文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

全て表示する >

雲上マガジン vol_196

2009/01/06

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 実験超短編企画「ハコニワ」        第四回
 【3】 連載小説「ワダチ」            第七回
 【4】 後記

 ……………………………………………………………………………………………………
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 こんにちは、遥彼方です。あけましておめでとうございます。
 皆様はどのようなお正月を過ごされましたか? 遥はおじいちゃんとおばあちゃんの家で
お雑煮を食べました。小さい頃とあんまり変わらないお正月です。 
 さて、今日はひさびさの「ハコニワ」と、「ワダチ」最終話です。ごゆっくりとお楽しみ
ください。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 実験超短編企画「ハコニワ」         第四回 〜 姫椿ひめ子
 ──────────────────────────────────────

 ……はなやぐ庭園の奥にひっそり息づく、奇妙な箱庭にようこそ。

 ━━━━━ ・ ∵ ・     ぼくのボビン    ・ ∵ ・ ━━━━━━

まあるいボビン ぼくのボビン
くるくるまわる ぼくのボビン

朱く塗った ぼくのボビンは くるくるくるくる踊るまわる
まわりまわって糸を送る かたかたかたかた 糸を送る
しゅるしゅるしゅるる しゅるしゅるしゅるる

走る走る 糸が走る 色とりどりの 刺繍糸 
まるでそれは虹のよう
色とりどりの 刺繍糸 見てるとにわかに 心が躍る

ぼくの心も しゅるしゅるしゅるる くるくるくるる
好きなあの娘に贈るため しゅるしゅるしゅるしゅる 踊る踊る
好きなあの娘に贈るため くるくるくるくる まわるまわる

まあるいボビン ぼくのボビン
くるくるまわる ぼくのボビン

朱く塗った ぼくのボビンは くるくるくるくる踊るまわる
まわりまわって糸を送る かたかたかたかた 糸を送る
しゅるしゅるしゅるる しゅるしゅるしゅるる

桃色レースの生地に浮かんだ 七色の花
好きなあの娘に あげる花 

 ━━━━━ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ・ ∵ ・━━━━━

 「ハコニワ」では随時作品を募集中です。
 ルールは3つ。「七五調であること」「オノマトペを10回以上使うこと」「500字以内
であること」
 くわしくは編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 ワダチ                                 第八回
                                                         著/鵺屋イサイ
 ──────────────────────────────────────

 戦いのすえ、少年が出した結論とは。

 …………………………………………… 第八回 ……………………………………………

 ああ、なるほど。身内とは家族も同然ということか。
 奇麗事だと思う。ただ聞こえの良い愛想、本当に同じ屋根の下一つで暮らし、私事にお
いて助け合う関係でもなかろうに。だが、それが比喩だとしたら、多少の誇張も入るのだ
ろう。──この時、木更津総吉は珍しく、「空気を読む」ということをした。行間と言い
換えてもいい。
 それもひとえに、家族という語が鍵になったのかもしれない。部隊の同僚が家族同然だ
と言う、有田の感覚は彼には分からない。だが、それでも「なぜ仲間を見捨ててはいけな
いのか」ということが、やっと理解できた。と、木更津なりに思う。
 自分にとっての家族がこの論理武装であるように、有田にとっての家族はこの部隊なの
だ。ならば、任務において情に流されることもあるのかもしれない。最終的には家族の情
とて、任務のためには押し殺すべきだ。そう頭では思っていても、木更津はまだそこまで
ドライにはなれなかった。
「……頭が冷えたなら、立ちなさい」
 見上げれば億千万の雨滴の中、そっと手が差し出された。横たわっていた泥濘の中から
身を起こし、泥水に汚れたマフラーを気にしながらその手を取る。その背に、応急処置を
施された詫摩がおぶわれていた。雨避けにかぶった帽子の隙間から、こちらを睨みつける。
「こらっ」
 ぺし、と間の抜けた音を立てて頬が鳴った。有田の背中から精一杯腕を伸ばした平手打
ち。痛くも何ともないが、少し驚いた。
「これでおあいこだからね?」
 そう言ってニッと笑った詫摩に「冷えると傷に悪い」と指摘すると、有田ともども呆れ
た顔をされた。
「君がやったんでしょーがっ。次やったら、ジッグジグにしてやんよ! ボクのが先輩だ
から、今日は勘弁したげるけど!」
「とりあえず、帰還したら反省文書いて提出してくださいね」有田の溜め息。「どうです、
仲間を見捨ててはいけない理由、分かりましたか」
「判然としない。だが、多少は。
──家族ならば、仕方ない」
 へぇ、と詫摩が分かりやすく感嘆の声をあげた。有田も初めての手ごたえに片眉をあげ
て驚き、それから、微笑する。
 すぐ何かが変わる訳ではない。人と関わるのはやはり煩わしいし、歯車のように規則正
しく律している自身の日常を、他人にかき乱されるのは最も好まないことだ。今木更津に
あるのは、相容れないと思っていた他者の思想が理解できたという、新鮮な驚きだけ。そ
れで充分だろう。

 論理武装《ディアレクティク》は現代の科学では再現不能の超常的技術によって生み出
されるが、その創造にも質量保存の法則は等しく働く。論理武装を展開するには、その媒
介となる物質が必要不可欠だ。材質は木石鉄骨問わない点は豪快な物だが、唯一、生きて
いる物だけは媒介にする事が出来ない。
 そう、生きている物ならば。かつて生きていた者の屍体ならば、それはもう物であるか
ら、媒介にすることが可能だ。もちろん、公社では屍体を媒介に使うことは禁じられてい
る。過去に何度か、屍体から論理武装を造った事例はあったが、その多くが任務中の緊急
事態に限られた。
 そして木更津の論理武装『ヴォルト・アトラクション』は、彼の言葉通り祖父・木更津
惣介そのもの──惣介の遺体を媒介に用いたものだった。
「で、釣鐘。あなた結局全部知っててやったんですね」
「資料で読むより、自分で知ったほうが人となりがよく見れるってもンだろ。そっちのほ
うがお前の好みなンじゃないのか」
 お好み焼き『どんぢゃん亭』のボックス席。煙草の煙と、じゅうじゅうと音を立てて焼
ける豚肉や卵や野菜の匂いの中。しれっと答えられ、有田はまあ確かにそうでしたけど、
と苦笑いするしかない。つまりは最初から、釣鐘力哉は人材マニアたる有田の性を承知で、
この件を持ちかけて来たのだろう。
 屍体で出来た論理武装、解除出来ない論理武装、規律も規範もあったものではない。だ
が、もとよりここは奇兵隊、公社の規律・規範・規格から逸れた者の寄せ集め。有田はそ
の長なのだ。
「でも、少し気になる点がありますね。木更津惣介の死と、木更津君が論理武装を展開し
た時の状況がやや不審です」
「おいおい。またどっかの偉いサンをゆすろうってのか?」
 大げさな身振りで色めく釣鐘に、有田は笑って見せた。不敵で不遜に、何か企んでます
と言わんばかりの顔で口元を吊り上げながら、鉄板の上の豚玉(餅・チーズ入り)を皿に
載せる。その上に、自前の唐辛子ダレをたっぷりと注いだ。
「やだなあ、そんなことしませんよ。ただ私はちょっと、面白い世間話の種を提供してい
るだけで」
(世間話は世間話でも、ドロドロヘドロに腐ってるのだろーが)
 戦団において不遇の存在である奇兵隊が、それでもどうにか快適に運営されているのは、
有田のなりふり構わぬ努力あってこそのものだ。釣鐘もそこんところが一応分かっている
ので、それ以上口出しはしなかった。
「しかし本当に、あなたは難物を寄越してくれやがりましたね」
「だが、歓迎はしてるンだろが」
 ネギ焼きを頬張り、ニヤリと笑う釣鐘に微笑み返して、有田も唐辛子ダレつき豚玉を口
にした。その辛さが腹に熱を起こす。
「歓迎していますとも。あの子はきっと恐ろしく強くなれる。今はまだまだ未熟でも、き
っと」
 木更津が本当に奇兵隊の一員として受け入れられるには、もう少しかかるだろう。ある
いは、もっと遅いかもしれない。最初の任務を終えて少しだけ、彼も変わったのかもしれ
ないけれど。やはりそれは地味なもので、人が変わるのは実に地道な道行きを経なくては
ならない。
 先人が刻んだワダチを踏みながら、己もまたその行程をワダチに残して。

 …………………………………………… おわり …………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 今年はゆるく・たのしく・でも・とんがって
 やっていきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
 雲上の庭園の第2回募集、そろそろしようかなって話もしています。
 
 次回からは新連載がスタートしますよ:) 乞うご期待!

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
Score!: 90 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。