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中国スポーツ独白

中国の野球、サッカー、市民スポーツなど、スポーツのある風景を題材に、中国社会の変化や現状を紹介。北京在住で中国スポーツ事情を追いかける坪井信人がお届けします。

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「中国スポーツ独白」No.23(通巻69号)

2005/01/03

************************************* 2005/01/03 No.23(通巻69号)******

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--   中国スポーツ独白   -----------------------------------
  └───────────┘  〔発行・構成・執筆〕坪井信人(北京在住)

    〜スポーツから「中国の市民生活」や「等身大の中国」が見えてくる。

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あけましておめでとうございます。
発行がとどこおり、たいへんご無沙汰しておりました。

「瑞雪兆豊年」(積雪は豊年のしるし)

東京は年末から大雪だったと聞きます。痛ましいニュースが多かった昨年ですが、
白雪が今年の運気を呼び込んでくれたことでしょう。みなさまにとって、本年が最
高の一年でありますように。

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中国スポーツ「改革元年」
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昨年最初のメルマガ(通巻52号、04/01/04)は、「中国スポーツ元年」というタイ
トルで書きました。今年は「改革」という2文字を加えた年になりそうです。

「改革元年」。くしくも日本のプロ野球界が掲げるスローガンと同じです。「中国
スポーツ界も危機的状況か?」と聞かれれば、「そうであるともないともいえる転
換期に差し掛かっている」と答えるのが適切でしょう。

・競技スポーツ

2004年、アテネ五輪で中国代表選手は、32個の金メダルを獲得。競技スポーツで世
界トップレベルの実力があることを改めて証明しました。しかし、そんな一握りの
トップ選手以外、スポーツ選手の引退後の生活は、悲惨を極めています。

ステートアマと呼ばれる共産主義政権下での「エリート育成システム」の中で育っ
たスポーツ選手は、引退後の生活保障がありません。日本でも若くして引退するプ
ロスポーツ選手の第二の職探しは簡単ではないようですが、中国では、日本とは比
にならない難しい背景があります。

国際大会で好成績を挙げればヒーローになれます。しかし、その波に乗れなかった
大多数のスポーツ選手は、波に飲まれ、社会から落伍者として見られてしまうのが
現実です。何度も書いているように、中国でのスポーツ選手の地位の低さ、学歴優
先主義も、スポーツ選手が引退後にアイデンティティを確立することを妨げている
要因でしょう。

中国野球を例にすると、2002年の新リーグ(中国野球リーグ〔CBL〕)誕生以来、
トップリーグ強化と普及の両面で、大きく前進しました。しかし、日本では実態以
上に報道されている感が否めず、実質的には、中国野球の選手は公務員と同等の給
料しか受け取っていないにもかかわらず、一部の指導者への道が開けている選手以
外は、引退後の生活は闇の中。一からの出直しです。トップ選手ですら、引退後に
数年生活できるだけのたくわえしかないとなれば、人の親は、子どもにスポーツを
させたいと思うでしょうか。

社会主義システムが機能していた時代は、引退後もある程度の生活は保障されたの
でしょう。しかし経済の自由化が、スポーツ選手の引退後の生活を困難にしていま
す。そんなスポーツ界の現実に多くの中国人が気づいたいま、「五輪に強い中国」
が崩壊する危険が、年々高まっています。

・大衆スポーツ

しかし、競技スポーツとは対をなす大衆スポーツが重視される社会への転換が進み、
大きな潮流として、その勢いが強まっています。大衆スポーツとは、健康のため、
娯楽のため、コミュニケーションのために行う文化活動といってもいいでしょう。
都市部に限られたことではありますが、生活に余裕ができれば、娯楽を求めるもの。
スポーツは、その一角を担っています。

折りしも、昨年末には、国際大会で好成績を挙げたスポーツ選手出身者が歴任して
きた国家体育総局(中国スポーツ省)の局長(大臣)に、スポーツとは縁のなかっ
た元共産党地方幹部が就任しました。

「北京五輪で100個のメダル」という目標を掲げる時期ではありますが、国威発揚
のための「勝つスポーツ」を政策の中心に添えてきた中国が、広い意味でのスポー
ツの魅力を植えつけようと、方向転換したことの現れです。

・日中間のスポーツ

昨年のAFCアジア杯(サッカー)では、試合とは関係のないブーイングにより、中
国人のマナーの悪さが日本で大きく報道されました。なぜ、あれほどまでのブーイ
ングの嵐になったのか。

大相撲中国公演、フィギュアスケート・グランプリファイナル、チャイナオープン
テニスなどの北京で行われた国際イベントで、日本人にブーイングが飛ぶことはあ
りませんでした。逆に、フィギュアスケートの荒川静香選手の優雅な演技では、ざ
わついていた会場が一瞬静まり返り、大きな拍手に包まれました。ゾクっとする瞬
間でした。

先のアジア杯でブーイングを送ることは、「お祭り騒ぎ」の手段に他なりませんで
した。仲間内で寄ってたかって見知らぬ相手をののしる。趣味の悪い集団心理がな
せる恐ろしい現象であり、中国社会の主流が、日本をどう見ているかの現れです。

「マナーが悪い」と切り捨てられる問題ではなく、中国人にとっての「不満のはけ
口」に日本がなっている状況をどう変えていくかが、今後の日本と中国の関係を変
えていくポイントでしょう。

   *

(了)不定期配信

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〔発行・構成・執筆〕坪井信人 kikugawa@cocoa.freemail.ne.jp

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創刊日:2003-11-10  
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