文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_190

2008/11/05

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 実験超短編企画「ハコニワ」        第二回
 【3】 連載小説「ワダチ」            第一回
 【4】 編集後記〜『幻視コレクション』発行のお知らせ

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 【1】 前書
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 みなさま、こんばんは。遥です。
 先の連休、みなさまはどのように過ごされましたか? 私の学校ではお祭りがありまし
て、それで動き回りすぎ、現在ちょっと燃えかす状態です。ぼんやりしています。
 今回は「雲上の庭園」の裏を縫ってじわじわ進む実験企画「ハコニワ」の第二回、そし
てイサイさんの「ワダチ」の第二回をお送りします。

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 【2】 実験超短編企画「ハコニワ」         第二回 〜 秋山真琴
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 ……はなやぐ庭園の奥にひっそり息づく、奇妙な箱庭にようこそ。

 ━━━━━ ・ ∵ ・     祭囃子ノ跫     ・ ∵ ・ ━━━━━━


 ズン! ズン! ドンパラリ! パラリラリ! 
 ズン! ズン! ドンポラレ! ポロレロレ! 
 パラパラルラリ! ポラレポラ!


 ━━━━━ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ∵ ・ ・ ∵ ・━━━━━

 「ハコニワ」では随時作品を募集中です。
 ルールは3つ。「七五調であること」「オノマトペを10回以上使うこと」「500字以内
であること」
 くわしくは編集部まで:info@kairou.com

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 【3】 ワダチ                                 第二回
                                                        著/鵺屋イサイ
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 論理武装をその身にまとい、少年たちは戦いに身を投じてゆく。
 回廊が誇る異才、久々の連載小説。

 ……………………………………………… 第二回 …………………………………………

 食事処『五臓六腑』。味は悪くないがネーミングで損をしているこの店も、昼時となる
とそれなりの賑わいを見せる。有田柾人は店員から受け取ったラー油の蓋を取ると、注ぎ
口を経由せずに直接瓶から料理──カレーライスとコーヒーに注いだ。どばっと勢いも凶
悪に。
「一人、お前ンとこで引き取ってもらいたいヤツがいる」
 相席の釣鐘力哉は、有田の蛮行を気にもせず話を切り出した。
 釣鐘はボサボサの長髪を無造作に束ねた、荒くれ武者という風情の大男だ。体格も実に
筋骨むくつけき輩で、びっしりと生やした無精髭のせいか、有田と同じ三十路でありなが
ら、四十路と見られることが多い。
「あなたがそう言うなんて、珍しいですね」
 有田は縁のない眼鏡のレンズを曇らせながら、赤い油の浮くコーヒーに口をつけた。
『公社戦団』における有田の役職は中隊指揮官であり、本来なら二五〜三〇名ほどの部隊
を率いる権限を与えられていた。だが、準軍隊の立場にある戦団では、部隊の規模も縮小
されている。更に、有田の部隊は特殊な事情で規模が小さく、一〇数名ほどの構成員しか
いない。
 X31!)奇兵隊!)。有田柾人が指揮官を務める部隊を、俗にそう言った。規律から外れ、
規範から背き、規格から弾かれた奇人の吹き溜まり。予算も任務も人員の補充も、決して
優遇されることなどない逸れ者部隊だ。
 ゆえに奇兵隊に送られるとは、不良の烙印を押されるも同然。だが釣鐘が有田に、単な
る不良を引き取らせたがる可能性は低い。この長年来の友人なら性格的に、まず拳なり言
葉なりで存分に語り合って、自分の元で解決してしまうに違いないからだった。
 そうせずに自分の元に寄越そうとするのならば、ただの不良ではないのだろう。実力も
なければ努力もしない、素行も性格も悪いような屑に用はないが、有用な人材なら是非と
もこの目で見極めたい。そして自分の眼に適うだけの才者、傑物なら、何としても手元に
置いておきたい。とかく優秀な人物を見るのは気持ちがいいものであるし、それが自分の
近くにいることは喜ばしいものである。
 ただ、自分の部隊に送られるということは、それなりに派手にやらかしてしまった人物
でもあるということだ。一体今度の彼・彼女は何をしたのか?
「任務を優先して作戦中に仲間を見殺しにした。しかも前科多数。それ以上のことは、実
物を見りゃ分かる」
 有田が問いただすと、当の釣鐘は軽く肩をすくめて短く済ませた。代わりに個人資料を
差し出すが、そこには生年月日や性別といった無機質な情報が載っているのみ。有田が興
味を惹かれた情報は、顔写真と名前だけだった。コーヒーにもう少々、ラー油を足しなが
ら感想を述べる。
「木更津総吉、ですか……」
 写真の彼はかなり若かった。年齢を見ると中学を卒業したかしないかの頃で、少年と言
って差し支えない。
 けれど、日本人形か平安人のような和風極まる顔立ちは、どこか老いに似た乾いた印象
を与える。単に写真を撮られるのが苦手なのかもしれないが、有田が抱いた印象が間違っ
ていないと分かるのは、そう遠くない未来のことだった。
「やっと実戦に出たばかりなのに、うちに寄越されるんですね」
「ああ、今年の春から出て、それで冬に入った途端この有様だからな。まあ、中々大した
難物ってコトだ」
 有田の部隊にいる最年少の隊員は現在十三歳である。が、実は規定違反なので書類上は
二十三歳に改ざんされてしまっている。別に有田がやったわけではなく、その隊員を追い
やりたかった連中の処置だ。さて置き、この少年が部隊に編入されれば、書類上の最年少
隊員になるという訳か。
「何にせよ、近日中にゃそっちに任務がいく予定だ。こいつの実力を見るにはいい機会に
なるだろ」
「分かりました、本隊によろしく」
 子どもと言ってもいい、若人が戦うことそれ自体に有田は忌避を覚えない。彼らとて
『公社』に身を置き、幼い日から戦士として育成されてきた存在である。他に選択肢を知
らなかったとはいえ、曲がりなりにも自分の意志で戦いの世界に生きている。それを憐れ
に思うことは間違いだ。
 だが、奇兵隊は汚れ仕事専門という向きが強い。手を汚したくない者達のために、いく
らでも手を心を赤く黒く汚す逸れ者の群れだ。そんなところに、若い新兵が放り込まれる
という。有田とて、それに罪悪感めいた胸のもやつきを覚えない訳にはいかなかった。

 世界は狂気で満ちている。
 人類が理性と知性のもと団結し、一つの共同体として進化しようとしている中、狂気は
必ずそこにイレギュラーを混入する。人類のバグともノイズとも言うべきそれらは法や規
範に捕らわれず、倫理や道徳を顧みず、ただ己が信念のまま独自の進化へ邁進する危険思
想者にして実践者だ。
──狂科学者《ヴァンジナー》。
 独特の世界観と強烈な自我を持ち、それによって周囲を支配し、ついには現実を改変す
る現代の魔法使いにして狂人《ヴァンジナー》。いや、魔法の使える精神異常者と言うべ
きか。科学が打ち立てた既知の世界を破壊する、憎むべき癌細胞ども。
 これら狂科学者に対抗する組織を『公理結社《アクシオム》』と言う。略号のA∴Oから
「青」と呼ばれるが、実際は枢軸とかけた『公社《アクシズ》』という呼び方が浸透して
いる。有田も釣鐘も、公社を構成する三つの組織のうち、戦闘を主とする『戦団』に所属
する兵士だった。

 …………………………………………… 続く ………………………………………………
 
 次回は第191号(11月15日発行)に掲載されます。
 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
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 みなさま、いかがでしたでしょうか?

 さて、来る11月9日に、秋葉原にて第7回文学フリマが開催されます。文芸スタジオ回
廊では、先の「雲上の庭園」に寄せられた作品から39作+招待作1作を収録した『幻視コ
レクション〜』を販売しますよ!
 ブースは1階のA-52、「エディション・プヒプヒ」さまに委託させて頂きます。
 当日お時間のある方は、ぜひ、お立ち寄りくださいませ。

 それでは、また!


*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は11月15日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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