政治・経済

頂門の一針

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頂門の一針5032号 2019・5・2(木)

2019/05/02

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わたなべ りや うじらう のメイ ル・マガジン「頂門の一針」5032号
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        2019(令和元年)年 5月2日(木)



         イスラム国家指導者たちの朝貢図:宮崎正弘

            「08憲章」石平氏の見方:渡部亮次郎

         文在寅、親北反米路線で確信犯:櫻井よしこ      

                      話 の 福 袋    
                       反     響
                      身 辺 雑 記



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イスラム国家指導者たちの朝貢図
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019)5月1日(水曜日)弐
        通巻第6062号 
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 薄ら寒くなったイスラム国家指導者たちの朝貢図
  ウィグル弾圧を同胞の危機とは見ずに、習近平にお追従
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北京で開催された「一帯一路國際フォーラム」にプーチン、シシ、スー チー、ナゼルバエフらが顔を揃えた。画像を見ていると習近平にはりつく ように人工的笑顔をつくっているのはシシ(エジプト大統領)、ナゼルバ エフ(前カザフスタン大統領)らである。

しかし2年前に出席したトルコのエルドアン大統領は欠席した。トルコは ウィグル、カザフ、ウズベク、トルクメニスタンと同様に突厥あたりを源 流とするチュルク族の国家、おなじくイスラム教を信奉する国民がいる。
トルコ族の英雄的歌手がウィグルの強制収容所で死亡したというニュース (真偽のほどは依然不明)に激怒し、エルドアンは中国共産党を「人類の 恥」と非難した。

イムラン・カーン(パキスタン首相)は、反中国を鮮明に選挙に競り勝った。

しかしパキスタンが抱える対中債務のあまりの膨大さに、ウィグル弾圧を 聞かれても「わたしはよく知らない」ととぼけた。

出席した元首クラスは、このほかにサウジ皇太子、ジブチ大統領、ルカ シェンコ(ベラルーシ大統領)、そしてキルギス、ウズベキスタン、トル クメニスタンの元首クラスで、いずれも共通項がある。

専制政治あるいは独裁政治のボス達であること。中国のシルクロード資金 を経済再生のカンフル剤としてアテにしていること。そして中国のウィグ ル族弾圧を「テロリスト対策」として称賛していることである。
北京の国際フォーラムをみていて、薄ら寒くなるイスラム国家指導者たち の朝貢図だった。
     
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★読者の声 ★READERS‘ OPINIONS ★どくしゃのこ 
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(読者の声1)番組「フロント・ジャパン」(4月30日夜放送)で、福島 香織さん、宮崎正弘さんの対話。ニュース解説、福島さんの「一帯一路サ ミットとウィグル問題」が最初で、後半が宮崎正弘「ボルネオは華色」は 下記サイトから繋がります。
https://www.youtube.com/watch?v=r-VZ7QDiUPc
 宮崎正弘さんのトークは48分から一時間九分まで21分間です。
   (日本文化チャンネル桜)
                            
       
     
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「08憲章」石平氏の見方
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     渡部 亮次郎

中国の民主化を求める「08憲章」は世界人権宣言採択60周年にあわせ、 2008年12月10日、インターネット上で発表された(AP)

中国の学者や弁護士ら303人が公表したものだが、89年の天安門事件で母 国と「精神的に決別し」、2007年日本に帰化した石平(せきへい)氏は12 日の産経紙上で論評した。

「共産党政権おそらく彼らは、08憲章の発表を中国の発展を阻害しようと する外国勢力の陰謀だと決めつけ08憲章」の連邦共和構想を「祖国を分裂 させるたくらみだと断罪した上で、いわば愛国主義の大義名分において民 主化運動を潰しにかかってくるのであろう」と分析した。

石平氏はさらに「それでも事態の収拾がつかなくなる場合、国民的なナ ショナリズム情念をもう1度焚付け、対外的な危機を人為的に作り出すこ とによって、内部統制を強化して生き延びていくというのは、政権にとっ ての魅力的な選択肢の一つとなってくるはずである」とし以下のように述 べている。

「08憲章」の原文に接したとき、昔の天安門民主化運動にかかわったこと のある私は、久しぶりに血が湧くような思いをした。民主化の夢は再び、 かの国の大地で蘇ってくるのか。

「08憲章」の示した民主化の理念と構想は、私たちの時代の単純な「理想 論」と比べれば、実によく成熟して高次元なものとなった。

それは、中国の現状に対する冷徹な分析と、民主化の障害となる諸問題に 対する深い洞察の上、政治・経済・教育・司法・宗教などの多方面におけ る変革の構想と問題解決の道筋を提示し、中国民主化のための総合的なガ イドラインを打ち出したものである。

その中で、たとえば「軍の国家化」の主張はまさに現体制の核心部分を突 いた鋭い切り口であり、「連邦共和制」の構想はまた、「中国のような巨 大国で民主化が実現可能なのか」という長年の難題の解消に方向性を示し た歴史的な突破である。

発起人の多くが天安門民主化運動の中心人物の生き残りであることからす れば、今の成熟は過去の運動の挫折に対する反省の結果であると思うが、 完成度の高い「08憲章」の発表自体は、民主化運動の一歩前進を示した画 期的な出来事である。

何よりも注目すべきなのは、天安門事件から19年目の2008年に、この「08 憲章」が発表されたタイミングの重大な意味である。

天安門事件以来の19年間、中国の民主化運動が低潮期に入ったことは事実 だが、その最大の原因はやはり、1990年代から始まった市場経済への本格 的な移行と、その結果としての高度経済成長にある。

つまり、時代のパラダイム(思考の枠組み)が「政治」から「経済」へと 変えられていく中、この国のエリートと民衆が富と豊かさを求めて市場経 済の波に呑(の)み込まれていくと、民主化の理想と欲求が徐々に忘れ去 られる。そして高度成長のもたらす経済の繁栄はまた、共産党の一党独裁 に新たな正当化の根拠を与えて政権安定の基盤を作った。

その結果、党と政府の思惑通りに、十数年にわたる「繁栄と安定」の時代 が「めでたく」出現したわけである。

しかしその半面、政治的一党独裁と経済的市場化との矛盾が棚上げにされ たままの経済成長は、やがて腐敗の蔓延(まんえん)や貧富の差の拡大や 農村の疲弊などの問題を生み出し、経済が繁栄しながらも年間に数万件の 暴動が起きるようないびつな社会を作り出すに至った。

かくて運命の2008年から、肝腎の経済繁栄も陰りを見せ始め、特に08年後 半に入ってからは、「急落」、「減速」、「減産」、「リストラ」、「倒 産」などの不吉な単語が毎日の新聞記事に登場してくる中、十数年間の高 度経済成長はその終焉(しゅうえん)を告げようとしている。

これまで経済の繁栄によって覆い隠されていた社会的諸矛盾が一気に噴出 してきて、経済の後退がもたらす失業の拡大が社会的不安をさらに増大さ せる事態の発生が必至だ。つまり今度は、「繁栄と安定」の時代に取って 代わって、衰退と混乱の時代が再びやってくるのである。

そうすると、中国はどこへ向かうべきか、という忘れ去られていた根本問 題が再び浮上してきて、変化と改革を求める声は再び時代のパラダイムと なってくる。

したがって、このような歴史的な節目に堂々と登場してきた「08憲章」 は、まさに中国の直面する難局を打開し、国づくりの新しい道を切り開こ うとする民主化運動の「再出発宣言」となるのである。

インターネットが発達し、市場経済の広がりが党の直接支配の及ばない自 由空間を作り出したこの時代、彼ら民主派知識人や人権活動家を中軸に、 いびつな経済繁栄から取り残された農民工や都市部労働者、経済衰退の中 で生活破綻(はたん)をきたしていく中産階層、卒業しても職にありつけ ない大学生、そして「中華帝国」の支配に反発するウイグル人やチベット 人などが、自由・人権・民主の普遍的価値を掲げた「08憲章」の旗印の 元に結集してくるのであれば、それが間違いなく、中国の行方を決定する 大きな流れを作り出していくのであろう。

日本がどう対応すべきかこそはわれわれにとっての大問題であるが、とに かく、08年12月から、巨大隣国・中国の変革と激動の時代がいよいよ その幕を開けようとしていることを、まず認識しておくべきであろう。



■天安門事件 1989年6月、中国政府が軍隊を出動させ、民主化を求める 学生らを弾圧した事件。4月15日に急死した中国共産党の改革派指導者、 胡耀邦氏の追悼を契機に、学生らが北京の天安門広場でデモを繰り返し、 党の腐敗を批判する大規模な民主化要求運動を展開。トウ()小平氏ら指 導部は運動を「動乱」と断じ、6月3日夜から4日未明にかけて、軍を動 員して広場を制圧し、少なくとも数百人の死者が出た。


 ■せき・へい 1984年北京大哲学科卒。88年に来日。89年の天安門事件 で母国と「精神的に決別」。95年神戸大大学院で博士課程修了。2007年日 本に帰化し08年拓殖大客員教授。「私は『毛主席の小戦士』だった」 (飛鳥新社)など著書多数。四川省出身。46歳。産経ニュース2008.12.23 18:18




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文在寅、親北反米路線で確信犯
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         櫻井よしこ

南北両朝鮮が米国に追い詰められている。とりわけ韓国の文在寅大統領へ の米国の圧力は巧妙である。

4月11日、文氏は“建国”を祝う予定だったが、米韓首脳会談のため、大事 なその記念式典を諦めて訪米した。にも拘わらず、ホワイトハウスでのト ランプ大統領との会談は、前代未聞の哀れな結果に終わった。

文氏は10日にソウルを出発し、同日夕方にワシントンに到着したが、米国 側との予定は一切組まれていなかった。翌11日午前中に、ポンペオ国務長 官、ボルトン大統領補佐官、ペンス副大統領とそれぞれ面会したが、三氏 共に文氏の北朝鮮寄りの姿勢に批判を加えたと見られる。北朝鮮に非核化 の意思は読みとれず、制裁緩和はあり得ない、米国はむしろ制裁強化を考 えていることなどが強調されたと考えてよいだろう。

その後、トランプ、文両首脳は夫人を伴って首脳会談を行った。夫人同伴 の首脳会談など通常はあり得ない。トランプ氏は文氏と二人で語り合う必 要を認めていなかったのだ。現に会談冒頭、メディアからゴルフのマス ターズトーナメントの勝者は誰になると思うかと問われ、トランプ氏は文 氏を横においたまま延々と語った。結局27分間もトランプ氏の話が続き、 文氏との会談時間は驚きの2分間、しかも通訳つきだ。その後に他の閣僚 たちも参加しての昼食となった。4月12日、ネット配信の『言論テレビ』 で元駐日韓国大使館公使の洪熒(ホンヒョン)氏が語った。

「2月末にベトナムの首都ハノイで米朝会談が決裂した後、文氏は康京和 (カンギョンファ)外相や鄭景斗(チョンギョンドゥ)国防部長官を米国に送 り、三度目の米朝首脳会談の開催や対北朝鮮制裁の解除を要請させまし た。対北経済援助で米国には負担をかけない、韓国が負担するので開城 (ケソン)工業団地も金剛山(クムガンサン)観光も再開させてほしい、など とも言わせました。米国側は全て拒否し、そのような話題であれば、米韓 首脳会談はなしだと、通告したのです」

一人飯

朝鮮問題の専門家でシンクタンク「国家基本問題研究所」研究員の西岡力 氏も『言論テレビ』で語った。

「朝鮮語で『一人飯』をホンバプといいます。韓国の若者の間で一人でご 飯を食べるのが増えていて、ホンバプという言葉が流行っているのです。 文氏は米国到着の10日夜がホンバプ、11日朝もホンバプ、11日昼にようや く米国側との食事にあり付いた。本当に相手にされなかったのです」

米国の厳しい態度は文政権の裏切りに対する冷遇だと洪氏が断じる。文氏 の裏切りとは、米朝首脳会談を実現させるために、文氏が金正恩氏は北朝 鮮の非核化を決意していると米国に伝えたことだ。正恩氏が表明したのは 北朝鮮の非核化ではなく、朝鮮半島の非核化である。これは韓国を守るた めに米国の核を使うという発想自体もなくしてしまうこと、即ち米韓同盟 の破棄を目指す言葉であり、北朝鮮が所有する全ての核や関連施設の一掃 とは、全く異なる。

当初、北朝鮮の非核化に希望を抱いたトランプ政権は、やがて正恩氏に非 核化の意思がないこと、文氏の嘘を確信したと思われる。国連制裁に違反 してでも北朝鮮支援に動こうとする文氏を牽制するために、米国政府は文 政権の頭越しに韓国の経済界に働きかけ始めた。

昨年9月には、ニューヨークにある韓国の七つの銀行の支店に米財務省が 直接電話をして、米国が北朝鮮に制裁をかけていることを承知しているか と警告した。西岡氏が語った。

「韓国系の銀行は現在、送金業務を止めているといわれます。もし送金に 北朝鮮と関係する資金が入っていれば、米国の副次的制裁(secondary sanction)を受け、一切のドル決済が停止されるやもしれない。そうなっ たら銀行は潰れます」

昨年4月27日の板門店での南北首脳会談にも、9月18日の平壌での南北首脳 会談にも、文氏は多くの韓国企業代表と開城工業団地の組合長らを同行さ せた。文氏は金正恩氏と共に白頭山に登ったが、そのとき正恩氏に開城工 業団地組合長を紹介し、組合長に直訴させた。「委員長様、何とか開城工 業団地を再開させて下さい」と。

正恩氏は今年新年の辞で「南朝鮮の人民の要望に応えて、無条件で開城工 業団地を再開する」と演説し、それを受けて文氏は開城工業団地再開で米 国を説得すると公言した。だが、北朝鮮を利するだけの工業団地再開に は、前述のように米国が完全拒絶の姿勢を貫いた。

支持率は下がる一方

その間、ソウルの米大使館の専門官は文氏に同行した財閥や企業に直接電 話攻勢をかけた。米政府が北朝鮮に制裁をかけているのは承知か、と警告 したのである。洪氏が強調した。

「米国は朝鮮半島での70年間に多くの教訓を得ています。そしていま、文 在寅と韓国企業を切り離しているのです。文は米国の警告を聞かない。な らば企業や韓国国民に直接働きかけようというわけです。核を諦めない北 朝鮮に送金を続けるのか、米国との貿易や自由社会との絆を選ぶのか、と 米国は迫っています」

韓国国民も文氏の危うさを実感しているに違いない。支持率は下がる一方 だ。経済は停滞し失業率は高まり続けている。にもかかわらず、文氏は最 低賃金をこの2年間で約30%も引き上げた。残業を規制し労働時間を大幅 に短くした。人件費は高騰し、倒産は急増、失業率がさらにはね上がる悪 循環である。笑い話のような現実を西岡氏が紹介した。

「統計上失業者が増えると困るので、文氏は60歳以上の失業者に週1回大 学に行って電気を消す、又はゴミ拾いをするなどの仕事を作り、役所が賃 金を払うことにしました。税金で失業率の統計に化粧を施しているのです」

支持率低下や米国の警告にもめげず、親北路線を変えない強い反米の意思 が文氏の人事から読みとれる。一例が統一部長官に指名された金錬鉄(キ ムヨンチョル)氏である。この人物は米国が韓国に要請した THAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備に反対し、開城工業団地の早 期再開を主張する反米主義者である。

同人事は韓国議会の反対にも拘わらず、文氏は考えを変えなかった。文氏 は米国に公然と対立姿勢を見せたに等しく、米国を欺く手法で開城工業団 地再開をはじめ北朝鮮支援に走り出しかねない。

暴走の気配を見せる文氏に、米国が対決姿勢を強め、韓国国内では対抗勢 力が力をつけつつある。2月27日、自由韓国党の代表に黄教安(ファンギョ アン)氏が選ばれた。朴槿恵政権で法務部長官や首相を務めた公安検事出 身の62歳は、文政権の安保政策と経済政策を「亡国政策」と批判する。

野党勢力はまだ弱いが、それでも文氏の足下は決して盤石ではない。韓国 はいつ何が起きてもおかしくない緊張の中にある。
『週刊新潮』 2019年4月25日号日本ルネッサンス 第849回


   
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重 要 情 報
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◎我が国のせいにするのは誤りではないか:前田正晶

以下は18年の4月29日に論じたことだが、1年経った今でも通用すると思っ て一部を手直して再度投稿。

私は「我が国のトランプ大統領に関するマスコミ報道は、アメリカのアン チ・トランプのテレビと新聞の fake news をそのまま垂れ流しているか ら悪評ばかりだ」という一部の有識者の意見は概ねその通りだと信じてい る。既に述べたように、大統領としての実績は兎も角、私は個人的にはド ナルド・トランプという人物は好みではないのである。その独断専行的な 手法もさることながら、国際的な貿易取引の実態に疎いのではと思わせる 政策を打ち出されたり、貿易赤字を我が国の所為にされるのもフェアーで はない思っている。TAGで押してくるのも筋が違うと思う。

即ち自国の貿易赤字がアメリカに売り込んでいる中国などの貿易相手国の 責任であるが如き事を言い、安全保障の為に鉄鋼とアルミの輸入に関税 をかけると言い出したのがその揺るがぬ証拠ではないのかと思う。永年ア メリカ製品の対日輸出に従事してきた者としては、基本的に輸 出国では ないアメリカで多くの企業が懸命に輸出に励んでこなかった結果 として 赤字が続いたのであって、その点を頬被りするのはフェアーでは あるま い。かのオバマ大統領でさえ、空洞化して出ていっ た多くの産業に戻っ てくるように要望したではないか。

そこに、宮崎哲弥氏が今週の(1年前であるが)週刊文春に連載している コラム「時々砲弾」でトランプ大統領の貿易赤字対策の誤謬をUKの Financial Times(FT)の記事を引用して分りやすく説明していたので、 私にも良く理解できたのだった。そこで、一寸長くはなるがご参考までに その記事を引用してみようと思い立った次第だ。

>引用開始

「トランプ大統領は、アメリカが全ての国に対して持つ「マクロの収支」 における赤字と特定の一国に対して持つ「二国間収支」における赤字の双 方をアメリカの損失と見做し、その責を貿易相手国に帰している。この貿 易収支、あるいは貿易収支を含む経常収支についての認識は完全に間違っ ている。そもそも貿易赤字はその国の損失を意味するものではないし、貿 易黒字はその国の得分を意味しない。かかる誤見を「重商主義の誤謬」と 呼ぶ。

では経常収支(>貿易収支)の赤字の原因とは何か。FTは明解に答えてい る。「経常収支の赤字は主に関税や貿易規制ではなく、財政政策や人口動 態、為替レートをふくめ主としてマクロ経済のさまざまな要因によって影 響される。そうでなければ、赤字が意味するのは、インドのような国は慢 性的な貿易赤字を抱えているから開かれた貿易体制を敷いているに違いな い、ということになる。インドに輸出しようとした人なら誰でも、明らか にそうではないと証言するだろう。

経常収支の黒字、赤字は、各国の経済主体が最も有利と判断して選択した 行動(=貯蓄投資バランス)の結果としてある。平たくいえば国内の需要 が縮小し、国民の多くが貯蓄をする場合、経常収支は黒字に傾くことがあ るし、国内消費が活発で、国民の多くが投資を行うような場合、経常収支 は赤字となる。経常収支はこうした国内の経済活動を反映するものなのだ。

従って輸入産品に思い関税を課したり、貿易相手国に「市場開放」を強要 したりしてしても、アメリカの貿易赤字は決して縮小することはない。仮 に赤字減らしという目的が正しいとしても、この種の貿易政策は先ず役に 立たない。トランプ大統領の国内向けの目玉政策である大幅な減税や巨額 の公共投資は、米国の国内消費、投資を活発化させる。その結果として貿 易赤字ますます膨れ上がるだろう。<引用終わる

なるほどと思った。現にトランプ政権が関税賦課政策を開始した後でも赤 字は目立って減少してはいないのだ。特に目立ったことは、トランプ大統 領が「関税を賦課した結果で財務相には現金が大量に入ってくるように なった」とTwitterで述べているのを見れば、大統領が何か思い違い をし ているとしか思えないのだ。言うまでもないが、連邦政府に入っ てきて いる金はアメリカの輸入業者か需要者が納めたものである。

私は1972年にM社に転出した頃には「アメリカは我が国に対して貿易では 赤字になっているが、アメリカの産業界はこれに失望するべきではない。 それは我が国の多くの製造業界の企業では米国の大手メーカーが持つ特許 やライセンスを受けているので、それに対する出費というかアメリカ側が 受け取っている毎年のローヤルテイーは決して少額ではない。こういう状 況を考えればアメリカは必ずしも赤字を嘆く必要ないのでは」と聞かされ ていた。

この宮崎氏のFTの記事を引用しての解説はより具体的な説得力があったと 思って読んだ次第だ。いや、寧ろトランプ大統領とその側近にはあらため てFTをお読み願いたいとすら考えたのだった。いや、失礼を顧みずにもっ と率直にいえば、この辺りにトランプ大統領の貿易の実務を経験されてこ なかった弱点があるのではないかと思うのだ。



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身 辺 雑 記
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2日の東京湾岸は快晴、爽快。

1日の東京湾岸は好天。隣の第3亀戸中学校の校庭からは打たれるテニス の乾いた球音が8階の書斎まで聞こえてくる。
                        読者数:6001人

                         
                        

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創刊日:2004-01-18  
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