国際情勢

グローバル・エイズ・アップデート

地球規模の広がりを見せるHIV/AIDS問題。アフリカなど途上国を中心に、現状と国際社会、市民社会の取り組みの最新情報を伝えるメールマガジン。

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夏期増刊2号(Global AIDS Update)

2006/09/08



■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

 グローバル・エイズ・アップデイト
       GLOBAL AIDS UPDATE
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2006年夏期増刊2号 2006年9月8日
Vol. 2-Special No.2 Date: September 8, 2006

■GLOBAL■<□<■AIDS■>□>■UPDATE■

◆発 行:アフリカ日本協議会
◆連絡先:
・東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F
・電 話:03-3834-6902
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はじめに:発行趣旨
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○HIV/AIDS問題は、現代世界に於ける保健医療上の最大の問題の一つです。
○しかし、日本では、こうしたグローバル・エイズ問題の深刻さや最新の情報が伝わっておらず、この問題へのコミットメントが薄いのが現状です。
○このメールマガジンは、グローバルなHIV/AIDS問題の最新動向を日本語で伝えるメディアが必要だという認識から生まれました。
○HIV/AIDSに関わる主要なウェブサイトの記事を日本語で要約し、隔週で発行いたします。

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■「夏期増刊2号」目次
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●第16回トロント国際エイズ会議特集

1.ビル・ゲイツ、国際エイズ会議で講演−米国のエイズ政策を批判
2.MSMが予防・ケアへのアクセスを受けられていない現状が明らかに
 〜MSMとHIVに関する世界フォーラム〜
3.先進国の途上国支援 - エイズ対策に十分な資金を
 〜グローバル・エイズ連合がカナダにより強い資金拠出を提言
4.論説:アフリカにおける女性・少女の保護に必要な司法制度の拡充
 〜レイプとHIV感染拡大の構図〜

●地域情報
アフリカ
南アフリカ: 人気テレビドラマでHIV/AIDSがとりあげられる

アジア
ネパール:予防・治療へのアクセスを閉ざされるMSMや男性のセックスワーカー

欧州
ウクライナ: 政府が世界銀行への対応迫られる

●治療へのアクセス
難航を極めるギリアド社の途上国における治療薬供給プラン

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トロント・国際エイズ会議特集
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 今号と次号では、8月13日〜17日の5日間、カナダ・トロントで開催された国際エイズ会議について特集します。

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★ビル・ゲイツ、国際エイズ会議で講演−米国のエイズ政策を批判
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世界最大のコンピューター・ソフト企業であるマイクロソフトの会長(chairman)、ビル・ゲイツ氏 Bill Gates とその夫人であるメリンダ・ゲイツ氏 Melinda Gatesは8月14日、カナダ・トロントで開催された第16回国際エイズ会議(IAC2006)開会式でスピーチを行った。ゲイツ夫妻は、米国政府が提唱する禁欲政策を批判し、女性の権利向上及びセックス・ワーカーへの支援を訴えた。

ビル・ゲイツ氏は、2万人の聴衆を前に、以下のように述べた。「ABC政策(禁欲、貞操、コンドーム使用を推奨する予防キャンペーン Abstinence, Be-faithful, Condom)は一定の効果があったものの、感染可能性が高い行動を取る人々にとって、ABC政策は、HIV感染予防対策としては限界がある。禁欲は、早期に結婚せざるを得ない貧しい女性や少女にとってはむなしく響く。貞操は、パートナーが貞操を守らなければ意味がない。さらに、コンドーム使用は、女性自身による選択ではなく、男性が主導権を握っている。女性がHIV感染予防の決定権を握るようにしなければならない。貞淑な小さな子どもの母親から、スラムに暮らすセックス・ワーカーの女性まで、自分の命を守るためにパートナーの許可を得なければならないのは間違っている。」

メリンダ・ゲイツ氏は、エイズによる差別や偏見について訴え、ブッシュ政権の政策と米国キリスト教原理主義者が提唱する「禁欲政策」を支持するアフリカの代表者らを非難した。「HIV感染が拡大している国々では、コンドームの供給が、不道徳で予防対策としては効果がないどころか、感染を拡大させる原因になる、と公言している指導者もいる。こうした政策によって、HIV感染予防対策が滞っている。コンドーム供給に反対する指導者たちは、命を救うことより重要なこととは何だというのでしょう。」

禁欲政策は、ブッシュ政権が推進するPEPFAR(大統領エイズ救済緊急計画、ブッシュ大統領が約束した、いわゆる「150億ドルを15カ国のエイズ対策に支出する」という計画)政策の目玉だ。資金の3分の1は、婚外の禁欲を推奨する政策に拠出すると法律で定めている。

アフリカHIV/AIDS国連事務総長特別代表 the UN special envoy for HIV/Aids to Africa のスティーブン・ルイス Stephen Lewis は、ブッシュ政権のHIV/AIDS対策のあり方を新植民地主義だと批判している。同氏は、禁欲を進める法律を撤廃しようとしている米国のバーバラ・リー Barbara Lee 下院議員を支援している。氏は、「欧米各国が、アフリカの各国政府にどの政策を支持すべきか命令する権利を有しているはずがない。」と述べた。

リー下院議員は、PEPFAR法案の起案代表者の一人で、すでに80名の国会議員や70のエイズ治療をしているNGOの支持を得ている。「『結婚まで禁欲』と薦める政策は、性差別や暴力、レイプに直面している、自分の体を管理する権利を奪われている女性にとっては、意味がない。」という。

米国の「健康とジェンダーの平等のためのセンター」 Center for Health and Gender Equality CHANGE 事務局長であるジョディ・ジェイコブソン Jodi Jacobson によると、いくつかのアフリカ諸国では、禁欲政策を謳ったプログラムが、米国で法定された基準である33%をはるかに超えてPEPFARから拠出された資金を得ているという。ナイジェリアでは、70%、タンザニアでは実に95%の資金が15歳から24歳の若い世代の「禁欲と貞操」プログラムに使われているという。

原題:Gates breaks ranks with attack on US Aids policy
日付:August 15, 2006
出典:The Guardian
URL: http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,1844633,00.html#top

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★MSMが予防・ケアへのアクセスを受けられていない現状が明らかに
 〜MSMとHIVに関する世界フォーラム〜
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8月15日、「男性とセックスをする男性 Men who have sex with men MSM とHIVに関する世界フォーラム the Global Forum on MSM & HIV 」 が開催された。このフォーラムは、第16回国際エイズ会議International AIDS Conferenceの一部として行われた「MSMとHIV - MSMのグローバルな課題の推進」MSM & HIV: Advancing a Global Agenda for Gay Men and Other Men who have Sex with Men に先駆けて開催された。

世界のあらゆる国から約300名の活動家、研究者や開発関係者や、UNAIDSの事務局長 ピーター・ピオット氏 Peter Piot が参加し、各国政府や国際機関の資金面での協力と、MSMの人権の確立を加速するよう訴えた。

活動家らは、世界では、10人に一人のMSMしかHIV感染予防のサービスを受けていないこと、また、それより少数の人しかケアやサポートを受けられていないという調査結果を発表した。会議では、HIV陽性者であるMSM及び感染の可能性が高いMSMのためのサービス及び資金の現状についての大きな溝について話し合われた。

今回の会議の運営委員で国際ナズ財団 NAZ Foundation International 代表であるシヴァナンダ・カーン Shivananda Khan 氏は、「MSMのHIV/AIDSの影響は、多くの政府や資金援助者から見逃され、または単に無視されてきた。結果として、彼らに対するケアや予防策があまり行われることがなかった。」と話した

MSMとHIV/AIDSについての研究結果は、資金が不足し、また、国家に政治的な意思がないために、世界規模でみても数が限られている。昨今、米国エイズ研究財団(amfAR)の研究プログラムである「トリート・アジア」TREAT Asiaが公表した調査では、MSM間のHIV感染率がアジアの一部の地域では25%を超えていることがわかった。一方で、ラテンアメリカとカリブ海地域の調査では約10%から20%と幅がある。

運営委員を務める、国際エイズ・サービス組織評議会 the International Council of AIDS Service Organizations ICASO リチャード・ブレジンスキ氏 Richard Burzynski は、「MSMのHIV感染率はあらゆる人口集団のなかでも最も高い部類に入り、早急な対策が必要であるが、資金拠出によるサービスの改善は問題の一部の解決にしかならない。恣意的な逮捕や、殺人の可能性もある身体的な暴力など、MSMに対する人権侵害により、彼らのHIVへの脆弱性が高まり、新規HIV感染者を増加させている」と警鐘を鳴らした。

原題:New Global Forum on MSM & HIV to coordinate global response to gaps in HIV/AIDS funding and human rights protections for MSM
日付:15 August 2006
出典:Aids Portal
URL:http://www.aidsportal.org/News_Details.aspx?ID=2654

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★ 先進国の途上国支援 - エイズ対策に十分な資金を
 〜グローバル・エイズ・アライアンスがカナダにより多くの資金拠出を提言〜
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トロント国際エイズ会議では、世界エイズ・結核・マラリア対策基金などを通じて世界のHIV/AIDS対策に必要な資金を投入せよ、という市民社会のスローガンが目立った。先進各国の市民社会は、トロント会議に向けて、G8諸国の政府に対してHIV/AIDS対策により多くの資金を投入するよう積極的なキャンペーン活動を行った。

途上国のエイズ対策に関わる政策提言活動を行っている国際NGO 「グローバル・エイズ連合the Global AIDS Alliance」は、カナダおよびフランスを除いた全ての主要先進国(G8)の「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(世界基金)への貢献が、その経済規模に照らして負担すべき拠出額を満たしていないをしていないとして警鐘を鳴らした。グローバル・エイズ連合の事務局長 ポール・ザイツ博士 Paul Zeitz は、ドイツが本来支払うべき資金の50%、英国が75%しか拠出していないことに言及した。 

カナダは7月に南アフリカ・ダーバンで開催された世界基金の増資中間評価会議において、2007年までの2年間に2.5億ドルの拠出を行うことを表明したが、グローバル・エイズ連合は、特にカナダに対し、さらに6,000万カナダドル(約5300万米ドル相当)を世界基金拠出すること、および、さらに長期的な資金拠出誓約をするよう求めた。それは、抗レトロウイルス薬の供給を確約し、低・中所得国のHIV陽性者が治療アクセスを改善するためである。 

カナダ国際開発庁の広報官ブロニウィン・クルーデン Bronwyn Cruden 氏はこれに対し、「カナダは、今年度2億5,000万カナダドルを拠出しており、既に、2000年以降、8億カナダドル(7億1500万米国ドル相当)をHIV/AIDS対策に拠出している。また、2006-2007年のカナダの世界基金への増資金額は、この2年間の各国の増資誓約の総額である37億米ドルのうちの5.7%を占めています。「公平な貢献」におけるカナダの一般的な負担すべき割合fair shareは全体の4%とされていますが、カナダのこれまでの貢献は大幅に上回っています」と反論している。

グローバル・エイズ連合のザイツ事務局長は、カナダが今後、世界基金を通さずに、自分たちのプログラムを独自に進めていくのではないかと懸念している。「一般的に先進国とは、財源を管理し、自分たちの独自プログラムを他国に持ち込み、成功をすればそこに自分の国の旗を立てたいと考えるものなのです。けれども、先進各国が途上国にバラバラに対策プログラムを持ち込めば、その報告義務は途上国の政府にとって非常に時間がかかる煩雑なものになります。また、こうした援助にかかる官僚的な手続きは、支援を受ける国々側からは大きな負担となる。」とザイツ事務局長は述べている。

原題:Canada criticized on AIDS funding targets
Wealthy countries not giving enough to help poor ones fight disease AIDS
日付: Aug 10, 2006
出典: CTV.ca website
URL:http://www.ctv.ca/servlet/ArticleNews/story/CTVNews/20060810/aids_funding_targets_060810/20060810?hub=Canada

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★論説:アフリカにおける女性・少女の保護に必要な司法制度の拡充
 〜レイプとHIV感染拡大の構図〜
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アフリカ大陸の女性および少女へのHIV感染予防戦略は大きく失敗している。彼女たちは夫、親類、隣人あるいは全くの他人にレイプされる可能性があり、それによりHIV感染に直面する可能性が非常に高い。

ある医療従事者らは、HIV感染と強制されたセックスにおける連関性を見つけている。結婚している女性が、仮に家庭内暴力に直面している場合、彼女がコンドームを使ってほしい、あるいは貞操を守ってほしいと夫に要求しても、暴力にあい、結果として未婚女性や少女よりもHIV感染可能性が高いと言われている。そのため、HIVの感染爆発においては、アフリカの女性および少女は、自分の国々の法の下で「保護される権利」を持たなければならない。

なぜこのような当然の命題が出てきてしまうのか。それは、HIV感染爆発が起こっている多くの国々は、司法制度が機能していないし、そもそも経済的貧困である女性や少女には、法制度にアクセスすることは難しい。レイプや暴力は日常的 norm であり、これらを阻止する、あるいは公にしていくことは、非常に難しい。

女性と少女への暴力や差別 degradation は、HIV感染の女性化feminizationが拡大している現在の状況で、HIV感染拡大の大きな要因となるということについては、すでに国際的なコンセンサスが存在する。ところが、子どもや女性を保護するための資金拠出は、まだ優先順位としては低い、あるいはそのリストに載っていない。

2006年7月、ケニアでは、4歳の少女をレイプした小児愛者を有罪と判決した例が出た。この裁判は判決確定までに5年の年月を有した。しかし、この勝利は、レイプ犯を投獄するための先例として、将来のレイプ犯罪へのメッセージとして、事態を前進させた。こうした判決を作り、少女たちを守るためには司法制度への投資が必要となる。現在、ケニアの検察官のうち8分の7が警察官を兼務しており、適切な司法教育を受けているものは非常に少ない。こうした司法制度の準備には、非常に長い時間を要する。つまり、HIV感染の予防戦略と同時進行で、司法改革をしていかねばならない。

保健医療制度でも議論されているように、司法制度の中でも、熟練した人的資源の不足が懸念されている。レイプに関する事件は、DNAテスト、被害者を保護する施設や人材、ロジスティクス体制、移動手段やIT技術などが必要である。レイプに関する女性や少女の問題は、適切なコンドーム使用や、教育等のエンパワーメントという言葉以上に、具体的な施策を必要としている。効率的に機能する司法制度は、現在のアフリカの状況に向き合い、感染予防のための生命線である。

原題: In Africa, Rape as a Risk Factor
日付: August 14, 2006
出典: Washington Post
URL: http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/13/AR2006081300716.html

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★地域情報
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★南アフリカ: 人気テレビドラマでHIV/AIDSがとりあげられる
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南アフリカ共和国の人気テレビ番組でHIV/AIDSを題材に取り上げたドラマ「イシディンゴ」Isidingo が放映され、話題を呼んでいる。このドラマは脚本家のグレイグ・クッツェー氏 Greig Coetzee によるもので、誘拐され性的暴力を受けた主人公ナンディパ Nandipha がHIVに感染して抗レトロウイルス療法を必要とすることになり、同時にエイズを発症していく様子を様々な角度から描いている。

南アフリカでは4人に1人の女性が、レイプや家庭内暴力を経験している。主人公を演じた女優フルビ・ボヤ Hlubi Mboya もナンディパに共感する部分が多くあるようだ。この南アフリカの女性被害の実態について、国連事務総長コフィ・アナン氏は、そのような行為により、アフリカの成人エイズ患者の半数が女性であるという悲惨な事実が引き起こされていると述べている。

南アフリカでは、エイズ治療薬が普及してきているといわれるが、現実には、総人口の16%に当たる推定600万人に及ぶエイズ患者が未だスティグマにより検査や治療を受けられていない。この事実について、クッツェー氏は、治療薬が普及してきたことにより人々のエイズへの関心が減少していると懸念しており、このドラマによりスティグマを減らし、視聴者に病気の進行および治療についての関心が高まることを期待したい、と述べている。また、できるだけ現実に沿った描写をすることにより、エイズとの共存は可能であることを見せたいと、南アフリカのエイズ問題解決に向けた強い意志を表明している。

エイズ開発研究評価センター長 ウォーレン・パーカー Warren Parker 氏は、'Isidingo',のようなエイズと向き合うテレビ番組を歓迎している。パーカー氏は、このドラマは人々がHIV感染とどの様に向き合っていくかを教える新鮮なアプローチであると述べ、主人公のスティグマに対する葛藤やエイズとの共存に成功する姿は、視聴者にエイズ予防や治療、ケアに関する考えにインパクトを与えると確信している。

原題:SOUTH AFRICA: Soap star on drugs!
日付:July 12, 2006
出典:IRIN Plus News
URL:http://www.irinnews.org/report.asp?ReportID=54572

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★ ネパール:予防・治療へのアクセスを閉ざされるMSMや男性のセックスワーカー
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ネパールにおける男性とセックスをする男性 Male who have sex with Male や男性セックス・ワーカー Male Sex Workers MSWs に対する活動を行う「青いダイアモンド協会」 Blue Diamond Society BDS が、ネパール政府の差別的な対応により活動が続けられない、と訴えている。

BDSはネパールの7つの都市において、アウトリーチ活動やピア・エデュケーションに取り組んできた。また今年6月まで、米国の国際NGO「国際人口対策サービス」Population Services International:PSI とUNAIDSの協力を受け、コンドームや潤滑剤を安い価格で提供していた。

しかしBDSによると、このコンドームと潤滑剤提供のプロジェクトが廃止され手しまった結果、現在、ネパール国内で潤滑剤の入手は不可能となり、コンドームも、政府が幾つかの都市においてMSMや男性セックスワーカーに対する提供を拒んでいるため、配布が困難となっているという。

BDSはまた、性感染症 STI 診療や、HIV検査を行うための器具を入手する上でも困難に直面しているという。これらの器具は、本来政府により市民活動団体や、特に社会的弱者を対象とするSTI/HIVのプログラムに提供されるはずであった。その結果、BDSのSTI診療所には、薬や機材が全くない状態となっている。

BDSは、このような状況がネパールにおけるMSMやMSW間でのSTI、HIVの感染拡大を加速する恐れがあるとして、国連HIV/AIDS特別総会 (UNGASS) にて普遍的アクセス Universal Access を誓った政府のコミットメントの欠如と差別的姿勢を批判している。またBDSは、国連機関や援助機関に、政府が資金援助を受けた際には全力で取り組むよう監視することの必要性を訴えた。

原題:UNGASS's Universal Access and MSM/MSW's Zero access to HIV prevention, care and treatment services in Nepal
出典:Blue Diamond Society (本件記事の原文については編集部にお問い合わせ下さい)
URL:http://www.bds.org.np/

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★ ウクライナ: 政府が世界銀行への対応迫られる
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世界銀行によるウクライナのエイズおよび結核対策に関するプログラムへの融資が凍結されてから、この2006年6月ですでに2ヶ月が経った。しかし、両者とも融資再開に意欲を示しているにもかかわらず再開の目処は立っていない。

世界銀行とウクライナ政府は2003年4月に融資契約を取り交わし、ウクライナ政府保健省管轄の下、6,000万ドルが世界銀行からウクライナ政府に融資される予定だった。しかし、ウクライナのエイズおよび結核問題改善プログラムによる成果は見られておらず、現在まで投入された資金のほとんどがエイズ・結核患者の直接的支援のためではなく、ウクライナ政府の行政コストに費やされていることが発覚したため、世界銀行は今年4月から融資を停止している。

世界銀行は、融資を再開するためにはプログラム実行に関する管理体制の改善が必須であるとしている。ウクライナ保健相 ユリー・ポリアチェンコ Yuriy Polyachenko 氏も、プログラムの停止は世界銀行だけでなくウクライナ政府にも問題があると認めており、特にウクライナ政府の度重なる法改正が資金利用を遅らせる原因であるとみている。国際HIV/AIDS連合 the International HIV/AIDS Allianceのシニアアドバイザー、イリーナ・ボルシェク氏 Irina Borushek も、世界銀行のウクライナ政府への融資凍結に関するウクライナ政府保健省の対応を批判しており、状況改善には新政権の誕生が必要であると述べている。

ポリアチェンコ保健相は、保健省は世界銀行の代表らと共同で融資再開へ向けた取り組みを行っているため、早ければ9月にもプログラムを再開できると期待している。しかし、世界銀行はプログラム再開の時期を明示していない様子だ。ウクライナは過去に同様の理由で世界エイズ・結核・マラリア対策基金からの資金援助も中断された経験があることが考えられる。

ウクライナでは、エイズ患者の死亡率は減少しているがHIV感染は増加している。つまり、新規感染予防が急務である。これは、世界銀行の融資再開案件内容と一致している。ウクライナ政府は早急な対応を迫られている。

原題:Future of Ukraine's AIDS assistance remains uncertain
日付:June 28, 2006
出典:Kyiv Post website
URL:http://www.kyivpost.com/nation/24711/

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★難航を極めるギリアド社の途上国における治療薬供給プラン
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大手製薬会社ギリアド・サイエンス社 Gilead Sciences Inc. による、途上国での治療薬提供プランが、暗礁に乗り上げている。

2002年、ギリアド社は自社のエイズ治療薬ビリアド Viread を、低価格で、途上国68カ国に提供する計画「アクセス・プラン」 Access Plan を発表した。その後、対象国は97カ国に拡大された。しかしこのプランは、開始後すぐに数々の不測の障害に直面し、エイズ活動家から非難を浴びている。

ギリアド社の失敗の原因のひとつは、ギリアド社がWHOの必須医薬品のリストに含まれていなかったことである。ギリアド社の医薬品の安全性を保障するため、ギリアド社は米国食品医薬品局  Food and Drug Administration FDAの特別認可を得ていたが、多くの途上国は、WHOの必須医薬品をより重視していた。そして、2005年にギリアド社が必須医薬品リストへの申請期限を逃したことが、さらに状況を悪化させた。

加えて、ギリアド社が途上国への「ビリアド」輸出の方法として選んだ「輸入認可免除」 import waiversもまた、非効率的であった。この方法は、途上国の診療所やNGOが各国政府にビリアド輸入の特別認可を要請し、それをうけて各国政府が医薬品の認可手続きを免除してビリアドを輸入するという方法である。しかし、各国政府は結局、認可されていない薬の輸入の必要性を認めなかったり、治療を受ける患者一人ひとりに別々の申請を求めたりする政府が多く、中には特別輸入が認められた場合でも、コストが2倍になってしまうような関税をかけるところもあった。

このような数々の障害の結果、2004年の初めにプランを通してビリアドを提供されている患者はたったの130人であった。ただし、その数は徐々に増加し、2005年には7,600人に達した。

2005年初めにギリアド社は、それまでの輸入認可免除というを諦め、ギリアド社のもう一つのエイズ薬ツルバダ Truvada の輸入認可を得ようと試みた。しかしこの突然の変更よりギリアド社は、膨大なFDA認可申請の資料を翻訳し、新しい薬の認可申請の公式な手続きが存在しない途上国政府へ提出するという、新たな負担に直面することとなった。現在までに、ビリアドは97カ国中13カ国、ツルバダは8カ国の認可を受けている。

2006年2月、「国境なき医師団(MSF)」の活動家たちは、ギリアド社がアクセス・プランの実施は『偽りの約束 “false promises”』だったとして、ギリアド社を非難した。またその数ヵ月後、MSFは再び、ギリアド社がアクセス・プランの対象国に含まれないインドにおいてビリアドの特許権を取得しようとしたことを、激しく批判した。

このような批判を受けてギリアド社は、アクセス・プラン実施において多くの過ちを犯したことを認めたが、実施を遅らせようとしたという非難は否定した。これについては、激しい批判の一方で、ギリアド社に対して同情的な意見を示す活動家もいる。

原題: A 'Good Deed' For AIDS Drug Hits Obstacles
日付:June 30, 2006
原典:Wall Street Journal
出典:AEGis website
URL:http://www.aegis.com/news/wsj/2006/WJ060604.html


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■□編集後記
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皆さま、今回は増刊号をお送りいたしました。いかがでしたでしょうか。トロント会議では、HIVの女性化 feminization への取り組み、あるいはビル・ゲイツ氏も注力をすると公約をした、新しい予防方法であるマイクロビサイド、ワクチン開発などが大きく取り上げられていました。またカナダでの開催ということもあり、(ハーパー首相が反対の声明をした)静脈注射常用者に関するハームリダクションに関する直接行動なども会場内で見ることができました。

来年はよりアジアの文脈に沿った形で開催される地方会議、第8回アジア・太平洋会議がスリ・ランカのコロンボで開催されることが決定しております。現在、政治的に不安定な状況が続いておりますが、無事に開催されますように。

日本でも東京で11月-12月に「日本エイズ学会」が開催されます。日本国内でのエイズ政策が中心に話し合われるこの学会ではどのようなアウトプットが出てきますでしょうか。

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