政治・経済

頂門の一針

急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。

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頂門の一針

2004/12/26

■□ 渡部亮次郎の □■  ──────────── 2004/12/26  □■
□■ メイルマガジン■□  ───────────────────□■

              頂 門 の 一 針

                             Vol.54


                  山堂コラム 43:テンション民族
                  記憶と記録に残る判決:馬場伯明
                怖いから口を閉ざすのか:渡部亮次郎
                「サワギ(幸木)」を飾る:馬場伯明
                          話 の 耳 袋
                             反  響
                             訂  正                                                                  
                         身辺雑記:主宰者

□■■□  ─────────────────────────── □■
第54号             発行周期 不定期(原則日曜日発行)
               御意見・御感想は chomon@fsinet.or.jp
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山堂コラム 43:テンション民族
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日本が日米開戦を決意した最大の理由は、「ABCD包囲網」と言われた
米英支蘭による「経済制裁」である。とりわけ、米国からの石油の禁輸が
決定打となった。帝国海軍は「備蓄燃料が底をつき、戦艦大和がスクラッ
プになる」と恐慌にかられ、「座して死すより死中に活を求めん」と真珠
湾を攻撃した。60年余前のこと。まんまとルーズベルトにおびき出され、
負け戦(いくさ)に引きづりれたのである。多くの国民が死んだあと、戦
後になって真相が判明する。

このところ、北朝鮮への「経済制裁発動すべし」という声が俄かに高まっ
た。テレ朝のTVタックルでも、毎週の如く「北朝鮮けしからん、黒眼鏡
の将軍ぶっ潰せ」とやる。

サラ金提供の煽情番組とはいえ、繰り返し煽られれば将軍様も苛立ってく
る。ばれること承知で「馬に食わせるほどの病院のカルテ」や「どこの馬
の骨とも分からぬ馬の骨ならぬ人骨?」を藪中局長にお土産として持ち帰
らせた魂胆。北の真意はどこにあるのか。馬や鹿ほどの脳味噌しかない日
本の政治家でも少しは考えるべきだ。

日本側をコケにして怒らせれば、日本が次に切るカードは「経済制裁」に
決まっている。それが読めないような将軍様なら、民を飢え死にさせて何
年も権力の座に君臨出来るはずがない。日本のDNA鑑定技術を舐めたか
らという説もあるが、そうではなかろう。「遺骨がガセ」とバレることは、
折込みずみだったのである。

拉致被害者の家族、怒り心頭に発し「経済制裁発動」を激しく要求。国民
は同情し、TVタックルが煽る。国会議員までが付和雷同の「経済制裁!」。
すぐ尻馬に乗る議員どもの何たる無節操、無定見。ずっとほっぱらかして
いた連中が、いつの間にか「拉致被害者救済議員連盟」を名乗るようにな
り、「北にコメやるな、経済制裁やれ!」――さもしい。票が欲しいだけ
だ。

ついこの間まで金丸や野中、森喜朗らとピョンヤンまで行って「マンセイ、
マンセイ、キムイルソン!」とやっていたのは誰か。北朝鮮ではミョンド
ン他の核施設でプルトニウムの抽出が行われ将軍様は数個の核弾頭を保有
した。米国の軍事専門家が検証し、米国政府も確認。ピョンヤン放送も否
定しない。

ということは、彼の国に数発分の核弾頭は実在するということ。また、持
つ意志があるということは使う意志があるということ。将軍様はのたまう。
「経済制裁の発動、宣戦布告イスミダ」と。黒眼鏡は決して冗談を言って
いるのではない。

偉大なる将軍様の脳味噌の思考回路ではそれは正常なのだ。60年前の日
本の指導者の思想回路と変わらないと思えばいい。その不当性を国際世論
にいくら訴えても、肝腎の将軍様の脳味噌が受け付けなければ訴えても無
駄なのだ。

北がテポドンの発射実験をしたのは小渕内閣の1998年8月である。
「村山トンちゃん訪朝団」の準備で心浮き浮きだった野中官房長官。それ
をあざ笑うかのように、テポドンはラッキョウ頭を飛び越えて三陸沖まで
飛んだ。狼狽する日本政府もようやく核弾頭つきテポドンで攻撃された場
合の対策を検討開始。

先制攻撃(騙まし討ち)の場合、効果があるのは最初の1発ないし2発目
だから、標的は間違いなく「東京」。本気で攻撃するのに、京都の園部町
や人の住んでいない裏の「厠」を狙ってくるバカはいない。どんな想定で
図上演習しても、北朝鮮が東京にテポドン撃ち込んだら日本の自衛隊はお
手上げ。

報復攻撃する能力の無い日本はアメちゃんの力におすがりするしかない。
しかもだ、米軍が日本になり代わって北朝鮮への報復攻撃に踏み切るかど
うかさえ、実は心もとない。日本と米国には「軍事同盟・日米安保」があ
り、純ちゃんもブッシュの顔を立ててイラクへの派兵・残留を決めた。

しかし、中国・ロシアがバックにいることを考えると、ブッシュだって将
軍様を一気に捻り潰すのは、そう容易なことではないのである。拉致問題
の打開を目指して、年明け早々にも町村外相が北朝鮮に行くことになった。
純ちゃんが2度も訪朝して埒があかなかったものを、町村ごときがどうこ
う出来るとは誰も期待はしていない。

それでも相手が仮令、狂犬や狂牛病のような国でも、「揉め事」は戦争で
はなく外交で解決する。それがわが国の国是なのである。日本人は自らを
「天孫民族」だと思っているが、本当は世界に冠たる「テンション民族」。
将軍様の国も同じ。どちらもヤケになったら何しでかすか分からないとい
うのが世界共通の評価。

挑発に乗って興奮したり、尻馬に乗って雷同したり、すぐそうなっちまう
国民。それでずーっと判断を誤ってきた。同じ「テンション民族」である
だけにオラは危惧する。挑発するには覚悟がいるぞ。年末にあたり、日本
国会議員の諸君にも特に注意を喚起しておきたい。(了) 

(追記)拉致被害者の「家族会」と支援組織「救う会」が22日明らかにした
ところによると、同会が国会議員721人を対象に北朝鮮に対する経済制裁
の是非についてアンケートをした結果、回答をよせた381人中、「早期に
経済制裁を発動すべきだ」と答えた議員は313人82.2%だった。「発動す
べきでない」は1.3%、「どちらともいえない」が16.5%だった。「発動
派」が最も多いのは公明党94.1%、自民党86.0%、民主党80.0%だった(
産経新聞23日付)           
         


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記録と記憶に残る判決
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                 馬場伯明(04/12/24)

昨年秋と先日、記録と記憶に残る注目すべき判決があった。山口組下部組
織組員警官誤射事件損害賠償訴訟控訴審判決(大阪高裁、林醇裁判長2003.
10.30 以下「警官誤射」という)と神戸大学大学院生殺害事件国家賠償
請求訴訟判決(神戸地裁、村岡泰行裁判長 2004.12.22 以下「院生殺害」
という)である。
まず、「警官誤射」の概要を記す。(朝日新聞2003.10.31)

《 平成7年(1995)、京都市で暴力団抗争事件を警戒中に、山口組の下
部組織(当時)の組員に誤射殺された警察官の遺族が、渡辺芳則組長や実
行犯を相手に計約1億6400万円の損害賠償を求めた。原告は京都府警藤武
剛巡査部長(当時44)の妻ら遺族4人。林裁判長は「渡辺組長は下部組織
の対立抗争を指揮監督できる地位にあった」として民法の定める使用者責
任を認定した。

そして、実行犯2人と直属の山下薫組長3人に計約8千万円の支払いを命じ
た1審判決を変更し、渡辺組長を含む4人で賠償するよう命じた。一方、被
告弁護団は、「判決には重大な事実誤認があり、使用者責任の解釈、理解
についての根本的な誤りがある。上告して最高裁の判断を求めることにな
るだろう」とした。なお、実行犯2人はそれぞれ懲役18年と懲役7年の実刑
判決を受け、確定している。 》

この判決は特筆される。流れを変えた真に勇気ある判決である。国内最大
の広域暴力団のトップに賠償を命じた司法判断の前例はこれまではない。
また、(非合法活動での)上部組織の組長の使用者責任を高裁で認めたの
も初めてだ。

この判決は、抗争事件発生の抑止力になるとともにその被害者救済にも大
きな意味を持つと思われる。大阪府警によれば、この提訴と判決はその後
の暴力団抗争事件の減少傾向に影響しているという。

次に、「院生殺害」の概要を記す。(朝日新聞2004.12.23)

《 神戸市西区で02年3月、大学院生浦中邦彰さん(当時27歳)が元暴力
団組長らに車で拉致され、集団暴行を受けて殺害された事件で、兵庫県警
が適切な捜査を怠ったとして、浦中さんの母親が県と元組長らに約1億
3700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、神戸地裁であった。(な
お、兵庫県警は当時の神戸西署長ら10人を懲戒、訓戒処分にした。神戸地
裁は今年8月元組長ら6人に懲役20〜10年の判決を言い渡した)

村岡裁判長は県警の対応について「著しく不合理で、違法性を帯びる」と
述べたうえで、捜査を怠ったことと浦中さんの死亡に因果関係を認定、県
などに約9700万円の支払いを命じた。 》

判決は、兵庫県警の捜査ミスと被害者の死との因果関係を認め、犯罪の危
険から国民を守るべき警察の義務を指摘した。だが、警察官の不作為(さ
ぼり)や十分な規制や捜査をしなかったことの違法性を、民事訴訟で立証
するのは極めて困難であるという。

《 浦中さんの母親は妊娠中毒に苦しみながら、帝王切開をして命がけで
邦彰さんを生んだ。(そして育てた)調書のこのくだりを刑事裁判で読み
上げた検察官は、感極まって涙を流して法廷が一時中断した(朝日新聞
2004.12.23) 》という。最愛・有為の息子を殺された母の無念さはいか
ばかりだったか。

判決は原告側の全面勝訴となった。村岡裁判長は、実行犯の残虐非道を断
罪するとともに、警察官の現場到着遅延、暴力団の危険性の軽視、ずさん
な捜査などを緻密に検証し、立証の困難さを乗り越えて、国民の良識に応
える判断を下した。良質な勧善懲悪時代劇を観たような爽快さを覚えた。

強力な暴力団に対して)おびえ、ひるんだ(としか思えない)兵庫県警に
対して、乾坤一擲、鉄槌を下した村岡裁判長の英断に快哉を叫びたい。
「息子の無念を晴らすことができました」と母。だが、「裁判に勝っても、
息子が帰ってこないことが悲しい」と、母の悲しみは消えない。

2003年2月、埼玉県の桶川事件(猪野詩織さん殺害事件)1審判決は、県
警の捜査怠慢を認めながらも殺害との因果関係を否定した。来年1月の控
訴審判決へ向けて、今回の判決が直接的に影響することはないが、遺族ら
は神戸地裁の判決に大きく励まされたであろうと思う。

いま、北朝鮮経済制裁に対する小泉首相の弱腰、北海道警などの裏金乱用、
UFJ銀行の資料隠蔽、頻発する幼児殺しや親殺し、NHK会長の下手な
言訳、そして、生活を圧迫する増税など、悪い話がぞろぞろである。

このような中で、「警官誤射」「院生殺害」という自らは避けたい事件を
みごとに処理した、林、村岡両裁判官の、超然とした、正義感と人権感覚
に優れた営為に対して敬意を表する。ぜひ、後に続く若い立派な判事を多
く育成していただきたい。

この暗い年の瀬に、この世も捨てたものではないなと、私はうれしく思っ
た。 2005年はどういう年になるのだろうか。飛躍の年になってほしいし、
また、そうしたいものである。鳥になれ おおらかな 翼をひろげて /
 雲になれ 旅人のように 自由になれ♪(五輪まゆみ「時の流れに」よ
り)

(追加)今後の関心事を挙げる。Q1.判決を出した裁判官の「深層」
(生い立ち、司法教育、信条・思想、宗教観など)Q2.敗者(被告)側
の論理・反論 Q3.法理論(判例、外国の例等)(ばばのりあき千葉市
在住)

     
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怖いから口を閉ざすのか
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        渡部 亮次郎  04.12.22


アメリカが中国の軍事動向について協議しようとかねてから提案していた
が日本外務省は中国からケチを付けられるのが怖さに尻込みしていた、と
いう恐るべき実態が産経ワシントン駐在の古森義久記者によって喝破され
た。

<日米両国政府が米軍のトランスフォーメーション(再編)とともに日米
同盟の新しいあり方を探るために進めている戦略対話の最高レベルで、中
国の軍事動向が初めて主要議題となることが20日までに明らかになった。
軍事近代化の名の下に増強を続ける中国軍の動きは潜在脅威の要素が濃く、
日米両国の安全保障協力に大きく影響するものの、これまでは日本外務省
が日米戦略対話での主要議題にすることに難色を示してきたという。>
(産経新聞12月21日付)

こういう記事は東京にいる限り誰にも書けない。日本外務省は自分たちの
不都合は絶対明かさないし、定例的に情報交換会を開催している朝日新聞
に対してももちろん言わない。それなのにアメリカはそうした外務省を盛
んに批判を続けていたのだから、日本国民は馬鹿を見たわけだ。

多分、今期限りで国務副長官の地位を去るアーミテージ氏が親しい古森記
者に贈った特ダネだろう。古森氏は夫人がアメリカ人でワシントン駐在が
長い。しかも途中で北京支局長も経験している。

もともとは毎日新聞の外信記者だったが、上役と合わなかったことから産
経に移り、ロンドン、ワシントン、北京とキャリアを積み重ねてきたから、
今いるワシントンには政治家、役人、ジャーナリストの知己が多い。ほか
の記者たちは太刀打ち出来ない。その結果が、今回の特ダネだ。

民主党のクリントン大統領時代はアジアに関しては日本を軽視し、中国を
重視する姿勢だったから、中国の猛烈な軍備拡張政策にあまり注目しなか
った。むしろ中国のそうした動きは小平の始めた単なる軍の近代化の一
環に過ぎないとの評価だった。

これに対して共和党は中国の経済成長はそのまま軍事力の膨張につながる
と分析していた。アーミテージ氏とは数年前にワシントンで一緒になって
から交歓が続いているが、彼は中国ものすごい軍備拡張は、日米同盟の新
たなあり方を決めるうえで重要な要素だと、かねて主張していた。

中国がどう繕おうとこのところの中国の日本その他に対する軍事的威嚇行
動は台湾を奪取するはおろか、日本、韓国、東南アジア各国を併呑(飲み
込む)もしくは隷属させて、大中華民国を造り上げようという意図があり
ありだ。

特に日本に対しては領海侵犯、靖国問題、李登輝全台湾総統の日本訪問問
題などを通じて明らかな内政干渉を行っている。しかも経営に苦しむ日本
財界の中には苦し紛れに小泉首相に靖国参拝中止をあからさまに要求する
始末。これこそが中国の術中にはまったというべきである。

世論を分断し、カネのためには中国にひれ伏してもかまわないという世論
が次第に強くなれば、尖閣列島がいつの間にか中国に盗られてしまったよ
うに日本の世論も中国の自由にされ、やがて中国は何の犠牲を払うことな
しに日本を属国化するであろう。それにしてもなんと強(したたか)な国
家であろうか。国際世論など無きが如しの傍若無人振りではないか。

台湾は中国のものだと主張するが、中国は1度も台湾を実効支配したこと
が無い。蒋介石が毛沢東に負け、軍隊や職人を引き連れて逃げてきたこと
は事実だが、今の中華人民共和国政府には1度もへりくだったことは無い。
それなのに台湾は自分の物だという。いかなる理由に基づくものであろう
か。

さすがに日本国内では対中感情が過去最悪になっている。新聞社などの調
査ではない。内閣府の「外交に関する世論調査」で、結果が18日発表され
た。日中関係を「良好と思わない・あまり良好と思わない」が61%で前年
より18.1ポイントも急増して過去最悪を記録した。「中国に親しみを感じ
ない・どちらかというと感じない」モ10.2ポイント増えて 58.2%と過去
最悪となった。

しかもこの調査は中国原子力潜水艦による領海侵犯事件、靖国参拝の小泉
首相非難、李登輝ビザ発給取り消し要求などの起こる前である。今だった
らもっと悪くなっているだろう。アメリカはとっくに中国の意図はその時
々の一時的なものではなく、先に述べた大中華民国の建設という大きな国
家戦略に基づく潜在脅威と見定め、安保条約で結ばれている日本に対して”
親切“に協議しようと提案していたのだ。

それなのに日本側は「そんなことを協議の議題にすれば中国を刺激する」
とばかりせいぜい外務事務次官より2レベル下の審議官(田中審議官は正
式には外務審議官だから、それより下のアメリカ局審議官クラス)での協
議を主張し、しかも議題の末端に入れるよう求めていたのだという。いう
なれば隠れて協議するよう求めた、ないしは取り上げまいとしたのと同様
である。

これを称して世間では腰抜け、という。宮沢内閣以来である。古森記者の
伝えるところによれば、さすがに最近の動きを見て外務省もアメリカに応
じないわけには行かないと判断したそうだが、その理由のひとつが外務大
臣が川口順子氏から町村信孝氏に代わったことにあるという。いうなれば
日本外交がやっと正常化したというわけだ。川口さんは女性だっただけだ。
(了)


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「サワギ(幸木)」を飾る
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          馬場伯明(04/12/20)


年末年始は長崎の実家へ帰省する。寝たきりに近い父の介護状況もあいか
わらずである。ふるさとでずっと続けていることがある。

「サワギ(幸木)」の飾り付けである。年があらたまる。代々続いた先祖
を敬い、今生きていることに感謝する。正月の飾り付けの場所とやり方は
昔から決まっている。庭の孟宗竹を切り出し、門松をつくり、門に飾る。
神棚、仏壇、床の間、井戸、小屋に、大小重ねの鏡もちなどを供える。

そして、母屋の土間である「内庭(うちにわ)」の大梁に、サワギを飾る。
サワギとは、幸木(さいわいぎ)、幸い・幸福を願う木である。めでたい
品々を飾り付け、新しい年の豊かな実りと海の安全・大漁、家内安全を祈
る。
サワギには松の丸太を使う。太さ20cm、長さ2mの丸太を内庭の大梁に、
太いシュロ縄で、約2メートルの高さに2点止めで吊るす。つぎに、新藁
(わら)で手綯い(てない)した縄を撚り合わせた「サガリ(長さ約40c
m)」を10cm間隔で12本ぶらさげる。

サガリは、ふだんは農作業用の小道具や食べ物の籠などを掛けるために使
うものである。正月のサワギにはめでたい植物や山の幸、海の幸を飾る。
植物では、ツルシバ、モロモク、山の幸では、大根、米、餅、つるし柿、
橙、そして、海の幸としては、ブリ、タイ、するめ、コンブなどである。

これらを飾る「いわれ」については、小さい頃から父が教えてくれた。ツ
ルシバとはユズリハ(譲り葉)のこと、古い呼び名は親子草という。新し
い葉が生えると2代前の古い葉が枯れ落ちる。この様子が親から子孫への
順調な世代交代をあらわすことから、めでたいとなる。

モロモクはシダ(羊歯)の一種のウラジロ(裏白)のことである。葉柄が
分岐していて二又となり葉は羽状になっている。風が吹けば二又いつもい
っしょに揺れなびく。これが仲のよい夫婦の姿とみなされる。また、葉の
数が多く、齢(ヨワイ)に通じ長寿の意味がある。

ツルシバとモロモクはサワギの真ん中に飾る。大根は葉が付いたままシャ
ワギの両端に2本ずつさげる。新米や塩は半紙に包みサガリにはさむ。新
餅米で搗(つ)き、12個の丸もちをツトゴロ(ワラヅト、藁包)に入れて
さげる。

つるし柿は長持ちするので長寿の意味がある。橙(だいだい)は家が代々
続くということで縁起物とされる。魚はブリやタイを飾る。タイはめでた
い魚である。スルメは保存食であり長持ちし、コンブ(昆布)も生命力が
強くて姿が長い。ともに長寿の意味がある。

最後に、農機具の代表として鍬(くわ)を掛けてサワギ飾りの完成である。
(ほんとうは、写真でお見せしたいが・・・)この飾り付けは年の暮れの
31日に行う。子供の頃は父の指図によりみんなで作業をした。山の幸、海
の幸は母が手配した。

サワギに使う松の木は父と私が山から切り出した。ツルシバとモロモクは
私が山へ採りにいった。モロモクは新切りの山にあったが、ツルシバはな
かなか見つからず探しまわった。葉柄の紅いツルシバを見つけたときはう
れしくほっとした。

(昭和55年(1970)、庭にツルシバを植え、探す苦労はなくなった)また、
正月2日には、縄の「綯い初(ないぞめ)」をして縄を一束飾った。小さ
い頃、早朝から父と藁を打ち、縄を綯うのは辛かった。しかし、新しい縄
の束を飾り付けると、サワギがとても豪華な雰囲気になった。 

1998年(平成10年)正月、サワギを飾る両親の写真が長崎新聞に掲載され
た。じつは、田舎の町でもサワギを飾る家は今ではもう数軒しかない。実
家では(農業はほとんどやめたけれども)私たちがサワギを守る。なお、
つるし柿は「福をかき集める」、モロモク(ウラジロ)は裏面が白く「と
もに白髪が生えるまで」で長寿、昆布は「よろこんぶ」といって、縁起が
よいとなる。昔の人はよくしたものである。

また、サワギ(幸木)は、長崎県内でも、他所では、サチギ、シャチギ、
サイギ、シャワギなどともいうこともある。老母の歌集(自費出版 平成
4年)には、餅つきやサワギ(幸木)飾りなど、正月を迎える晦日の仕事
についての、つたない歌がある。

餅搗(もちつき)を楽しみに来る孫子らに臼を洗いぬ杵も揃へぬ新藁を打
つ音響き夫(つま)と息子(こ)は幸木飾りの縄綯いをりぬ幼孫はひとに
ぎりの藁で縄綯いぬ幸木にさげて心足り居る吾が畑に穫れし黒豆小豆大豆
それぞれに煮て御節の膳に松葉するめ刻みて今年の事終えり晦日の夜の団
欒に入る今年は12月29日に帰省する。

翌30日には餅をつき、部屋や庭の掃除をする。大晦日には、門松を立て、
神棚やサワギを飾るなど私の仕事は多く忙しい年末である。しかし、変わ
らぬしきたりを続けることはある種の楽しみでもある。皆さま方の新しい
年の幸いを心から祈る。(ばばのりあき 千葉市在住 )     


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話 の 耳 袋 
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 1)「国際風雲人物」に小泉首相入選 中国紙選定 

19日の中国紙「新京報」は、今年世界で注目を浴びた政治家ら14人を「国
際風雲人物」に選定し、小泉首相をブッシュ米大統領、アナン国連事務総
長、アラウィ・イラク暫定政府首相らと並ぶ”入選者“に挙げた。


同紙は1ページを使って今年の「小泉評」を展開。入選理由は「政治大国化
に向け大きく踏み出し、軍事大国への夢想も抱いている」と指摘。キーワ
ードとして、2度目の北朝鮮訪問や北方4島の海上視察などを挙げた。

 2)日本外交協会の坂本重太郎理事長を団長とするヴェトナム親善訪問
団14人が11月22日から27日までホーチミン、ハノイ両市を訪問、ハノイ市
公安局に日本の中古消防車7台(目録)を寄贈した。消防車は日本国内の自
治体から寄付されたものを徹底的な整備が施され、近く両国の国旗をあし
らって寄贈される。(日本外交協会報12月1日号)

 3)台湾のTVBSテレビが23日発表した世論調査によると、台湾の将来に
かんする住民投票が実施され、「中国との統一」「た湾独立」「米国の1州
になる」のいずれかの選択を求められた場合、41%が「台湾独立」を選ぶと
回答した。「統一」は24%、「米国の1州」は15%だった。一方、台湾の
進むべき方向に関する質問では「現状維持」が59%で最も多く、ついで
「独立志向」19%、「統一を志向」11%の順だった。(産経新聞14日付 台
北発共同)

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反  響
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 1)司馬遼の件、だいぶ前に知りさもありなんと気にもませんでした。
所詮作家も人間です。彼の作品に崇高な精神を求める傾向がありますが、
ストリーテイラーとしての面白さだけではないでしょうか。全人的なもの
があるかのように錯覚しますが、作品とは切り離してみた方がいいと思い
ます。日露戦争から100年で「坂の上の雲」が再評価されているだけに
強く感じます。

それに作家は死後の評価は作品だけではないかとも思います。大阪の記念
館に行き、このことを改めて発見した次第ですもっとも 記念館に積上げ
られた膨大な古書を繋ぎ、紡ぐ力量はすごいですね。実在の人物を掘り起
こすのは大変なエネルギーがかかることがわかりました。その意味で作品
の限界があるようですが...小泉の方は 窮まってきていますね。政策
などありようがない どうでもいいというしかないですね(一)

 2)年令を重ね冬の季節になる度に、東京近辺に住んでいて良かったと
思う。第一に晴天の日が多くめったに雪が降らないし、気温が低いと言っ
ても晴天でカバーされて、寒さはあまり気にならない。布団干しもできる
し、散歩も出来る。ゴルフもできる。本州の日本海側や北海道と較べれば
本当に恵まれていると思う。

私は物心がついた時から高校卒業まで秋田で過ごし、いわゆる東北育ちで
あり続いて北海道の札幌で20年、北陸の金沢で6年、通算44年間も「北」
のつく地方で雪と寒さに関わってきたので、現在は良い運命に恵まれたと
思っている次第。

和田アキ子並びに司馬遼太郎の話、全く知りませんでしたが、同感です。

自分がもし看護される立場になった場合、日本人の良く訓練された看護士
に看護してもらいたいと思いますね。でもフィリピン人の看護士に世話に
なる日も遠くないような気もします。

NHKの問題は思った通りの展開になってきたようです。海老沢会長のエビ
ジョンイルと言われる体質が表面化したものと思われ、本人の辞任は避け
られないのでは?このままでは受信料の未納者が増えるばかりでしょう。
(宅)


━━━━
訂 正
━━━━
「司馬遼太郎について」は、長い文章を載せていただきありがとうござい
ました。少なくとも独自性はあると思います。マスコミ等が書かない、書
けない、という意味で。友人(弁護士)が福田定一の長男=福田尚平を立
証したことは、文壇史を訂正したことで有意義だったと自負しております。

離婚の年が、(誤):昭和24年(1954)(正):昭和29年(1954)、です。
訂正します(馬場伯明)。


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身辺雑記:主宰者
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ひとつ持病はあるが急に命にかかわるといったものではない。70目前にし
ては元気な方だろう。22日夜、東京・神宮前の住宅街の真ん中にあるしゃぶ
しゃぶ屋での忘年会に招かれたとき、ふと寒気がした。おかしいなと思っ
ているうちに本格的に震えが来て、風邪と分った。

しかし翌朝には熱も引いていた。36.6度なんて熱ではないわよ、といわれ
たがこちとら平熱が35.9度なんだから、珍しく風邪だったのだ。8年か9年
ぶりぐらいだ。万病の始まりは風邪に似る、とよく言われる。しかし翌朝、
のどに痛みがあった程度だから心配は要らないようだ。

午前中8,300歩を歩き、午後も同じぐらい歩けたら本復というべきであろ
う。しかし安心は危険だ。

愚兄誠一郎は胆嚢をすでに切除したのに胆石になり、胃袋も無いのに失血
性胃潰瘍をやった。初め胆石の疑いで秋田市内の病院に入院。石は肝臓に
入り込んでいるらしいと分った。それにしても血液の具合が変だ、と検査
したら、失血性胃潰瘍を起こしていたのだという。この病気では先ごろ小
説家故徳永直の長女で女優が死亡している。

それでも兄は何とか頑張り半月で退院した。肝内結石についてはしばらく
様子を見ることになった。胃の方は手当てを終えた。 24日、話を聞いた
が、肝臓の石については処置が未定のまま。当然高熱に伴う震えが時々来
るという。失血性胃潰瘍の原因たるストレスについては詳しく聞いたが、
妹婿の恥をさらすことになるので控える。

都立猿江恩賜公園を毎日散歩するのが日課だが、2,3日まえ、枯れ枝の
中に黄色いものがふわりと載っている。近寄ってみたら花だった。天和年
間い中国から伝わったという「連翹=れんぎょう」ではないか。早春の花
ではあるが、少し早すぎないか。

その下では水仙が半月も前から咲いている。早すぎないか。12月といって、
寒い日もあるが総じて東京は暖か過ぎる師走である。

次号配信予定は12月26日午前5時。今年最後の号となる。ご投稿、ご感想
などをお待ちしてます。
















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創刊日:2004-01-18  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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