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中国スポーツ独白

中国の野球、サッカー、市民スポーツなど、スポーツのある風景を題材に、中国社会の変化や現状を紹介。北京在住で中国スポーツ事情を追いかける坪井信人がお届けします。

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「中国スポーツ独白」No.22(通巻68号・特別寄稿)

2004/09/22

************************** 2004/09/22 No.22(通巻68号・特別寄稿)******

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--   中国スポーツ独白   -----------------------------------
  └───────────┘  〔発行・構成・執筆〕坪井信人(北京在住)

    〜スポーツから「中国の市民生活」や「等身大の中国」が見えてくる。

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こんにちは。
新井野先生からの特別寄稿(下)です。

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《特別寄稿》(下)
ストの是非や新規参入議論より
各立場の課題整理に時間を使え
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【現在のファンは文化人か】

 「ファンあってのプロ野球」という表現には飽き飽きだ。社会現象であり経済
活動であるプロ野球には、ファンと総称されるプロ野球観戦者、プロ野球消費者
の存在は必須だから。

 ファンへの疑問は、「そこにプロ野球があるから観る」「楽しければよい」以
上の思考が働いていたかということだ。なぜプロ野球を観るのかを真剣に問いか
けてこそ、文化としてのプロ野球の理解者が生れるはずだ。また、ファン一人ひ
とりが、産業としてのプロ野球の需要者であるとともに生産者であることの明確
な解釈が行われなかったことだ。その結果、産業としてのプロ野球が供給する最
大の魅力すなわち「記録」という結果に心躍らされ、疑いつつも勝利至上主義だ
けを支持している。 

 プロ野球をはじめ観るスポーツのすべては、プレイヤーとファンとの単なるの
相互作用の場ではない。「プレイヤーとファンは一体」という表現の中に、それ
以外のプロ野球をつくりあげている立場(人々と組織)の見落としはないだろうか。
今回の選手とファンのスクラムは、その場しのぎの都合のよい仲間意識と誤解さ
れるかもしれない。ファンもまた、プロ野球の社会性、文化性、公益性の確保に
対して、日常的な支援活動を続けるべきだ。いずれにせよ、観るスポーツに関す
る公的な学習プログラムが用意されねばならない時代を迎えているように思う。

【メディアは傍観者でよいのか】

 わが国のスポーツが高度化、多様化した最大の原因は、プロ化という活動形態
の進展だ。それを助長いや支えたのが、メディアだ。読売新聞社の巨人軍戦略は、
プロ野球と新聞というメディアの関係を示す好適な史実だ。朝日新聞が全国中等
野球大会(現在の夏の甲子園大会)を開催し、販売部数の拡大や広告の増加と新
聞の信用やブランドといった社会的イメージの向上という利益を得たことへの対
抗だった。以来、新聞は、記事を通じ球場を劇場化させ、ゲームをドラマ化させ、
スター選手の私的な話題を提供し、読者に野球報道への依存感を確立させた。テ
レビ時代に至っても、その指向は堅持されている。記事が「映像」に変化しただ
けとも言えよう。 

 テレビをはじめとするメディアが放出する情報(掲載記事や放映番組)のあり方
が、今回の問題の要因とされる球団経営を大きく左右する放送権料の膨張や選手
年俸の高騰などの土壌をつくりあげてきたのでないかということだ。メディア関
係者に、傍観者や評論者ではなく、プロ野球再編問題の当事者としての意識を確
認してほしいと訴えたいのだ。もちろん、メディアの取り上げ方自体が、プロ野
球再編の方向の大きな影響力となる。熟慮した発言と映像を強く要望したい。あ
る意味で良き時代を過ごしたプロ野球OBの解説者の方々にも、同様のことを期
待したい。

【コミッショナーの選任に問題は】

 コミッショナーという立場についても議論が絶えない。確かに、Jリーグのチェ
アマンのように、強力に手腕を発揮している様相は見えてこない。『野球協約』
には、コミッショナーは、「野球最高の利益を確保するためにこの組織に属する
団体あるいは個人に指令を発することができる」と定められている。

 先にも触れたように、プロ野球の場合、各球団の経営状況に関するデータは公
開されていない。したがって、野球最高の利益にむけたコミッショナーの勧告や
指令の内容は、旧来型の洞察に基づいた政治的発言に止まらざるを得ない。コミッ
ショナーの個人的な能力や人格の問題以前に、実質的な権利や権限を持たない名
誉職になっていることが真実だ。

 コミッショナーの選任は、プロ野球実行委員会(セリーグ・パリーグ会長と各球
団代表の一四名によって構成)に委ねられている。つまり、経営側の意志が強く反
映されるシステムだ。繰り返しだが、プロ野球の成立に関与する人々と組織は巨
大化している。この現状に即した選任方法が必要なのだ。特に、ドラフト制度の
議論には、重要な役割を果たす立場であることは間違いない。急務だ。

 職を辞すという責任のとり方は、いかにもタイミングが悪い。もっと早くに行
動すべきだった。現在の期待は、関係者に対する十分なる議論の場と時間の保障
を指令することだ。

【構造改革協議会(仮称)で何を】

 再度、確認したい。プロ野球は、多大な人々と組織の巨大な関係図式として成
立している社会現象である。その意味では、今回の問題は、国民的課題に他なら
ない。言い換えれば、最も必要としているのは、多大な人々と組織の巨大な関係
図式にかかわるすべての者の意見が何らかの形で反映されることである。多くの
メディアの結論もここに集約できる。

 ところで、日本プロ野球選手会と日本野球機構が「合意事項」として発表した
構造改革協議会(仮称)の設置は、一定の進展と見られがちであるが、期待できな
い。なぜなら、ここでのプロ野球は、労使という二者だけの狭い関係の中に位置
付けられているからだ。会の構成が狭いということだけを言っているのではない。
労働問題化するのではないかという懸念があるからだ。

 プレイ場面の指揮官である監督、援助者であるコーチやトレーナーはもちろん、
プレイの調整者である審判の方々、年間シートの購入者、特定の球団の支援団体、
メディアのスポンサー企業の意見を収集できる取り組みを大いに期待したい。そ
して、できるならば、プロ野球を範と仰ぎ、1人でも優れた野球文化人を輩出し
ようと務めているアマチュア野球関係者の考えに耳を傾けていただければ幸いで
ある。

《追記》
〜書き終えて思ったこと〜
・ わが国において、遊びをビジネスと考える歴史は浅いという観点は、前提条件
として考えねばならなかった。遊びであるスポーツは、身体文化とは言え、すべ
ての文化の中で最も低俗扱いを受けているのかなあ。
・ スポーツ種目間の競争激化が心配だ。地域に根ざし収支を透明化しているJリ
ーグの関係者が、どこかで冷笑しているとすれば、スポーツ界全体が危ない方向
にあると言えるかもしれない。
・ パートナーシップというかコンパニオンシップというか伴侶性というか、協働
という理念を口にする割には、発揮する能力を持ってない日本人。
・ スポーツ界の上下関係の功罪については禁句。改革の芽は、何度も消えていっ
たはずだ。ただ、野球界にも、誰かいるはずだ。
・ とことん話し合う。そして話し合いでは必ず結論を出す。という真の民主主義
のやり方を体得していない。話し合いの仕方を知らない。だから、朝まで話して
も結論が出ず、多数決だけが妥当な方法と妥協する。ああ。
追記は、余計なことだったなあ。

(新井野洋一・愛知大学経済学部教授/スポーツ経済・社会学/愛知大硬式野球部
部長)

   *

(了)不定期配信

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〔構成・執筆〕坪井信人(ライター/トランスレーター/コーディネーター)
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