも、医療機関を受診しない人が多い理由に挙げられる。彼・彼女らは、有効性が保証されていないのに、民間療法のハーブ、路上で売買されるコンドームに頼っている。また、スティグマだけでなく、HIVとエイズ感染のトリガーとなっている要因の1つに、インフォーマルセクター労働者の貧困が挙げられる。例えば、従業員の大半が女性の小企業では、経営が低迷すると、収入を補うためにセックスワークに参与する。このことから、HIVとエイズの課題を解決していくには、単なる生物医学的アプローチだけでなく、社会経済的要因も考慮しなければならない。

原題:Zimbabwe: HIV, Aids Chokes Informal Sector
出典:Financial Gazette (Harare) 
日付:2017/4/27
URL:http://allafrica.com/stories/201704280665.html
 
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(ジンバブウェ)改善された男性割礼器具が本格的に導入される見込み
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【2017年4月25日】ジンバブウェなどアフリカ諸国の一部で使用されている、インド製の手術の不要な男子亀頭包皮切除のための器具「プリペックス」(prepex)の製造会社は、破傷風などの関連リスク低減のため、使用方法の改善に取り組んでいる。以前は、リングを装着して7日後に男性性器の包皮を除去していたが、新しい手続きでは、同じ器具で包皮の除去が30分後に短縮された。この「プリペックス包皮除去手続き0日」の導入により、日帰りで男子亀頭包皮切除が済む。以前の手続きは時間がかかり、排尿時に不快であった。しかし、手続きの改善によって割礼を受ける男性の増加が見込まれる。以前と同じ器具で、麻酔は必要なく、回復時間もない。また、この手続きは、プリペックスのメリットを保ちつつも、世界保健機関(WHO)に指摘された器具の課題を解消する。

現在、ザンビアでは新しい手続きで男子亀頭包皮切除を行うフィールド調査が行われている。これまでに、新しい手続きを適用した施術が400ケース行われ、成果は2017年5月には、WHOへ報告書が提出される予定である。

2015年1月、ジンバブウェではプリペックスによる130万件の男子亀頭包皮切除の施術を目標としたナショナルプログラムが開始した。一方、最近になってWHOは、破傷風の予防接種が浸透していない国での男子亀頭包皮切除の方法として、プリペックスを使用するのはリスクが高いと警告していた。WHOのガイドラインを受け、ジンバブウェでは、破傷風の予防接種を受けていないとプリペックスの適用を中止していた。
(578文字)
原題:Zimbabwe: Improved Circumcision Device on Cards
出典:THE HERALD
日付:2017/4/25
URL:http://allafrica.com/stories/201704250413.html


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編集後記
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先日、東北大学で「SDGsとエイズ」に関する授業を行いました。留学生の方々が多く、英語での授業となりましたが、皆さん親身に聞いてくださり、大変ありがたかったです。(編集責任者 MI)

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