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幻妖通信

評論家、アンソロジストの東雅夫がおおくりする出版情報サイト「幻妖ブックブログ」から新着記事、おすすめの新刊など、ホラー&幻想文学ファン必見の情報を発信していきます!

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◆幻妖通信◆第11号040715

2004/07/15

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           ◆◆◆幻妖通信◆◆◆
         http://www.bk1.co.jp/s/horror
                 presented by bk1( www.bk1.co.jp )
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆2004/07/15発行◆
       ようこそ、幻想と怪奇のブック・ワールドへ!
 オンライン書店bk1のセレクトショップ<怪奇幻想ブックストア>がお届
けするメールマガジンです。<怪奇幻想ブックストア>とは評論家&アンソロ
ジストの東雅夫が店長を務める、ホラーと幻想文学の専門書店。
 新着記事の紹介、新刊へのリンクのほか、読者のみなさんから募集した書評
も掲載していきます。お楽しみに!

◆目次 …………………………………………………………………………………
 ■コラム 怪談漬けの日々
 ■新着記事
 ■おすすめ新刊
 ■雑誌内雑誌『virtual*幻想文学*east』2004年7月号indexmap
 ■書評募集
……………………………………………………………………………………………
■コラム  ……………………………………………………………………………
怪談漬けの日々
東 雅夫

 はやばやと夏本番さながらの猛暑が続いているが、そんな異常気象に誘われ
てか、盛夏の風物詩「怪談」も、今年は例年になく前倒しで盛り上がっている
かのような趨勢である。
 先月18日の『幽』創刊を皮切りに、25日には恒例の『新耳袋』第九夜が
発売(特に終盤の「迎賓館」をめぐる執拗な怪異のつるべ撃ちは圧巻だ)、翌
26日には『幽』創刊を記念した「怪談之怪」イベントが東京青山で開催さ
れ、主要な実話怪談の書き手が一堂に会するという歴史的光景が、はからずも
実現をみた(このときの詳細は、bk1のタカザワケンジさんによるリポート
を参照されたい)。
 今月に入っても、『ダ・ヴィンチ』8月号で「この夏、怪談が文芸を変え
る」(!)と銘打つ怪談特集が組まれるかと思えば、木原浩勝氏プロデュース
による新宿ロフトプラスワンの新耳&妖・怪・談イベントが開催され、後者で
は「くだん」談義に際して小生も急遽、登壇する仕儀となった。
 公私ともに怪談漬けの日々が、まだまだ続きそうな雲行きである。

 こうした情況をうけて、怪奇幻想ブックストアでも、昨年好評をいただいた
「bk1怪談大賞」を、今年も開催するはこびとなった(昨年度大賞受賞の朝
宮運河氏は、『幽』や『幻妖通信』のレビュアーとして活躍中である)。
 昨年、選者をお願いした福澤徹三さんに加えて、今年は加門七海さんも選考
に加わっていただけるとのこと。怪談語りには一家言ある加門さんだけに、ど
のようなセレクションや指摘がなされるのか、今から興味津々である。ふるっ
ての御応募を期待したいと思う。
 ちなみに福澤さんといえば、来月には幻冬舎から、書き下ろし長篇ホラー
『壊れるもの』と、衝撃のデビュー作『幻日』の文庫改題版『再生ボタン』が
相次ぎ発売されることになっている(bk1では購入特典が予定されているの
で、よろしく!)。
 長篇もさることながら、文庫の『再生ボタン』も要注目。小生、解説を依頼
されてゲラを通読したのだが、細部にわたり徹底した推敲が加えられて、単行
本版とは面目一新していることに驚かされた。読み進めながら、あくまで「語
り口」にこだわる福澤怪談の真髄を、目の当たりにさせられる心地がしたもの
だ。単行本版と文庫版を仔細に読みくらべてみれば、怪談語りの実践テクニッ
クを習得するうえで、得るところ大なのではあるまいか!?

 ところで、先にふれた「怪談之怪」イベントでは、歌人の佐藤弓生さんが、
現代詩を代表する書き手のひとりで先年急逝した辻征夫の詩集『鶯――こども
とさむらいの16篇』(書肆山田版『辻征夫詩集成』所収)から三篇を朗読し、
深い感銘を与えた。参会者の中には、「当日、いちばん怪談会っぽい雰囲気
だった」と感じた向きも少なくないらしい。どんな詩だったのか、一部を引用
してみよう。

「ああ今日がその日だなんて/知らなかった/ぼくはもう/このうちを出て/
思い出がみんな消えるとおい場所まで/歩いて行かなくちゃならない/そうし
てある日/別の子供になって/どこかよそのうちの玄関にたっているんだ/あ
の子みたいに/ただいまって」(「突然の別れの日に」より)

「まごしろうどの/そのとき でした/わたくしのとりかごが/しずかにあか
るくなったのは/ほら/わたあめ/のような/やわらかい/まごしろうどのの
 ひとだまです」(「鳥籠」より)

 辻の詩は、ことさら怪談を意識して書かれたものではないのだろうが、怪談
会という特殊な「場」で朗読されることによって、そのうちに孕まれる心霊的
抒情――たとえば室生犀星の絶品「後の日の童子」にも通ずるような哀切な幽
(かそけ)さ――が、より濃密に抽出された観があった。
 先にふれたダ・ヴィンチ特集の惹句ではないが、「文芸としての怪談」探究
をポリシーのひとつに掲げる『幽』にとっても、ある種の示唆を与えてくれた
得がたいひとときであったと思う。

 文芸怪談といえば、先ごろ刊行された小池真理子の短篇集『夜は満ちる』
は、『水無月の墓』や『ノスタルジア』の流れを汲む、迫真の現代怪談/異界
小説集として、出色の一巻だった。
 同書の帯には「愛と悦楽の恐怖を綴る極上の幻想譚」という、怪奇なんだか
幻想なんだかハッキリせいやぁ〜と、思わず問い詰めたくなるような惹句が掲
げられているが、おそらく本書を最も率直に歓び迎えるのは、たとえば鏡花の
「白鷺」や百鬼園の「青炎抄」、あるいはメイ・シンクレアやウィルキンズ―
フリーマンの諸作に代表されるような、文芸としての怪談を愛する読者たちで
あろう。
 好色だが魅力的な病院長との不倫関係に疲れ果てた女性秘書、いつ部屋を訪
れるとも知れない馴染み客を待ちわびるホステス、長患いの夫を甲斐甲斐しく
看取りながら、マッサージ師との逢瀬の記憶に溺れる若妻、満ちたりた家庭を
捨てて年下の愛人のもとへ走る中年女性……ひとしく恋愛に起因する煩悶や孤
愁を内に抱えもつヒロインたちが、ある瞬間、幽体離脱を思わせるような妖し
さでスルリと現世の枷を超え、異界のとば口に踏み迷うありさまを描くという
点では、これまでの諸作と同様であるのだが、従来ともすれば憧憬や慰撫の念
とともに描かれていた異界の感触が、本書にあってはザラリとしてほろ苦く、
ときに酷薄な印象を抱かしめるものに変質している。
 いうなれば本書は、異界へと誘われるヒロインたちの「霊」よりも「肉」の
部分に執着した作品集なのである。『欲望』をはじめとする官能的な恋愛小説
の諸作で、よりいっそう研ぎ澄まされた観のある人間観察眼と艶麗な筆致が、
本書所収の諸篇に鬼気迫るリアリティを付与しているといえよう。

「小池さんの新作、いいよねえ〜」と、『小説推理』の担当編集者Hさんと話
しているうちに、同誌で続けているシリーズ特集「幻想と怪奇への誘い」の次
回テーマ(10月号掲載予定)を「女性たちの官能怪談」(笑)とすることに
決まってしまった。もちろん小池さんにも巻頭グラビアで御登場いただく予定
なのだが、昨年度のムー伝奇ノベル大賞入選の三人娘(!?)――『逢魔の都
市』の葉越晶、『旅芝居怪談双六』の長島槇子、『犬飼い』の浅永マキの三氏
に、「官能」怪談を競作していただくという趣向である。
 いかなる作品が到着するか、目下ワクワクしながら待ち受けているところ
だ。いやはや……怪談漬けの日々は、当分のあいだ終わりそうにない。

『幽 第1号』東雅夫(編集長)/メディアファクトリー \1,419
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02445919

『新耳袋 現代百物語 第9夜』
木原 浩勝、中山 市朗/メディアファクトリー \1,260
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02455771

『壊れるもの』福澤徹三/幻冬舎 \1,575
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02461572

『夜は満ちる』小池真理子/新潮社 \1,470
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02452874

『水無月の墓』小池真理子/新潮文庫 \420
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02452874

『ノスタルジア』小池真理子/双葉文庫 \580
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02263267

『逢魔の都市』葉越晶/学研 \1,785 
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02390652

『旅芝居怪談双六』長島槇子/学研 \1,785 
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02423633

『犬飼い』浅永マキ/学研 \1,470 
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02423629

(東 雅夫/怪奇幻想ブックストア店長・評論家・アンソロジスト)

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■新着記事
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怪談専門誌 『幽(ゆう)』 創刊イベント
第14回怪談之怪"怪談百物語会"を見に行く
http://cgi.bk1.jp/nph-j.cgi?2004071420471410
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
この夏もっとも注目すべき新創刊雑誌は、怪談専門誌と銘打った「幽」だ。
<怪奇幻想ブックストア>店長でもある東雅夫が編集長を務める「幽」とはど
んな雑誌なのか? その一端がうかがえるゴージャスなイベントをレポート!

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角川ホラー文庫 今月の新刊
http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040312&t=01/0117000000430000000011
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角川ホラー文庫7月の新刊。人面町で暮らしてみませんか? 北野勇作『人面
町四丁目』、安アパートの一室に開いた穴から見えたものは? 山本亜紀子
『穴』、韓国ホラー映画『友引忌』を小説化した吉村達也『ナイトメア』と、
今月も個性的な作品が登場しました!

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「第2回bk1怪談大賞」作品募集のお知らせ
http://cgi.bk1.jp/nph-j.cgi?2004071420473810
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昨年開催し好評をいただきました、「bk1怪談大賞」の開催が今年も決定し
ました! 選考は、昨年に引き続いての参加となる福澤徹三さんに加え、加門
七海さんの参加を予定。あなたの怖い怪談をぜひお送りください。

■おすすめ新刊 ………………………………………………………………………

『夜は満ちる』小池真理子/新潮社 \1,470
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02452874

『新耳袋 現代百物語 第9夜』
木原 浩勝、中山 市朗/メディアファクトリー \1,260
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02455771

■『virtual*幻想文学*east』2004年7月号indexmap  ………………………

【インタビュー】
東雅夫「怪談専門誌『幽』の読みどころ」(『ダ・ヴィンチ』8月号)
よみがえる怪談(『読売新聞』7月4日付朝刊)

【レビュー/エッセイ/ガイド】
現世の手触りをもった異界――小池真理子『夜は満ちる』(『波』7月号)
Ghostly Japan――松江への誘い(『ダ・ヴィンチ』8月号)
〈幻想と怪奇〉時評――『復活の儀式』『世界の涯の物語』(『小説推理』8
月号)
「第4回ムー伝奇ノベル大賞」選考会リポート(『ムー』8月号)
日本伝説紀行 大念沸寺に伝わる謎の幽霊画(『ムー』8月号)

■幻想ブックレビュー ………………………………………………………………
読者のみなさまから寄せられた書評から、2本をご紹介します。

そのほか、広く怪奇幻想に関わる本の書評も合わせて募集しております。投稿
の方法は、■書評募集をご覧下さい。

評:うみひこ
ゴシックの城へようこそ
評価★★★★★

『伝奇ノ匣 7 ゴシック名訳集成西洋伝奇物語』
東 雅夫編/学研M文庫 \1,470 
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02449221

 夏休みに田舎の屋敷に滞在し、家人のいない一時にふと屋根裏部屋でこの本
を見つけ、一気呵成に読んでしまった。気が付けば、あたりは夕闇に閉ざさ
れ、この世ならぬ世界に一人旅立ってしまった思いに震えていた…。そんなふ
うな幸福な出会いをしたい一冊である。
 巻頭のギュスターブ・ドレ描くポーの『大鴉』。日夏耿之介の豪奢としか言
い得ない訳詩との組み合わせは、一目で読者の心を掴むだろう。読者は、この
詩画集によって日本語の言葉というものの不思議さや、漢字表記そのものの中
にあるある種の美に気づき、いわば視覚の快楽のようなものに打たれるに違い
ない。貴重な断片、日夏耿之介の『アッシャア屋形崩るるの記』で、そのゴ
シック詩体を楽しんだ後、数々の名訳が繰り広げられる。
 まず第一弾の物語は、もちろん言わずとしれたゴシック小説の神髄『おとら
んと城綺譚』。編者によると、ゴシックの開基であるこの作品は、平井呈一の
凝りに凝った擬古文体に、歌舞伎の一幕かと驚かされるであろう。だが、辞書
を引く暇もあらばこそ、気が付けば読者は、婚礼の朝に大兜の下に押しつぶさ
れた若い花婿、その花嫁を奪わんとする城主の企み、額縁より現れ彷徨う亡
霊、尼僧院へ続く地下道、血を流す彫像、錯綜する恋の思い、出生の秘密等々
の、次々に繰り広げられるゴシック小説の「要素」によって翻弄され、濁流に
流されるように一気呵成に終末へ向っていくだろう。
 続く『開巻驚奇 龍動鬼談』にいたっては、ロンドンを倫敦ではなく、龍が
動くという当て字に驚き、人名「エフ」や「ゼイ」に目をそばだてる間もな
く、気が付けば「身の毛立ち股戦粟く」物語の中に引き込まれてしまうだろ
う。怪異談に終わらず、謎が解かれたようで、解き明かされない余韻が何とも
いえない作品だ。
 そして、涙香調という言葉は知っていたが、正しく、これなんだと思わせる
逸品。巻を措くをあたわずという勢いで読ませてしまう『怪の物』。人名がイ
タリア人なのに梅川槇子でも梅川安頓でもかまわない。ただひたすら孤独な医
師の夜の窓辺にしたい寄る者の哀れな境遇が心の中に残っていく。
 これらの物語の他に、何よりも、小泉八雲の名講義が二つ収録されているの
が、嬉しい。明治にこの講義を聴いた人々がしみじみ羨ましい。特に『小説に
おける超自然の価値』で語られる「ghostly」なものの意味と「夢」の重要性を
説く言葉には、深く打たれる思いがする。その結びの言葉、「『彼方』にある
ものを扱う文学では、夢はあらゆる美しいものの源泉である。」にため息を吐
きながら、巻を閉じよう。怪異と美が混在するゴシックの城さながらの見事な
一冊に、今宵の夢は華麗に彩られるに違いない。


評:岑城聡美
聖なる都に巣くう魔物達の饗宴
評価★★★★★

『鎮魂歌(レクイエム)』
グレアム・ジョイス 浅倉 久志訳/ハヤカワ文庫 \882 
  http://cgi.bk1.jp/nph-jg.cgi?d=20040715&b=02445757

 妻の不慮の死、勤務先での不可解な事件…。主人公トムは運命のレールに乗
せられたかのように、美しく混沌とした聖都、エルサレムへと向かう。この流
れるような、巧みに読者を誘導する冒頭部にまずは魅せられた。エルサレムで
出会う、死海文書を隠匿した謎の老人、そして次第に姿を露わにしてくる幻の
老婆。随所に散りばめられた謎が、読むものを引きつけて離さない。幻想文学
としてはもちろんのこと、エンターテイメントとしても非常に優れた作品だ。

 はじめのうち聖都として描かれたエルサレムは、次第に魔都としての様相を
露わにしていく。トムの内側に巣くう幻想が、狂気が、まるで体を裏返したよ
うにエルサレムの町に投影され増幅してゆくのだ。その過程を追うことで息詰
まるような興奮を味わうことが出来る。しかしそれは、果たしてトムの無二の
友人であるシャロンが読み解くように、彼の内なる罪悪感が作り出す幻覚なの
か、あるいはエルサレム全体を覆う魔物の仕業なのか、どこまで読み進めても
判然としない。この曖昧さがますます読者を本書に釘付けにする。

 トムが抱く罪悪感の根元は、キリスト教的倫理観に基づくものである。いわ
ゆる「姦淫の罪」がそれだ。本書の第二の魅力は、男性の性的感覚を見事に描
写し、かつ男性から見た女性の性的魅力をも実に的確に捉えている点にある。
ここに言う女性の性的魅力は、作中登場するマグダラのマリアに象徴されるだ
ろう。マグダラのマリアは様々な女に変貌する。前述の老婆をはじめ、亡き妻
ケイティー、友人シャロン、精神を病んだ女クリスティーナ、そしてトムの堕
落のきっかけを作った美しき女生徒ケリー。どの女性の中にも普遍的にマグダ
ラのマリアは存在し、誰もが聖なる娼婦になりうる。そして、著者が描く女達
は、いずれも性的にたまらなく魅力的だ。男が欲情したとき、女はその目にど
う映るのか。これが実にエロティックに、かつ美しく描写されている点に脱帽
した。

 さらに、キリスト教の歴史的解釈という点から見ても、この作品は実に興味
深い。新約、旧約両聖書に多少の造詣があれば、なおさら本書を楽しんで読む
ことが出来る。これも作品中の大仕掛けの一つであって、この場に置いて結末
を書くことはこれから本書を手にされる方の興を削ぐ可能性があるため出来な
いのだが、登場人物達を取り巻く幻想の世界と並行して、大々的な歴史読み物
的エピソードが展開される点も本書の魅力の一つだろう。

 宗教に取り憑かれる大衆、歴史の謎に取り憑かれる老人、一人の男への偏執
的な恋に取り憑かれた女、そして女そのものに取り憑かれた男の性…。この物
語に登場するあらゆるものが、作中において「ジン」と呼ばれる魔物に取り憑
かれたかのようだ。この壮大な物語を読み終えて、エルサレムという街そのも
のが、あるいはジン(魔物)なのかも知れない、そんな考えがふと脳裏をよ
ぎった。


■書評募集 ……………………………………………………………………………
幻妖通信では読者のみなさんからの書評を募集しています。
今はなき『幻想文学』の「幻想ブックレビュー」を継承する書評コーナーに育
てていきたいと思います。ぜひ投稿をお願いいたします。

□書評の対象となる本
・書評の対象となる本は広く怪奇幻想ジャンルの本とさせていただきます。

□締め切り
・毎月末日が締め切りです。翌月発行の「幻妖通信」誌上で選考結果を発表し
ます。

□投稿の方法
書評の投稿は以下のステップでお願いします。

1)bk1( http://www.bk1.co.jp/ )で書評したい本を検索する

2)書評したい本の「書籍詳細画面」下の「この本の書評を書く」をクリック

3)メールアドレス、パスワードを入力して「認証する」をクリックする
 (初めてbk1をご利用される方は会員登録をお願いします)

4)「書評登録画面」で書評を登録し、「投稿する」ボタンを押す

5)bk1に書評が掲載されたことをご確認の上、以下の要項を明記し、
   gensou@bk1.co.jp までメールをお送り下さい。

・件名:幻想ブックレビュー応募
・本文:
  ●投稿した書籍の 書名/著者/出版社
  ●書評を投稿した際のニックネーム
  ●氏名
  ●メールアドレス

*書評の詳しい投稿方法についてはこちらをご覧ください。
 → http://www.bk1.co.jp/s/genyou/shohyou/

ご応募お待ちしています!

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☆ 次回は、8月10日頃にご案内いたします。
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★ 1500円以上お買い上げいただくと、国内送料無料!
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創刊日:2003-12-10  
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