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欧州映画紀行

ヨーロッパ映画専門マガジン。フランス映画を中心に、レンタルビデオで見られる欧州各国の秀作を紹介します。作品中の町並みや物語を通して、家にいながら欧州旅行をしてみませんか? 作品理解に役立つコラムも充実。

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[欧州映画紀行] No.223 ある公爵夫人の生涯

2009/11/06

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 欧 州 映 画 紀 行 
                No.223   09.11.06配信
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「ここじゃない何処か」に行ってしまいたい、あなたのための映画案内。
週末は、ビデオ鑑賞でヨーロッパに逃避旅行しませんか?
フランス映画を中心に、おすすめの欧州映画をご紹介いたします。

★ いつの時代も女が自由と居場所を求めている ★

作品はこちら
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タイトル:『ある公爵夫人の生涯』
製作:イギリス・イタリア・フランス/2008年
原題:The Duchess

監督・共同脚本:ソウル・ディブ(Saul Dibb)
出演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、
   シャーロット・ランプリング、ドミニク・クーパー、
   ヘイリー・アトウェル
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■STORY&COMMENT
18世紀後半イギリス。スペンサー家の娘ジョージアナは17歳で名門貴族デヴォ
ンジャー公爵と結婚する。公爵は世継ぎを作ることにしか興味がなく、結婚生
活に失望するジョージアナ。しかし機知に富んだ彼女は、社交界で注目を浴び
て、自分の居場所を見つけていく。
子を産んでも女の子続き。夫に無視されるなか、政治家を目指す昔なじみのチャー
ルズと再会し……

実在の人物の伝記が原作である。歴史にはあまり詳しくないのだけれど、イギ
リスではポピュラーな「歴史上の人物」なのかな。実際の話より作り物(本物
と思えるように上手く作り込まれた)が好きな私は、あまり期待しないで観た
のだけれど、ジョージアナの行く末をいちいちハラハラして眺められる、いい
ストーリーだった。最終的な収まり方なんかについては、ホントいうと「だか
らホントの話ってつまんないっ」と思わなくもないんだけど。

幸せな結婚生活を夢見て嫁いだはよいが、現実に絶望する、という話は、まま
ならぬ時代の定番中の定番の物語である。子どもを産める産めないはすべて女
の責任、しかも男を産めなきゃ義務を果たしたことにならない、なんてひどい
時代だ。もっとも現在だって、家によってはそれに近いことは起こるし、産ん
でこそ女(妻)という考え方も根強い。

結婚初夜、服を脱がせる面倒くささに「女の服はどうしてこう複雑なんだ」と
いぶかる公爵と、「これが女の表現なんです」と説明するジョージアナ、そし
て公爵は、人が何かを表現する、ということの意味をまったく解さない。この
ことが象徴するように、「つまらない」公爵と「魅力的な」ジョージアナは対
照的だ。
夫が退屈だと席を立ってしまう政治談義も、ジョージアナは興味深く聞き、男
たちを相手に堂々と議論をふっかけたりする。その機転とセンスで、社交界の
ファッションリーダー、つねにその動向が注目される夫人として、彼女はその
才能を開かせる。

旧態依然とした男に対し、自分の才で自分の居場所を確保するジョージアナと
いうキャラクターは、現在の女性が(もちろん男性でも)スムーズに感情移入
できる。あと数年でフランス革命が起きる時、自由を尊ぶ時代の雰囲気ともマッ
チする。

昔なじみのチャールズは、自由を訴えて選挙に出る。ジョージアナは有力支持
者として彼を支える。自由を訴え、個性を奪われた家から引きずり出そうとす
る恋人は、新時代の救世主にもなぞらえられる。
こうして見ると自由の新風はいつも時代にも吹くらしい。それは、自由はいつ
も足りたくて、人が欲するからだろうか。

ただ男の子を産むことだけを求められ、自分にも娘にも興味を抱かない。そん
な夫と暮らしていて、紛れもない「自分」を愛してくれる人に出会ったら、こ
ろっといっちゃうよね、うーん、わかる。
と、同時に、多くの人に注目され、ファッションセンスも抜群で華のあるジョー
ジアナは、私にはまぶし過ぎて、彼女の親友(ネタバレになるから多くは言わ
ないが、いろんな関係である)、エリザベスの生き方に、私はより興味を持っ
た。

コスチューム好きな方はヨーロッパ時代劇特有の豪華な衣装をめいっぱい堪能
できるだろう。そして私は、こういう時代物では、お城の前に広々開けた庭を
見るのが大好きだ。

■COLUMN
スペンサー家とは、ダイアナ妃の出身家系で、この映画に登場する三角関係は、
ダイアナ妃とチャールズ皇太子とカミラ夫人を連想するように描かれている、
らしい。「スペンサー家」という名前でピンとこなかった私はちっとも思いつ
かなかったんだけれど。

チャールズ皇太子がカミラ夫人と結婚したとき、これは見方を変えたら、「大
恋愛の成就」、「貫く純愛」だよと思ったけれど、ダイアナ妃とカミラ夫人の
あまりの人気のギャップに、決してそうは思ってもらえない結婚のようだった。

悪者にされる人にも、それなりの理屈があるもので、悪者側から事態を見れば、
そうじゃないときに比べて同情の余地があったり、むしろそれが正しくて当然
と思えたり、どうしてもそうなってしまう不可抗力がうかがえたりするものだ。
ふつう、人は忙しいから、とりあえず何となく中立っぽい立場、何となく常識っ
ぽい立場からものを見て、いかにもひどい人を「ひどい奴だ」とし、何か被害
を受けた人を「かわいそうに」と、判断をする。
それはそれで問題はないのだけれど、いつも、そればかりなら、見方が硬直し、
物事の後ろに隠れているものが見えなくなるかもしれない。

そういうとき、悪人側からものを見せたり、とるに足らない人の側から世界を
見せたりできる「物語」の力は大きいと思う。
日常暮らしていてはあまりできない、視点の移動を「感情移入」という装置を
使っていとも簡単に実現するのだ。想像力は世界を変える原動力。「物語」は、
世界を前進させ、ちょっとでもよくするのに、決して欠かすことのできないも
のだと思う。

この映画、もしも別の視点から眺めるとしたら私は、デヴォンジャー公爵の側
から見てみたい。妻に関心をはらわず、世間体ばかりを気にする貴族の、孤独
や不器用さや人知れない悩みが垣間見られるかもしれない。

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『4分間のピアニスト』、ピアノを習ってらっしゃった方なら、さらにいろんな
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  • 名無しさん2009/11/07

    前に見たことのある映画でしたが、もう一度見てみたいと思いました。ありがとうございました。MT