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雲上マガジン vol_218

発行日:7/27

……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 阿尾海鳥彦の破裂指定席      第一回
 【3】 編集後記

 ……………………………………………………………………………………………………

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────
 
 学校から、こんにちは。はるかです。(うーん、火狐慣れると使いやすいなー、家で
も導入しようかなあ、ぶつぶつ。)
 今回からは新連載、蒼ノ下雷太郎さんの「阿尾海鳥彦の破裂指定席」をお送りします。
 とってもヴァイオレンスな超能力バトル、おたのしみください。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】阿尾海鳥彦の破裂指定席                 第一回
                                    著/蒼ノ下雷太郎
 ──────────────────────────────────────
◆ . : . : . : . . : . : . : . . : * * * : . : . : . . : . : . : . . : . : . ◆ 

 空は見えない。
 黒く汚れてしまい、青かった空など二度と見られないと騙されてしまうようだった。
 バスの窓から見える景色は、黒い空に染め上げられて何も見えない。
 街灯の一つもない田舎道だからだろう。唯一の頼みである月光でさえ、今夜は灯されて
いない。月の光は雲に食
われて、光を奪われた。
「神様と正義のヒーローの違いが分かるかい?」
 耳の中で流れるのはPIERROTの「神経がワレタ寒い夜」。大音量で聞いているのに、随所
にバスのエンジン音が
混じる。それを良質の効果音とするか、悪質な妨害とするか。とりあえず、俺は黙って無
視することにした。
 バスの中は孤独な冬の空のようだ。
 後部座席で曲を聴く少年と、バスの運転手しかいなかった。
「違いはね。ないんだよ。神様も、正義のヒーローも同じさ。ただ名前が違うだけだ」
 バスが停まった。
 バス停に着いたようだった。俺は惜しみながらも再生していた曲を停止した。だって、
この曲はひどく彼女とマッチングしているから、危険なんだ。
「人はね。助けてもらいたいんだよ。神様も、正義のヒーローも同じなんだよ。ただ名称
が違うだけだ。もしくは、助けを求める課程や理由などが違うだけさ。たどり着く、中身
は同じなんだ」
 小銭で乗車賃を払い、俺はバスを降りた。
 降りた瞬間に後ろの扉は閉まり、運転手はさっさと仕事を放棄したいのか、さっさと
去ってしまった。
「人はね。希望が見えないと生きていけないのさ。見えると言っても、目に映ることじゃ
ないよ。目じゃなくて、心が正確かもしれない。もしくは、見えるより感じるの方が正し
いのかな」
 まるで真っ暗闇の地下室に閉じ込められたみたいだ。
 周りは暗く、百八十度回ってみても光が見当たらない。仕方ないので、携帯電話を開い
て懐中電灯代わりにした。
 意外にも懐中電灯の役割を果たしてくれた。液晶の画面は大量の光を零してくれる。そ
れはイコールで、電気の消費量がすごいことも教えてくれている。
「救われる。助けられる。いつか。いつか。いつかでも、そういう考えがないと死んでし
まうのさ。寂しくて死んでしまう生き物とは、微妙に違う。ボクらは、希望がないと生き
られない。例えそれがゼロに近くても、仮だとしても、嘘だとしても、ボクらは希望がな
いと生きられない。脆弱な小動物や微生物とそんなに変わらない。ボクらは、自分で思っ
ているほど、強い生き物じゃないんだよ」
 吐いた息は白かった。一年が終わりを迎える季節だからだろう。
 終わりでもあり、始まりでもある季節。
 コートの下には三枚ほど着ていて、マフラーも首に巻いているのに、それでも寒かっ
た。
 体内の血液を凍らせたかのような感覚が体にまとわりつく。
「皮肉なものだね。魔物遣いというのは」
 彼女に近くなるほど、彼女の声をより鮮明に思い出す。
 子供のように脆すぎる声。どんな些細な足音でも打ち負けてしまいそうな儚さ。
 なのに、それは呪いとなって俺を苦しめる。
 嫌だ嫌だ嫌だ。
 でも、俺は歩いている。
 山に続く真っ暗闇の道を歩き、足下が平坦から段々と上へと昇る感覚になると、俺はコ
ンクリートの道路から外れた。
 木岐の中を手探りでかき分けて……と、転んでしまった。
 反省、反省。森の中は気を付けよう。
 と言いながらも、結局彼女の家に来るまでに、計四回は転んでしまっていた。
「ボクらは、神様も、正義のヒーローも信じられないんだ」
 木岐の中に、地面に、四角の扉が作られていた。
 ポケットに入れていた鍵を取り出し、解錠する。重たい扉を持ち上げると、それは下る
階段と繋がっていた。
「神様に祈ることで、救われると勘違いしている信者を理解出来ない。いつか自分を助け
てくれる正義のヒーローが、やって来るなんて想像出来ない。悲しい種族だね。それが、
ボクらさ」
 階段を下るときにも、俺は数回転びそうになった。
 ここで転んだら命に関わるのに、俺は緊張感がないのか、それとも死にたがっているの
か、反省しようとしないで、何回も危ない目に遭っていた。
 死んだとしたら、席は完全に奪われるのに、現実感が足りないのだろう。
 彼女の部屋まで階段を下るときに、四回ほど扉を開けて、五回目になる頃にはやっと彼
女の部屋の前に来ていた。
 彼女の宝物を思い出す。確か、長方形の箱だったはずだ。
 開けると、中には箱があった。
 その箱も開けると、また箱が。
 彼女が好きだった宝物。
 だけど、俺はそれがとても気持ち悪くて、破裂させた。
 サングラスを、外して。
「神様も、正義のヒーローも信じられないから、ボクらは自分で魔物を産み出すしかな
かった」
 そこに、はたして自由は生まれたのだろうか。
 最後の扉を開けた。
 六畳半ほどの大きくも狭くもない部屋。
 壁も床も天井も、コンクリートで固められた無機質な部屋。
 右端には白いベッド。
 まるで一回も使われてないかのように綺麗だ。
 左端には丸いテーブル。
 使われた形跡は。
 皆無だ。
 そして右端の奥には、冷蔵庫が置かれていた。
 コンセントにプラグが差してあり、冷蔵庫はちゃんと起動している。なのに、俺は中身
を知っているからか。その冷蔵庫が、まるで棺桶のように見えた。、
「やぁ、来たのかい。うみねこ君」
 俺は、サングラスを外す。
 冷蔵庫を開ける。
 中には、一人の女の子が入っていた。
 曲を思い出す。
 あぁ、あの名曲を停止したのは、彼女のせいなんだ。改めて思う。あの曲は、彼女とひ
どいくらいに合っているのだ。
 彼女の全長よりも長いかもしれない黒髪。
 人形のように美しく作ろうとした人の意思が感じられる顔。
 まん丸い大きな瞳。
 小さい口。
 鼻。
 白い肌。
 小さい頭。
 小さい体。
 真っ黒な寝間着。
 眼球は、彼女を殺すことを望んだ。
 美しい顔は無意味に膨らまされる。膨張して、膨張して、限界まで来るときに、俺は冷
蔵庫の扉を閉めた。

 ――■■■■。

 冷たい効果音。
 何かが割れる音がした。
 破裂。
 そんな、音がした。
 冷蔵庫の扉の隙間から、赤い液体が流れてくる。
 俺は、もしかしたらという思いがよぎる。
「今日は、いつにも増して不機嫌だね」
 瞬き。
 ただ、それだけの間に、隙間から零れた血液は消えていた。
 そして、彼女の声が聞こえた。
「不機嫌の時に悪いが、依頼を引き受けてくれないかな。大丈夫、コンビニのアルバイト
より簡単な話さ」
 サングラスをつけ、俺は再び冷蔵庫を開ける。
 そこには、生きている彼女がいた。
 鳥村鳥籠。
 死なない少女。
 冷蔵庫という不自由の中で、自由を謡う化け物。
「狩らなければいけない魔物遣いが現れた。ね、簡単な話だろ。保護出来るならば保護し
ろという命令だが、殺してきてくれないかな。いやだって、ほら、その方が気分良いで
しょ」
 彼女は笑っていた。
 まるで、冷蔵庫の中は全然寒くないかのように。


◆ . : . : . : . . : . : . : . . : * * * : . : . : . . : . : . : . . : . : . ◆ 

次回は第219号(8月15日配信予定)に掲載いたします。
ご意見、ご感想はこちらまで。→info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 いかがでしたでしょうか?
 次回は投稿作品と、夏目さんの「アルヒテクトン」をお送りします:)

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は8月5日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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