文学

風に吹かれてかげろう

なにもない所からいいものを見つけて生きてゆくのが、人生の極意・・・かもしれない筆者の見つけたもの雑文集です。

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[KAGEROU]-457

2010/02/13

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Mail Magazine
 風に吹かれてかげろう
  100213 [457]
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 「わかりかけたこと」

 最近、妙に冷めてきた。

 世の中が、実のところ非常に簡単なものな
のだと解りかけてきた。

 祖父が死んだ。もう2年以上前の事だ。

 祖父の死、よりも、その周囲の人間模様に
興味があった。様々に学んだ。

 ただ、一番後ろで目を閉じることなくじっ
と見ていた。透き通ってゆく思いだ。

 黙祷。しなくてよかった。

 本当に小さな子供の頃。大人の世界は実に
複雑なのだと思っていた。今の自分はただ楽
しい事で毎日遊んでいればよいだけなのだが、
それもいずれ終わる事は何となくわかってい
た。母の顔。父の言葉。取り囲む大人の行動。
この自分があんな複雑で大変な世界に入って
ゆけるのか。世の中の流れが理解できなかっ
たし、順応する自信もなかった。不安であり、
怖い。

 自分の生い立ちをつらつらと書く気はない
のだが、その不安は疑問に変わり、悩みもし、
次第に納得に向かう。決定的な救いのきっか
けが、祖父の死による周囲の行動だった。今
までぐちゃぐちゃと混ざり合い絡み合い、そ
れでも少しはほどけかけてきた糸が、あれ・
・・?と、するすると解けてゆく。

 皿は、落とせば割れる。でもプラスチック
の皿は割れない。宝石は磨けば光るが、軽石
はいくら磨いても光らない。水は、低い方へ
流れる。枯れ葉は、吹けば飛ぶ。お日様は暖
かいし、雨に打たれると、冷たい。

 世の中は、そんな子供でもわかるような簡
単な法則でできている。

 言ってしまえばそれで終わりなのだが、そ
の簡単な法則を無視するから、話がどんどん
複雑に難しく。いや、これは「複雑」とか
「難しい」といった事ではない。ぐちゃぐち
ゃになってゆく。おかしくなってゆく。そん
な筈ではと自分を認められない者たちの言い
訳が、静かな水面をかき乱す。

 皿を落としたが、祈れば割れない。軽石も、
長年の努力と執念で光り輝くはず。花も、枯
れるはずがない。根拠のない期待と、引きず
る未練。

 この世には、「平等」などと言うものはな
い。右にいるあの人の家庭と、左にいるあの
人の家庭がこれほどまでに違うのに、そこに
同時に生まれてくる子供に均等な機会などあ
るはずもない。だが、それでいいのだ。子は
親を選べないが、それはそれでそれぞれに生
きる術がある。それぞれにそれなりの機会も
あり、運もある。そこをまるで世の人間すべ
てが平等な機会を与えられている、権利を有
しているなどと間違った事をおおっぴらにわ
めくものだから、それそれがそれぞれにある
ものすらなくなってゆく。生きるべき道すら
惑わせ見失う。

 生き物に生まれた以上争うようにできてい
るのに、「皆が手を取り合う争いのない美し
い世界」などと訳のわからない、世界の理に
反するものを追い続けるから。本来喧嘩の一
つや二つ。折られた鼻や腕の一本や二本で済
むものが、大量虐殺、大戦争などといったも
のになる。

 あらゆる物事の、理由は簡単だ。たどった
根元の一点をしっかりと見つめられれば、そ
んなに悩む必要もない。その簡単な根本から
目をそらすものが、プライドやら、未練やら。

 できない奴が下手な事をやろうとすると、
やけどをする。たいしたことのない奴が、知
識人ぶって余計な事まで。それこそ自分が地
に足をつけて生きてゆく以上の事まで知りた
がるのは、それがたとえ国際情勢や政治経済
の事であろうが、嫌らしい週刊誌を読みあさ
る事とたいした違いはない。

 残念ながら、天才には勝てない。能のある
奴には、勝てない。努力が短かろうが、果て
しなく長かろうが、能のある奴は成功する。
けれども、どんなに努力しようが本当に能の
ない奴は成功しない。だが、人々の能も、世
の中の求めるものも、一つではない。

 軽石なら磨かずに切り分けて、軽石として
売り出せばいくらでも生きて行く道はあった。
しかし、そんなはずはない、こんなもんじゃ
ない、と、自分を見誤った。何を思ったか軽
石をせこせこと磨き始めた。ダイヤモンドを
磨き上げる機械まで買い込み、将来への投資
まで始めた。当然軽石はいつまでたっても光
らない。でも立ち戻る勇気もない。今の荷物
を背負って立ち戻る場所もない。投資はすべ
て負債となって跳ね返るも、己を認める勇気
もない。無い胸を張って、軽石も磨けば光り
輝く事を周囲にぐだぐだと語り付けながら生
きてゆく。死ぬまで。

 葬式に参加して、一つ大事な事に気がつい
た。

 そういえば、俺。仏教徒じゃなかった。

 教祖がどんな人間なんだかもよく知らない
し、そのうえ目の前で読み上げられている念
仏のような呪文のような、その言葉なんだか
歌なんだか意味がさっぱりわからない。ぎゃ
あてぇぎゃあてぇ、腹ぎゃ痛ぇ。何を言って
いるんだろうと、必死に配られた冊子を目で
追うが、ひらがなと漢字を織り交ぜる現代日
本語に生きる俺は、こう難しい漢字だけずら
ずら並べ立てられても意味がわからない。

 そういえば昔。祖母が死んだ時にいろいろ
とお経の解説をしてくれた坊さんがいた。小
さい頃だったから、よく覚えていない。人の
犯す罪だとか、餓鬼がどうとか。人の生きる
べき道やら、とらねばならない行いやらを説
いたものだったような記憶がある。

 ならば何故、わかる言葉で唱えないのだろ
う?ここに居並ぶ人間に伝わる言葉で伝えよ
うとしないのだろう?

 何となくわかる気もするが。宗教は、救わ
れるためにあるものだ。そこで、わかる言葉
で説教されると、責められるものになる。翻
訳してしまえば、顔を上げられなくなる人間
がみんな去ってしまう。檀家が減る。そりゃ
困る。追い詰められた人間は皆、言い訳がほ
しいのだ。

 一番前に座って、お経にありがたくこくこ
くとうなずくあの人。何故うなずくのか、俺
にはわからない。おそらく、理解はしていな
いのだろう。理解してしまえば、とうてい顔
を上げられる状況にない人間である事ぐらい、
いくら俺でもわかる。何となく、難しい事を
聞いて、難しい事を理解したような、諭され
たような気分になる。そうしてその場が流れ
てゆく。今、救われているのだ。

 仏教を否定するのではない。そもそも俺は
仏教に関して何もまともな教育を受けていな
い。何も知らないのだ。が、今から学ぼうと
する興味がない。今俺の目の前に広がるぐだ
ぐだぐちゃぐちゃとした世界には関わりたく
ない。しかし淡泊ではあるが、祖父に対する、
死者に対する気持ちが全くないわけでもない。
じゃあ何に乗っ取って想おうか。

 私、俺教にしました。そこには、想うあな
たと、亡くなった人しかいない。教祖はいま
せん。教典もお布施も何もいりません。道具
もいりません。場所も問いません。人種も性
別も年齢も問いません。河原でも、お山のて
っぺんでも、電車のガード下でも結構です。
そもそもそんな事、どうでもいいんです。想
う人が亡くなったのなら、ただ目をつむって
想い出すだけでいい。それが一番救われる。
それで十分報われる。もしも想いがそれ以上
にあふれるのなら、写真でも立てればいい。
毎朝ご飯も供えればいい。歌ってあげてもい
いし、踊ってもいい。思いをすきなように表
せばそれでいい。どうぞ、お好きな時に、お
好きなように、御勝手に、御入信くださいま
せ。

 すべては護身のために。たいしたことのな
い人間が、たいそうな事を語るから面倒にな
る。情のない人間が、あふれるように振る舞
うから場がおかしくなる。能のない人間が万
能なふりをするから、説得力を失う。

 俺は、こんな筈じゃない。こんなもんじゃ
ない!と強く想う時。立ち上がって突き進ん
で素敵な未来をこの手で掴むような夢を見る
が、案外そう思い始めた時点で危険な方を向
いているような気もするのだ。

 ま、こんなモンかな。これはこれでいっか
な。ちょっとはそうやって自分を認めてみま
せんか?そして、今自分に確かにできる事を
探しませんか?大体は人間は、今ここにある
自分以上のものがあるものではない。

 ドングリがいくらお互いいがみ合って牽制
し合って背伸びし合っても知れている。所詮
弾けてどっかに飛んで無くなるだけだ。野生
の強さを失った人間という種である以上、マ
ンションの部屋の隅っこに転がるだけでは芽
吹いて大木になる事もない。けれどもドング
リもうまく使えば楽しいおもちゃがたくさん
できるし、それで喜び笑いあう事もできる。
そんな事が何よりも大切だったりする。

 無い自分を打ち立てると、今あるものまで
失ってゆく。それに気付かないのだろうか?
学ばせてもらう以上につきあう気はないのだ
が、あんまり進歩がないと笑わせてもらいた
い。が、所詮楽しいものでもないからどうで
もいい。

 今ある自分に素直に生きている人というの
は確かにいるのだ。これは俺も見た事がある
し、何よりも一緒にいて楽しい。見た目優先、
まず格好ありきの世界よりも、そういった実
のある人と何気なく想い合って生きる方が、
ずっと充実すると俺は信じている。

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 著者 佐藤幽泉
    さとうゆうせん

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