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雲上マガジン vol_215

発行日:6/26

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 こんばんは、遥です。
 今回は「私と彼女と、それと首」、いよいよクライマックスに突入しますよ!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 私と彼女と、それと首             第十五回
                                    著/佐多椋
 ──────────────────────────────────────


--------------------------------------------------------・・・物語と生命の終わり

 それ以外の可能性なんて、はじめから存在していなかった。はじめに楓から脅迫状を渡
されたとき、私は封筒の宛名が書かれている面を見た。そこには消印がなかった。それで、
私は楓が脅迫状を作ったことを確信した。それから考えた。なぜ楓がそんなことをするの
か理解できなかったからだ。それをわざわざこのような形で私に見せたことまで含めて。
 まず、楓が脅迫状を書いた理由は何だろうか。たとえば、実は楓は私を何らかの理由に
よって憎んでいて、脅迫することで私にゆさぶりをかけようとした――しっくりこない。
だいたい楓と私の場合、私の怒りはすべて結果的に楓の恍惚につながるのだから、直接私
に危害を与えるなどすればいい。そうすれば恍惚を得ることもできるし、このようなまわ
りくどいことをする必要などない。
 すると、別の仮説に考えを及ばす必要がある。ただ私を脅迫したいのであれば首の存在
に触れる必要はない。殺人現場を目撃していたと書けばいい。殺人はここ……公園という
場所で行われたのだから、目撃者がいたとしても不思議はない、むしろ今まで出現してい
ないほうが妙なくらいなのだ。それに対し、首はそれからずっと冷凍庫のなかにあったの
だから、それについて脅迫状で触れることは、脅迫者が楓であることに私が気付くリスク
を増すことになる。それにもかかわらずなぜあえて首に触れたのか――つまり、それが楓
の目的だったのだろうか? 私に、これ以上首を持っていると脅迫の材料にされると考え
させ、放棄させることこそが。
 完璧とは程遠いが、とりあえず筋が通った推論であるように思われた。しかし、納得は
できない。なぜ楓がそんなことをしなくてはいけないというのか。彼女もまた、あの首の
魅力を知っているというのに。とにかく、そんなちゃちな策略では私と首を引き離すこと
などできない。それをもっとも効果的にわからせるためにはどうしたらいいのかと、私は
あの夜考えていた。
 そして私が思いついたのが、逃亡だった。楓に逃亡を提案する。彼女は内心喜びながら、
動揺した演技を見せ、首はどうするのかと訊くだろう。私は当然のように、それが問いで
すらないかのように、持って行くと答える。そうすることで、私は自分の意志を伝える。
楓が目的がかなわないのを知り、逃亡を拒否するだろう。そんなことをする必要がないの
は彼女がもっとも良く知っているのだから。その時点で楓は、私はすべてを悟り、わざと
逃亡を持ちかけていると気付くかもしれない。気付かないかもしれない。しかしどちらに
せよ私は、前者であれば精神的に、後者であれば情報量のうえで、優位に立つことができ
る。
 しかし楓は、私の予想を裏切り、逃亡に同意し、実際に逃げ、新しい脅迫状を作り、ク
ーラーボックスを持ってこの公園まで走っている。私は率直に云ってまったくわからなか
った。いったい楓はどうしようというのか。
「ね、どうして……」
「あたしたちは、」
 沈黙がその場に落ちようとしていたので、私は問いを繰り返そうとしたが、ちょうど同
じタイミングで楓が口を開いて、言葉が衝突した。私は口を閉じ、楓の言葉の続きをうな
がす。
「……あたしたちは、きっと、あんまりにもいろんなことを、不完全なまま放っておきす
ぎちゃったんだ。だから、だ、だから、ここで、みんなかたをつけて、みんな終わりにし
なきゃいけないんだ」
 私はわけのわからないまま、うなずく。
「私は、あれを樹から引き離したかったんだ」
 クーラーボックスを指さして、楓は私をうかがうように見た。彼女にしてみれば、それ
こそ衝撃の事実を語ったつもりなのだろう。しかし私にしてみればそんなことははじめか
らわかっていた。私が知りたいのは、その理由だ。
「どうして」
 最小限の相槌を打つ。
「実は」じつは、ともう一度繰り返して、息を吐いた。「嫉妬していたんだ」

・・・--------------------------------------------------------------------------

次回は第216号(7月5日発行予定)に掲載されます。
ご意見、ご感想はこちらまで。→info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 いかがでしたでしょうか? 
 次回は「アルヒテクトン」第二回を掲載します。

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は7月5日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
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 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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