海外

中国スポーツ独白

中国の野球、サッカー、市民スポーツなど、スポーツのある風景を題材に、中国社会の変化や現状を紹介。北京在住で中国スポーツ事情を追いかける坪井信人がお届けします。

全て表示する >

「中国スポーツ独白」No.21(通巻67号・特別寄稿)

2004/09/22

************************** 2004/09/22 No.21(通巻67号・特別寄稿)******

  ┌───────────┐
--   中国スポーツ独白   -----------------------------------
  └───────────┘  〔発行・構成・執筆〕坪井信人(北京在住)

    〜スポーツから「中国の市民生活」や「等身大の中国」が見えてくる。

************************************************************************

こんにちは。
愛知大学の新井野洋一(にいの・よういち)先生(経済学部教授/スポーツ経済・
社会学、同大硬式野球部部長)より、2日間のストライキが行われた翌日9月20日
に、「プロ野球再編問題」に関する特別寄稿をいただきました。2回に分けて全文
を配信します。

新井野先生には、ふだん、私がスポーツを題材に社会の動きを考える際に、様々な
アドバイスをいただいています。

――――――――――――――――――――
《特別寄稿》(上)
ストの是非や新規参入議論より
各立場の課題整理に時間を使え
――――――――――――――

【国民の課題になりうるか】

 スポーツ組織が、これ程の国民的関心を集めたことはかつてなかった。スポーツ
を教育研究の対象としている者にとって、ある種歓迎すべき事態でもある。しかし、
日本人気質からして、問題が長期化すると、無関心層を増大させ、核心の議論がな
されないまま忘れ去られるという結末が待っているようにも思う。今やるべきこと
は、国民的課題になりうるかの確認と説明だ。プロ野球再編問題の根底にある本質
的な課題を各立場から明示すべきだ。

 現代スポーツは、本能的な遊戯行動の域を超えた巨大な生活現象、社会現象に発
達した。つまり、スポーツという言葉の意味の拡大だけでなく、人々のスポーツへ
の関わり方が増幅していることを認識すべきだ。換言すれば、今回の問題が、現代
スポーツを成立させているいろいろな立場の相互関係やそのシステムのあり方を問
うていることに気づくべきだ。各立場の欠点を感情的に指摘し合っても、埒無いこ
とだ。プロ野球問題の当事者とは、プロ野球を成立させているすべての人々と組織
であることを再確認しようではないか。 

【選手の社会的役割とは】

 スポーツの主役は、当然プレイヤーだ。そして、プレイを仕事としている限り、
労働者でもある。しかし、昨今の労働組合の組織率、活動状況、労使関係を彼らは
どれほど理解しているだろうか。少なくとも、組合の活動方針は、単純な生活費闘
争時代から脱皮し、労使協働による経済活動(長期化した経済不況や超高齢社会に対
応する雇用や給与のあり方)へと変換しつつある。この現状に気づくのが遅くはなか
ったろうか。

 プロスポーツ選手の価値を表示するものは、人気と年俸だ。それらが高いことこ
そが、スポーツヒーローの証しとばかり、エリート意識と高額所得に支えられ、特
権的な生活形態を持続させることだけに固執してきたように思える。確かに、選手
としての生命は短く、生涯所得の獲得に必死にならねばならないのも現実だ。また、
人気は、技術や成績に必ずしも連関しないのも事実だ。

 だからと言って、ヒーローが堅持すべきもうひとつの姿勢を見失ってはならない。
ヒーローの魅力は、努力の過程とそこで培った文化的素養だ。野球人がめざす社会
貢献や社会的役割とは何か、いま一度熟思すべきだ。それをベースに、セカンド
キャリアや第二の人生設計を創造するシステムも検討できよう。五輪メダリストた
ちの一言一言に勇気と感動を受け、人生観や人間観を振り返るファンの脳裏を再考
してほしい。

【オーナーは文化を育成できるか】

 プロ野球をプロスポーツと定義できる所以のひとつは、いかなる形式的であれオ
ーナーが存在することだ。オーナーにとって、球団は企業であり、選手はプレイ
(=見世物)という商品を生み出すマシーンに他ならない。そして、監督、コーチは、
生産現場のリーダーだ。経営のトップマネジメントを役割とするオーナーは、掌握
する経営体全体が安定することを追求することは当然だ。そのため、経営体全体に
とって必需でないスポーツを扱う部門を切り捨てるという苦渋の決断に迫られる時
もあるのだ。

 しかし、ここで、スポーツ産業が他の産業と違うという判断が働くはずであった。
それは、スポーツが、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成や人々の心身両面に影
響を与える世界共通の文化に他ならないことだ。文化としてのスポーツには、いわ
ば社会性、公共性、公益性があるのだ。スポーツ文化という資源と組織と運営を所
有するオーナーには、公共に一定の責任を持ち、地域社会の公益性に熟慮したリー
ダーシップの発揮が求められるのだ。以上のことに関して認識が不足していたこと
は、所有する球団の野球資源(選手や球団、施設や設備、運営費用、諸制度の決定シ
ステムに関する情報等)を公開してこなかったことに明らかに現れている。多くの国
民が、そんなオーナーたちを「別世界の人」と蔑視するのは当然の結果かもしれな
い。(新井野 洋一・愛知大学経済学部教授/スポーツ経済・社会学/愛知大硬式野
球部部長)

(つづく)

   *

(了)不定期配信

 ┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐┌┐
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
〔構成・執筆〕坪井信人(ライター/トランスレーター/コーディネーター)
〔ご意見、ご感想、仕事依頼などは〕kikugawa@cocoa.freemail.ne.jp

  Copyright(c)2002-2004 TSUBOI Nobuhito. All Rights Reserved.

  ・転送は大歓迎です。転載、引用等をご希望の場合は事前にご一報下さい。
  ・本メルマガは個人として発行しています。所属会社の方針は代表しません。
  ・本メルマガが原因で生じたあらゆる不利益に対し責任は負いかねます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-10  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。