政治・経済

頂門の一針

急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。

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頂門の一針4858 号  2018・11・9(金)

2018/11/09

                      
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 わたなべ りやうじらうのメイ ル・マガジン「頂門の一針」4858号
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       2018(平成30)年  11月9日(金)



      すごいトシヨリBOOK」だが・・(2/2):馬場伯明

            下院舞台に攻防段階へ突入:杉浦正章

     友好の中でも、中国に塩を送り過ぎるな:櫻井よしこ                           
                                                                                                 話 の 福 袋
                       反     響
                       身 辺 雑 記


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第4858号
                             発行周期 不定期(原則毎日発行)
             
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すごいトシヨリBOOK」だが・・(2/2)
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             馬場 伯明

(池内紀さんの著書「すごいトシヨリBOOK」の感想を1/2から続けます)

「10年以上、検査(健康診断や人間ドック)は受けていません。(血液検 査はしている)」とある。「調べれば何か出ます。そうやって、治療を始 めると際限なく治療が続いて、結局・・・入院したままでなくなる (101p)」。本気でそう思っているのだ。

これはおかしい。1泊2日数十万円の豪華な人間ドックでなくても、たとえ ば私が住む千葉市。がん検診(胃がん・大腸がん・肺がん・子宮がん・乳 がん)とその他検診(ピロリ菌・肝炎・前立腺がん・骨粗鬆症・歯周病) が毎年用意されている。しかも、費用は各500〜3000円だが70歳以上は無 料である。さらに、特定健康診断も毎年あり血液や尿検査など20数項目で これも70歳以上は無料。近くの病院や医院が指定されている。

池内さんは、そうひねくれず素直に検査を受け自分の健康状態を確かめた あと治療は自分で決めればいい(101p・195p)。「検査なんかしなくてい いじゃない(102p)」と他の老人を扇動しないでほしい。高位の知識人の 池内さんが何というバカを言っているのか。(高度な検査を密かにしてい るのか?と勘繰りたくなる)。

世間の人は毎年健診を受け早期発見により大問題になる前に治療する。10 年以上も拒否し健診を受けていないので、池内さんが病気で倒れたら、重 症の大問題になる恐れがある。奥様が救急車を呼び大病院に運ぶだろう。

わがままな池内さんのために治療の着手が遅れ、結果として日本の治療費 が余分にかかる可能性がある。「(本書が)なにかのヒントになれば、こ れ以上うれしいことはない」とあるが、「検査なんかしなくていいじゃな い」という逆ヒントは世間に対し大きな悪影響を及ぼす。

池内さんの終末の医療を考えてくれるかかりつけの町医者(立派なヤブ医 者!)はどこの誰だろうか(195p)。ご紹介願いたい。本書で連絡先を紹 介されたらよかったのに。

「老人は自立が大事だ(112p)」。賛成であり、そうありたい。しかし、 池内さん流の「自立」はどうか。TV・過去の友人などからの自立はまあい いが、家族・夫婦から自立(別行動)し、夫婦旅行も別となれば、その先 は「離婚」の終着に向かうことにならないか。ご夫婦の離婚の危機を憂う。

老いの楽しみの一つ「ホテルコレクション(142p)」。「いつ出来たか、 いつリニューアルしたか」を基準に「新しくて小ぶりなホテルがいい」 と。最適のホテルが急成長中のAPAだ。元谷外志雄代表から詳しく説明を 受けており責任を持って推薦する(内容は省略。HP等をご覧ください)。

「老年オリンピック」はいい発想だ。デッサン、将棋、ギターなど4年単 位で「仕掛ける」のは「日常の再生」に有効であろう。ここで「医学的に 見ても、人間の細胞は4年ごとに生まれて死んで常に細胞が再生していま す。・・・4年ぐらいすると全身が一巡して、4年前の細胞がなくなって、 新しい人間が誕生している」とある(146p)。

ちょっと待って!「4年で・・新しい人間」だと? 専門外であっても、 このようなあやふやなことを書いてはならない。私も医学・医療分野の専 門家ではないがそれが俗論であることは知っている。Webを見てもわかる (*2)。確認の上、次版での訂正を希望する。

(*2)「・・7(4)年毎に細胞が生まれ変わるというのはインターネット 上の与太話にすぎない(SciShow:Hank Green〈ハンク・グリーン〉)」
「60兆個(37兆個説も・・)の細胞は周期的に生まれ変わる。周期は部位 により異なる。神経細胞や心筋細胞は生涯更新されない(Wikipedia)」 各自お調べください。

 池内さんは39枚撮りの「写ルンです」を使っているという。同行のカメ ラマンが「いやあ、なんかうごかなくなっちゃって」と。「写ルンです」 で撮ったらほとんど変わらないと(79p・174p)。そのカメラマンの名誉 のために私は言う。「嘘だろう?彼はどこの誰だ?」と。大型カメラの故 障に備え予備のデジカメなどを用意しておくのはプロの初歩である。

「写ルンです」は(低位の)デジカメにさえ品質・価格・納期面で明らか に劣る。5000円のデジカメでも、ズーム・ワイド・動画・連写・各種のフ ラッシュ・消去などが自由自在。「写ルンです(39枚)」は一回きりだ。 本体購入価格998円、安めの「カメラのキタムラ」でも現像648円、プリン ト1391円(@39円)。DPEなしに写真を見ることもできない。

「写ルンです」から(孫らの)ラインに写真を送るには携帯やPCへの転送 (540円)が必要だ。不便で高費用のカメラを軽いだけでの理由で3つの リュックに1台ずつ常備するとは狂気の沙汰。世間の老人は「そんな(高 額な)贅沢はできない」と拒否するだろう。「すごいトシヨリ」でも不合 理な思い込みはダメ。デジカメかスマホにすぐ替えてください。

「(老人でも)批判の仕方は上手だし、弁も立つ。マイナスを数えること も鋭敏ですが、批判の基準がやっぱり古い。見当違いなことで批判してい る(当人はそれに気づかない)」とあった(51p)。読むうちに、いま文 章を書いている私(!)のような者を指しているように思われた。だが、 逆だと思う。この言葉はそっくりそのまま池内さんへお返ししたい。

「あとがき」で池内さんは「意図して譲らなかったことが二つある」と本 書に書かなかった2つをあげている(212p)。それは、
(1)暮らしを保障する蓄えや収入と健康、そのための生活設計。
(2)高齢者を待ち受けている危険、不便、不安・・・その安全対策。
池内さんはなぜ書かなかったのか?その理由は次のとおりである。
(1)は、「各人の知恵と工夫によるしかないからだ」と。
(2)は、「当人が、そんな世の中にした多数者の一人であるからだ」と。

一種の自己責任論である。(1)(2)ともに自身(池内さん)は自力で確 立済みである。出来ていない人はしょうがないということである。冷厳な 事実であるが、世間の人の大きな関心事は、リュックやカメラなどではな く、それを知りたいのに・・・。(本書では、この2つに触れないか、ま たは、せめて、このセリフを本書の冒頭で書いてほしかった)。

池内さんは、家族のうち両親と妻については触れているが、兄弟姉妹・子 供・孫・(曾孫)らについては書いていない。日本の少子高齢化を突破し ていくためには、「家族や多世代の共助・協同」が大きな課題になるとも 言われてきている。

池内さんは(1)(2)の重要な課題に触れず、老人の「自立」を唱え(離 婚?・死別?を経て)孤老へと走っているように思われる。私としては、 文学の分野で「すごい業績」があっても、このようなトシヨリ(老人)を 「すごいトシヨリ」とは呼べない。本書の表題はむしろ「ひどいトシヨリ BOOK」の方がしっくりするのではないか。

ところで、本書最後の行に「僕は、風のようにいなくなるといいな (209p)」とある。少しホッとした。私の思いと概ね同じだから。かつ て、本誌に「古稀からどう生きるのか?」を書いた。以下、引用を交えて 記述する。

ペルシャの数学者・天文学者・詩人のウマル・ハイヤーム(1048〜1131) の四行詩「ルバーイヤート」には深い無常観が流れている。一部を引用す る(「一日一言」桑原武夫編・岩波新書より)

若い時には わしもまじめに 
博士や聖者の所に よくいったものさ
あれやこれやの大げさな議論
だが、いつでも 入ったと同じ戸口から出てきた

かれらとともに、わしも知恵の種をまいた
自分の手を使って育てようともした
収穫といえば たったこれだけ
「わしは、水のように流れてきた。風のように吹きすぎて行く」

だれのどんな人生にも「明日は明日の(いい)風が吹く」ことがある。私 たちは今日が辛くても、明日を信じ、今日をぽつぽつ生き抜いて・・・、 流れ流れて、消えて行くのである。

晩年は認知症になられたらしいが、池内さんの伯父さん(町医者)の口癖 はドイツの文豪ゲーテ(Goethe)の「人生はされど麗し(Das Leben ist doch schön)」だったとあった(182p)。「されど」に含蓄がある。

では、古稀を通過したその果ての・・・私の臨終はどうなるのであろう。
ゲーテ(Goethe)は「もっと光を!(Mehr Licht!)」と言い残したらし い。おそらく、(ゴルフ好きの)私は、苦し紛れに「ううっ!・・・もっ と飛距離を!」と呻(うめ)くだろう(笑)。

これまでに、池内さんの著書はいくつか読んでいる。善意の人だと思う。 本書にあれこれ突っ込み、ケチをつけたが、他意はない。なお、池内さん には会ったことはない。

とりあえずの結論。これからの人生100年時代の到来に際し、池内さんに は、私たちの模範となる真の意味での「すごいトシヨリ」になっていただ きたいと思っている。(2018/11/7千葉市在住)


               
         
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下院舞台に攻防段階へ突入
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        杉浦 正章

唯我独尊政治が極東外交にも影

中間選挙の結果米国は、民主党が下院を奪還し、多数党が上院は共和党、 下院は民主党という「ねじれ議会」となった。この大統領と下院の多数派 が異なる政治状態は、戦後の議会ではレーガン政権、ブッシュ政権、オバ マ政権で生じている。

とりわけオバマ政権の2期目は、「決められない政治」で有名だが、トラ ンプも多かれ少なかれ「決められない」状況に落ち込むだろう。2年後の 大統領選は、奇跡の逆転でトランプ再選がないとは言えないが、その可能 性は低い。勢いづいた民主党が反トランプの攻勢をかけることは必定であ り、大統領弾劾の事態もあり得ないことではない。米国の政治は流動化の 傾向を強くする。

民主党にとっては8年ぶりの下院奪還であり、ねじれを利用してトランプ 政権への攻勢を強め、大統領の弾劾訴追も視野に入れるとみられる。その ための圧力は、法案の成立数となって現れるだろう。米議会における法案 成立数は毎年通常400〜500本で推移しているが、議会がねじれた政権では その数が著しく減少する。レーガンの成立率は6%、ブッシュ4%、オバ マ2%といった具合だ。

法案は通常、上下両院でそれぞれ同時期に審議され、内容が一本化されて 成立の運びとなる。民主党は今後ポイントとなる重要法案の成立を阻むも のとみられ、トランプは議会対策で苦境に陥る公算が強い。とりわけ下院 が主戦場となる。民主党の狙いは言うまでもなく2年後の大統領選挙でト ランプを引きずり下ろすことにある。2年間でトランプをボロボロにし て、再起不能にしようというのだ。

民主党はトランプの弱点を突く戦術を展開するものとみられる。弱点は山 ほどある。外交では北朝鮮の金正恩やロシアのプーチンとの親密ぶりばか りを露骨に誇示して、同盟国である日本やカナダをないがしろにして、高 関税をちらつかせる。

内政では元女優との不倫に口止め料を支払ったのが露呈したかとおもう と、女性やマイノリティに対する侮辱的な発言。議会が指摘する「嘘つき 政治」は日常茶飯事である。

よくこれで大統領職が務まると思えるほどの問題ばかりが山積している。 他国に対する制裁関税も、製造業が大不況で息も絶え絶えのラストベルト 地帯にこびを売るものにほかならない。トランプは国全体を見る視野よ り、自分への支持層だけを大切にしているかに見える。

「我々はグローバリズムを拒絶し、愛国主義に基づき行動する」という発 言は、国際協調路線とは決別しているかに見える。現実に環太平洋経済連 携協定(TPP)や、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱表明は、 釈迦も驚く唯我独尊ぶりだ。

この結果、米国民に分断傾向が生じている。国内に医療制度や移民問題を めぐって対立が生じているのだ。もともと共和党支持層は地方の有権者や 白人が多く、民主党は若者や、有色人種、女性が支持する傾向が強い。本 来なら複雑な社会形態を統合するのが米大統領の重要な役割だが、トラン プは分断が自らを利すると考えているかに見える。

よくこれで大統領が務まると思えるが、米国政治の懐は深く、弾劾などは よほどのことがない限り実現しそうもないのが実態だ。米国では大統領と 議会の多数派が異なることを分割政府(divided government)と言う。

米国の政治制度の特質は、大統領と議会の多数派が異なる分割政府の常態 化を前提として政治運営や立法活動が複雑な駆け引きの下に行われる。大 統領が利害調整を行はざるを得ない場面が過去の政権でも見られた。

その傾向が常態化するのであろう。さすがに心配なのかトランプはさっそ く「ねじれ」状態を踏まえ、「いまこそお互いが一緒にやるときだ」と べ、民主党に連携を呼びかけたが、ことは容易には進むまい。

トランプの政治姿勢が続く限り、西欧や日本などの同盟国の国民は心理的 な離反傾向を強めかねない。そうすれば喜ぶのはプーチンや習近平だけで あろう。トランプの対中対立路線が原因となる米中離反は、中国による対 日接近姿勢を強めており、国家主席習近平の来年の訪日など今後交流が強 まる傾向にある。

トランプの唯我独尊政治は、単に米国内にとどまらず、極東外交にも大き な影を落としているのだ。しかし大統領が誰であれ、日米関係は重要であ り、同盟関係を堅持し、通商関係の維持向上を図るべきであることは言う までもない。



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友好の中でも、中国に塩を送り過ぎるな
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             櫻井よしこ

「友好の中でも、中国に塩を送り過ぎるな」

米中新冷戦が進行する中で、対米関係で窮地に陥った中国との日中首脳会 談が10月26日に行われた。これまでの首脳会談では、およそいつも日本が 攻めこまれていた。今回は初めて日本が中国に注文をつけ得る立場で臨ん だ。安倍晋三首相は日本優位へと逆転したこの状況を巧く活用したと、評 価してよいだろう。

日中間には日本国の主権に関わる案件として尖閣諸島や東シナ海のガス田 問題等がある。日本の名誉に関わるものとして慰安婦問題をはじめとする 歴史問題がある。

安全保障及び経済問題として、米国共々膨大な被害を蒙っている最先端技 術や情報などの知的財産の窃盗問題がある。事実この問題ゆえに、米国は 中国に貿易戦争を仕掛けた。同盟国との協調という点からも、日本が中国 に厳しく言わなければならない立場だ。

産経新聞外信部次長の矢板明夫氏は、これらに加えて人権問題こそが最重 要案件だと指摘する。

「米国議会は共和・民主の超党派で、イスラム教徒のウイグル人100万人 以上が強制収容され、拷問や虐待で多くが死に追いやられている現状を指 摘し、中国政府の行為は人道に対する罪だと主張しています。安倍首相 も、ウイグル人に対する人権弾圧について習近平国家主席に抗議すべきで す。その前に8人の日本人に対する人権弾圧に抗議すべきです」

中国政府は日本人8人をスパイ容疑で逮捕しているが、どう見ても彼らが スパイであるとは思えない。百歩譲って、たとえスパイであったとして も、彼らは日本のために働いたのであるから、安倍首相は彼らの早期釈放 を中国側に求めるべきだと、矢板氏は強調する。

中国政府はこれまで何人もの日本人をスパイ容疑で逮捕してきたが、逮捕 された人々が本当にスパイであると納得できる十分な情報を日本側に提示 したことはない。「日本人スパイ」の摘発は政治的要素が大きいと指摘さ れているだけに、安倍首相は同件をまっ先に持ち出さなくてはならないと の指摘は正しい。

日中外交の重要な転換点

今回安倍首相は李克強首相との会談でウイグル人弾圧に関して、「中国国 内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と注文をつけ た。中国政府の血走った人権弾圧を明確に問題提起したことは、これまで の対中外交にはなかった。日中外交の重要な転換点となるだろう。

邦人8人の安全についても、習氏との会談で前向きの対応を求め、「中国 国内の法令に基づき適切に対処する」との言葉を引き出した。恐らく、早 期の解放が期待されるのではないか。

尖閣諸島問題については、中国公船が尖閣の排他的経済水域(EEZ)に 侵入し続けていることについて状況改善を要求した。

中国が海警局を設置して、尖閣諸島周辺海域への侵入を激化させたのは 2013年だ。今回の首脳会談は海警局の公船がわが国の海に侵入し始めて以 降、初めての公式訪問だ。この機会に何も言わなければ、中国の領海侵犯 を黙認することになる。首相が状況改善の要求をつきつけるのは当然なの だが、非常に大事なことだった。

首脳会談の発言は、その後の外交の基本となる。首相が指摘した件は今 後、日中間の議題となり続ける。とりわけ、習氏の来年の訪日は今後の日 中関係における重要事項だ。さまざまな条件が話し合われるとき、尖閣の 海の状況改善という日本の要求は、必ず取り上げられ続ける。中国側の無 謀、無法な侵入をその度に批判し続けることが大事だ。

知的財産権についても、安倍首相は習、李両氏に問題提起した。興味深 かったのは、知的財産権について更なる改善を図ることが重要だと安倍首 相が中国側に求めたその席で、安倍、李両首相が高齢化社会への対応につ いて大いに話が合ったという点だ。つまり、知的財産権の侵害という根本 的かつ最重要の厳しい問題を提起しても、日中首脳の対話が盛り上がっ た、波長が合ったということは評価してよいのではないか。

中国の少子高齢化は、日本よりもはるかに厳しい。わが国は高齢国家の最 先端を走っているが、国民皆保険も、年金制度や福祉制度も一応整えてい る。中国はこれらの準備が殆んど整わないまま、世界最大規模の少子高齢 化を最速で迎える。富裕層以外の中国人をざっと10億人とすると、彼らの 老後は真に厳しく惨めなものとなると予測され、大国中国の土台を蝕む要 因となる。

中国経済の舵取り役である李氏が大いに参考にしたいのが日本の事例であ るに違いない。そして、多くの人は忘れているかもしれないが、安倍首相 はもともと厚生族だ。社会保障や年金制度について恐らく誰よりも詳し い。その安倍首相の話に、習氏よりずっと合理的な思考の持ち主だと言わ れる李氏は、熱心に耳を傾けたに違いない。両首脳の話が弾んだのは、今 後の日中関係に一筋の明るい光を投げかけている。

米国はどう受けとめるか

他方、懸念すべきは一帯一路への日本の協力である。一帯一路は「第三国 民間経済協力」と名前を変えて登場し、日本の企業各社がコミットしたか に見える。

日中双方の企業が共同で第三国にインフラ投資をするという覚書が52件も 交わされ、その合計金額は180億ドル(約2兆160億円)と報じられた。さ らに、安倍首相は3兆円をこえる大規模通貨スワップ協定を結んでしまった。

3.1兆ドル(約348兆円)の外貨を保有するといいながらも、対外負債を引 くと中国の外貨準備は実質マイナスだ(『産経新聞』10月26日、田村秀男 氏)。

スワップ協定が実際に発動されるような事態とは、中国経済が潰滅状態に 陥るということで、スワップ協定は政治的な意味合いが強いものの、習氏 は日本の姿勢を心強く思うだろう。片や中国と冷戦を戦い、中国の力を殺 ぎたいと願う米国はどう受けとめるか。日本にとって米国は最重要の国だ けに、米国への事前事後の説明とその理解が欠かせない。

新冷戦の中での日本の生き残りの必須条件は、同盟国であり価値観を同じ くする米国との関係を緊密に保つことだ。他方、中国は共産党が潰れない 限り恐らく本質的には変わらない。日本の路線とも決して交わることはな い。だからこそ、中国とは必要な関係は維持しつつも、彼らに塩を送り過 ぎないことだ。

日本も米国も、旧ソ連でさえ、中国が演じ続けた「か弱い存在の振り」を 信じて中国を援助してきた。だが彼らは十分に自力をつければ、助けてく れた国に対しても牙を剥く。安倍首相と日本への厳しい非難から笑顔へと 急転換した中国の思惑は明らかだ。彼らの笑顔はうすい表面の皮一枚のも のと心得て、日本は戦略を読み違えてはならない。中国への過度の肩入れ は国益を損なう。
『週刊新潮』 2018年11月8日号 日本ルネッサンス 第826回


           
                      
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重 要 情 報
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 ◎トランプ政権1年10ヶ月の纏めだった:前田正晶

既に述べたことだが、1972年夏にアメリカの会社に転じてから46年も経っ てしまったが、今回ほど我が国のメディアがアメリカの中間選挙とその結 果、更にはここから先に如何なる事態になるかまでを、多くの専門家を招 いて報じてくれたのは初めてだったと思う。大体からして、リタイアする までの22年半の間でも、中間選挙の運動があったはずの頃アメリカにいて も、そうなっているとは全く気付いていなかったし、我が国でも採り上げ て騒ぐことはなかった。今回は無理矢理にカタカナ語で表現すれば「エ ポックメイキング」辺りとなるかも知れない。

日から何処の局にチャンネルを合わせても選挙の結果のことばかりで、数 多くの専門家、ジャーナリスト、大学教授の方々がご意見を聞かせて下 さっていた。流石にご専門だけのことがあると思って拝聴(拝視?)して きた。色々な見方や観測や観察と今後の予測と予見があるものだとは良く 解った。だが、それらを私流に一気に纏めてみれば、「トランプ政権下の
1年10ヶ月の総括」であった気がするのだ。

トランプ大統領の演説会場には“Promises made”というポスターというの か看板が出ていたが、確かにトランプ大統領は無理筋であろうと何だろう と、公約を次から次へと実行して行かれたし、ラストベルトというかプー アホワイト以下のアメリカ人たちを喜ばせるような手を打って行かれた。

その間のマスコミとの対立も前例がない激しさで、昨日の開票後の記者会 見でCNNの記者を罵った辺りの迫力は、それこそ下卑た言い方で申し訳な いが「半端ない」凄まじさだった。このようにメデイアの好きと嫌いが明 快なので、fakenewsの発信元には特に手厳しいのだ。

正直に感想を言えば、一国の大統領たる者が言われることかとすら感じさ せられた。それでも彼の熱心な支持者が離れていかないだろうと思わせる ところが凄いと思った。私に言わせて貰えば、あれがトランプ大統領のド ナルド・トランプ氏たるところなのである。

別な見方をすれば、トランプ大統領はアメリカ人の思考体系と判断の基準 である「二進法」を厳格に守っておられ、常に「やるか、やらないのか」 か「実行するか、しないのか」の判断が速いのである。ほとんどの場合 「躊躇せずに実行される」のである。その辺りの決断は見ていて気持ちが 良くなるほど果断である。やると決めたら即実行に移されてきた。

であるから、前任者のオバマ大統領の実績は予定通りなのだろうが全て破 壊されてきたし、如何なる国際的協定でも何でも「アメリカファースト」 にそぐわないとなれば蹴散らして行かれた。金正恩委員長と会うと決めら れたら「あれよあれよ」と言う間もなく実行された。

中国がアメリカの多額な貿易赤字の最大の元凶で怪しからんとなれば、直 ちに高率の関税を賦課して貿易戦争に入って行かれた。中国を叩き潰すま でやるだろうとの観測もあるほどだ。更には、我が国も関税の例外たり得 ないという姿勢まで示された。イランとの同盟からの脱退も周囲に与える 影響等を何処まで配慮されたかは不明だが、直ちに実行された。

アメリカの法律に照らせば疑義があるという報道があっても躊躇すること なく、南アメリカから北上してきつつある移民のキャラバン(という言葉 で表現されたが)に対して軍隊を派遣して入国させないという厳しい姿勢 を見せられた。移民に悩まされている州やその関係者は大歓迎だろうと 思って見ている。このように即断即決と独断専行で「アメリカファース ト」と「アメリカを再び偉大に」の実践に励まれる一方で、多くの“
job”(「雇用」と訳すのは誤りだ)を創出させて岩盤の支持層を喜ばせた。

専門家の解説を俟つまでもないが、上院で過半数を抑えられたのは、仮令 マスコミが採り上げる多くのスキャンダル等による弾劾裁判が起きても阻 止できると予め読んでおられたのだくらいは私にも解る。即ち、案外緻密 に中間選挙対策を就任直後から立ててこられたのではないかとすら思わせ てくれる。思い付きか乱暴のようにすら見えた大統領令の発令も、2期目 の選挙対策だったかも知れないと疑いたくなる。早稲田大学の中林教授は 就任直後に2期目の立候補の届け出を終えておられたと指摘された。

振り返ってみれば、「アメリカファースト」と「アメリカを再び偉大に」 の大衆に解りやすいスローガンの下に、本当にアメリカの為の強引とも思 える政策を次から次へと打ち出して、支持者を喜ばせながらその数を着々 と増やして中間と2020年の選挙対策を打ってこられてと思えば、より分り やすいかと思っている。トランプ大統領がアメリカ史上最高の大統領にな られるか否かは全く解らないが、少なくとも私が知る限り最も異色で個性 豊かな大統領である事は既に間違いないと思う。


 ◎「悪質タックル」が推薦されていたとは:前田正晶

先ずはテレビ局には「何々がノミネート」という表現をするのは辞めろと 言っておくことから始めよう。ノミネートされたのは受け身だから、その まま英語にすれば“〜was nominated.”となるべきところだから。文科省等 が英語教育がどうのと言っている時代だから、日本語でもキチンと英語の 文法に従った言い方をする方が良いだろう。その前に何で「ノミネート」 とカタカナ語を使う必要があるのかとも言っておきたい。「〜がノミネー トされました」と言えば未だ許してやれるがね。

ところで流行語大賞の候補に「悪質タックル」が入っていたのには驚い た。当時の内田監督と井上コーチは最後まで否定したが、一部員という選 手が一存で勝手にあのようなプレーをする訳がないのだが、マスコミは フットボールという競技を承知しているはずなのにも拘わらず、とうとう 最後(になっているのかな?)まで「悪質タックル」で押し通して、日大 フェニックスを悪者の権化の如くに扱ってしまった。長年のフェニックス 支持者としては甚だ遺憾である。

あれはフットボールのファンとして言えば「試合中の一つの『プレー』で はあって、タックルに行った訳ではない」としか解釈できないのだ。その 一事だけを捉えて、フェニックス全体が悪意ある乱暴な集団の如くに報じ た姿勢には、正直なことを言えば納得できない。

だが、あのプレー自体は決して良い性質ではなく、あれをやらせら監督と コーチには重大な責任があるのは間違いないと思う。元々反則が少なく綺 麗な試合態度であるフェニックスの歴史に汚点を付けたのは残念至極だ し、遺憾千万である。

日大フェニックスは既に学連によって今季の出場を停止されて十分に制裁 されているのにも拘わらず、流行語大賞にまで推されたとは支持者である 私には一寸した驚きだった。あのような扱いで一時は連日報道されていた のでは、フェニックスと日本大学本体も大いに不利な状態に追い込まれた し、(アメリカン)フットボールそのものが世間に与えた印象も決して好 ましくなかっただろうと、未だに非常に残念だと思っている。

今シーズンは関東大学1部リーグの戦績さえ見る気がしないし、事実見て もいない。言うなれば「フェニックスが出ないリーグ戦なんて・・・」と いうところだ。


 ◎入管法改正と外国人労働者受け入れの考察:前田正晶

安倍総理とその内閣のこの方針には当然だが野党の反対が多い。

かく申す私も反対している。それはプラスとマイナスの面を比較すると、 マイナスの面の方が多く見込まれてしまうからだ。そのマイナス面は毎月 「新宿区の人口」を論じて指摘して来ている。政府も関係官庁も霞ヶ関か らそう遠くないここ新宿区の現状すら見ていないと思えるから言うのだ。 この街を一歩でも歩けば、「ここが日本か、東京の一部か」と疑いたくな るだろう。私はこの界隈に溢れる外国人の中には合法的に招き入れた者で はない連中が無数にいると確信している。

その上に今度は政府が労働力不足解消の手段として招き入れようというの だ。大量に外国人を招いて何処に住まわせようとするのか。雇う企業に任 せるのか。もしも、外国人専用の宿舎でも造って受け入れようとでもすれ ば、自宅通勤をしている日本人社員は差別されたことになりはしないか。

安倍総理は外国からの労働力導入にご執心だが、マイナス面をご承知の上 で拘っておられるのだろうと思うが、私は疑問に思う。事実、既に技能実 習生からだけでも、数万人が行方不明になっていると言うではないか。

ところで、安倍総理に対する私の評価だが、「この世には100%完璧など という人などいる訳がない。彼が史上最高の総理大臣か否かは歴史が決め ることだろうが、現状求め得る最上の選択である事は間違いない」である。

それは、安倍総理にしたところで、第2次内閣発足以降に「疑問だな」と 思わせた施策も確実にあったと言えると思うから言うのだ。現に、アベノ ミクスによるデフレからの脱出などは、未だ道半ばに止まっているのでは ないか。

外国人労働者受け入れ策もここ新宿に住む私が憂い、マスコミと野党が指 摘するような危険な要素を含んでいるのも間違いないだろう。私も反対し ている理由はここ東京都新宿区百人町界隈の外国人の跳梁跋扈の惨状を毎 日見ているからだ。他国からの労働者を含めて移民の受け入れにはヨー ロッパの例を見ても明らかで、事ほど左様に危険な問題が多いのも確か だ。だが、百歩譲ったことを言えば、「実際にやってみて如何なる結果が 出たか」で判断すべきではないのかとも考えている。*

だが、私はその前に職の選り好みをしたり、「自分がやりたいことではな かった」などと甘ったれたことを言って直ぐに辞めてしまうような若者ど もを改心させる努力も必要なのではないかと考えている。また、色々な悪 条件があるだろうが、例えば介護士のような職業の所得を引き上げる事な ども考慮すべきだろうと思っている。現に、先月身内の者が入居した介護 付老人ホームを検索すると「空室あり」とあった。こういう例は要員の供 給不足による者だと言われているではないか。

だからと言って、言葉も通じない外国人を招致して依存しようとは、私に は余り納得できない。暴論かも知れないが、新宿区内には50を超す日本語 学校があると聞くが、そこには何の為か知らぬが日本語を学んでいる無数 の中国人を主体とするアジア系が通っている。そういう連中をリクルート すれば良いじゃないかと思う事もある。彼らは合法的に週28時間働いても 良いヴィザを持っているではないか

 ◎〇¥池内紀の『消えた国 追われた人々――東プロシアの旅』(みすず書房、2013年)はおもしろい本です。(まこと)




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身 辺 雑 記
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9日の東京湾岸は曇天、午後には雨だろう。

8日の東京湾岸は好天に恵まれ、爽快な散歩ができた。都立猿江恩賜公園 では銀杏の葉が全く黄色に色づいたがまだ散らない。

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創刊日:2004-01-18  
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