政治・経済

頂門の一針

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頂門の一針 4972号  2019. 3・3(日) 

2019/03/03

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わたなべ りや うじらう のメイ ル・マガジン「頂門の一針」4972号
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        2019(平成31)年 3月3日(日)



      マッケイブ元FBI長官の新書発表:Andy Chang

            パキスタン政界に衝撃:宮崎正弘
         
       トランプ「破恋」の背景に「焦り」:杉浦正章                   
                                
                    話 の 福 袋
                     反     響
                    身 辺 雑 記


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マッケイブ元FBI長官の新書発表
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          Andy Chang

司法省監察長官に嘘を吐いた廉で免職されたマッケイブ(Andrew
McCabe)元FBI長官が“The Threat”と言うタイトルの本を出した。本
の副題は「How The FBI Protects American in The Age of Terror and Trump」、つまりDOJ/FBIの上層部のトランプ罷免陰謀を正当化するために 書いた本である。

マッケイブはFBI副長官だったがコーメイ長官が免職になったので繰
り上げて代理長官となった。彼自身は引退する予定だったけれど、司
法省の監察長官に対し四回もウソを吐いた廉で引退直前(26時間前)
に免職になった男である。2016年の大統領選挙の際にFBIがトランプ
に不利な情報を意図的にメディアに洩らした事実を4度も監査官に聞
かれ4度とも否認した嘘吐きである。

「トランプに不利な情報」とはヒラリーの金ででっち上げたスティー
ル文書のことである。この文書に信憑性がない事は2016年5月と10
月に司法省のBruce Ohrが説明したのでわかっていたが、ウソとわか
っていたにも拘らずDOJ/FBIはスティール文書をWall Street Journal
のほか二か所に洩らし、この文書を使って法廷にFISA(外国スパイ調
査許可)の申請を提出したあと、トランプが当選したあとも3回ほど調
査の延期を申請したのである。コーメイFBI長官はトランプが当選し
た後の2017年1月4日にトランプと会見して「スティール文書は信憑
性に欠ける代物だ」と述べたにも拘らず会見後もスティール文書を使
ったFISAの延長を3回申請した。

DOJ/FBIの反トランプ陰謀の外にも国会はトランプの就任後もスティ
ール文書を理由にしてマラー氏を特別検察官に指名してトランプのロ
シア癒着を調査した。マッケイブの新書はトランプの罷免陰謀につい
ての弁解書である。トランプがロシアのスパイ要員(Asset)である可
能性を調査したとして正当性を主張しているのである。

この本はDOJ/FBIの上層部数人がトランプを罷免する証拠を研究して
いた、つまりトランプを罷免する陰謀の経緯が書かれていたのである。
新書発表のあともマッケイブはCBSの60Minutes とMSNBCのテレビ対談
で、ローゼンシュタイン司法副部長とFBI職員たちと一緒にどうやっ
てトランプを罷免する方法と証拠集めを討論していた。トランプ罷免
の秘密会談だがローゼンシュタインが首謀者だと陰謀の責任をなすり
付けている。

マッケイブはテレビ対談で、トランプ大統領がコーメィFBI長官を罷
免した8日後、マッケイブFBI長官、ローゼンシュタイン司法省副長
官やその他DOJ/FBIの職員数人がトランプ罷免の相談を行ったと話し
た。つまりクーデターの相談をした事実を発表したのである。

この集会でローゼンシュタインはトランプを罷免するには憲法改正第
25条を使えばよい、「大統領が日常の責務を果たせなくなったと認定
された場合、国会及び上院の両方で3分の2以上の賛成を得て副大統
領を大統領に繰り上げることが出来る」と述べた。

トランプが大統領の責務を果たせない証拠は、ローゼンシュタインや
DOJ/FBI職員が身体に録音機を隠してホワイトハウスに赴き、トランプ
大統領との会談を録音し、録音を国会議員に提供し、国会議員が憲法
改正第25条を行使してトランプを罷免すればよいと述べたと言う。

つまりトランプが正常な人間でない証拠を秘密録音し、国会議員に渡
して罷免に持ち込むという陰謀である。これが事実であればトランプ
罷免を画策したグループ全員が国家転覆罪で有罪判決を受けることに
なる。たとえローゼンシュタインを首謀者に仕立ててもマッケイブそ
の他の参加者も同罪である。

憲法改正第25条はDOJ/FBIの公務員が使うことができない。国会議員
のみがこれを行使できる。大統領を罷免する権限を持たない公務員が
大統領が不能者である証拠を作るのは明らかにクーデターである。ま
してやホワイトハウスでトランプとの会談を秘密録音するのは明らか
に違法であり国家転覆を図る大罪である。

ローゼンシュタインが秘密録音をすることはメディアが二カ月前に報
道したことでローゼンシュタインはこのニュースが発表されると直ち
にトランプと会見して「秘密録音は冗談で言ったことだ」と釈明した。
但し憲法改正第25条を行使することは冬至のニュースに報道されて
おらず、彼もトランプに釈明しなかった。

マッケイブは新書出版のあとMSNBCのChris Hays記者との対談で「コ
ーメイ長官が罷免された8日後にDOJ/FBIの数人が集まって相談した
際にローゼンシュタインが秘密録音をする提案をした」と述べた。つ
まりローゼンシュタインが首謀者と言うマッケイブの責任逃れである。

マッケイブは免職され裁判にかけられるはずだが裁判の前にFBIがト
ランプのロシアのスパイ嫌疑調査を正当化するためにこの本を書いた
のである。しかし自分の責任逃れのために仲間も同罪に引き込む結果
となったのも確かである。

この本、“The Threat”はマッケイブFBI長官がトランプのロシアのス
パイ嫌疑を調査した事を正当化することが出来なかった。しかし
DOJ/FBIのトップが共謀してトランプ大統領を罷免しようとしたこと
で「闇の帝国(Deep State)」が如何に巨大であるかが明らかになった。

トランプのロシア癒着の証拠は一つも見つかっていない。しかしトラ
ンプ陣営の5人以上が起訴された。その反面、「闇の帝国」のマッケイ
ブ、ローゼンシュタイン、コーメイ、クラッパー元NSA長官、ブレナ
ン元CIA長官などは一人も起訴されていない。ヒラリーは犯罪が18件
以上証明されたのに一度も起訴されていない。「闇の帝国」は巨大、し
かも健在である。

          

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パキスタン政界に衝撃
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成31年(2019年)2月28日(木曜日)弐
  通巻第6008号
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パキスタン政界に衝撃。中国はパキスタンの空爆報復を支持しない
  庇護者だった筈が、なぜインドの言い分も聞き分けるのか?
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インド、パキスタン国境が騒がしい。

もともとカシミールの領有をめぐって激しい国境紛争、軍事衝突を繰り返 してきたが、1999年以来、目立った動きはなかった。

インドに自爆テロをしかけ40人を殺害した過激派はパキススタンから出撃 したため、インド空軍は武装集団の拠点を空爆した。「テロリストの拠点 だったからだ」と主張するインドに対して、パキスタンは「民間人が多く 死傷した」と激怒した。死者は6名といわれる。

インド空軍機が再びパキスタン領空を侵犯した。すぐにパキスタンが撃墜 し、インド空軍のパイロットひとりを捕虜とした。

インドはミグ21,対抗したパキスタンはF16で迎撃した。

米国は「エスカレートするな」と両国に警告した。インド軍は、ただちに 次の軍事作戦を協議するため、モディ首相の自宅に軍幹部が深夜に集合し 緊急対策を協議した。

イムラン・カーン(パキスタン首相)は、「このままでは核戦争に突入す る。早急にデリーと話し合う」としたが、インドは無反応。パキスタンは 中国の介入を期待したが、北京は冷淡にも、「今次の軍事衝突に中国は介 入しない」としてパキスタンを弁護せず、イスラマバードに衝撃が走った。

パキスタンの有力紙『ザ・ドーン』は、4月に北京で開催予定の「BRI 国際フォーラムに、初回ボイコットしたインドを何としても参加させたい からだ」と報じた。

BIR国際フォーラムとは「一帯一路」(Belt Road  Initiative)の関係国130ヶ国を招いて、国際協力を要請する という習近平の目玉である。米国も同会議にはオブザーバーを派遣すると している。インドは、はじめからこのフォーラムを無視してきた経緯がある。

それにしてもインド vs パキスタンの軍事衝突。ベネズエラが燃え、 米朝首脳会議が開催されているときに、不適切なタイミングで起きたもの である。
          
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ニッキー・ヘイリー(前米国国連大使)が政治活動を再開
  「中国はアメリカにとって外国の最悪最大の脅威」だ
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「米国の経済、文化、国家安全保障」を強力に推進させるための助言グ ループを主導し、提言活動を開始したのは、あのニッキー・ヘイリー(前 国連大使)だ。

最初のパンチ。

「共産主義独裁の中国は、おそらく世界一の、人間性を踏みにじる悪魔的 存在である」

「米国民にとっての安全、利害、価値観に多子弟最大のそとからの脅威で ある」として、共和党保守派の「ロシア、イランと同列に論じる」趣きに 釘を刺した。

ヘイリー女史は2016年の大統領選挙でサウス・カロライナ州知事としての 著名度もあって、最初はマルコ・ルビオ上院議員を、ついでテッド・ク ルーズ上院議員を推薦し、トランプを終始批判し続けた。ところがトラン プの当選直後、最初の指名がニッキー・ヘイリー国連大使だった。電撃的 ショックをワシントンにもたらした。

これはレーガンが政敵だったブッシュ陣営からベーカーを首席補佐官に任 命したような人事上の椿事でもあった。

その後の2年間、ヘイリーは、「アメリカ・フォースト」を掲げるトラン プのナショナリズムに基づく外交を着実に推進し、中国とロシアを批判 し、国連人権委員会からは脱退し、米国の国連分担金を3億ドル弱も削減 し、それでいて「この2年間、国連は変貌した。米国の主張への理解が増 えた」と自画自賛した。

ヘイリーはインド系アメリカ人女性として、初の国連大使であり、そのタ カ派発言に世界は注目した。

国連大使辞任の理由を「休暇を取りたい」などとしたのは下手な芝居で あって、誰も信じておらず、ホワイトハウスの権力闘争が絡んだ。とくに クシュナー・イバンカ夫妻との確執が伝えられた。

さて、彼女が助言集団を形成し、政治発言を再開した背景は何か?

ヘイリーは明らかに2024年の大統領選挙を視座に入れている。その政治 キャリアから言っても、発言記録からみても、資格は十分。今後の仕事 は、様々な政治的機会を利用してつねに提言をし続けながら著名度を保ち つつ、共和党内での地歩を磐石にすることにある。

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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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―「劣等な民族が自滅して行くのは是非もないこつたよ」東京高商(5)
  東京高等商業學校東亞倶樂部『中華三千哩』(大阪屋號書店 大正9年)

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折から起こる反日運動の背景を、若者は考えた。

たとえば上海租界の「義勇隊などの御厄介になるのは日本人が一番多い癖 に志願者は一人もないそう」であり、フランス租界にあるフランス経営の 公園に「休日など行つて見たら、日本人が大部分を占領してゐ」たり、軽 快な服装をした西洋人親子が楽しんでいる中に、その輪に加わることなく 「汚れた着物を着流して時代後れの深ゴムの靴、眞?い3年越しの麥藁帽 を阿彌陀に被つて腰には烟草入れを下げてゐ」たり――上海在留日本人の姿 は「外人のそれと比較して何たる對照だらう」。

極め付きは蘇州で街頭での体験になる。彼ら日本人学生が「30人も騒 が しく鈴を鳴してこの狹い道を通つて行くと、兩方の家の内から皆んなが 飛出して來て、色?く陽に焦げけた東夷の學生が馬上顧眄の豪傑振り乍 ら、しかも、落馬せんとし乍ら往くのを眺めた。この大勢は少なからず蘇 州の排日氣勢を昂めたことゝと思うはれる」。

 日本人自らの無自覚な振る舞いもまた「排日氣勢を昂めた」と考える 「若者の感覚」と、「序」に記された「拝日問題で注意すべき一事は」、 「歐米の商品を扱つて居るものが故意にやる外は支那で相當名のある實業 家や多數商人は一般に日貨排斥の意志を眞から持つては居ないので唯學生 の危害を惧れるのと民衆への氣兼から形式的にやつて居る仕事である云ふ 點である」と指摘する「大人の思考」の間の落差は、いったい何に起因す るのか。

それが世代の、人生経験の、あるいは世間知の違いに直接的に結びつい ているとも思えない。

この時から現在にまで続く中国における排日、あるいは反日の動きを振り 返るなら、「(上海共同租界の)義勇隊などの御厄介になるのは日本人が 一番多い癖に志願者は一人もない」ことへの疑問、大正時代の若者が上海 の公園で感じたであろう気恥ずかしさ、「東夷の學生」が蘇州の街路で皮 膚感覚で直感したであろう一種の蔑みの視線は、やはり軽視すべきではな かったのではないか。

 この時の義憤が「政治家や實業家は恕す可しと雖も、考のあると云はれ る學者までが浮れて日支親善なぞと眞面目くさつてるのは言語同斷だ」と の思いに繋がっているように思えて仕方がないのだが。

 もう少し、日本人の振る舞いに対する若者の考えを追ってみたい。そ こで、漢口の租界を訪ねた際の感想を見ておくことにする。

「何處でもそうだが、殊に支那などに於ては、未だ一般に外國の事情に通 ぜぬので、多くは服装の良否や、建物の大小美醜などで、其國の優秀貧富 などを、きめる傾向があるから、列強と相對峙して、威勢を張り、發展を 策するには、どうしても此點に於て、大なる注意を要し、居留地には他國 に劣らぬ設備をなすと共に」、在留者であれ旅行者であれ服装から立ち居 振る舞いにいたるまで、やはり「他國人に劣らぬだけの心掛けが大切」 だ。それというのも、「既に體格に於て、歐米人は無論、支那人よりも見 劣りのする我々が、服装でも醜かつたらば、彼等の蔑視を受けるのは當然 である」からだ。

言わば見た目がイチバン。

嘗められたら最後で、トコトン嘗められてしまう。

ところが「昨夏來遊した向陵の健兒」――東大の前身である第一高等学校の 学生――は、やってはイケナイことをヤッチまった。日本では超エリートで あればこそ許される弊衣破帽というバンカラスタイルも、外地では一切通 用しない。

だが、彼らは「矢張内地そのまゝの蠻から姿でやつて來たので、事情を知 らぬ外人や支那人から、日本で最も有名な學校の生徒があの姿では、と少 なからぬ侮蔑や指彈を受けて、在留邦人も大いに迷惑した」。
「之れは尤もの事で日本人たるものゝの深く省みねばならぬ事柄である」 ことは確かだ。《QED》

      
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読者の声 READERS‘ OPINIONS どくしゃのこえ 読
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(読者の声1) 弐回目の「米朝首脳会談」がベトナムの首都、ハノイで開 催され、トランプがJW・マリオット・ホテルに、金正恩がメリア・ホテ ルにそれぞれ宿泊し、最初の夕食会の場所はメトロ・ホテルだったとか、 この配置に特別な意味があるのではと思うのですが、如何でしょう(JJ セブン)


(宮崎正弘のコメント)JW・マリオットはハノイの新開地にできた米国 系の豪華ホテル。安心して泊まれるからでしょうが、都心までやや距離が あります。会場のメトロは老舗名門、フランス時代からのクラシカルな建 物で、ミッテランンもシラクも、そしてブッシュも宿泊したところ。

一方、金正恩の宿舎となったメリア・ホテルも、旧都心に位置し、名門 高級ホテルなれど、老朽化がいわれておりました。ホテルの予約事情やら 警備事情やらが主な要因であって、ほかに特別な意味があるとは思えませ んが。

それより注目は長い長い列車の旅をして、北の新義州から鴨緑江を渡 り、丹東、瀋陽、天津、武漢、長沙からベトナムへ入った道のりを辿る と、金正恩は、こんかい北京に立ち寄っていないという事実が浮かびます。
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(読者の声2)先般、ヴィルピッタ・ロマノ先生の講演を伺いましたが、 氏はその中で「ハンチントンの『文明の衝突』は、初版で、「日本が東側 に属するだろう」と致命的な過ちをしでかし、再版以降は、この箇所を訂 正したそうです。
 先生はこの本を、どのように評価されますか? (HU生、戸田市)


(宮崎正弘のコメント)初版の誤謬については知りませんでした。だいい ち未読です。いま集英社文庫にはいっているようですが、手に取る気力が 起きない。

理由はアーノルド・トインビーの大作『歴史の研究』がすでにあるから で、この亜流という捉え方で良いのではないかと思います。

ハンチントンの『文明の衝突』の基本的な間違いは、「中国の儒教文明と イスラム圏が協力する。西洋文明は衰退する」という説で、とくに前者の 歴史観には疑問を抱かざるを得ないというところでしょう。

ついでに言えばフランシス・フクシマの『歴史の終わり』もつまらない本 でしたね。いまでは顧みる人も稀です。

日本ではまったく無視されてきたパット・ブキャナンやエド・ルトワック らの著作翻訳本が、日本で静かに読まれ始めている事実のほうが重要に思 えてなりません。
         

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トランプ「破恋」の背景に「焦り」
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         杉浦 正章

米朝両首脳が“誤算”競争

米朝首脳会談が事実上の物別れになった背景を探れば、米朝双方に誤算が 存在したことが分かる。とりわけ北朝鮮はトランプ頼りで“誤算の山”を築 いた実態が濃厚である。トランプは自らの「ロシア疑惑」から目をそらそ うとしたようだが、外交を性急に自らの保全に使うという馬脚が現れてし まったようだ。2020年の大統領選再選を意識しすぎた結果が裏目となって 出たのである。

まず北の最大の誤算は経済制裁の完全なる撤回を求めたことだろう。極め て高い要求をした背景には、どこから情報を得たのかアメリカが撤回に応 じるという情報と判断が存在していたようだ。金正恩は、寧辺(ニョン ビョン)、にある核施設を廃棄すれば、その見返りに制裁の全面解除が得 られるという判断だったのだ。

しかし、国務長官マイク・ポンペイオの判断は寧辺の核施設だけでは十分 ではないというものであり、かねてから大統領トランプに忠告していた。 ポンペイオ自身も「寧辺の核施設は重要だが、ミサイルや核弾頭などの兵 器システムが残る」と述べている。東倉里(トンチャリ)豊渓里(プンゲ リ)などにも核・ミサイル施設があるとみているのだ。

 米側が金正恩に示した見返りは?経済協力?平壌への連絡事務所の設置? 朝鮮戦争の終結宣言?経済制裁の緩和ーなどであった。しかし金正恩は象 徴的な終戦宣言ではなく、国連制裁の実質的な緩和、エネルギー、金融分 野での制裁解除などへと要求を膨らませた。これらの課題は7回に亘る実 務者協議でも溝が埋まらなかったものであり、首脳会談なら決着が可能と みた金正恩の判断は甘いと言わざるを得まい。

 北朝鮮が経済制裁の完全なる削除という極めて高いハードルを可能とみ たのは寧辺を取引材料に使えば、米国が応じるという判断があったよう だ。北朝鮮にとってもはや不要となった施設を高く売りつけようとしたの である。トランプが「金正恩氏が寧辺の核施設を廃棄すると言ったが、公 にしていない核施設を廃棄しない限り、非核化ではなく、核保有を認めた 上での核軍縮交渉になってしまう」と述べたのはもっともである。さすが のトランプも「その手は桑名」なのだ。

 核拡散防止条約(NPT)は1970年に締結され、アメリカ合衆国、ロ シア、イギリス、フランス、中華人民共和国の5か国以外の核兵器の保有 を禁止した条約である。北朝鮮は核兵器開発疑惑の指摘と査察要求に反発 して1993年に脱退を表明し、翌1994年にも国際原子力機関(IAEA)からの 脱退を表明したことで国連安保理が北朝鮮への制裁を検討する事態となっ た。その後、北朝鮮がNPTにとどまることで米朝が合意している。

しかし、北朝鮮はNPTなどどこ吹く風とばかりに既に核爆弾を30個保有し ているとみられており、もう核製造施設は事実上不要となっている。これ らの施設を廃棄したところで北が核保有国であるという、戦略的な位置づ けに変化は生じない。不要な施設を廃棄して、経済制裁が解除されれば金 正恩にとってこんなにプラスになることはないのだ。

しかし、世界の目は厳しい。こうした北の対応がますます、危険な国家と しての北の位置づけを確たるものにするのであって、北の孤立化は一層深 まるだけだ。

一方韓国の文在寅政権は米朝合意を前提に?ソウルでの南北首脳会談開催? 北への経済協力事業の開始ーなど意気込んでいたが、時期尚早であった。 独自に行えば韓国が極東において孤立するだけであり、当分無理であろう。

今回の交渉で目立ったのはトランプ外交の付け焼き刃的な手法である。ト ランプは金正恩と「恋に落ちた」と発言したが、恋した相手は、一枚上手 で、その結果は事実上の「破恋」としかいいようがない。相手からは制裁 の全面解除という不可能な要求を突きつけられては、恋に落ちるどころで はない。重要な外交課題に対してトランプの手法は「軽い」 のである。そ もそも非核化の交渉は10年がかりを覚悟すべきものであり、自らの手柄 を意識してはいけない。

           
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読 者 の 発 言
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◇◆◇写真映像情報網◇◆週刊AWACS 2019年3月3日◇◆◇◆◇

▼唸声一言/米朝交渉決裂と反日トーンダウン

今回の交渉決裂で損をしたのは北朝鮮、米国は痛くも痒くもありません。北朝鮮がトランプ大統領と言うか米国を読み間違えたことがその敗因です。これは韓国も同じです。北朝鮮の経済制裁が緩和され、韓国はさらに北朝鮮に前のめりになる筈でしたが、交渉決裂の急ブレーキが三一独立記念日の文大統領の演説にも影響を及ぼしました。煽るだけ煽った反日もトーンダウン、韓国人もあまりにも北朝鮮寄りになっている文大統領に対して危機感を感じ始めているのかもしれません。冷静に考えれば、日本を挑発し過ぎて、自分たちの首を絞めているのも分からない筈がありません。また、感情と雰囲気ですべての問題が解決できる訳もありません。少しはじっくりと考える時間ができたのではないでしょうか?このまま日本を挑発し叩き続けるのか?少しは譲歩する姿を見せるのか?自分の頭で考えていただきたいものです。まぁ、日本は韓国に対しての信頼も情熱もすっかり失ってしまいましたが・・・。

では、今週号をお楽しみください。

https://ameblo.jp/unarigoe/entry-12443996567.html

2019/3/3 唸声

 ◎文化と思考体系の違いが現れたのではないか:前田正晶

ここでは、私の得意とする「2国間の文化と思考体系の違い論」に基づい て考えて見たい。先ず言えることは「トランプ大統領も金正恩委員長も、 事前の打ち合わせをしていた実務者たちも(working groupとか言ってい た)今回のような重要にして非常に激しい討論となる国際的な交渉事には 未だ経験も少なく、不慣れではなかったか」と思っている。

私は嘗て我が国ではアメリカとの交渉が政治の場でもビジネスでも屡々決 裂に近い状態になるのを見て「あれでは目隠しをしてボクシングをやって いるのと同じ事で、相手が如何なる者たちかを全く認識せずして、自分た ちだけの固有の手法でお互いに交渉するのだから、良い結果を生まないの は当然だ」と評してきた。

この度のアメリカ合衆国対朝鮮人民民主主義共和国(DPRK)の首脳の会談 も上記の場合と似ているような気がするのだ。即ち、これまでに両国間に は国交もなければ人的や文化・文明的な交流もなかったのだし、両首脳も 言わば命を賭けて国の為と自分の為にギリギリの交渉をした経験もなかっ たようなので、相手の物の考え方や交渉術や出方等々のスカウティングが 不十分なままに、相互に自分の主張をぶつけ合ったのではないかと見ていた。

それだけに止まらず、言うまでもないことでDPRKは今や世界に数カ国しか ない共産主義国であり、金王朝3代目の当主である金正恩委員長は自らの 立場を守る為には側近だった叔父を粛清しただけではなく腹違いの兄をも 殺害している人物だということ。トランプ大統領はそういう事実をご存じ だったとは思うが、彼の作戦ではこういう相手に対してでも“fell in love with him”などとおだてて見せていた。私はこの作戦には疑問を抱か ざるを得なかったのだが。

私が採り上げたい次なる要点は「経験不足ではなかった」という問題だ。 トランプ大統領と金正恩委員長は昨年の6月に会っただけで今回が2度目の 顔合わせでは、お互いに相手の性格や性癖や物の考え方等々を何処まで把 握できていたかという疑問でもある。更に、トランプ政権下では熟練した 外交官が不足しているという説もある中で、会談に向けて周到な準備を整 えていたはずのworking groupも、何処まで熟練した交渉術と外交的手腕 があったかということ。

ここで些か我田引水だが、我がW社の事業部のことを振り返ってみよう。 副社長兼事業部長以下のテイームは日本市場の担当を十数年も続けてきた ので、日本市場の難しさを認識できていたし、アメリカ市場との違いも十 分に弁えていた。更に、私も彼らに「相互の文化の違いを認識せよ」と 言って「文化比較論」を解説してきた。そういう積み重ねがあったからこ そ、我が事業部は#1の対日サプライヤーの座を獲得できたし、90年代初期 にはW社自体がアメリカの企業の中では対日輸出でボーイングに次ぐ第2位 の会社となり得たのだった。

私はDPRKが対外国交渉にどれほど馴れているか、またはあのような重大な 会談でトランプ大統領を説得できるだけの対アメリカとの交渉の「ノーハ ウ」を心得ているかは知らない。だが、結果的には大統領と国務長官に“
walk“されてしまったではないか。そういう意味では、ポンペオ国務長官 もどれほどの「外交官」だったかという疑念も生じる。私には何となく CIA長官が対DPRKの交渉の場に出ておられるような気がしてならない。

なお、早稲田大学教授の中林美恵子氏は「アメリかではあの結果では成功 であったと看做されている。即ち、トランプ大統領は一部で懸念されたい たような譲歩をすることなく終わったのだから」と語っていた。


 ◎決裂は予想し得る範囲内の結末だった:前田正晶

既に「私は予想も予測もしないで結果が出るのを待つ」とは言って置いた が、結果的にはポンペオ国務長官も”walked away“か“walked out”と表現 して終わった。これは私が指摘してきた「アメリカのビジネスでは落とし 所を探るとか妥協するような交渉は絶対と言って良いほどしない」の通り だったと思う。即ち、声明文も何も署名しないとトランプ大統領が述べた のは、安倍総理が全面的に支持すると述べたような正しい決断だけではな く「これがアメリカ式交渉術であり、思考体系の表れだった」と思っている。

先ほどのニュースではDPRKの李外相が深夜の2時に記者会見を開いてトラ ンプ大統領が述べておられた「金正恩委員長が寧辺の施設破壊だけで制裁 の全面的解除を求めたので拒否した」ということを否定して見せた。これ とても、かの民族独特の話題のすり替えであり、私には韓国がレーダー照 射問題で次々と論点を変えてきたのと同じ手法であって「飽くまでも非は 先方にある」と言いたいだけだと思って聞いた。驚きでも何でもない ニュースだ。

私がこれまでの両首脳の会談の報道で少し腑に落ちない点があった。それ は、昨28日の夜のPrime Newsで元はNHKの手島隆一氏が提起していたこと で、トランプ大統領は安倍総理の意向を受けて1回目でも今回でも金正恩 委員長に拉致家族問題を解決しない限り日本との関係改善はないという趣 旨で語りかけて下さったそうだ。だが、話はそこまでで金委員長からの反 応にはトランプ氏も触れておられなかったし、それに関する報道も無かっ たのだ。

この件については、一部の専門家は「それは解決済み」とでも金委員長が 述べたので、それ以上の言及がないのだという見方をしていた。彼らは 「ここから先は何とかして機会を作ってでも安倍総理が直接に金正恩委員 長と会談することではないか」と指摘していたが、今更ながらのことで、 そういう方法で迫っていくことを当然考えて頂かねばなるまいと思うのだ が。この件も含めて今後のアメリカ対DPRK間の交渉の展開を深い興味と関 心を持って見守っていきたい。




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身 辺 雑 記
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3日の東京湾岸は曇天、やがて雨だろう。

2日の東京湾岸は快晴。散歩は爽快だった。


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