政治・経済

頂門の一針

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頂門の一針4713 号  2018・6・17(日)

2018/06/17

                            
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わたなべ りやうじらうのメイ ル・マガジン「頂門の一針」4713号
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      2018(平成30)年6月17日(日)



               映画「万引き家族」:馬場伯明

           中国との危ないデータシェア:宮崎正弘
      
      米国の真の相手は、北を支える中国だ:櫻井よしこ
                 
                      話 の 福 袋
                       反     響
                       身 辺 雑 記


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第4713号
                             発行周期 不定期(原則毎日発行)
             
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映画「万引き家族」
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    馬場 伯明

映画「万引き家族」に賞賛の声が巷に溢れている。第71回カンヌ国際映画 祭で最高賞のパルムドールを受賞したのだ。とは言え、中身を知らないこ とにはモノが言えない。やはり、観たいな。

特別公開6.3(日)の朝一番、千葉市の「京成ローザ」で観た。満員だっ た。最近の映画館はガラガラが当たり前なので、館内には異様な雰囲気が 漂っていた。子供の昔にもどったかのようなわくわく感があった。

「Film Marks」より「あらすじ」を引用・転載する。

《高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋 に、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太 (城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)の4人が転がり込んで暮らして いる。彼らの目当ては、この古い家の持ち主である初枝(樹木希林)の年 金である。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。

社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互 いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震 えていた幼い女の子、ゆり(佐々木みゆ)を見かねた治が家に連れて帰る。

(実親の虐待で)体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として 育てることにする。(狭い家で)「家族」は幸せに暮らしていた。しか し、ある事件をきっかけに、「家族」はバラバラに引き裂かれ、それぞれ が抱えていた秘密(過去)が明らかになっていく・・》(引用終わり)。

再び言う。賞賛の声が巷に溢れている。映画公式HPより抜粋・紹介する。

「ヒトは身を寄せ合う、世間から外れても、法に触れても、いのちの自然 に逆らわず、GDPなどどこ吹く風で(谷川俊太郎 詩人)」。「家族・・・ ほんとのつながりって、私にとってはなに?どこにある?とつきつけられ た(有働由美子 キャスター)」。

「たとえかりそめでも、ここに肩を寄せ合った人々の瞳には、真実の光が ともっている(小川洋子 作家)」。「映画を見終わって、すべての登場 人物の瞳の奥に、天からぶら下がる蜘蛛の糸のようなもの、「希望の光」 が見えた(松本隆 作詞家)」

斜め後ろからの私の感想をいくつか述べる。

(1)彼らは「万引き家族」である。しかし、大量には盗らない。生活に 必要な分だけ盗る。良心的な万引き野郎である(笑)。貧しい食卓だが彼 らには笑い声が絶えない。(実親の虐待で)体中傷だらけの少女、ゆり (みゆ)は全身がこわばっていた。しかし、この家族の中で彼女の心は溶 け、あたたかい涙が頬を伝った。(大勢でこういう食事をしていたなあ。 家族っていいな)。

(2)名優二人。夫婦の会話はすぐれた掛け合い漫才のようだ。テンポが いい。ある昼間、夫婦は言葉のじゃれあいから・・・あらら、SEXになっ た。慣れたもんだ。安藤サクラ(妻)の豊かな太腿がフランキー(夫)の 小ぶりの尻の動きと好対照だった。急に誰かが玄関に、あわてて着衣、何 食わぬ顔でニヤリ。仲がいい。夫婦はこうでありたい。

(3)治(フランキー)が祥太(城)に万引きの極意を教える。「あせら ずに店員が減るのをずっと待つのがコツなんだ」と。幼いゆり(みゆ)は これから万引きを「学ぶ」のだろうか。しかし、祥太はしだいに成長し 「万引き」稼業に疑問を感じ始める。家族はお互いが突っかい棒である。 一人ひとりが微妙に支え合っている。そのバランスがどこで崩れてしまう のか、それとも、持ち直すのか。観客はまったく気が抜けない。

(4)映画「万引き家族」には、現代の日本社会の底辺の「問題点」が凝 縮されているというか、「てんこ盛り」である。万引き(!)はもちろ ん、死去老親の年金詐取、親による幼児虐待、風俗産業、非正規労働、派 遣社員、日雇い、無戸籍、独居老人、貧困・・・。その中で、是枝監督は 家族を表現する。

この映画は最高賞のパルムドールを受賞したのに、政府は、日本社会の底 辺の「問題点」を気にしたのか、無条件にベタ誉めはしなかったようだ。 映画だから国政の責任は問われない。余裕を持って誉めたらいいと思う。

是枝裕和監督は、いろいろな家族を題材に「家族を超えた人間の絆」を描 いてきた。形骸化しているともいわれる現代の家族へ逆説的に警鐘を鳴ら す。この映画のキャッチコピーである「盗んだのは絆でした」も、けっこ ういいな。

街角でリリー・フランキーのインタビュー記事を読んだ(The Big ISSUE vol.336 2018.6.1「スペシャルインタビュー」飯島裕子)。家族とは、 絆とは、幸せとは何だろうか。2頁の最後に彼がつぶやく。

「家族ってとても煩わしいものですよね。・・・寂しいと思って家族をつ くり、煩わしいと思って離婚しても、また家族をつくるわけじゃないです か。だから、“正解の家族”ってないんだろうと思うんです。煩わしさの中 には、とても意味のある温かさがあるから」(6p)。

映画はまさに「百聞は一見に如かず」である。さあ、まだ観ていない人 は、この雑文などは無視して、すぐ映画館へ行きましょう。(2018.6.15 千葉市在住)

(追記)
林芳正文部科学相は2018.6.15の閣議後記者会見で、カンヌ国際映画祭で 最高賞を受賞した是枝裕和監督が林氏からの祝意を辞退したことについ て、「監督の考えを尊重したい」と述べた。是枝監督は7日、「祝意を伝 えたい」とする林氏の発言に対し、自身のホームページで「公権力とは潔 く距離を保つ」として辞退を表明した。

その際、受賞作の「万引き家族」が文化庁から助成金を受け取っているこ とに感謝の意を示した上で、「日本の映画産業の規模を考えるとまだまだ 映画文化振興の為の予算は少ない」と記した。文化庁は「万引き家族」の 制作に文化芸術振興費補助金2000万円を支出している。(2018.6.15毎日 新聞)



     

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中国との危ないデータシェア
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)6月7日(木曜日)
         通巻第5719号 
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 フェイスブック、中国との危ないデータシェアを認める
  華為ばかりか、レノボ、OPPO、TCLのスマホとも
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米議会が燃えるようにいきりたって、フェイスブックを糾弾している。同 社は世界60のデバイス・メーカーと契約し、データシェアをしている。こ のなかに中国の華為技術(フアウェイ)、レノボ、OPPO、TCLのス マホが加わっていた。

すでに米国連邦政府ならびに軍、公務員は華為(フアウェイ)、 ZTE(中興通訊)の使用を禁じられており、また米軍兵士は華為、 ZTEのスマホの使用を禁止されている。

議会で「中国制裁」を騒いでいるのはなにも共和党の対中強硬派だけでは なく、民主党とのシューマー上院議員(ニューヨーク選出)、ペロシ院内 総務など、どちらかといえばリベラルな議員のほうが、この問題では過激 である。フェイスブック問題は連邦議会で超党派の合意がある。

折しもトランプ政権は中国との貿易戦争でロス商務長官と劉?副首相との 会談が数回なされ、そして物別れに終わり、報復関税の出動が近いとされる。

中国が土壇場で出してきた妥協案は「もし、関税強化を引っ込めるのな ら」という条件付きで、米国から700億ドルの買い物をするなどという曖 昧な風呂敷だった。

もっともフェイスブックに関しては、10代の利用者が離れつつあり、 『ニューズウィーク』(6月12日号、日本版)によれば、13−17歳の利用 率はユーチューブが85%、インスタグラムが72%、スナップチャットが 69%で、フェイスブックは51%、ツィッターは32%に落ち込んでいるこ とがわかった。
        
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 不思議な独裁者、習近平が現代中国にどうして生まれたのか
  あの日中友好ムードが、何故とげとげしい日中関係に陥没したのか

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石平v 矢板明夫『私たちは中国が世界で一番幸せな国だと思っていた』 (ビジネス社)
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じつにスリルに富んだ体験談に溢れた本である。

ともに文革時代を中国で生きて、目の前で起きた惨劇を体験しただけに全 ての経験談が迫真に満ちているのだ。

「子供の時分からこのような密告社会に身を置いていると、結論としては 誰もホンネを言わなくなる。嘘しかつかなくなる」(矢板)という実体験 が身に染みる。

誰も信用しない社会は表面上、のっぺらぼうのシステムに見える。
 
残留孤児として天津で育った矢板氏は、日本人であることがすなわち「外 国のスパイ」だとしていじめにあった。

ところが田中訪中があって、日中国交回復がなると、途端にちやほやされ 始め、その豹変ぶりになんとも言えない違和感を抱く。

対談相手の石平氏のほうはと言えば、両親は大学教授だったがために「知 識青年」として下放され、少年期を石さんは祖父の許で育った。漢方医 だった祖父は論語を教え、世間の常識を教える人だった。

それでも周囲の環境を見ながら育つから、世の中はこんなものだと認識し ていた。

毛沢東の写真が掲載された新聞に芋を包んだだけで処刑されたおばさんが いた。肉は配給で週に一度。極貧のなかにあっても、アメリカはもっと貧 しいと洗脳され、中国は世界一幸せな国民と信じてきた。
あの時代、情報が閉鎖され、操作されてきたからである。

地獄の10年といわれた「文革」が終息し、やっとこさ大学が再開される と、一斉に統一試験が行われたが、高校の先生と現役の生徒と、そして老 齢のひとも一斉に試験を受ける有様だった。生徒が合格し、先生が落ちた という悲喜劇もあった。

日本の映画が解禁されるや『君は憤怒の河を渡れ』と『幸せの黄色いハン カチ』が凄まじいブームとなって、中国では高倉健がヒーローになった。 中野良子がヒロインだった。

当時は日本を批判する社会的ムードは皆無に近く、友好友好と叫んで、す こしでも日本に近付こうという社会風潮になった。

北京大学を出て「配給された」仕事場が四川大学。そこで教鞭をとること になった石平氏は、本当のことを教えると周りから疎まれ、やがて日本留 学中の友人から『日本に来たら』と誘いを受けた。

じつに衝動的に日本語も出来ないのにふらりと日本に留学を決めたという。

天安門事件で批判の嵐に直面した中国共産党は、突如『反日』に舵取りを 換え、爾後、中国において日本は敵となった。

無知蒙昧の大衆を統治するには、つねに仮想敵を必要としているからだ。
 なにしろ日本の温泉ブームにあやかった中国で、ならば一儲けと温泉発 見のために、日本から専門家を呼び寄せたが、それが『スパイ』とイチャ モンをつけられて、まだ一年以上も勾留されている。我が物顔で中国にい た「日中友好屋」も、なぜかスパイといわれ、まだ拘束されている。不思 議な国である。

習近平がいかに無能であるかを、両人はその体験を踏まえて、実例を具体 的に挙げて描き出す。じつに示唆に富んでいる。


              
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米国の真の相手は、北を支える中国だ
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           櫻井よしこ

 世界の安全保障問題専門家が集うアジア安全保障会議では、今年もまた 中国への物言いが際立った。シンガポールでの3日間の会議で、6月1日、 基調講演に立ったのはインドのナレンドラ・モディ首相である。

モディ氏はインド・太平洋の在り様が世界の運命を定める重要な要素だと し、「大洋が開かれているとき海の安全が保たれ、国々は結ばれ、法治が ゆきわたり、地域は安定し、国家は大小を問わず主権国として栄える」 と、謳った。

どこから聞いても、南シナ海のほぼすべてが自国領だと主張し、第1及び 第2列島線で米国の進入を防ぎ、インド・西太平洋に君臨しようとする中 華大帝国思想への批判である。インドは「東に向かえ」政策(Act East Policy)の下で、日、米、豪を筆頭にASEAN諸国やロシアを含めた大 同団結で、平和で繁栄するインド・太平洋圏を構築すると語った。

翌日は、ジェームズ・マティス米国防長官が演説した。小野寺五典防衛相 のマティス氏の人物評は、「極めて物静か、人の話に耳を傾ける、控えめ に話す」である。そのとおりに、マティス氏は冷静な口調ながら、冒頭か ら鮮やかに切り込んだ。

「私にとって2回目の参加です。専門家が集い、自由で開かれた海として のインド・太平洋の重要性を共通の認識とする最高の機会です」

「昨年は主として耳を傾けました。今日、私はトランプ政権のインド・太 平洋戦略を共有してもらうために来ました」

無駄な修飾語のひとつもなく、事柄の核心だけを淡々と述べる。それは自 ずと中国への批判となった。

「米国は台湾との協調関係を誠実に守ります。台湾関係法に基づいて台湾 の自主防衛に必要で十分な防衛品を供給し、助力、協力します。如何なる 一方的な現状変更にも反対し、(台湾海峡の)両岸の人々の意思が尊重さ れなければならないと主張します」

習主席が語った言葉

台湾に対する中国の一方的手出しは看過しないと言明した、この突出した 台湾擁護には、実は背景がある。トランプ大統領は昨年12月、6920億ドル (約79兆円)の軍事予算を定めた国防権限法案に署名し、台湾への手厚い 対策を実現しようとした。

高雄を含む複数の港に米海軍を定期的に寄港させ、台湾海軍も米国の港に 定期的に寄港することを許可し、台湾の自主潜水艦建造、機雷製造など水 中戦力の開発を技術的、経済的に支えようとした。

ところが中国が猛烈な巻き返しに出た。米議会への中国のロビー活動は凄 まじく、法案は事実上骨抜きにされた。だがトランプ氏も国防総省も引っ 込みはしない。トランプ氏はすでに台湾の潜水艦の自主建造に必要な部品 の輸出の商談を許可し、シンガポールではマティス長官が前述の台湾擁護 の演説をしたのである。

マティス氏は「南シナ海における中国の政策は我々の『開かれた海』戦略 に真っ向から対立する。中国の戦略目標を疑わざるを得ない」と語り、 「南シナ海の軍事化で対艦ミサイル、対地・対空ミサイルが配備され、電 波妨害装置が導入され、ウッディー島には爆撃機が離着陸した。恫喝と強 制だ。ホワイトハウスのローズガーデンで2015年に(南シナ海人工島は軍 事使用しないと)習(近平)主席が語った言葉と矛盾する。こうした理由 ゆえに我々は先週、環太平洋合同軍事演習(リムパック)への中国の招待 を取りやめた」と、説明したのである。

軍人出身らしい無駄のない極めて短い表現で、事実のみを淡々と披露した マティス氏に、例の如く中国側は激しく反論した。

今回の会議に中国代表として参加していた人民解放軍軍事科学院副院長の 何雷(ホーレイ)中将は「米軍の航行の自由作戦こそ、南シナ海の軍事化 だ」と反論した。他方、中国外交部は、マティス発言以前に華春瑩(ファ チュンイン)報道官が米国の南シナ海に関する発言に対して「盗人猛々し い狡猾さ」だと口汚い非難を展開済みだ。

決して自分の非を認めず必ず他国のせいにするのが中国だが、彼らは昨年 から、大物をアジア安全保障会議に派遣しなくなったと、「国家基本問題 研究所」研究員、太田文雄氏が指摘する。現に今年の代表の階級は中将だ。

「ここ数年、シンガポールに行く度に彼らは国際社会から総スカンを食 らってきました。国際社会の中枢勢力と折り合うのを諦めて、独自の道を 模索し始めたのではないでしょうか。それが香山フォーラムです」

トランプ大統領は大丈夫か

香山フォーラムは06年の創設である。米国、日本、インド、NATO諸国 など、自由と法治を尊ぶ国々の価値観に基づく安全保障論は、どこまで いっても中国のそれとは折り合わない。

そこで、中国が影響力を及ぼし得る国々を集めて軍事の世界を仕切ろうと いう意図が見える。中国はアジア安全保障会議に取って代る、中国主導の 安全保障会議を創り出したいのである。彼らは64か国が集まったと喧伝する。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路(OBOR)構想には中 国マネーに魅きつけられて多くの国が参加した。しかし中国の軍事力やそ の安全保障政策に魅きつけられる国々は、現時点では多くなく、影響力も 小さい。

ただ、中国の意図を過小評価してはならないと思う。彼らはハーグの国際 司法裁判所の中国版の創設も目指している。金融、経済、軍事、司法など の全ての分野において中国式のルールを打ち立て、それによって世界を支 配しようと考えているのは明らかだ。

まさに価値観の闘いに、中国は本気で挑んでいるのである。そのことに私 たちは気づかなければならない。米国は、少なくとも国防総省や通商代表 部などの行政組織、それに立法府である議会、とりわけ上院は十分に気づ いているはずだ。

だからこそ、米国と台湾の要人の往来を自由にする台湾旅行法を、上院は 党派を超えて全会一致で支持したのではないか。地政学上、台湾擁護は南 シナ海の安定に直結する。インド・太平洋を開かれた海として維持するに は台湾を死守しなければならないという認識であろう。

米中の価値観は全く異なる。対立の根は深い。その中で北朝鮮問題に関し てトランプ大統領の姿勢は大丈夫か。トランプ氏は、中国が北朝鮮を支え 始めてから金正恩朝鮮労働党委員長が変化したと批判した。

中国の支援があるからこそ、北朝鮮は朝鮮半島の非核化とは言っても、 「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」(CVID)とは決して言わない。

北朝鮮の路線に乗る限り、トランプ氏の交渉はそれ以前の政権と同じく失 敗に終わるだろう。トランプ氏はその元凶の中国にこそ厳しく対峙しなけ ればならないのである。
『週刊新潮』 2018年6月14日号 日本ルネッサンス 第806回


    

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重 要 情 報
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 ◎トランプ大統領は「アメリカファースト」に徹しておられるだけで は:前田正晶

花田記凱が産経の「週刊誌ウオッチング」に「トランプ大統領と金正恩委 員長との会談を成功と言い切っていたのは藤井厳喜(評論家)だけだ」と していたのが面白かった。

アメリカ国内でも何処でもその評価は割れている。私は「そんなことが解 る訳はない」と思っている。あの会談では何か直ちに結果が出るような取 り決めがあった訳ではなかったし未だあれから1週間も過ぎていない時期 に、あれだこれだと決めつけても意味がないような気がしている。

先日もYN氏と語り合った際にも出た話だったが、トランプ大統領が打ち出 す政策というか、デイ―ルの数々の間には何の脈絡もないように見え る。 だが、一件ごとに見ればそれなりの結果が出ている場合が多いので、 fake news派のメデイア以外ではそれ相応の評価がされており、支持率も 安定的に上昇しているようななのである。しかし、その一見バラバラのよ うに見える施策を貫いているのは確固たる「アメリカファースト」という 太い柱なのだ。

私は「ドナルド・トランプというビジネスの分野から出てこられた方は、 固い信念と信条に裏付けられた政治哲学や理念を引っ提げて登場した訳 ではない」と思う。だが、「アメリカを再び偉大に」という旗 印を掲げ たので、対中国、我が国等々との間に長年存在し続ける「貿 易 赤字」な どは感覚的にも到底看過できる性質ではなく、何ら改善の施策 を講じて こなかったこれまでの大統領たちのやり方を踏襲する訳には行か ないと ばかりに、保護貿易というか関税賦課に立ち上がられたのには何の 不思 議も無いと思う。

寧ろ、「よくぞやってくれた」と褒め称える多くの支持者が出て来ても 当たり前か。その為には中国と事を構えることすら辞さない 姿勢の背景 には「アメリカファースト」が見えていると思う。私はトラン プ氏のや り方は「WTCなどを打破して世界に新しい貿易の仕組みを作り出 そうとし ていると見るよりも、自国の利益と国民の雇用を安定化せね ばという大 きな狙いがあるのだ」と思っている。

その「アメリカファースト」実現の為には、これまで親密であった他国と の間に多少の軋轢が生じるのも止むを得ずといった信念があるのではとす ら考えている。

そういう信念があればこそ、シンガポールまで出向いても金正恩委員長と 会談し「何故お世辞を言われたのか」と記者会見で突っ込まれることなど は「大事の前の小事だ」くらいに割り切っていたのではないかとすら 考 えている。

即ち、金正恩委員長との会談などは単なる手段に過ぎず、「あのような核 兵器を他国、即ちアメリカとそれ以外を不当に威圧する材料に使う国がこ れ以上のさばることなどを放置する訳にはいかない」と立ち上がられたの だと勝手に解釈している。即ち、ここにも「アメリカファースト」の思想 があるだけではなく「世界の為も」と考えておられるのではないかとまで 疑っている。

私がトランプ大統領に問題点があるとすれば「あの言葉遣いであり、 Twitterを使いまくって相手を罵ってしまわれるので、ややもすると品性 を疑われる点」にありはしないかと思っている。私は決してトランプ大統 領のファンではないが、これまでに打ってこられた政策には見るべきもの があるとは思う。

だが、如何に貿易赤字削減の為の手段とは言え、我が国 にまで鉄鋼とア ルミと自動車に関税をかけるというやり方は到底受け入れ られない。あ れでは「安倍総理を都合良く利用するだけで、口先では上手 いことを言 うが、その協力に対して何らの見返りもないのは不当である」 と言いた くなる。


◎西論】産経新聞創刊85周年 原点は戦後の反共路線にある

産経新聞は6月20日、創刊85周年を迎える。

昭和8(1933)年6月20日、前身の日本工業新聞が大阪で創刊された。同 17年、産業経済新聞となった。

以下は自画自賛で書くのではない。戦後日本の保守の地盤がどう形成され たのか。それを考える一助となれば、と願う。

 ◆共産主義との格闘

戦後、産経路線が固まっていった原点を見てみる。

国は焦土と化し、国民は食糧難、物資難にあえいでいた。そこに共産主義 思想が吹き荒れた。

ロシア革命を指導したレーニンは、「帝国主義戦争を内乱へ転化させる」 ことを持論とした。戦争がもたらす混乱や窮乏に乗じて革命を実現させ る、という発想である。資本主義国を戦わせ、弱らせて、世界共産革命を 実現するという悪魔的な思想が、レーニンにはある(大月書店『レーニン 全集』第28巻、31巻など)。

日本の戦争にもこの要因は大なり小なり作用しているのだが、それはここ ではおく。

戦前・戦中の日本で弾圧された共産思想は、戦後、公然のものになった。 さまざまな業界で過激な労働争議が頻発した。レーニンが目指した世界革 命の、前夜のような状況が出きていた。

日本の主要新聞の一部も終戦直後、共産思想に浸されたような紙面を作っ た。だが産経新聞の基本的な立ち位置は違った。

昭和20年11月18日の社説(現在の「主張」)は農村の思想傾向のひとつに ついて、こう分析した。

 解放を叫びつつ左翼の組合運動の展開とともにますます尖鋭(せんえ い)化しようとしている」

21年以降も、過激な争議を繰り返し批判している。
 
「これ(争議の一形態である、労働者による生産管理)が総選挙を目当て に一種の政治運動として巧妙に利用されている」(21年4月7日)

「この情勢下に乗じて大衆運動を指導し、煽動(せんどう)する分子があ るとすればそれは許されない」(同10月16日)

「彼ら(労組)の多くは終戦後の混乱に乗じて極端な左翼的政治革命を企 図する一部勢力に指導され、その意のままに動いていた」(22年11月9日)

この段階ですでに、レーニンのいう世界革命と格闘していたことになる。

 ◆中道、中庸

戦後間もない時期に、なぜこのような主張ができたのだろう。

別の機会に書いたことがあるが、終戦後しばらく小紙は、産業と経済を中 心に報じる文字通りの「産業経済新聞」だった。産業と経済の復興を通じ て祖国の再建に尽くそうとした。

復興を妨げる労働争議、その支柱となる共産主義が批判の対象となったの は、理の当然だった。思想やイデオロギーの問題という以前に、国の再建 を妨げる事態は認められないという現実主義があったと見るべきだろう。

過激な争議を批判しつつ訴えたのは中道、中庸である。21年8月1日の 社説は次のように書いた。

「戦時中極端に右に引締められていた国民が、敗戦と同時に極左に走りた がるのは自然の理ともいえるが、日本のあるべき姿を冷静に考えたなら ば、左右両極端いずれにも走るべきではなく、ひたすら中道を誤らないよ う努めなければならぬ。振子はやがては中心に止る。今動乱期にある日本 もそうなるのが自然の理である」

さらに、中道、中庸の根拠を国民の穏健な常識感覚に求めている点に、注 意を払いたい。

21年2月6日の社説は、過剰な賃上げ要求が必ずしも労働者の地位向 上 につながるものではないという見方について、「これは通俗極まる常識 理論であるが、そのためにまた真理も含んでいる」とする。政治的な思惑 が混じったゼネストを批判し、「闘争ではなく協和」を訴えた同10月 14 日の社説は、「真理は一部理論家の唱えるような高遠なものではな く、 常に卑近なところにある」という。

つまりイデオロギーに左右されるのではなく、常識感覚をこそ重視して いる。思想的に保守といわれる態度を、ここに読んで差し支えないと思う。

 ◆歴史の重み自覚したい

もちろんこのような論調が、終戦直後から明確に定まっていたとはいえ ない。ほかの新聞と同様、戦後の混乱期を試行しながら歩んでいる。

たとえば社説は再三、日本社会の封建性を批判しているが、これなど共 産思想の見方である。「保守反動」という語も否定的な文脈で使ってい る。

共産主義に批判的であっても、このような用語は知識人を含めた戦後 の 言論界を席巻しており、産経もそれと無縁ではいられなかった。現行憲 法も最初はこれを評価している。

しかし産業経済新聞ゆえの反共という原点、さらにイデオロギーに左右 されず中道、中庸を求める姿勢は、太い軸のように貫かれている。これは 後に、歴史問題などで自国に否定的な、左傾した風潮への批判などにつな がっていく。

憲法についても、日本が独立した後の昭和29年5月3日の社説はこう 書 いた。

「理想を高く掲げた憲法はとかく国民の眼を奪い、人々はその崇高な理 念にひきつけられる。だがそこに実現性を失えば、たんなる宣言に終って しまう。…改正すべきは改めるべきである」

【写真】 産經新聞東京本社 社屋
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 85周年を迎えるに当たり、改めて歴史の重みを自覚したい。    (論説委員・河村直哉)
【産經WEST/産經新聞】 2018.6.15 15:30 〔情報収録 − 坂元 誠〕



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身 辺 雑 記
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17 日の東京湾岸は曇天。



私の愛読紙は産経新聞だけ。娘が朝日の記者だが、朝日は理由が あって 読まない。
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