政治・経済

頂門の一針

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頂門の一針4887号  2018・12・8(土)

2018/12/08

                      
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わたなべ りやうじらうのメイ ル・マガジン「頂門の一針」4887号
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       2018(平成30)年  12月8日(土)



    トリプルプル選は危険な賭けー来年の政局:杉浦正章

           台湾の民主主義とは何か:Andy Chang

            大阪にある「自然の滝」:毛馬一三
                   

                      話 の 福 袋
                       反     響
                       身 辺 雑 記


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トリプルプル選は危険な賭けー来年の政局
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               杉浦 正章

失敗すれば自民党に大打撃
 五里霧中の改憲成否  来年の干支は己亥(つちのとい)で足元を固めて 次の段階を目指す年だが、国内政局は首相・安倍晋三の推進する「憲法改 正路線」をめぐって与野党が激突ムードを高めるだろう。

しかし改憲に関する国内の論議はまだ定まるに至っていない。なぜなら改 憲は戦後自民党が結党して以来の悲願だが、これまで「お題目」として唱 えても、国民の間に現実論として定着していないからだ。よほどの説得力 がない限り、改憲展望は五里霧中であり、失敗すれば自民党に大打撃とな ると言わざるを得まい。

自民党は自衛隊の根拠規定の明記など改憲四項目については今国会の提出 を断念したが、来年の通常国会には提示する方針であり、政府・与党がま なじりを決した対応ができるかどうかが成否を決める。  

既に実態から見れば、現行憲法第9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、 これを保持しない」などはいまや空文に等しい。なぜなら米軍事力評価機 関の「Global Firepower」一つとっても、自衛隊を世界7位と位置づけて おり、いざというときの工業力を計算に入れれば、日本の潜在的軍事力が もっと高位に入るのは常識だからだ。

もはや吉田茂の言う「戦力なき軍隊」の時代はとっくに終わり、野党が仏 壇の奥からはたきをかけて、改憲反対論を持ち出しても、説得力に欠ける 傾向を強めているのだ。

安倍首相は「自衛隊が違憲かも知れないという議論が生まれる余地をなく すべきと考える」と発言しているのは、保守派政治家としてイロハのイを 説いているにすぎない。

そのための改憲について安倍は「2020年を新憲法が施行される年にしたい」 と言い切り、期限まで区切っている。

憲法改正の手続きは、衆院は100人以上、参院は50人以上の賛成で改正原 案を国会に提出して始まる。その後、衆参両院の憲法審査会で審査し、そ れぞれの本会議で総議員の3分の2以上の賛成を得れば、憲法改正を発議で きる。発議後60〜180日以内に国民投票を実施し、有効投票総数の過半数 の賛成を得れば承認される。                

自民党保守派が現在を改憲の絶好のチャンスと判断するのは、衆参で3分 の2の改憲勢力を糾合し得ることから、来年の通常国会で改憲を発議し、 参院選挙と同時に国民投票にかけるという戦術があり得るからだ。

同党の一部には、参院だけの民意を問うのではなく、衆院の解散で衆院の 民意も問うべきだという“スジ論”が存在しており、そうなれば「衆院選・ 参院選・改憲国民投票」という「トリプル選挙」の可能性が浮上しても不 思議はない。
過去1980年と86年に行われた衆参同時選挙は与党自民党に有利に作用して いる。衆参の候補が補完し合う傾向が生じたからだ。これに改憲が加わっ ても与党有利は変わらないという判断が自民党内には存在する。

しかし、来年春は地方選挙が行われるが、地方議員らは自分の選挙が終わ れば、他人事の参院議員の選挙に身が入らない傾向が生じかねない。おま けに亥年の参院選挙は過去5回行われているが、なぜか自民党は1勝4敗 で不利な戦いを強いられている。

12年前の参院選に至っては過半数割れ の惨敗をきっしている。民主党代 表小沢一郎が、小泉政権下で自民党に見 捨てられたと感じた地方層に訴 える戦略を活用して07年の参議院選挙に勝 利、参院の多数を握って「ね じれ国会」をもたらした。  

自民党改憲案 は?自衛隊の根拠規定の明記?緊急事態対応条項?参院選の合 区解消?教育の 充実ーなどの項目となっており、保守層にとっては自衛隊 の根拠規定は悲 願とも言える。

来年の政治日程を見れば1月に通常国会召集、改憲案の提 示。4月に統 一地方選挙、予算成立後は参院選に向けて対決ムードが高ま る。5月1 日に新天皇即位、6月28,29日大阪でG20首脳会合。6月 か7月に参院選 挙、10月1日に消費税引き上げーなどとなっている。  

このうち与野党対決必死の改憲案発議は、戦後まれに見る保革対決の核 となり得るが、公明党が参院選前の発議に否定的なのは、「衆院議員の任 期半ばでの衆参同日選挙をやる以上は、必ず勝つ選挙でなくてはならな い」(党幹部)と言う現実政治上の判断があるからだ。  

確かに「同日 選先にあり」の政局判断は無理筋の部分があり、負けた場 合には政権を直 撃する要素となり得る。 己亥(つちのとい)で足元を固 めて次の段階を 目指すこととは、ほど遠い結果になりかねない。

安倍首相の任期はまだ3年弱 あり、政治も経済も安定状態に入ったよう な状況が続いている。これと 言った後継者も育っていないことから、場 合によっては中曽根康弘のケー スのように、総裁任期延長の可能性もな いわけではあるまい。あえてトリ プル選挙という危険な“賭け”に出る必 要は、よほどのことがないかぎりあ るまい。


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台湾の民主主義とは何か
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     Andy Chang

エドワード・ルトワックは民主化とは権力の分散であると言った。だ
が台湾は特別状況である。民進黨政権が台湾の敵である中国の手先機
関である国民党を温存した結果が今回の選挙の惨敗の原因である。

国民党は台湾の政党ではなく中国の台湾併呑の手先である。国民党を
残して現政権が現状維持を固持して政治が停頓したまま選挙に臨み、
民衆がダメな民進黨を捨てて国民党の復活に投票した結果、台湾併呑
の危機を迎えたのである。

民主主義、デモクラシーほど曖昧なものはない。人民に権力や言論自
由を与えても人民が民主を理性的に活用しなければ混乱を増すだけで
ある。民主とは何かを考えれば考えるほど定義ができない。

投票の自由は民衆主義の一環だが独裁国でも形式的な投票が出来るし、台 湾人民には投票権があっても今回の投票で四千件もの買票事件が発生し、
人民は民進黨政権に失望したから国民党に投票した結果、台湾滅亡の
危機を招いたのだ。国民党が台湾を滅亡させるという認識がないから
敵である国民党に投票する。台湾民主が未熟である証拠である。

アメリカの国会議員が台湾を訪問するとタイワン・デモクラシーを謳
歌して台湾人を喜ばす。これはお世辞だけでアメリカが台湾を守るの
とは違う。台湾人は台湾が民主国家で中国は独裁国だから統一は出来
ないという。ではもし中国が民主化すれば台湾は統一されるか。「台湾
は民主国家」と言うだけでは危険である。

最大の危険は人民も政治家も国民党が敵だとわかっていないことだ。
台湾と中国は人種、歴史的に古い関係があり、商売関係もあるし、外
省人と言う台湾に同化するのを拒んで中国を祖国とする人が15%も
いる。台湾は民主国家であると言えば外省人の自由言論も保証しなけ
ればならないという。敵に民主を与えてはならない。事情が複雑だか
ら統一意識が根強く、独立意識がなかなか普及しない、そして多くの
人民はどっちでもいい、戦争にならなければいいと思っている。

●台湾の国情分析

台湾の国情を政党政治、政治家の素質、人民の政治意識の三つの方面
から見てみよう。政治、政治家、人民である。

台湾は70年も国民党独裁だった。二年前に台湾人総統が台湾総統とな
り、民進黨が国会過半数を制して「完全執政」と凱歌を上げた。

とこ
ろが蔡英文総統は現状維持を主張して政治は停頓し、中国の外交は活
発で台湾と国交のあった国が23国から18国まで減少したのに蔡英文
は「台湾は民主国家である」と言うのみである。

中国の軍用機が台湾沿岸を回って示威飛行し、漁船が境界線を犯しても政 府は何もせず、あまつさえ国民党の政治家を閣僚に起用するなど、完全執 政とは程遠い状態を2年も続けてきた。

国民が最も期待していた司法正義と国民党の違法財産処理も有耶無耶で進 まない。国民党を温存したため改革が進まない。蔡英文の現状維持は独立 反対なのだ。

民進黨の完全執政なのに国会、司法部、軍部など改革が進まず、政治家は 自己の栄達と党派闘争に明け暮れ、民進黨議員の8割は中国に投資してい る、賄賂政治は相変わらず、こんな政権で政治が停頓し正義が通るはずが ない。

政府が軍備革新計画を立てても軍備購買で汚職が数件起きただけだった。 軍の訓練をなおざりにして士気は低迷し、国防意識は存在せず、新式装備 を買っても兵士の訓練を怠っているのが現状である。軍の上級幹部が外省 人で中国に機密を携えて亡命する事件も起きるし、海軍は今でも中国の青 幇が上層部全体を占めている。機密漏洩など日常茶飯事だし、機密をもっ て中国に逃亡する事件が絶えない。台湾の軍隊は台湾軍ではなく中国人の 軍隊である。

台湾人の政治意識は長年の国民党の中国教育から抜け出していない。
これは蔡英文政権の怠慢である。外省人及び最近入国した百万人の中
国人は国内に巣食っている「第五列」である。台湾人の中国投資(民
進黨の政治家を含む)が一般だから危機意識がない。

民進黨に失望したから二年だけで国民党に政権を渡すような台湾人は
亡国の危機意識が希薄である。アメリカが守ってくれるから中国の侵
略はないと思って現状に甘んじ、国防は政府と米国に任せ、独立運動
に無関心な人が大多数である。つまり人民と政治の乖離が明らかで、
人民は政府に頼り政府に不満だが政治家になったら自己の栄達と選挙
しか考えない。

●海外台湾人の努力と援助

国外に住む台湾人が台湾に帰って政治活動をすべきという人もいる。
これまでたくさんの海外台湾人が台湾に戻って政治に参加したが在台
政治家は海外から戻った人物が彼らの勢力と利権を犯すのを恐れて海
外人士の参加を歓迎しない。

台湾は既に民主国家であるとする李登輝、蔡英文など中華民国体制を
維持する体制内派と、中華民国を認めない体制外派、革命ではなく国
民投票で現政権を台湾国とする運動、台湾名義で国連加盟など、いろ
いろな主張があるが、台湾人民の賛同は少ないのが現状である。

●どうすべきか今後の台湾

中間選挙の結果8割の地方政治は国民党の手中に陥り台湾の民主化は
大きく後退し中国の併呑脅威が増した。これから2年間の間は中国と
地方政権の有形無形の侵略が進み、統一の危機が進むと同時に独立運
動を抑止する地方政権とそれを放置する中央政権が台湾人の独立願望
を妨げるようになるかもしれない。

海外台湾人に頼らず国民全体が亡国の危機を実感し対策を講じなけれ
ばならない。海外からの応援、アメリカの保護や援助に期待してはな
らない。中国の台湾併呑は台湾が第2の香港になるのではなく、台湾
は第二の新疆(東トルキスタン)のように百万人が逮捕され教育と称
する監獄入りとなる。

中国の台湾併呑は軍事攻撃だけではない。中国の経済発展は既に台湾
の経済を破綻させる能力を持っているし、すでに発動したかも知れな
い。商業と農業においても台湾を凌いでいる。台湾は全面的に中国依
存経済をストップし、アジア諸国との合作を発展すべきである。

国民党の地方政権と中国が合作して経済侵略を推進し、気が付いた時
には中国の一部となってしまう恐れがある。台湾人の危機意識、国民
党の政治介入を阻止する国民教育が現政権の急務である。


    
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大阪にある「自然の滝」
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     毛馬 一三

大阪のまち中に、自然の「滝」があることを知ってる?と訊いても、多分 大方の人は首を傾げるに違いない。ビルの屹立する大都会大阪のまち中 で、そんな湧き水が集まり、「滝」となって流れ落ちる光景など想像出来 ないからだろう。

紛れも無く私もその一人だった。が、つい先日知人が話の序でに教えてく れた上、そこに案内までしてくれたことがきっかけで、「大阪市内で唯一 の滝」の在りかを知ることが出来た。

その「滝」は、大阪市市内の夕陽が丘近郊にあった。「玉出の滝」といっ た。聖徳太子が建立した四天王寺前の大阪市営地下鉄「夕陽ヶ丘駅」を出 て谷町筋から西に向かうと、「天王寺七坂」や「安居神社」、「一心寺」 など、寺社や名所が点在する上町台地の歴史のまち、伶人町の中にある。

その天王寺七坂のひとつ、清水坂を登り、細い道を行くと清水寺に着く。 本堂の前を抜けて墓地に挟まれた石段にさしかかると、水音がかすかに耳 朶を打った。足早にそちらに向かうと、目指す「玉出の滝」に着いた。

「玉出の滝」は、「那智の滝(和歌山)や不動の滝山(岩手)」のように 山の頂上から滝壺めがけて怒涛のように流れ落ちる巨大な滝とはスケール が違う。

境内南側の崖から突き出した三つの石造樋から、水道水と同じ程度の量の 水がまとまって流れ落ちる、こじまりとした滝だ。

しかし5メートル下の石畳を打つ三筋の水の音は、大きな響きを伴い、そ の響きは人の心の奥底の隅々にまで行き渡る、いかにも「行場の滝」とい う感じだ。

知人によると、この「滝」には、落水で修行する常連の人がいるが、新年 には滝に打たれて、延命長寿などを祈願する人が訪れるという。

実は、この「玉出の滝」を見た瞬間、京都の清水寺にある「音羽の滝」と 瓜二つだと感じた。私の亡くなった母親のいとこの嫁ぎ先が京都清水寺の 皿坂にある清水焼の窯元だったので、そこに遊びに行った時見たのが、こ の「音羽の滝」だった。

案の定、この清水寺は京都の清水寺を、寛永17(1641)年に模して建立し た寺で、かつては京の清水にあるような懸造りの舞台も存在していたらしい。

さて、大阪唯一のこの「玉出の滝」は、近くにある四天王寺の金堂の下の 清竜池から湧き出る霊水が、ここまで流れてきて滝となっているという言 い伝えもあるところから、大阪の歴史の香りと地形の面白さを感じさせて くれる。

余談ながら、この「玉出の滝」の側に、冒頭に記した「安居天神」があ る。真田幸村の憤死の跡として知られている神社である。

大阪夏の陣で決戦を挑んだ西軍の真田幸村は、天王寺口(茶臼山付近)に 布陣した。徳川方の主力が天王寺方面に進出してくることを予測してのこ とである。

真田幸村の狙いは、家康の首を取り豊臣家を再興させる戦略だった。真田 隊は一丸となって突撃を開始、東軍の先鋒越前軍一万三千を撃破。ついに 家康の本陣営に突入。この真田陣の猛攻で、家康の旗本は大混乱に陥り、 ついに家康の馬印までが倒されたという。

馬印が倒されたのは、武田信玄に惨敗した三方ヶ原の戦い以来、2度目 だった。家康も本気で腹を切ろうとしらしいが、側近に制止され思い止ま る。家康が幾多の合戦で切腹の決断を迫られたのは、後にも先にも生涯で これが2度目である。

だが、真田隊も猛反撃に遭って劣勢となり、今度は家康が、総攻撃を命じ た。幸村の要請にも拘らず大阪城からの加勢は現れず、戦場で傷ついた幸 村は、ここ「安居天神」の中の樹木に腰を下ろして手当てをしているとこ ろを、越前軍の兵に槍で刺され、落命した。

こんな大都会のまちのまん中で、行場ともいうべき市内で唯一の「玉出の 滝」が、真田幸村の戦場の近くであったことなどと結びつけて思い馳せて いくと、この小さい滝の周辺は見て回るだけでも楽しい歴史が蘇ってく る。(了)


   
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強まる中国の脅威、必要な台湾人の団結
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            櫻井よしこ

米中貿易戦争が展開され、私たちは米国的自由と民主主義の世界を維持す るのか、それとも中国共産党的全体主義の世界に突入するのか、せめぎ合 いの中にある。米国が単なる経済的な損得の争いをはるかに超える、価値 観の戦いを意識して対中政策を強めるいま、台湾の持つ意味はこれまで以 上に大きい。

11月24日の地方選挙で台湾の与党、蔡英文総統が党主席を務める民進党が 大敗したことの意味は深刻だ。22の県及び市のうち、民進党は13の首長を 確保していたが、半分以下の6になった。人口の約7割を占める6大都市で も、民進党は4から2に半減した。総得票数は民進党が490万票にとどまっ たのに対し、国民党は610万票を取り、120万票の差をつけた。

24日夜、選挙結果を受けて記者団の前に現れた蔡氏は、いつものように地 味なパンツスーツに身を包み、メモに書かれたメッセージを読み上げた。

「努力不足で、支持者を失望させた」

蔡氏は大敗の責任をとって党主席を辞任したが、表情はかたく、質問も受 けずに退席した。

2016年1月の総統選挙で大勝利をおさめ、集った群衆に「台湾の新時代を 共に迎えよう!」と呼びかけたあの蔡氏が、なぜ、いま、大敗なのか。評 論家の金美齢氏は、台湾の有権者が台湾の置かれている立場を理解してい ないからだと批判する。

「2年前、台湾人は蔡英文に台湾の運命を担わせた。それは中国と対峙す るという意味で、非常にきつい仕事ですよ。それなのに、皆でつまらない ことを批判したのです。有権者が愚かですよ」

日本に住んでいると、台湾が中国の脅威にさらされていることは客観的に 見てとれる。脅威に打ち勝つために台湾人がしなければならないことも、 よく見える。それは、台湾自身の力をつけ、台湾人が一致団結して、国家 の危機に当たることだ。

台湾の本省人の政権を守り通さなければ、台湾の現状は守りきれない。外 省人、つまり国民党による政権奪取を許せば、前総統の馬英九氏のよう に、中国との統一に傾いていくだろう。従って、今回のような民進党の大 敗、国民党の大勝は、台湾の未来を思う立場からは、大変な衝撃なのである。

住民投票に疑いの目

台湾の人々はどんな未来を望んでいるのだろうか。地方選挙と同時に行わ れた10件の住民投票から幾つか大事なことが読みとれる。住民投票の対象 になったテーマのひとつは、「台湾」名義で東京五輪に参加を申請するこ とだった。

結果は、反対が577万票、賛成が476万票で、結局否決された。実は日台間 の水面下の話し合いの中で、東京五輪には、「台湾」名義で参加できるよ うに工夫が重ねられていた。国際オリンピック委員会の意向もあるため、 結果がどうなるかは必ずしも予想できないが、台湾に強い親近感を抱く日 本人としては、台湾人が望めば「チャイニーズ・タイペイ」ではなく「台 湾」名で五輪に参加できるようにしてあげたいと思うのは自然であろう。

だが、住民投票で否決されたいま、中国を刺激することを恐れている人々 が半分以上で、「台湾」名での参加の可能性はなくなった。それにして も、なぜ、このテーマが住民投票にかけられたのか。

もう一点、福島など原子力災害関連地域の食品輸入禁止措置を継続するか 否かも住民投票のテーマにされた。福島の食品は、米であろうと果物であ ろうと海産物であろうと、厳格な検査を受けて合格して初めて出荷とな る。福島の食品は世界一安全なのである。しかし、そのような厳しい検査 が実施されていることを、台湾の消費者は知らないだろう。

蔡氏自身は福島の食品の輸入解禁に前向きだったとの情報もある。ただ、 決断できずにいる内に、住民投票のテーマとされた。安全性についての情 報が伝えられない中で住民投票になれば、否定的な結果になるのは予想の 範囲内だ。輸入禁止続行への支持が779万票、反対は223万票、大差で否決 された。

台湾側に熱心に働きかけてきた日本人の気持ちは失望と落胆にとどまらな い。非科学的な結論に不満も高まる。日台関係を冷え込ませようと考える 勢力にとっては歓迎すべき結果であろう。

台湾では大陸中国からの情報工作要員が暗躍している。メディアやビジネ ス分野のみならず、軍にも工作員が浸透していると考えてよいだろう。彼 らは、台湾を日米両国から引き離すのに役立つと思われるすべての事をす るだろう。そう考えれば、住民投票にも疑いの目を向けてしまうのである。

外交でも中国の圧力

16年5月の総統就任から2年半、蔡氏は、内政において少なからぬ中国の妨 害を受けてきたが、外交でも中国の圧力に苦しんできた。

中国はひとつであると中台双方が1992年に認めたとする、いわゆる「92年 コンセンサス」を受け入れない蔡氏に、中国は猛烈な圧力をかけ続ける。 国際社会で台湾を国として認めてくれる国を、次から次に台湾との断交に 誘い、中国との国交樹立に向かわせた。蔡氏の総統就任以降、5か国が中 国の巨大援助を受けるなどして、台湾を見捨てた。今、台湾と国交を持つ 国は17を数えるだけだ。

台湾を国際的孤立に追い込むことで、中国は台湾人や台湾軍の士気を奪 い、中国への恐怖心を植え付ける。中国が得意とする心理戦だ。

こうした背景の下、中国は台湾侵攻を念頭に軍事力の構築に余念がない。 米国防総省は例年、「中国の軍事情勢」に関する年次報告書で中国と台湾 の戦力比較を行っているが、中台の軍事力の差は年ごとに拡大し続けている。

米国は、今年に入って、台湾旅行法を定め、国防権限法を成立させた。両 法を通じて、台湾への外交、軍事両面からの支援を明確に打ち出した。

日本にとってアジアの地図はどのように変化していきつつあるのか。民進 党が大敗したとはいえ、台湾人が簡単に国民党の政権復帰を許し中国へ傾 斜していくとは思えない。それでも、台湾の動揺と、その先の台湾有事は 十分にあり得ると見ておくべきだろう。

朝鮮半島もまた危うい。韓国はさらに迷走を続けると見ておかなければな らない。北朝鮮に従属する結果、大韓民国が消滅することさえ考えておか ねばならない。

台湾と朝鮮半島に予想される大変化に備えて外交、安全保障上の担保を確 保しておきたい。なんとしてでも力をつけることだ。トランプ大統領が NATO加盟国に要求するように防衛費をGDP比2%に引き上げ、自衛 隊の力を倍増する必要があるが、それは短期間では不可能だ。であればこ そ、憲法改正の気概を見せることが欠かせない。
『週刊新潮』 2018年12月6日号 日本ルネッサンス 第830回

            
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重 要 情 報
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身 辺 雑 記
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8日の東京湾岸は曇天。


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創刊日:2004-01-18  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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