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雲上マガジン vol_212

発行日:5/27

……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載小説「私と彼女と、それと首」      第十二回
 【3】 競馬コラム「オケラ回廊」          第六回
 【4】 編集後記

 ……………………………………………………………………………………………………


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 こんばんは、遥です。
 最近はといいますと、数年ぶりにレディオヘッドにはまり直しています。
 不思議に心にからみつく音です。

 さて、今回は久々にオケラ回廊が戻ってきましたよ!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 私と彼女と、それと首             第十二回
                                    著/佐多椋
 ──────────────────────────────────────

核心のほうへ/逃避する・・・-----------------------------------------------------

 いやに早く眼が醒めた。夜が明けて、まだいくらも時間が経っていないようだ。色の薄
い空から射す陽の光が、私の身体を焼く。右手で時計を探り、確かめると、午前五時を過
ぎたところだった。
 左手は、寝返りで離れることもなく楓の腰のあたりに触れていた。手のひらを、撫でる
ように、わずかに動かす。服越しに曲線の感覚が皮膚に伝わる。あまりそうしていると起
きてしまいそうだったので、二往復でその動きを止めて、天井を見上げながらぼんやりと
考えるでもなく考える。昨日決心したことは、今思い返してみても、受け入れられること
はないだろうとなかば確信できる。だがそんなことは問題ではない。私がそれを口にする
こと、それ自体が重要なのだから。私のために。――
 いつの間にか再び寝入っていた。
 次に眼醒めたときに、楓の感触が左の手のひらにないことに、まどろみのなかで気付い
た私は、あとで思い返すと恥ずかしくなるくらいに狼狽して跳ね起きていた。周りを見回
す。彼女は冷蔵庫の前に立っていた。冷凍庫の扉を開け、なかにある首を見つめている。
私は気付かれないようにゆっくりと彼女に近付く。楓は少しの時間、首に触れ、そして離
すことを繰り返していた。真後ろに立つ。まだ気付かれていない。それを悟ると、私は後
ろから楓を強く抱きしめた。楓は小さく、いや、と声を漏らしたが、私は気にしない。強
く、抱きしめる。
「ちょっと、樹……」
「逃げよう」
 さらに力を込め、腕で楓を縛り付けるようにして、私は云った。腰から胸、肩、首にい
たるまで、私は楓を包み込んでいる。私の息遣いと、楓のそれが、手の甲の皮膚で感じら
れるところで混じりあっていた。
「逃げよう」
 私は繰り返して、冷凍庫の扉を閉めた。首が視界から消えた。呼吸音に混じって、搾り
出したような楓の声が聞こえた。
「ど、どう、……どこ、に――?」
「どうしてって? 当たり前だよ、ここにいればずっと、あいつの眼に怯えなくちゃいけ
ない。場所なんてどこだっていいよ、どっか、遠くへ、あいつのいない場所ならどこでも、」
 そこまで云ったとき、楓が私のなかで、かすかにふるえた。
「で、でもあいつはきっとどこまでもやってくるよ、あいつから逃げることなんてできな
いんだよ、逃げられないよ」
 いやにはっきりした口調で楓は云った。私は畳み掛けるように返答する。
「そんなのは関係ない。私はただここから離れられればいい。逃げることができればいい。
あいつに邪魔されるなら、それでもいい。でもそれまでの、ほんの一瞬でもあいつのこと
を忘れることができれば、それでいいから」
 私は錯乱していた。本音がまず口を衝いて出て、そのあとの台詞はそれを糊塗するため
の方便でしかなかった。自分で何を云っているのかよくわからなくなっていた。
「首はどうするの?」
 突然、楓が訊いた。私は当然、「持っていくよ」と答える。楓はうつむいて、何も云わ
ない。私は溜息をつく。だいたい、最初から諦めていたはずなのだ。認められないだろう
と思っていたはずだ。予想通りの展開になっているだけだ。手を緩めようとした瞬間、小
さな、聞き逃してしまいそうに小さな呟きが聞こえた。
「いいよ。逃げようよ」
 私は緩めかけた力の持って行き所がわからなくなり、そのまま硬直する。予期していな
い答え。エラー。中空に浮かせたままだとつらいので、とりあえず二つの手を繋ぎ、楓の
腰の前に下げておく。すると楓がその手を掴む。その動作で主導権が移動してしまったよ
うに思えた。全身から力が抜けていくのを感じるが、なんとかこらえる。いつかのように
喉が痛む。
「樹がそうしたっていうなら、あたしはかまわないよ。うん……そうだね、逃げよう」
 楓は手を放し、すばやくすり抜けて、私の腕でできた輪から脱出した。それから私に向
き直り、笑顔。

・・・--------------------------------------------------------------------------

次回は第213号(6月5日発行予定)に掲載されます。
ご意見、ご感想はこちらまで。→info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 競馬コラム「オケラ回廊」              第六回
 ──────────────────────────────────────

 競馬をこよなく愛する熱い心の小説書き雨下雫が、よあけ=遠野浩十を連れ、競馬のお
もしろさを語り倒す!!!

 …………………………… 第六回:競馬の歴史についてその5 …………………………
 
 雫:――あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……! 『二月末に原稿を出したと思
      ったら、五月の後半になっていた』!

 よあけ:な、なんだってーっ!!

 雫:まあ、超スピードも何も、お互いの予定がかみ合わずにここまでズレ込んだだけな
      んだけどね。麻雀やってる余裕はあったのに。

 よあけ:ファッキン就活! ファッキン社会! ファッキン俺の人生! ――あ、いや、
          ウソです、ホント、内定ください、ホント。

 雫:よあけの土下座は放置しておくとして――ようやく今回の予定も都合付いたことだ
      し、ちゃっちゃと行こう。いつものことだが。

 よあけ:ういっす。えっと、随分と間隔が開いてしまったからうろ覚えなんだけど、前
          回って何話してたんだっけ?

 雫:記憶を呼び戻してみるに、アメリカ競馬の台頭とナスルーラ系の大躍進についてま
      で進んでいたようだな。いやぁ懐かしい。

 よあけ:……あ、ああ、奈須きのこの兄弟子、奈須るうら! 通称、虚淵玄な! Fate
          /Zero最高!

 雫:ハハハ、忘れてるなら忘れてるって言いやがれこの阿呆。
   まあ、忘れてたってそんなに問題はねぇさ。今回のネタになるのは、前回の流れを
      汲むとはいえ、もっかい海と時空を渡った欧州競馬事情だからな。

 よあけ:そ、それなら最初から言ってくれぃ。えっと、時空を渡るってことは、前回よ
          りもさらに未来?

 雫:いや、今回は過去に遡るぜ。現在のサラブレッド界を良くも悪くも規定した、ある
      一つの規則から話は始まる。
   ……前回話した、アメリカ競馬でのナスルーラ系の大躍進が起こる1950年代から、
      半世紀ほど遡った1913年。とある競馬規則がイギリスのジョッキークラブで定めら
      れたんだ。ジャージー規則ってんだけど。

 よあけ:ジャージー? ジャージ? シャーシ? あ、ミニ四駆?

 雫:「正解?」みたいな顔してこっち見てんじゃねえ! まあ、俺もジャージとか牛と
       かが真っ先に思い浮かぶんだけれども、これの由来は当時のジョッキークラブの
       会長さんの名前から来てるんだとさ。

 よあけ:人の名前なのね。変な名前なのね。

 雫:まあ、由来はそんなに重要じゃねぇからあんま引っ張らないとして、問題はコレの
      中身だ。
   詳しい内容は省くが、要するに『競馬発祥の礎たる俺たちイギリス人がサラブレッ
      ドと認めなけりゃあそれはサラブレッドじゃねぇよ、死ねカス!』みたいなことが
      定められたんだな。

 よあけ:そりゃまた、大雑把な上に乱暴な規則だね。

 雫:言い方はすげぇ乱暴だけど、ほぼ事実だから笑えないんだコレが。
   そもそもサラブレッドの定義ってのが実に適当でよ。
   第二回でちょこっと出てきた『三大始祖』って言葉があるんだが、覚えてるか? 
      覚えてるんならそれで良いし、忘れてたら思い出せ。

 よあけ:お、覚えてぬよ!

 雫:どっちだ。気にせず話は進めるが――ともあれ、全サラブレッドの父系を遡ると必
      ず行き着く三頭の牡馬……これを『三大始祖』ってんだけど、何もこいつらが始め
      っからそうだと決められてたわけじゃないんだぜ。

 よあけ:え、始祖って呼ばれてるのに? そっからサラブレッドの歴史が始まってるん
          じゃないの?

 雫:うむ。そもそもからして、イギリス原産の馬の品種改良のために中東から掻っ攫っ
      てきたアラブ馬たちが、本質的なサラブレッドの源流なわけ。それがまさかたった
      三頭の種馬だった……なんてこたぁあるわけない。
   サラブレッドの誕生から今日を迎えるまでおよそ300年余とされるが、その『サラブ
      レッド』というものが定義されたのは、実は18世紀末のことなんだ。

 よあけ:ん……おかしくね? 今から300年ちょっと昔って、17世紀末か、せいぜい18世
          紀初頭じゃないの?

 雫:そう、ちょいと調べてみりゃ分かるが『三大始祖』の誕生と『サラブレッド』の誕
      生には、およそ100年ものズレがある。
   なんでそんなことになったかっつーと……まあ、『そろそろこいつらの記録とか付
      けないとヤバくね? 収拾つかねーよ』てなるまで100年かかっただけのことだ。

 よあけ:うわ、気づくのおせえ。

 雫:当時のサラブレッド生産なんて、イギリス一国だけの微々たるものだったからなぁ。
      これも第二回でちょこっと言ったけども。
   そんなわけで、サラブレッドの『供給源』って概念が誕生する群体の規模に成長す
      るまで100年かかったのも、無理からぬことだったのよ。

 よあけ:最初は、記録とかつける必要性を誰も感じてなかったんか。

 雫:そして1793年に『これがサラブレッドだッ!』って定義した血統書であるところの、
      ジェネラルスタッドブック(第一巻)が刊行されましたとさ(序巻1791年刊行)。

 よあけ:くらえ、ジェネラルスタッドブックっっ!!(スタンドっぽい叫び)

 雫:(無視して)コレに記載されてる種牡馬と繁殖牝馬の血統に遡ることが出来る個体
      のみを、いわゆる『サラブレッド』と認めるんだと。
   もっとも、当時はそこまで厳しい定義じゃなかったようだが。

 よあけ:ジェネラルスタッドブックっっ!!(スタンドっぽい叫び)

 雫:(無視して)そもそも『サラブレッド』って語句が登場したのが第二巻(1821年刊
      行)からだってのは公然の秘密だ。
   その上、サラブレッドが初めて厳密に定義付けられたのが第十九巻(1901年刊行)
      でのことだなんて、俺も調べるまで知らなかったなんてこともなくもない。

 よあけ:俺のスタンド攻撃が効かない……!?

 雫:オイ、さっきからそこで阿呆な事叫んでるお前、いま俺が話したことを簡潔に要約
      してみろ。できなかったら■す。

 よあけ:う、うへぇ。
   ……ええと、だからアレだ。ある日突然、『お前、今日からサラブレッドだから、
     そこんとこヨロシク』てな感じのこと言われた馬だけがサラブレッドとして認めら
     れた……と、こんな感じ?

 雫:まあそんなところだ。
   そして勿論、逆のことも言える。……血統内に一頭でも、ジェネラルスタッドブッ
      ク記載の『サラブレッド』に遡れない個体が居たら、そいつはもうサラブレッドじ
      ゃねぇってことになるのさ。

 よあけ:『お前、今日からサラブレッドでも何でもない只の馬だから、OK?』みたい
           な感じね。でも、血統内に一頭でも居たら、って条件はかなり厳しくない?

 雫:ああ。これこそが、ジャージー規則のキモなんだな。
   ここで前回話したアメリカ競馬を思い返してみよう。
   アメリカ競馬の血統の発祥ってのは、ナスルーラの例を見ても分かるように、イギ
      リスから見限られた種牡馬が礎になってるんだ。
   これはアメリカにイギリスから競馬が輸入された黎明期の頃から変わらない構図で
      な。それに、同時に輸入された繁殖牝馬や現地の肌馬を交配してサラブレッド生産
      が行われていた。
   つまり、イギリスにおけるサラブレッド生産の黎明期を、良い意味でそのまま焼き
      増しにしたような展開だったんだな。

 よあけ:どこの国でも、似たようなことが起こるもんだね。

 雫:ああ。イギリスにおいては、そんな中からある日突然エクリプスが誕生したように、
      アメリカにおいてもまた、似たような存在のサラブレッドが誕生することになる。

 よあけ:それが、今回の主役?

 雫:ってわけじゃねぇんだがな。競馬史を学ぶ上で重要な位置に居る一頭には違いない
      から覚えておくと良い。
   そいつはレキシントンっちゅう馬でよ。生産年は1850年。名前の由来はケンタッキ
      ー州にある同名の田舎町から来てる。

 よあけ:日本で例えるなら、カスカベとかチチブみたいな名前ってわけだ。

 雫:うむ、断じてトツカとかヒガシトコロザワではないな。
   で、こいつがまた、戦績から種牡馬成績に至るまでの流れが、まんまエクリプスな
      んだわ。
   当然のようにリーディングサイアーを獲得した上に、その記録が十四年連続獲得を
      含めた合計十六回(1861年〜1874年、1876年、1878年)。今もなおアメリカ競馬史
      上最高の記録として残り続けているほどだ。

 よあけ:すごいぜ! まさにアメリカのエクリプス! もしくはセントサイモン! 

 雫:ちなみに、その血統の滅亡っぷりまでエクリプスやセントサイモンそのものである
      というのは余談である。

 よあけ:なんか毎回そのオチついてる気がする……。栄えた血統の宿命なのか。

 雫:んで、だ。このレキシントンの産駒が1857年に競走馬としてイギリスに持ち込まれ
      て、その中の二頭が重賞レースを勝っちまうんだ。
   これが、前回の最後の方に触れた『自国の血脈による外国馬としての復讐』の、歴
      史的な第一歩だったわけよ。

 よあけ:ここから、アメリカ競走馬の大躍進が始まる、と。

 雫:大躍進、って規模になるのはやっぱナスルーラの登場まで待たにゃならんのだが、
      まあ、雰囲気的には似たようなモンか。
   それからもアメリカ産サラブレッドの持ち込みは続いたようでな。1881年……俺ら
      にとってはセントサイモンの誕生年としてお馴染みのこの年に、イギリス競馬を震
      撼させる出来事が起こる。
   よりにもよって、アメリカ産のサラブレッドのイロコイってヤツに英ダービーを勝
      たれちまったんだ。

 よあけ:ああ、それはキツイね、英国紳士的には。

 雫:しかも翌年には、これまたアメリカ産のフォックスホールってのに、伝統と格式の
      高さに定評のあるアスコットゴールドカップ……日本で言えば春の天皇賞みたいな
      レースなんだが、それを勝たれちまった。

 よあけ:天皇賞を海外馬に勝たれてしまうというのは、確かにへこむ話だねえ。

 雫:ああ。こんな屈辱的な出来事を、誇り高い英国紳士たちは到底受け入れられなかっ
      た。
   しかし現実にアメリカ産のサラブレッドは強い。エクリプス以来、衰退の一途を辿
      っていた当時の英国を蹂躙制覇する程の勢いがあった。

 よあけ:まさに英国紳士涙目。

 雫:その後、セントサイモンの登場によって一時的には誇りを回復することに成功する
      んだが、だからといってアメリカ産サラブレッドの流入を止めることが出来たわけ
      じゃねぇ。
   折りしも当時のアメリカじゃあ、各州で次々に反賭博法を施行したせいで競馬が成
      立しなくなり、現地の生産者や馬主はこぞってイギリスに馬を持ち込むようになっ
      た。
   で、イロコイやフォックスホールの例を挙げるまでもなく、走らせてみりゃあ存外
      に勝てる。
   しかもこのアメリカ産どもと来たら、現役を引退しても本土に帰ることなくイギリ
      スに留まって種牡馬入りしたり繁殖に上がっちまう始末だ。

 よあけ:レースの優勝をかっさらわれただけじゃなく、血脈までアメリカに侵略され始
          めた、と。

 雫:このままじゃ伝統と格式に彩られた純然たるイギリス競馬界が、かつて二流かそれ
      以下と見捨てた、文字通りの『どこの馬の骨とも知れぬ輩』に汚される。
   そんなことは、心底、絶対、認めてはならぬことだった。彼らにとって古き良き貴
      族階級の面影を今に色濃く残す、競馬という存在そのものに懸けて。
   ……ジャージー規則ってのは、そんなイギリス人たちの執念の結晶なのさ。

 よあけ:ああ、なるほど。それであんな規則を。

 雫:ジェネラルスタッドブック自体は1791年からあったわけだが、『先祖の全てがジェ
      ネラルスタッドブックに収録されている馬に遡れなければサラブレッドとして認め
      ない』(第21巻)なんちゅう規則は1909年のジャージー規則によって作られたのさ。
   これによって、事実上のアメリカ産馬の締め出しがまかり通っちまった。
   そして運悪く、或いは必然的に、アメリカ血統の父たるレキシントンの母系血統が、
      この規則に抵触しちまったのよ。

 よあけ:英国紳士たちの企み通りってわけだ。

 雫:全く無茶なハナシさ。ジャージー規則以前のサラブレッドの定義は、現在とほとん
      ど変わらねぇ『父母八代に渡ってサラブレッドとしての先祖関係を証明できること』
     (第19巻)なんてもんだったのにな。ちなみに、これは1901年に作られたものだ。

 よあけ:サラブレッドの明確な定義自体、100年前くらいにできたもんだったんだ。

 雫:話を戻すが、そもそも、アメリカの競馬黎明期にイギリスから輸入された馬なんて
      のは、当のジェネラルスタッドブック記載の原種に辿り着けないから放出されたり、
      スピード能力や体系がそれっぽいから競走馬として輸出されたのが殆どだってのに
      よ。
   まあ、その当時はアメリカ人もイギリス人も、血統書の重要性ってモンをあんまり
      認識してなかったから、あっさり紛失しちまったってことも多々あるんだろうがそ
      れはそれ。

 よあけ:あっさり紛失て。けっこうアバウトだったんだね。

 雫:――とまあ、こうしてイギリス競馬界から『血統不肖』の烙印を捺された殆どのア
      メリカ産サラブレッドたちの未来は一度閉ざされた。
   母国じゃ競馬が成立しねぇ、海を渡ってやってきた発祥たる故郷にゃサラブレッド
      失格扱い……血統が全てのサラブレッドの世界だから起こった、『人種差別』なん
      ぞよりよっぽど根深い潔癖さが招いた悲劇だな。

 よあけ:競馬界のクー・クラックス・クランとしての英国紳士たち! 歴史の闇だぜ。
       で、アメリカ産サラブレッドの、欧米での活躍劇はここで終了、と?

 雫:なぁに、全てのアメリカ産サラブレッドがジャージー規則の対象になったわけじゃ
      ねぇさ。
   『殆どの』って言ったろ? 無事に難を逃れたアメリカ馬だって居たんだよ。でな
      きゃあ、思いっきり規則に抵触してたレキシントンの血が今日まで残るわきゃあね
      ぇからな。

 よあけ:え、レキシントン――和風に言うとトコロザワとかクマガヤ――の血統って、
          今にも受け継がれているんだ?

 雫:うむ。興味が湧いたら調べてみると良いさ。世界規模のがめんどくせぇってんなら、
      『サラ系』でググッたりwiki先生を参照にしてみると吉かも。
   ――で、ここまでが前回の予告の半分よ。サラブレッドの純血性を守る上では不当
      ではなかったが、決して正当でもなかったジャージー規則によって、逞しき雑草血
      統とでも称すべき血脈の殆どは幻と消えた。
   だが、僅かに生き残った血統は、或いはアメリカに帰り、或いはジャージー規則の
      及ばないさらなる新天地たるフランスに渡ることになる。
   そしてここからが本題……って、あれ!? もうこんなに長くなってったの?

 よあけ:ついでに言うと、窓の外明るいよ。朝だよ、夜明けだよ。眠いよ。

 雫:冗談じゃねぇ! このまま続けたら前回の三倍くらいの量になっちまうわ! それ
      は流石にやってられん!

 よあけ:眠いしな! でも続きどうするよ?

 雫:決まってらぁ! 今回はなんとなんと、オケラ回廊初の前後編構成!

 よあけ:なんと!

 雫:完璧なまでの行き当たりバッタリ具合を露呈しつつ次回予告は前回のを引っ張った
      まま、来月に続く!

 よあけ:来月、また会いましょう!

 雫&よあけ:さらば〜、さらば〜。

 ……………………………………………  走  ……………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第215号(6月25日号)に掲載予定です。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 レポートとかイヴェント前とかでばたばたしてます。色々雲上のこと手が回ってなくて
申し訳ない限り……。来月からは気を引き締めて参りたいと思います。
 こんな雲上ですが、これからもゆたゆたと、お付き合いくださいませ。

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は6月5日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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