トップ > アート&カルチャー > 文学 > 雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

RSS


メルマガの登録・解除

登録した方には、メルマ!からオフィシャルメルマガ(無料)をお届けします。



雲上マガジン vol_205

発行日:4/2

……………………………………… も く じ …………………………………………

 【01】 前書
 【02】 幻想書評                 新連載
 【03】 一行小説「射命丸vs射命丸〜椛は俺の嫁〜」
 【04】 読切小説「レッツゴー将軍さま☆」
 【05】 読切小説「ある酒場での会話」
 【06】 読切小説「大大大大大大になれない人」
 【07】 読切小説「『あいしてる』と言わないで」
 【08】 読切小説「無題」
 【09】 連載小説「Fly me to the Moon」      新連載
 【10】 連載小説「屍を狩って行くのは誰か」    新連載
 【11】 連載小説「人間に恋焦がれた妖怪の末路」  新連載
 【12】 連載翻訳「MMMM」             第2回
 【13】 エッセイ「海士街秋一の変態音楽入門」   新連載
 【14】 予告小説「フクビキリサイクル」
 【15】 編集後記

 ……………………………………………………………………………………………………
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【01】 前書
 ──────────────────────────────────────

 授業参観、恋の予感!

 押して駄目なら押し倒せ!

 恋するウサギちゃん、ボーイズ&ボーイズ、レイディーズ&ジェントルウーマン。

 こんばんは。雲上らじおのお時間です。

 今夜もやって参りました。はっちゃけMCアキヤマ・マコトです。

 さあ、前置きはこれくらいで。

 早速、いってみましょう!

 まずはダウナー系ブンガクを一網打尽! Web2.0時代を全力で8bit邁進!

 佐多椋だーっ!!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【02】 幻想書評                第1回
                                    著/佐多椋
 ──────────────────────────────────────

 雲上が誇るえごいすてぃっく・いまじねーたー佐多椋による幻想書評新連載。
 第1回はアン・リード著『読んだ本について語らない方法』

書評開始===================================>

(本文なし)

<===================================書評終了

 これにて終了!
 読みたくなった人は、今すぐお近くの書店にBダッシュだ!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【03】 一行小説「射命丸vs射命丸〜椛は俺の嫁〜」
                                    著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 続いては、気鋭の幻想郷研究家、桂たたらによる究極の一行小説。
 幻想卿の歴史を覆しかねない程度の能力を目撃せよ……!


たたらんらんるー中〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 俺が射命丸だ!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぴちゅーん

 タイトルの方が長い! 退場!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【04】 読切小説「レッツゴー将軍さま☆」
                                    著/丹酌
 ──────────────────────────────────────

 文学は斬新なるもののことだと言ったのは偉大なる文豪、幾弓佐奈!
 幾弓はこうも言った。文学は恐れないと!
 さあ、この小説を読め! 雲上は一歩も引かない、怯まない!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 偉大なる我らが指導者、キム・ジョンチョル総書記は新たに人工衛星を打ち上げ、主に
ホワイトハウスに向けて押井守の映画を発信することに成功した。
 これにより、小浜さんの息子がなんかヘンな知識を異様なほど貯え、相手の目をみない
でマシンガントークを繰り広げるキルドレに成長するだろうと挑戦素麺は予測している。
 さらに偉大なるジョンチョリアンは、ピョンヤンにメイド喫茶を乱立し、主に喜び組の
みなさんにがんばってもらうことに決めたという。これは新たな外貨獲得を目的としてい
るのは明らかだが、軍部からは親子の血は争えないというため息が原因で、主に電化製品
の大半が故障している有様だ。
 いずれにしても、四月一日である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 果たして幾弓佐奈は、このような小説が世に問われることを予想していたのだろうか!
 ここでゲストのドロッセルお嬢様にコメントをお願いしてみたいと思います!
ドロッセル「恐れ知らずね」
 ありがとうございました!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【05】 読切小説「ある酒場での会話」
                                    著/秘め椿秘め子
 ──────────────────────────────────────

 出たぁ! 雲上が誇るゴスロリ娘!
 現役高校生が放つ、欲望全開小説!
 日本終了のOSIRASE☆

〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪

「ロリコンっていうのは、中学生とかよりももっと小さい、5歳とか6歳くらいの少女に対
する愛情を持った人のことでは?」 
と、誰かが言う。 
「それは違うんだ。また別のカテゴリ。ペドフィリアと呼ばれる」 
 僕が答える。 
 別の誰かが言う。 
「ロリコンの語源は何でしたっけ」 
「アメリカの作家が書いた作品ではなかった?」 
「ナボコフだ」 
 僕が言う。 
「ウラジーミル・ナボコフ、ロシア人だ。 
 ただ、主に発表の場はアメリカや英国だったから間違いではないかもしれない。後に彼
は米国に帰化した」 
「『ロリータ』でしたっけ」 
「そう、ロリータ。実は世間的にいわれてる『ロリコン』は原義的には意味が異なる。本
来は『年齢に似つかわしくなく大人びた少女』を指す言葉なんだ。とはいえ、一般的には
少女性愛ということでまあおおむねいいだろう。 
 『ロリータ』は映画にもなったが、そちらのロリータは14歳だった。だが、原作では
11歳の少女で、映画よりもなおフェティシズムに充ち満ちている」 
「ついて行けません」 
 場に居合わせた女が言った。 
 僕が答える。 
「君も、人のことをロリコンだ何だとののしるのであれば、いっぺんナボコフでも呼んで
からにしてほしいものだよ。それから僕のことをののしるがいい。『少女性愛のロリコン
野郎』と」 
「少女性愛のロリコン野郎」 
 女が吐き捨てるように言った。 
 それからも、めいめい酒杯を傾け肴を口にし、酒場の夜は緩やかに更けていった。 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 でも面白いからオッケー!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

---☆[緊急発表]☆---------------------------------------------------------------

幻視コレクション、アニメ化――!

 このたび、『幻視コレクション〜新しい現実の誕生〜』に収録された作品のなかから、
佐多椋「薔薇の悪夢を視る」、根多加良「社会人以下でも良い」、そして夏目陽「幻葬物
語」の3篇のアニメ化が決定しました! 
 アニメーションを手掛けるのは、2007年ワールドコンのOPムービーを制作された秋田紀
亜さん。2010年の公開を目指し、ただいま鋭意制作中です! 乞うご期待!

 くわしくは公式サイト(http://magazine.kairou.com/)まで。

--------------------------------------------------------------------------------

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【06】 読切小説「大大大大大大になれない人」
                                    著/根多加良
 ──────────────────────────────────────

 へい、お待ち!
 いつまで経っても大人になれない僕らの少年ボーイ、ねたかんの登場だぜーい!

大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大大になれない


 私の故郷、東北の山間部の村の成人式の話をする。女子がみんな振袖を着ていない。な
ぜかって、みんな妊娠しているから。 
 しかも誰の子どもかもわからない。 
 みんな同じ時期に妊娠し、同じ日に子どもを産む。母になる歳は十九歳。去年は三月十
二日に一斉に子どもが産まれた。十月十日前はちょうど村の夏祭りの日。本当に十月十日
前に子どもが産まれる。私は出産とはそういうものだと思っていた。 
 そして私は十九歳。でも私は妊娠していない。 
 私は夏祭りの日、たまたま風邪を引いてしまい、自宅で寝こんでいた。だからなにがあ
ったのか知らない。ただあの日からみんな、私をみるとすぐにどこかに行ってしまい、よ
そよそしくなったことだけは覚えている。 

 だから成人式の日、私は億劫だったが、せっかくだから行ってきなさいという母のすす
めもあり、もしかしたら会場で懐かしい友だちに会うかもしれないという予感もあり、歩
いて二十分の村の公民館へと行った。もちろん振袖である。 
 しかし私の予感は簡単に裏切られる。 
 私以外、みんな腹を大きくして、妊娠していた。 
 みんな晴れ着のマタニティドレスを着ていた。マタニティドレスに晴れ着があるのかと
いわれると自信がないが、みんな赤と白の、みんなまったく同じマタニティドレスなので
ある。みんなお腹がポンポンなの、同じ学校に行っていた友だちも、髪を茶色に染めてい
る人も、すべてがマタニティドレスの晴れ着。会場はマタニティドレスで埋まった。そし
て私をシカト。百人近くの同級生と、それと同じ数の新しい命がこの体育館に集まってい
るはずなのに、孤独だった。 
 成人式が始まった。新成人の挨拶。まじめそうなメガネをかけた優等生タイプの女性が
ステージにあがってきた。しかしマタニティドレス。スピーチが始まる。 
 「我々人類は、みな兄弟であり、宇宙生命体である血を分けあった、地球はひとつ、ひ
とつは全。この世は――様のご加護により守られているのです」ここで「――様!」と周
りみんなが詠唱。するとステージの優等生が「――様!」。みんなが「――様!」。ステ
ージの端からスモークが炊かれている。レーザー光が、パパパパッ、と会場を突き刺す。
声にエコーがかかる。さすがにこれはヤバイのではないかと、隣りの人をみる。目がとろ
ん。反対側の人。目がとろん。後ろを振り返る。とろんほわわわああんとろんんとろろん
とみんなぐずぐずくすくすになっている。 
 私は会場から転がるように逃げだし、家に帰る。すると玄関に立っていた母が「やっぱ
りねえ、あなたは――様と会わなかったものねえ」と、ぽつりともらし、私の目の前に新
幹線のチケットが置かれる。なんで? 母をみる、と、奥の部屋のドアの向こうが見えて、
そこからみんなが着ていた赤と白のマタニティドレスが吊るされていたのがみえた。そう
かみんなのあれは、お下がりか。 

 二十一歳になった今、私は埼玉で事務系派遣の仕事をしている。そして今日の各地方の
成人式のニュースをみたとき、はじめて男女混合で行う儀式だと知ったのである。


大になれないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

 でも大丈夫!
 ねたかんは正義! って、ばっちゃが言ってた!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【07】 読切小説「『あいしてる』と言わないで」
                                    著/水野奏美
 ──────────────────────────────────────

 そろそろ中間地点か?
 アンダバ愛好会のかなみたんを召喚!

_______________________________________________

 見えてるものに恋をして、いつもと同じ失敗を繰り返す 
 男も女も見た目じゃない 
 そんなことは分かっている、分かっているのだ 
 そして、今日も無謀に思える恋を捜す 
 一目惚れだっていい。きゅんとくる恋心だっていい 

 ただただ、貴方の前だけでしっぽを振るような女にだけはなりたくない 
 貴方の愛が足りないとは思わない。けれど、私には物足りない 
 わがままだと言われてもいい。自分勝手だと呆れられてもいい 

 私は、私を<非表示>にする 
 醜い気持ちを、どろりとした液体を、相槌を打つ肉声を、 
 右クリックで<非表示>に変える 

 まだ見ぬ 
 何度目かの春を待ち焦がれて_

_______________________________________________

 ナイスあんだば!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【08】 読切小説「無題」
                                    著/芹沢藤尾
 ──────────────────────────────────────

 誤植王の名を欲しいがままにする芹沢藤尾の降臨ッ!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 多分、意味なんか無かったんだろう。 
 ただ、他に方法を知らなかっただけの話。 
 如何にヒトのカタチをしていたところで所詮、そう見えただけの話。 
 とどのつまり、それは…… 

 以下略後略誤記幻幼。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 って、短ーッ!
 しかも誤字脱字がない! いや、あるのか?
 分からん! 分かりづらい! アウトーッ!!

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【09】 連載小説「Fly me to the Moon」      新連載
                                    著/莢野まさち
 ──────────────────────────────────────

 新連載のターン!
 初っ端は雲上新登場! 期待の新鋭、莢野まさちさんです!!

☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー

 新月の夜になると、ティキィが月を連れて来る。
 彼(もしくは彼女)に手を引かれてやってきた月は、重さが無いみたいにふわりとした
白いスカートを穿いていて、胡桃みたいにくりくりとした綺麗な目で、部屋の中をもの珍
しげににきょろきょろと眺め回している。わざと明かりをつけていない、星明りだけの暗
い部屋の中で、彼女の姿はいかにも冬の月らしく静かな光を放っている。
 ソファに埋もれてクッションを抱えているわたしを見つけると、月はあどけない微笑み
を浮かべて、ちろちろと小さな手を振ってくれた。わたしも微笑を返そうとしたけれど、
上手くいったかどうかよく判らない。
 ティキィも笑っていた。仮面みたいな笑みを浮かべたまま、月の後頭部を、ほとんど殴
るように強く押した。
 あ、と声を上げて月はフローリングの床に倒れる。ごん、と重い音。
 これが開始の合図。
 まずティキィが最初にやることは、うつ伏せに倒れた月の両足を折ることだ。自分の部
屋から持ってきておいた重い鉛の棒を、月の白く幼い両足にきっかり10回ずつ、力をこめ
て振り下ろす。
 骨を砕かれる激痛に月は仰け反り、引き裂くような悲鳴を上げる。ティキィが彼女の脇
腹を一度蹴ると悲鳴はごぼりとくぐもった音で中断した。
 足のつかえなくなった月をティキィは部屋の端まで引きずっていき、ゴミを投げ出すみ
たいにどさりと壁に叩きつける。そして鉛の棒で何度も殴りつける。腹を、肩を、胸を、
どさ、どさ、どさ、容赦なく殴りつづける。殴られるたびにびくんと跳ね上がる月の顔、
愛らしかった丸い顔は痛みと恐怖でぐちゃぐちゃに歪んでしまう。ティキィは棒の扱いが
本当に上手……鮮やかなくらい。槍のように構えて、月の右目をどすりと突く。
 あたしはクッションを抱えたまま、身じろぎもしないで、月がティキィに痛めつけられ
潰され壊され光を濁らせながらぐちゃぐちゃになってゆく様子をじっと見つめている。
 息も出来ないくらいに凝視している。
 月をいためつけるティキィの瞳には明らかにいつもと違う光がやどっている。
 初めてこの折檻を見た時は、それはもうびっくりした。いつも穏やかで静かなティキィ
が、こんな深い嗜虐心を隠し持っていたなんて少しも思っていなかったから。正直な話、
しばらく何も口に入らないほどショックも受けたし(おかげでたった1ヵ月で8キロも痩せ
た)、ティキィに裏切られたような気分にもなったし、彼(あるいは彼女)が怖くてまと
もに会話もできなかった。――でも、それもほんの一月の間のこと。2度目に月がうちに
来たとき、あたしはようやく気が付いた。あたしもティキィと同じなんだって。
 あどけない月の身体に鉛が食い込むたび、あたしの心臓は縮み上がる。そして同時に、
ぞっとするような深い快感が、蛇のように背筋を這い上がる。
 その気持ち悪い快さにわたしは酔いしれる。
 ほうら。あたしだってティキィと、何にも変わりゃしないんだ。
 きっと今のわたしの目はティキィと同じ光を帯びているだろう。
 月がほとんど光を失い、ぼろくずのようになり、悲鳴すらも上げなくなったら、ティキ
ィは棒をがらんと床に捨て、ズボンのポケットからナイフを取り出す。これが仕上げ。ナ
イフは一度鈍く光り、月の心臓を正確に貫く。
 月はひときわ大きく身体を痙攣させると、それきり、ふつりと事切れた。
 ナイフを引き抜き、鉛の棒をふたたび手に持つと、ティキィはうなだれたまま、まるで
幽霊のような足取りであたしの横を通り過ぎ、部屋から出て行った。
 あたしはぴくりとも動かないままだった。ティキィも何も言わなかった。
 ほどなく、浴室のほうから水音が聞こえてくる。ざああああああ……。
 わたしはクッションに顔を埋める。
 しばらく、そうしていた。
 やがて水音が止む。
 ドアが軽い軋みを上げるのが聞こえた。スリッパを履いた足音がぺた、ぺた、私の方に
やってくる。
 あったかい腕がわたしの首許に優しく回される。鼻をくすぐる、石鹸のやわらかい匂い。
 きみもシャワーを浴びておいでよ、と耳元でティキィがささやく。わたしは、ん、と声
を出して、そこで初めて自分の身体が、どれほどがんじがらめに強張っていたか、気が付
く。
 
 次の朝は快晴だった。
 部屋を満たす陽の光の中に、月の骨が、あちこちひび割れて砕けた骨が、部屋の隅にば
らばらと散らかっていた。
 輝くように真っ白い骨。
 それを見たティキィが、昼の月、と呟いた。
 わたしたちはちいさな木箱の中に綿を敷き詰め、そこへ骨を全て集めて納めた。それか
ら、裏の湖に持っていった。
 薄青色のしずかな水面に向けて、月の骨を投げ入れる。ぱしゃん、ぱしゃん、波が広が
る。陽のひかりをはじいてきらきら光る。
 わたしはふと思いついて、ねえ、とティキィに声をかける。次は、私にやらせてちょう
だいよ。ティキィは困ったみたいに微笑を浮かべ、これは僕が引き受けたことだから、と
言った。
 わたしは月の骨をひとつ、こっそりとスカートのポケットにすべり込ませる。骨はひん
やりと冷たく、波に洗われたようにすべすべしていた。
 こうして古い月は死んだ。
 今夜は生まれたての真新しい三日月が空に上って、遠慮がちな黄色い光をそっと放つん
だろう。

☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー☆ー

 面白い!
 ふつうに面白いぞ! これは!!
 第2話は、まさか来年か! それとも続きはWebか!?

 次回は第206号(4月5日発行)に掲載されません。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【10】 連載小説「屍を狩って行くのは誰か」    新連載
                                    著/海士街秋一
 ──────────────────────────────────────

 さあ、どんどん行くよー
 こっちも新連載、あままちしゅういちだぁっ!

…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………

 それがやってきたときは誰かが叫んだものだった。しかしそれが殺されたときには誰も
叫ばなかった。ぐしゃぐしゃのミンチのようになった頭は、まるで駅前のこじんまりとし
たファミレスの目の粗いハンバーグのように見えた。下顎しか頭には無かった。突然歯が
一個地面に落ちた。どうやら風に吹かれて落ちたようだった。誰もが白い息を吐き出して
それを見ていた。黒く死斑の浮いた腕を血が伝い落ちた。どうやら血は僕らと同じのよう
だ、と思った。突然空が暗くなった。太陽が厚い雲の中に入ったからだった。
 小さな囁きが聴こえた。その半円が縮んでいき、父親の顔を、そして、それの顔を皆が
覗き込んだ。凍りつくように寒かったから、僕は父親の手に縋り付いた。父親は僕の肩を
掴んで払いのけた。手は赤かった。
 誰も責めなかったが、蔑んではいた。
 それから何年か経った。父親は毎日墓参りに行く日々を僕がいるときと変わらず続け、
僕は県外で野球をするために寮暮らしを始めた。
 ところが、つい最近になって僕は生き方を変えるはめになった。手首が使い物にならな
くなった、ということだった。僕は元より関心の無かったクラスメイトやルームメイトた
ちに挨拶をして、門から出た。
 僕は新幹線から各駅停車に乗り継いで、故郷に向かった。
 窓の外に田園が流れていた。その内に何度も見慣れた輪郭が現れた。あの山から奴らが
下りてきたんだ、と僕は思った。そして父さんは変わってしまった。それともこれは必然
だったのかもしれない。
 僕の家には猟銃が飾られていた。それは明らかに法律違反であることはその後に知った。
でも僕には関係がない。そこには猟銃があって、父さんは僕にこの銃を時々触らせた。撫
でるぐらいですぐ取り上げ、狩りの話をした。何の話をしたのだったか――猪? 
 ともあれ、僕は父さんの話を覚えていない。少なくとも、それは僕が泣きたくなるよう
な、そう、体の全身がだるくなる様な――それの類ではなかった。笑った記憶しかない。

 荷物は驚くほど少なかった。教科書はすべて置いてきた。最も受け取ってもらえたかは
知らない。喜ばれたかどうかも分からない。バットとボールだけが中にあるが――何をし
ようというのか。恐らくどこかのリサイクルショップには、数日後に並んでいるのではな
いだろうか。
 体が一瞬座席に押し付けられた。景色が止まっているのに気づいた。駅に降りた。
 駅には錆が増える代わりに人影が減っていた。屑篭が増え、空き缶が消え、痰が増えて
いた。屋根は風が吹きぬけるたびに軋んでいたが、それは昔と変わらないことだった。緑
色の椅子が一列に遠近法に従っている中に、一つの人影が見えた。僕は構わず進んだ。騙
し通せるかと僅かに期待したがそうはならなかった。「お帰りなさい」
 里恵。

最新の記事

ブックマークに登録する

TwitterでつぶやくLismeトピックスに追加するdel.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録記事をEvernoteへクリップ
My Yahoo!に追加Add to Google

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

登録した方には、メルマ!からオフィシャルメルマガ(無料)をお届けします。


この記事へのコメント

コメントを書く


上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。
コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  1. コメントはありません。

このメルマガもおすすめ

  1. B-Search NEWS

    最終発行日:
    2017/05/26
    読者数:
    2988人

    文芸サイト限定サーチエンジン「文芸Webサーチ」新着サイトの紹介、読後感、詩など。ライターも募集中。

  2. 彼の声

    最終発行日:
    2017/05/26
    読者数:
    75人

    この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

  3. 新華経済ニュースヘッドライン

    最終発行日:
    2015/06/20
    読者数:
    1300人

    気になる日中間の動向から、中国の経済・文化・社会ニュースまで、最新の情報をお届けしてまいります。

  4. 鉄道トリビア・なるほど納得へぇの世界

    最終発行日:
    2014/01/03
    読者数:
    422人

    ホームページ一新!100円でどこまでも行ける鉄道とは!?など鉄道の面白さをトリビアとして紹介しているサイトです。読み物としてだけでなく実践してみると100倍楽しめます。

  5. フォトレシピ。やさしいおやつ。おいしいお菓子。

    最終発行日:
    2012/07/21
    読者数:
    489人

    作り方は詳しい写真付き。お菓子教室 Studio-gemma が、分りやすく、おいしいレシピをお届けします。 “おいしい情報”もね。

発行者プロフィール

雲上回廊

雲上回廊

http://magazine.kairou.com/

総合創作団体・雲上回廊。夢の追求。

過去の発行記事