政治・経済

頂門の一針

急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。

全て表示する >

頂門の一針4710 号  2018・6・14(木)

2018/06/14

 
                           
□■■□──────────────────────────□■■□ 
わたなべ りやうじらうのメイ ル・マガジン「頂門の一針」4710号
□■■□──────────────────────────□■■□


      2018(平成30)年6月14日(木)



        非核化時期、検証、工程未定のまま:杉浦正章

             健康百話 乳がんの治療:小川佳成

              ワーファリンにご注意を:石岡荘十
                         
                      話 の 福 袋
                       反     響
                       身 辺 雑 記


□■■□──────────────────────────□■■□
第4710号
                             発行周期 不定期(原則毎日発行)
             
               御意見・御感想は:
                  ryochan@polka.plala.or.jp

                購読(無料)申し込み御希望の方は
                    下記のホームページで手続きして下さい。
  
       http://www.max.hi-ho.ne.jp/azur/ryojiro/chomon.htm
    バックナムバーは http://www.melma.com/backnumber_108241/

    ブログアドレスは http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/



━━━━━━━━━━━━━━━━
非核化時期、検証、工程未定のまま
━━━━━━━━━━━━━━━━


            杉浦 正章

日本はおいそれと「経済カード」を切ることはない

トランプは口癖の「素晴らしい」を繰り返すが、どこが素晴らしいのか。 会談したこと自体が素晴らしいのか。それにしては、「北の壁」ばかりが 目立つた未完の会談であった。

金正恩は米朝共同声明で「完全な非核化」を約束したが、具体的な非核化 の範囲や工程や期限への言及はなかった。これでは、歴代北朝鮮トップに よる「約束反故の歴史」を誰もが思い起こさざるをえないだろう。

トランプは会談の“成果”に胸を張るが、その内容は会談したこと自体に意 義がある程度にとどまりそうだ。要するに北朝鮮の核兵器廃棄への工程は ほとんど示されず、非核化のタイミングや検証方法は今後の交渉に委ねら れることになった。

会談を受けてトランプは北朝鮮への経済的支援については、「米国が支出 すべきだとは思わない」と主張し、「遠く離れている米国ではなく、日本 や中国、韓国が助けるだろう」と、経済援助をたらい回ししたい口ぶりだ が、会談結果から見る限り日本はおいそれと「経済カード」を切れる状態 でもあるまい。

まず米朝合意文書に書かれた文言は、4月に開催された韓国と北朝鮮の南 北首脳会談で署名された内容をコピーしたかのようであり、北朝鮮による 核・ミサイル実験の凍結に関しても明文化されなかった。

米国が6カ国協議を通じて主張してきた非核化の原則である「完全かつ検 証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言がない。休戦から65年にわたる 敵対関係と20年あまりにわたる核武装路線に終わりを告げる文言が、合 意に至らなかったことを意味する。

北が核武装を放棄する意思がないことを物語っている。トランプはCVIDが 合意に至らなかったことを記者団から突っ込まれて「時間がなかった」と 弁明したが、焦点の問題を時間のせいにするのはおかしい。

合意文書は「朝鮮半島の完全な非核化」と表現しただけで、北朝鮮の非核 化をいかにしていつまでに成し遂げるのかという、首脳会談最大のテーマ は、盛り込まれなかった。非核化の時期と検証方法も不明のままだ。検証 可能と不可逆的という言葉なしに、北の核武装に歯止めをかけようとして も無理がある。

さらにトランプの主張の核心であった「朝鮮戦争終結」の宣言も合意文 書にはない。朝鮮戦争で米朝が戦火を交えて以来のトップ会談であり、宣 言には事実上終結している戦争を再確認する意味合いがあるが、盛り込ま れなかった。

さらに北朝鮮による核・ミサイル実験の中止の明文化もな かった。核・ミ サイル実験場の閉鎖にも言及していない。多くの課題が、 先送りされ、 具体性に欠けた会談であったことを物語る。要するに大山鳴 動してネズ ミ一匹の感が濃厚なのである。トランプにしてみれば秋の中間 選挙への プラス効果が出れば良いのだ。

一方金正恩は、会談から多くのポイントを稼いだ。合意文書では金正恩 体制をトランプはギャランティーという表現で保証した。特異な社会主義 体制を敷く金王朝を、自由主義の雄であるはずの米国が体制保証するとい う奇妙な会談となった。

今後金正恩が体制の正当性を世界に喧伝し、国際 的な孤立から離脱する 材料に使うことは言うまでもない。加えて米韓軍事 演習の見直しや在韓 米軍の削減にトランプが言及したことは、金正恩に とって大きな成果で あった。

しかし、ことは極東の安全保障に関する問題である。重要な同盟国であ る日本にろくろく相談もなく、安全保障に関する問題を軽々に発言するト ランプのセンスを疑う。拉致被害者の問題については、首相安倍晋三の要 望に応じて、トランプが金正恩との会談で言及したが、単なる言及にとど まったようである。もともと拉致問題は日本政府が解決すべき問題であ り、安倍が「日本の責任であり、日朝間で交渉する」と述べている通りで ある。

日本外交の真価が問われるのはこれからであるが、かくなる上は北との 関係正常化を推し進め将来的には、国交正常化を視野に入れるべきであろ う。正常化して、経済的な結びつきを強めることにより、北の暴発は抑え られる可能性が高い。拉致、核、ミサイルが国交正常化の前提条件だが、 棒を飲んだような姿勢でなく、緩急自在の姿勢で日朝首脳会談の開催を視 野に入れるべき時だろう。

トランプはまた、国務長官マイク・ポンペオと大統領補佐官ジョン・ボ ルトンが来週、合意の「詳細を検討する」ため北朝鮮当局者と協議する予 定だと述べている。またトランプ自身も「また会う、何度もだ」と延べ、 金正恩をホワイトハウスに招待する意向も示した。「恐らく再度の首脳会 談が必要になる」と語った。トランプ自身も会談の不十分さに気付いてい るのかも知れない。


     
━━━━━━━━━━━
健康百話 乳がんの治療
━━━━━━━━━━━


          小川 佳成

乳癌の治療法は、病状や進行度、あなたの全身状態を考慮して決まりま す。治療には主として、手術、放射線治療、抗癌剤(抗ホルモン剤を含 む)治療があります。

病状の進んでいる方には抗癌剤治療が優先されますが、通常は手術を行 い、その後再発予防のための抗癌剤治療を行います。

【手術】
手術には主として、1.乳房切除、2.乳房温存手術があります。腫瘍の 大きさや広がり具合などにより術式を選びます。当大阪市立総合医療セン ターでは、半数以上の方が乳房温存療法を受けられています。
 
乳癌の手術では転移の有無に関わらず、癌の根治・予防のためにわきの下 のリンパ節を全部取り除くこと(リンパ節郭清といいます)が標準的に行 われてきましたが、リンパ節郭清をすると術後に腕がむくみやすい等の症 状が残ります。

そこで脇の下のリンパ節転移がないと予測される方を対象に術後の症状 を軽減するために、センチネルリンパ節生検という方法を用いた、腋窩 (わきの下)リンパ節郭清を省略する術式が行われるようになりつつあり ます。当センターでは6割の方がこの術式を受けられています。

【放射線治療】
乳房温存手術を行った場合には、残った乳腺での再発を抑えるために乳房 に対する放射線治療を術後に行っています。治療期間は5〜6週間でこの 治療により乳腺内での再発は2〜3%以下に抑えることができると考えら れています。

【抗癌剤治療】
切除した癌の性格を詳しく調べて、術後の抗癌剤治療の必要性とその内容 を決めます。これらの治療で再発の3〜4割を抑えることができるとされ ます。抗癌剤治療は充分な副作用対策をして外来にて行っています。

【乳房再建】
乳房切除後の乳房再建は形成外科にて行っています。当センターでは、術 後1〜2年を過ぎ、治療が一段落してからの再建をお勧めしています。

乳癌の治療は5〜10年ごとに大きく進歩しています。当センターでは、 “あなたがより良く生活していくために治療があるのだ”という想いのもと に、各分野の専門医が協力し合い乳癌の治療に当たっています。  
<大阪市立総合医療センター 外科>(医師)


               
━━━━━━━━━━━
ワーファリンにご注意を
━━━━━━━━━━━


            石岡 荘十


ワーファリンで危うく死ぬところだった。

その顛末を話す前にワーファリンについてどんな薬なのか、基礎的な“常 識”を説明しておく。

ワーファリンは血液をさらさらにする代表的な薬だ。心筋梗塞や心臓の弁 を人工の機械弁に置き換えた弁置換手術経験者は血液が固まって血栓を作 りやすくなるため、これを防ぐべく処方される。

心臓病患者だけではなく慢性的な脳梗塞患者に対しても、血栓が脳に飛ん で細い血管を詰まらせないように予防薬としても使われている。

もともとは、ネズミ取りの薬剤(殺鼠剤、商品名は、強力ラットライス、 強力デスモア、ネズミランチdeコロリ)として使われていた。

ネズミにこの薬が入った餌を与えると、目の網膜内の内出血で視力が低下 するため明るいところに出てくる。最終的には腹腔内の内出血で死亡する というわけだ。人間に対する治療薬として日本で使われ始めたのは30年以 上前の1976年のことだった。

よく言われるように、薬はすべて毒物であり使い方、とくにその量を間違 えると、死に至る。薬として有効かどうかは、微妙な量(専門的には治療 域という)の調整が欠かせない。

ワーファリンは殺鼠剤に使われるくらいだから、とりわけ服用する量の調 整が重要だとされている。

私は‘99年心臓にある4つの弁のうち血液の出口である大動脈弁を機械弁 に置き換える手術を受けて以来、毎日朝食後、この薬を飲み続けて
いる。

私の場合、3ヶ月前までは毎日2錠(1mg×2)だったが、最近は加齢の 影響もあってか、先月、血液検査の結果、効き目が落ちているとのこと で、週3日は、プラス0.5mgの処方を受け、処方箋を病院の周辺に門前 市をなす薬局の一つに出した。

エーザイが販売しているワーファリンは、0.5mg、1mg、5mgの3種 類の錠剤だから、処方箋に従えば私の適量は

・月、水、金 1mg2錠と0.5mg1錠で合計2.5mg
・残る火、木、土、日は1mg2錠で2mg ということになる

ところが、である。

薬局で手渡された薬をその場で確認すると、0.5mgの錠剤は見当たら ず、代わりに袋に入っていたのは5mgの錠剤だったのである。つまり、 処方箋で指示された量の10倍の量のワーファリンを薬剤師が出したのだ。

ここでこのことに気づかず、服用したらどんなことになるか。殺鼠剤入り の餌を与えられたネズミになるところだったのだ。おお怖!   

「人は間違う動物」、医療の世界ではTo err is human.とよく言われる が、これは酷すぎる。まかり間違えば業務上過失致死に問われかねない過 ちではないか。

いろいろな薬の中で、とりわけワーファリンに対する感受性は個体差が大 きい。薬の量は大概、患者の体重によって決まるが、ワーファリンは同じ 体重でも、年齢や食生活、疾患の種類などによって適量を厳密に調整する 必要のある薬だとされ、同じ人でも、適量(治療域)は変わる。

このため、永年この薬を飲んでいる患者は、少なくとも月に1度は血液検 査をして適量を決めなくてはならない。プロトロンビン時間測定 (=PT-INR)という検査である。

昔は、トロンボテストという検査が一般的だったが、近年はPT-INR が推奨されている。その標準値は、1.6〜3.0(値が高いほど血が固まりに くい)が理想的である。(「1.8〜3.4 の間であれば、ワーファリンの投 与量は変更しないほうがよい」という報告もある)。

先月の私のINRは1.9。適正だった。そこへ、5mgを飲んだりすれば、 血液は真水のようにさらさら流れ、体内の臓器、とりわけ脳出血のおそれ もあった。

ほとんどの薬は、薬品メーカーが製造、医師が処方し、薬剤師が調剤し、 患者は何の疑問も抱かず指示通り服用する。つまり水源から河口まで関係 者はすべて性善説に立っている。

ワーファリンの販売元エーザイに確認すると、担当者は、「こんな間違い は初めてのケースだ」という。しかし、どんな仕事もそうだが慣れてくる と、そこに’to err’が起こる。メーカーは貴重な教訓とし、包装紙の色を 変えるなどの防止策がないか検討するというが、同時に、ユーザーである 患者もやばい薬については特に確認をする努力を心がけたいものである。

             

━━━━━━━━━━━━━━━━━
米朝首脳会談を過大な期待で予測した
━━━━━━━━━━━━━━━━━
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)6月13日(水曜日)
         通巻第5724号 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
   ♪
 米朝首脳会談を過大な期待で予測したメディアは何を間違えたのか
  会談は始まりにすぎず、金正恩は中国の意向(何も約束するな)を実 践した
**********************************

日本の期待は夢幻に終わったのか。

発表された米朝首脳会談の共同声明を「素晴らしい」とトランプは自画自 賛したが、多くの人々から見れば、具体的内容を欠いているため、「失 望」だろう。

第一に「非核化への努力」は謳われたが、「完全な、検証可能な、不可逆 的な」という文言は共同声明のどこにもないではないか。

期限も方法も明記されていない。要するに具体的には何も成果はなかった のだから。安倍首相が「高く評価する」などと、トランプの成果を渋々評 価したのも、納得するには無理がある。

米国政府筋は「これから高官による詰めが行われて、具体的な日程などが でてくる。ともかく歴史的文脈に於いて、この会談は意議がある」と総括 して、今後の交渉に大きく期待する方向にある。

とはいえ、「完全な、検証可能な、不可逆的な非核化」は結局、並ばず、 「非核化」の現地を金正恩から得ただけだった。

中国の後ろ盾を得た金正恩は強気になっていた。アメリカとの世紀の ショーを演出するために、人質を解放し、使い物にならなくなった核実験 場を廃棄処分としたが、これをトランプは記者会見で「成果」と総括し た。ディールの名人も、ここまでか、との感想を抱いた読者が大いに違い ない。

「総合的に前進した」という米朝首脳会談は、アメリカにとっては中間選 挙向け、北にとってはやっぱり時間稼ぎと中国との関連。唯一の歯止め が、米国は「制裁を続ける」という姿勢だけだろう。
大きく期待した人は失望の谷は深い。期待しなかった人にとっては、なん とか、一歩前進したというのが率直な感想ではないか。

「歴史的に米朝が『初の会談』という意議いがいにないもない」(NYタ イムズ)

「希望を抱かせたが、保証がない」(ワシントンポスト)

「希望に向けての前進」(ウォールストリートジャーナル)


 ▲「人権」「拉致」の文言は声明には盛り込まれていない

米国メディアは消極的だが、否定はしていない。しかしトランプは記者会 見で「人権に言及した」「日本の拉致問題についてはちゃんと伝えた」と 言い訳に終始し、いつものような強気が見られなかったように、そのう え、米軍撤退を示唆したように、これでは過去の歴代大統領の、その場の 人気取り対応と大きな違いはない。

 結局、この米朝首脳会談で一番の勝者は、中国である。

おそらく中国は、前進があったとして『制裁』緩和の方向へ舵を取るだろ う。『中国抜きには何も進まない』と国際社会に印象づけることに成功 し、金正恩の背後でシナリオを描き、トランプに米軍撤退の発言を誘発さ せた。 

同じ日に上野動物園のパンダが誕生一周年とかで、長い長い行列ができ た。パンダはチベットの動物であり、中国が外交の道具としているものだ。
これを行列してみるという、あきれ果てた日本人がいるように、精神的劣 化がますます進んでいる。
       
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 <<< 緊急特番のお知らせ >>>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
今晩(13日夜)、緊急特番「米朝首脳会談とこれからの日本」があります
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 出演  宮崎正弘、高山正之、加藤清隆、西岡力ほか。
放送予定:平成30年6月13日(水)夜公開
日本文化チャンネル桜
「YouTube」。「ニコニコチャンネル」。「Fresh!」オフィシャルサイ ト。インターネット放送So-TV。
         
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ***************************
  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@

【知道中国 1744回】                  
――「我は大清國の民なりと」――遲塚(3)
  遲塚麗水『山東遍路』(春陽堂 大正4年)

                ▽

やがて青島を辞し済南に向う。その道すがら目にした「狂婦」について綴る。

彼女は「宛轉して麥田の上に在り、垢面蓬髪、身に襤褸を着け、喃々をし て獨り語りて或は泣き或は笑ふ、往來の人、顧みるものなし、哀むべし狂 婦は終に溝壑の中に死せん」。かくて遲塚は「支那の國民性は絶對の個人 主義なり、這の憐むべき生靈を綏撫して、平靜の治下に置くもの、正に我 が帝國の使命なるを思ふ也」と。

 たしかに「這の憐むべき生靈を綏撫して、平靜の治下に置く」ことを 「我が帝國の使命なるを思ふ」ことは自由である。

いや、それなりに立派なことであり、同時に当時の我が国における一般的 風潮だったかも知れない。だが、第一次大戦前後の創成期の中華民国を囲 繞する現実――彼我の人口比、風土や民族性の違い、20世紀初頭の中国に対 する欧米列強の思惑と複雑に絡む利害関係――からして、それが至難、いや 我が国将来の足枷になることに、どうして当時の人々は思い至らなかった のだろうか。

「正に我が帝國の使命なるを思ふ也」とイキガルのもいい加減にすべき だ。常識的に考えてできもしない大言壮語は国を誤ることを、やはり肝に 銘じておくべきではなかったか。

 途中、曲阜駅から孔子廟を目指す。どうやら道に迷ったらしく、「余等 を載せた馬車は、早や青を抽く三寸の麥の上を漫々として行く」なり。

つまり稔りを待つ麦畑の上を走ったわけだ。それというのも「支那には正 しき道路なし」。だから「皆麥田の上を度り行くなり」。そこで「往來の 頻りに繁きところ自から蹊を成す」。自分の麦畑を道路代わりに踏み荒ら されたら堪らないので、持ち主は「其處に深き溝を穿ち」て「路を拒ぎ止 め」るのである。そこで車馬は別の麦畑の上を「漫々として行く」ことに なる。かくて「葛天無懷の民の世は、遠く五千年の昔に在らずして今に在 る也」と。5000年の昔も今も変わりないじゃないか、というのだろう。
魯迅は人の歩いた後が道になる口にしたが、はて、このことか。

 だが、「葛天無懷の民」と侮ってはいけない。急げと御者に命ずると、 彼は後ろ手に差し出して「『大人、酒錢』と曰ふなりき」。ダメだと断る と、「鞭を棄てゝ煙草を薫らし、唯馬の歩むに任すなり」。サボタージュだ。

かくて「葛天無懷の民と思ひしに、狡猾甚だ憎むべき也」と。ナメンジャ ねえよ、といったところだろう。

 「葛天無懷の民」とナメて掛かると、トンだしっぺ返しを食らうのは必 定。「這の憐むべき生靈を綏撫して、平靜の治下に置く」なんぞと、口が 裂けても言ってはならなかった。

曲阜の街に入れば、「『日本人來』『日本人來』、街を擧りて來り觀け ん」。老若男女が次々に集まって来て遲塚を囲む。乞食は「余の行く手を 遮りて兩掌を高く捧げつゝ錢を乞ふ」。そのうちに曰く因縁のありそうな 土産物の売り子が集まる。

おそらく彼らからすれば、カモがネギを背負って、といったところだろ う。これが「葛天無懷の民」の現実なのだ。

聖地・泰山に登る。

宿坊の主人は「我を異邦の人と侮り」、バカ高い宿料を吹っ掛けただけで なく、茹卵子も倍の料金を要求して来た。「詐辯し、茶錢、炭錢、貪り て?くことを知らず」。そこで「余は怒りて其の不當を叱詰すれば、主人 飽くまで頑囂に、大聲揚げて喚き立つ」。「町の有象無象ども何時しか庭 に入り來り」、やんやヤンヤの掛け声を挙げて「主人聲援す」。憤懣やる かたない遲塚は口にした煙草の吸殻を主人の顔に投げつける。

すると「主人怒號して余が携へたる行李を奪ひ、金を出さずば還さじ」と 息巻く。こと此処に至っては「多勢に無勢、敵すべからず、金をへて僅に 此の重圍を脱したり」。情けない。

 「葛天無懷の民」に翻弄されながらの旅を終え、「秀麗なる富士の山を 仰」ぎ、「泰山は支那の五岳の宗といふといへども、天下復た此の富士に 優れる山のあらめやは」と。
「葛天無懷の民」を前にして「我が帝國の使命」は空しいばかり・・・噫嗟!

         

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)御近刊の『アメリカの「反日」は本気だ』(ビジネス社) を読了しての感想です。

元来、世界地区を眺めていることが好きで、少年時代にみていた世界地図 と現行のそれとを比べてみては、世界の支配的勢力の変遷について感慨に ふけることがあります。しかし現在の地図を見ても、そこに表記されてい る新興の国々についての表徴は自前ではまずゼロに近いのです。
 そこで貴著を拝読して、にわかに具体的な映像が浮かんでまいりまし た。まさに目を開かれた思いです。
しかも貴著で展開されている世界像は、驚くほど新しい現実に充満してお りました。ただただ唖然として呆然とするばかりです。
 結論として、現在の日本における世界情勢について宮崎さんが指摘して いる通りの、頼りなさ。政治家たちに是非本書を熟読し勉強してもらいた いものです。(KK生、世田谷)


(宮崎正弘のコメント)御感想ありがとうございます。静かに拙著は売れ ているようですが、中味が新鮮すぎて難しいのか、爆発的な反応はまだあ りません。



  ♪
(読者の声2)貴誌5722号のベトナムの記事ですが、「多くの外国企 業がベトナム各地の工業特別区に進出している。その契約期間が29年間、 伸びたからといって、取り立てての問題ではなく、この反中デモの本質 は、ベトナム共産党の一党独裁への批判なのである」とありました。

 ベトナム人に確認したところ、宮崎先生のおっしゃる通りでした。中国 共産党の横暴に抗議するために「反日」を借用した、2012年の反日デモと 相似のようです。ただ、ここハノイでは実感はありません。
  (R生、ハノイ)


(宮崎正弘のコメント)在日ベトナム人が6月10日に抗議デモを行い、300 人が参加しています。また6月17日にも渋谷で予定されております。
http://viettan.sakura.ne.jp/?p=238



  ♪
(読者の声3)キツネとブタの化け試合だったトランプ・金正恩のシンガ ポール会談が一日中放映されすっかり食傷しました。

トランプはG7サミットで袋叩きにあい、America firstがAmerica aloneに なりましたが、シンガポールでも格下の金正恩に判定負けとの感想です。
 ロケット小僧は超大国アメリカのボスと堂々と張り合った実績で箔がつ きました。これからますます増長するでしょう。アメリカにコンプレクス を持つ韓国人は、北嫌いのものもこの点、ロケット小僧に喝采しています。
 安倍首相がトランプに懇願した「拉致問題」解決ははぐらかされまし た。そもそも安倍がだらしない。自力で解決しようとせず、アメリカに泣 きつく。これでは金正恩からバカにされるのは当然です。
 宮崎さんが指摘するように「主権国家」であるはずの日本に外国の軍隊 が駐屯している。
アメリカの保護領であるとの基本的事実を直視して、自存自立精神を回復 することがなによりも急務です。(TW生、ソウル)



  ♪
(読者の声4)平成30年7月29日(日)午後4時。「通州事件慰霊祭」を靖 国神社にて開催いたします。どうぞご参加くださいませ。
 午後4時から昇殿参拝を行います。靖国神社参集殿の2階に控室を用意 しました。少し余裕をもってお出かけ下さい。
【参加費】は千円です。
主催  通州事件アーカイブス設立基金
http://tsushu.sakura.ne.jp/archives/162
   (三浦生)



   ♪
(読者の声5)宮崎先生のことを「白皙の奇人・犀利なジャ−ナリスト」 などと評される方が居られますが、白皙の奇人評は論外として、犀利な ジャ−ナリストという評価も今一つ物足りなさを感じていました。
 ところが西部邁氏が、「私のみるに、氏は『思想家』なのである」との 言(対談『アクティブ・ニヒリズムを超えて、文藝社文庫)を読んで、そ うだ、宮崎正弘先生は犀利で偉大な日本の「思想家」だと、ようやく腑に 落ちました。
宮崎先生はハ−ド・スケジュ−ルで活動しておられますが、無理は禁物で す。呉々も健康管理には気を使ってください。
   (TK生、佐賀)

        
━━━━━━━
重 要 情 報
━━━━━━━


 ◎体調の不備の谷間の彷徨っている時にトランプ大統領と金正恩委員長 の会談が:前田正晶

11日(月)は早朝から生あくびの連発、首筋を始めとする全身の筋肉痛 (凝りかも知れない)で寝ていられずに5時には起床したが。動こうにも そういう気力が出ないほどの苦しみ。折り悪く国際医療研究センター病院 (NCGM)で循環器内科の採血と採尿と心電図の日。何時に行っても良いの だが、12日に主治医の診察があるので、何が何でも採血等は終えておかね ばならない。

そこで7時前に痛み止めを服用する為に、トースト1枚を半分だけ食べて、 その後10時過ぎまでボンヤリと過ごした。

気力を振り絞ってNCGMに向かったのだが、内心では「こういう体調が悪い 時に検査をすれば如何なる結果が出るのかという点を少しだけ心配だ」と は考えていたが、兎に角行かねばという思いで出掛けたのだ。何よりも辛 かったのは両足の太腿を襲ってくる筋肉痛。それにもまして苦しめられた のが、帰宅後に襲われた心窩部の痛み。これは2015年の心不全で入院中に も出たことで、温める以外の治療法がないようだったが、医学的には原因 が見つからなかった。

さて、12日(火)である。歴史的とトランプ様も自ら言われ、マスメディ アも囃し立てるトランプ大統領と金正恩委員長の会談の日である。だが、 そんなことを気にしている暇はないので、9時過ぎに出発してNCGMに向か う。不思議なことに朝から前日の不調が嘘のようで気分爽快で、恰も梅雨 の晴れ間のよう。何の苦もなく足取りも軽く駅前のバス停に向かった。予 約は10時30分だった。因みに、呼ばれたのが珍しいことで10時37分だっ た。幸運だった。

NCGMの循環器内科の外来では今年からだったか、診察の前に備え付けの血 圧測定器で自分で測ってから主治医に提出する取り決めになっていた。計 りましたよ、2度も。ところが2回とも、86/53で心拍数が53と出たのだ。 これは低血圧の部類かと思う値で、未だ嘗てこんな数字が出たことがな かった、2006年夏瀕死の状態になった時を除けば。

主治医に計って頂いても値は変わらず、腕を左から右に変えて漸く 100/50が出ただけ。先生の決定は「夕食後に出ている血圧を制御する薬 を当分の間止めておくように」だった。さて、血液検査の数値である。あ れほど体調が悪い時のものでも特に変化がなく、心電図も正常だったの だ。ということは、少なくとも11日からの体調の不備は循環器というか心 臓の状態とは無関係だとなるのだ。

これほど問題がないのだったらと、会計を終えてからバスを乗り継いで高 田馬場駅前のジムに行くことにした。体調が悪くないのだから、普通にス トレッチををやって300メートルほどウオーキングをしてから、何時も通 りにシャワーとジェットバスを浴びてから調剤薬局経由で帰宅。精神的に も身体的にも(当世風にカタカナ語にすればフィジカルもメンタルもか な)疲労感は残った。従ってトランプ大統領と金正恩委員長の会談の ニュースも聞き流したし、午後10時からのサッカーの中継も見送り。

そこで、13日の朝。最近で最も悪い状態で、横になって起きてみても耐
えられない苦しさ。そこで、矢張り痛み止めに頼りしかないと5時には無 理矢理に食パンを一切れ食べてから服用。即効性がないとは承知していた ので8時まで待ってから、勇敢にも着替えて正常な状態ならば徒歩10分足 らずの掛かりつけのSクリニックまで15分以上もかけて歩いた。8時45分に 到着しても今回も先客がいて2着。

S先生には低血圧の件も報告したし、血液検査の数値の表も持参した。矢 張り問題はないとの診断で、兎に角心窩部の痛みの原因を超音波で診て下 さったが、何の兆候も無しとの診断。そこで、結局は本日もブロック注射 をして頂き、痛み止めの薬を頂いて帰宅。新宿区は至る所に緩やかな坂道 があるのだが、このクリニックからの帰路はほぼ下り坂。それでも、20分 近く歩いて調剤薬局に立ち寄らねばならず、昭和一桁生まれは一所懸命に 歩いた。注射の効果が出てきたのは12時頃だったか。それだから今
はPCに向かっていられるのだ。

確かに、トランプ大統領と金正恩委員長に関する所謂専門家とジャーナリ ストたちのご意見は聞いたし、多くの新聞の一面の見出しも見た。産経の 「政治ショー」という表現は当たっていないこともないと思うが、私には 全般手的にトランプ様の外交に不慣れだという面が出ていた気がしてなら ない。

あれほど事前にTWITTERで何らかのことを言われたり、テレビで採り上げ られるような言辞を弄されては、金正恩のような手合いには巧みに悪用さ れてきもするし、手の内を明かされすぎではないかと思っていた。

私には今回のトランプ大統領が見せられた対DPRKの交渉術は些か真っ正直 すぎて、アメリカの練達熟練のビジネスマンたちが見せる相手を自らの論 法の組み立ての中に落とし込んでいくような老巧さが見えなかったと思 う。それに Contingency planの準備も整っていないのではと疑わせた。 一寸、自らの豪腕を見せる事に集中されて駆け引きに乏しかったのではと いう恨みが残ったと思う。

その点ではポンペオ国務長官も同じだった気もするのだ。私は「孔雀の羽 の広げっこ」の如きであり「どうだ、俺の方が大きくて綺麗だろう」とや り合っているように見えた。

私は既にあの会談で両首脳が達成しようと目論んでいたことというか大命 題は一度や二度の会談で済むことではないと思っていたので、昨日お互い に「以後お見知り置きを」となり、出発点についたところで十分かと見て いる。素直に言えば、今の私にはそれよりも如何にして自分の体調の安定 を図るのかの方が焦眉の急だ。


 ◎独裁者を「事実上ハグ」 仏外相、不安定化招くトランプ流外交術に懸念

【6月13日 AFP】フランスのジャンイブ・ルドリアン(Jean-Yves Le Drian)外相は13日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がわずか数日のうちに、歴史的に同盟関係にある国々との関係を悪化させた一方、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長とは「事実上ハグを交わした」として、「不安定化をもたらす」同大統領の外交政策を批判した。

ルドリアン外相は、12日の歴史的な米朝首脳会談について「疑いの余地なく一歩前進」と評価する一方、トランプ大統領の外交術に懸念を表明。

仏テレビ局「CNews」に対し外相は、「たった1日の間にトランプ大統領は、歴史的な同盟国であるカナダの(ジャスティン・)トルドー(Justin Trudeau)首相を攻撃し、ケベック(Quebec)州でのG7(先進7か国首脳会議)後に同盟諸国を捨てた。そして次の日には、数日前までは完全に対立しているとしていた共産主義専制国家の独裁者と事実上ハグを交わした」と指摘した。

続けて外相は、「われわれは不安定な状況下にある」と述べ、「トランプ大統領は先の戦争後に構築された多国間協調主義の手段を徐々に解体すると決めた。現在は不確実性とリスクをはらむ時期であり...米国は自らのパワーの内に閉じこもっている」と語った。(c)AFP

【写真】 シンガポール・セントーサ島で握手を交わすドナルド・トランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)AFP PHOTO /Anthony WALLACE
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/320x280/img_19b7bff9ffba9217661754c81be7ba0f142063.jpg
【ロイター】 2018年6月13日 23:32 パリ 〔情報収録 − 坂元 誠〕




━━━━━━━
身 辺 雑 記
━━━━━━━

14日の東京湾岸は曇天。


                          


                      
              






        


             
━━━━━━━
重 要 情 報
━━━━━━━


━━━━━━━
身 辺 雑 記
━━━━━━━


                          読者:5576人


                      
              






        


規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2004-01-18  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: 97 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。