文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_194

2008/12/16

……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 超短編 「アンバランスぬっへっほぅ」
 【3】 連載小説「10.19 -October Nineteen-」   第二回
 【4】 連載小説「ワダチ」            第六回
 【5】 編集後記

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 みなさま、こんばんは、はるかです。
 前回はごめんなさいでしたー。まだちょっとぼんやりしておりますが、ようやく通常営
業モードですよん。言村さんのヘルプに感謝です。

 さて今回は、めぐんさんのちょっと不思議な超短編、そしてひめこさんとイサイさんの
連載小説をお送りします。


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 超短編「アンバランスぬっへっほぅ」

                 著/フルヤマメグミ
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 ……………………………………… minumum happiness ……………………………………

 最強の男の背には鬼(オーガ)が宿っているそうだが、私の背にはぬっへっほぅが棲んで
いる。今日も風呂上がりに奴と対面した。
「最近どうだよ」
 奴は夜行性なので、昼間の私の行動を知らない。
「最悪。仕事つまんねぇし」
「出会いはないのかよ」
「縁がない」
「今日の昼飯は」
「とろサーモンとたらこのおにぎり」
 私のそっけない口調がいけなかったらしい。鏡越しに見える奴が、途端にしおらしくな
った。目に当たる部分の皺から涙がこぼれる。
「俺はな、人間の幸福喰えりゃそれでいいんだよ。それも、超玉の輿なんかじゃなくたっ
て、ビルの間から覗く青い空が素敵とか、そんなんでいいからよ……」
 奴がしょげ返ると、自然に私の背筋が伸びる。姿勢がよくなると、身体に張りが出てく
る。猫背の時とは明らかに視線が違う。
「あー、なんか元気出たかも。あんたのおかげ?」
「いや、お前を変えられるのはお前だけだぜ」
 くさい台詞だけど、今は信じることができた。
「お前の幸せはまあまあうまいぜ――絶品ってほどじゃないけどな」
 背中のぬっへっほぅが、幸せそうに息を吸った。力がみなぎってきたんだろう。
 奴の気概に押されて、私はまた猫背になってしまった。

 …………………………………………… おわり ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
  


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 10.19 -October Nineteen-        第二回
                             著/姫椿ひめ子
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 ロリコンの「ぼく」はある日美しい幼女に恋をした。年に似合わぬ残酷な笑みを浮か
べ、彼女は徹底的に「ぼく」を支配する……。
 姫椿ひめ子が贈る、エロティック・ロリータ・ストーリー。

 ……………………………………… 2.Candy Rock ………………………………………

 僕と君の約束。
 君が僕に下した盟約。盟約だって(笑) そんなたいそうなものじゃない。ただ単に彼
女に弱みを握られただけ。
 そして彼女が、少しだけ僕の弱みを握りたかっただけ。そうすることで僕よりも優位に
立ちたかっただけ。僕を従えて服従させて支配して操作して、自分の思うとおりに出来た
らいいな、きゃは♪ って考えた末のこと。いや、末というほど時の経過は無かった。瞬
く間にその約束は交わされたはず。あと、「きゃは♪」とか可愛らしい仕草を見たことが
ないからここは僕の妄想。童貞による最低の妄想。夢ぐらい見させてくれ。
 とにかくすぐに決まった。
 まるで狙いすましたかのように。
 まるで僕が脱衣所に忍び入るのを知っていたかのように。
 まるで僕が、彼女の下着で自慰を始めるのを待っていたかのように。
 彼女が僕の前にシャワーの雫をしたたらせながら超然とにじりより、僕は無様に壁際ま
で後ずさる。彼女の裸身に釘付け、というわけにはいかなかった。進退窮まるとはまさに
このこと。前から楓に迫られて、後ろは壁のどん詰まりだ。
「言い訳してみる?」
 おお、天使の如き微笑み。そして僕に一抹の猶予をお与えくださった。
 しかしこの天使様はお目がまったく笑っていらっしゃらない。
 僕の一言は命よりも重い。僕の命がかかってるという意味で。
「おみ足の付け根がよく見えないので、もそっとお足をお開きいただけたら」
 なんて言えない。言えたら勇者。しかし僕は村人A。魔王による暴虐を被る感じの。
 僕は答えた。
「ございません」
「──じゃあね」楓は言った。

「私の言うこと何でも聞いて?」

 有無を言わさぬ物言いで。
 それは僕への気遣いだったのかもしれない。たとえば彼女との純然な取引、このことを
黙っている代わりに云々。
 しかしそんなことはないのだ。童貞の僕の思い過ごし。
 これは彼女が待ち望んだ瞬間。
 彼女が、少しだけ僕の弱みを握りたかっただけ。そうすることで僕よりも優位に立ちた
かっただけ。僕を従えて服従させて支配して操作して、自分の思うとおりに出来たらいい
な。
 そう思っただけなのだ。

 ***

 指を舐めさせられただけで、僕はついに射精した。
 おしゃれなレストランで白昼堂々、席に着きながら大衆の前で、少女の指を舐めさせら
れて彼女の微笑にうながされ、僕はみっともなく欲望のカタマリを吐き出してしまったの
だった。
 射精の瞬間、僕は硬く目をつむり、口元からよだれをしたたらせ、肩をすくめた。
 全身を駆け巡る快楽の衝動にあらがうことが出来ず、両足はテーブルの下でつま先立っ
ていた。
 目尻に涙が薄くにじみ、口にくわえた楓の指を危うくかみ砕きそうになるのを必至にこ
らえながら、どうにか楓を見やる。
 相変わらず笑みを浮かべている紅月楓。
 ぼくが射精してしまったことは当然楓に悟られた。
「出ちゃったの?」小首をかしげ、甘い声を出して僕に聞く。「ねぇ。指を舐めただけで
──わたしの指を舐めただけで、出ちゃったの?」
「……」
「答えて?」
「……うん」
「──『はい』って言って」
「……はい」
「変態」
 にこやかに言い放ち、指を僕の口から引き抜くとおもむろに席を立った。
「行きましょう」
 そう言ってずんずんと先に店を出て行ってしまった。
 ぼくもどうにか体を持ち上げて席を立ち、楓の後を追いかけた。

 …………………………………………… 続く ……………………………………………
 
 次回は第197号(12月15日発行)に掲載されます。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 ワダチ                                 第六回
                                                         著/鵺屋イサイ
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 上官の言葉に対する答を見出せぬまま、奇兵隊での初めての任務が始まる。

 …………………………………………… 第六回 ……………………………………………

 赤池豪。元戦団N46・銀輪隊所属。
 狂科学者ルシオ・シュタイナックと共謀して、戦団施設から機密情報の入った磁気ディ
スクを強奪。その際に当時勤務していた団員を殺傷。事件から十三時間後、戦団は赤池の
団員登録を抹消。奇兵隊に赤池の粛清及びシュタイナックの拘束を通達した。
 操る論理武装はワイヤーソー型の『フェイタルレッド・ストリング』。弱点も特性も把
握済み。
「……というのが今回の任務な訳ですが」
 有田は作戦内容を通達した二人の部下を眺めて、唇をへの字に曲げた。一人は木更津総
吉、いつも通りマフラーを巻き、静かに腕を組んで佇んでいる。もう一人は詫摩響、木更
津に遅れて事務室に入るなり、有田のロッカーに入って内側から扉を閉めてしまい、その
まま出てこない。
「詫摩君、もう一度最初から言いますんで出てきてください」
 返事の代わりに聞こえるのは、ロッカーに篭ってからずっと詫摩が呟き続けている呪詛
のみ。きっとサイボーグなんだ血管とかモノメチル水銀が流れてて、いつかホントに絞め
殺されちゃうんだからぜったい、ボクだって世間から人生をリセット出来るならゴミ袋か
ぶってやりたいのに……以下省略。
「たみ〜ちゃんがマフラー外したらでる」
 再度有田が諭すと、詫摩はそんな条件を提示した。
 木更津と詫摩が食堂の辺りで揉めていたという話を聞いたのは、有田が二人を今回の任
務に連れて行くと決めてしまった後のことだった。詫摩は論理武装を持たない兵士だが、
戦力としては問題はない。奇兵隊の平均年齢は軽く二〇歳を越えているので、年齢の近い
この二人を組ませたいと考えてのことだ。それなのに、のっけから躓いてしまい、有田は
軽くこめかみを押さえた。
 だがそれも一秒かそこらのことで、即座に木更津に向き直り、その仏頂面の肩をがしと
掴む。
「いいですか、君の第一事が任務達成であるならば、そもそもその任務受領に問題が発生
している状態は看過すべきではないでしょう。迅速に任務に従事するために君は最大限の
努力を払うべきです。さ、木更津君」
 マフラーを、外しなさい。一語一句に力を込めて発声し、有田は命令を下した。
「断る」木更津の返答はにべもなかった。「これは私自身にも外すことが出来ない」
 論理武装が解除される条件は三つある。
 一つは武装者自身の意志による任意解除。二つは武装者自身が戦闘続行不可能なほどダ
メージを受けた際の、身を守るための防衛的自動解除。そして三つは論理武装が破壊され
たことによる不可避的自動解除。そのいずれかが成立すれば、論理武装は元の資料/媒介
に還元される。
「しかし、武装解除出来なくとも、首から外すことは出来るのでは?」
「……」
 雄弁な沈黙が図星と言っていた。!)マフラーを外せない!)。その言葉が意味するところ
は二つ、論理武装が解除出来ない。そして、マフラーとして使っているそれを手放したく
ない。では、それはなぜか。
「一つ訊きますが、君はなぜ論理武装を解除出来ないんですか」
 長い沈黙が訪れ、ロッカーの中にいる詫摩のiPod. も心なしか音量をひそめた。だが木
更津は黙して語らず。
「……君にも分からないようですね」
 有田の言葉の終わりに、溜め息とも苦笑ともつかない息遣いが混じる。
「ではもう一つ、そのマフラーを外したくない理由は?」
 外したら首が落っこちちゃうんじゃないの、かわいそー。とロッカーの中から茶々が入
った。
「この論理武装は、じいさまだ」
 凪いだ水面にふと浮いた、小さな泡のような木更津の声。一瞬聞き逃しそうになるそれ
を、鍛えられた有田の聴覚は捉えた。
「私にとっては家族のようなものであり、唯一の身内と言っていい。いかな罰を受けよう
と、私は決してこれを手放さない」
 生白い手が、更に血の気を失って白くなるほど、きつくマフラーの端を握り締めていた。
常に整然としていた木更津の声が、その時だけはひどく硬く、他者の言葉の何もかもを拒
むような冷たさを持って響く。決して大声をあげている訳ではないのに、やけに耳を打つ
鋭い声だった。

 …………………………………………… 続く ……………………………………………

 次回は第195号(12月25日発行)に掲載されます。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 編集後記
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 次号は競馬コラム「オケラ回廊」、そしていよいよ「ワダチ」では木更津たちが戦闘に
臨みます!


*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は12月15日を予定しております。

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最終発行日:  
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