文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_221

2009/08/27


……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 阿尾海鳥彦の破裂指定席      第三回
 【3】 編集後記

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 【1】 前書
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 こんにちは、はるかです。
 急に涼しくなったと思ったら、さっくりと体調を崩してしまい…。
 配信がたいへん遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

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 【2】阿尾海鳥彦の破裂指定席                 第三回
                                    著/蒼ノ下雷太郎
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 死んでくれ。
 ただ、死んでくれと俺は言った。
 まるで買い物を頼まれたかのように、あっさりと「いいよ」と言った。
「だから俺は、サングラスを外した」
 この両目で見られた奴は破裂する。
 それが俺の能力。彼女も例外ではなかったようで、いつも通りに破裂した。
 冷蔵庫の隙間から赤い液体が零れる。
 でも、それは瞬きをすると、いつのまにか消えていた。
 もう一度、冷蔵庫の中身を確認する。
「これが、ボクの能力。――いや、魔物かな」
 制限機関に所属する魔物遣い。
 埼玉県の一部を担っている局長。鳥村鳥籠。
 見た目は中学生にしか見えない小柄だがが、どうやら年齢は見た目と比例していないら
しい。正確の歳は聞いてないが、俺よりも年上なようだ。
 年上、子供にしか見えないこいつが、年上。複雑な気分だ。
「この話は、したっけ。何で、魔物遣いは魔物を産み出したのかって」
「話は、聞いたよ。たしか、何とか眼鏡から聞いた話だろ?」
 それはよかった。
 と、冷蔵庫のドアを開けているのに出ようとしない彼女は、笑った。
 体育座りで、小さい体をより小さくさせて冷蔵庫に籠もる。
「だったら、もう一回聞いてくれ」
 どうやら、その話を聞いて俺がどうするかは関係ないらしい。自分が語りたいだけのよ
うだ。
 丸いテーブルに腰を掛けて、冷蔵庫少女の戯れ言に対抗するべく、休憩を取った。
「一応、それテーブルで、イスじゃないんだけどな」
「だったらイスを用意してくれ。イスがないんだから、何かを代用するしかないだろ」
「ベッドに座ればいいのに」
 不気味なくらい白いから嫌だ。
 それを言うと、さらに彼女は文句を呟くが、俺は聞こえないフリをして、テーブルの上
に乗って、あぐらをかいた。
「空を飛びたいと思ったことはあるかい?」
 小さい唇が、言う。
 聞いた。
 どうやら、俺にらしい。
「さぁな」
「あるなら、話が早い。魔物遣いはね。ようするに、自由の象徴みたいなものとして産ま
れたのさ」
 反逆のつもりか。俺の言葉を無視して、話は進む。
 それにしても、自由の象徴ときたか。
 翼。
 いや、力か。
 昔は、それを自由の象徴だと、信じていたのに。
 今では、ただの悲劇だ。
「ボクらは、限界を知っている。ボクらの限界をね。どうしようもなく、どうしようもな
くさ。分かるんだよ。漫画のキャラみたいに、高いジャンプをしたり、高速移動したりさ。
もしくは、コンクリートを素手で砕いたり? そういうことが、フィクションの話だと知
っているのさ。知っちゃっているのさ。ボクらは、いや、人間という生き物は、か。ボク
らは、悲しいが、自分の限界を知っている」
 右脳。
 左脳。
 脳みそというわけではなく、きっと、本能が知っているのだろう。
 人間は、翼がない。
 見上げると、空を泳ぐ鳥に想いを馳せる。
 だけど、俺らには空を飛べない。
 空を飛ぶ自由がない。
 だから、人は飛行機を作った。
「魔物はね。自由の象徴なんだ」
 彼女は、言う。
「ボクらだけの力じゃ、脆弱な身じゃ、自由を叶えられない不自由だからさ。ボクは、ボ
クらは、産み出したのさ」
 自由の翼である産物。魔物を。
「限界を知っている自分では為し得ない不可能も、限界を超えた化け物。物理学、計算、
科学の全てに収まらない魔物ならば、成すことが出来る。そう、ボクらは彼らを自由の手
段と思い込み、そして手に入れた。産み出した」
 冷蔵庫の中で、少女は楽しそうに語っている。
 サングラスを外して、彼女を殺してもよかったが、どうせまた生き返るので意味がない。
「キミの自由の象徴は、翼――いや、力だったかな?」
 力。
 そう、力。
 体格も関係ない。年齢だって、筋肉だって、経験だって関係ない。
 何もかもブチ壊す力。
 あぁ、そうだ。それが、俺の欲しかった自由だったんだ。
「弱いのは、とても不自由だったんだね」
 鳥籠という不自由な名前を持った少女は、俺を嘲笑う。
「だから、強さを望んだ」
 自由を手に入れようとした。
「ねぇ、うみねこ君」
 鳥籠は、呼ぶ。
 俺の、あだ名を言って。
「それで、キミは自由になったのかい?」
 サングラスを、外した。
 破裂。
 どうせ、無駄なことだと知りながら、俺は殺した。
 でも、気が付くと、彼女は何事もなかったかのように冷蔵庫の中にいた。
「ねぇ、うみねこ君」
 彼女は聞く。

「そこから、何が見える?」

 耳から、ずっと離れてくれない。

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次回は第222号(9月5日配信予定)に掲載いたします。
ご意見、ご感想はこちらまで。→info@kairou.com

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 【3】 編集後記
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 いかがでしたでしょうか?
 次回はなっちゃんの「アルヒテクトン」第4回をお送りします。

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*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は9月5日を予定しております。

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