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雲上マガジン vol_188

発行日:10/16

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 1000字企画「雲上の庭園」         選者寸評 (募集第1回)
 【3】 後記

 ……………………………………………………………………………………………………
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 みなさま、こんばんは。今回は全作寸評・後篇です。
 さっそくいってみましょう。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 1000字企画「雲上の庭園」     選者寸評(募集第一回)
 ──────────────────────────────────────

 「幻視コレクション」選者、秋山真琴/遥彼方/言村律広による、応募作品の寸評をお送
りします。
 今回は掲載順に37番「叫び」から72番「黒髪の棘」まで掲載いたします。

 ……………………………………………  庭  ……………………………………………

【37】──┨ 叫び

☆面白くなかったです。ただ、文章の長さを揃えただけの、手先で書いた作品ですね。文
末まで神経が行き届いていませんし、長さ以外の仕掛けが施されているわけでもありませ
ん。もっともっと足を伸ばして、その先を見ていただきたいです。(秋山真琴)

☆最期を知ってしまった「私達」はこれからどうするんでしょう……。小説自体の造りが
おもしろいです。(遥彼方)

☆過去の私だけが視界内にあるという並び順は面白いと思いました。でも結局はあっさり
と未来を見てしまうのが残念ではありました。また、取り乱すことを想起させる叫びにし
ては、この整然としたフォーマットは不釣合いのように思いました。(言村律広)

【38】──┨ 機械式による自我と自己愛の形成

☆完成度が極めて高いと感じました。一歩、間違えればただのウェルメイドに堕してしま
っていたかと思いますが、流暢な語りに、Fという曖昧な存在、そして鋭い切れ味を有した
結末の一行。味わい深い、良作でした。(秋山真琴)

☆一行目の表現「部品の破損した機械」がやや唐突に思えましたが、後半の展開で活きて
くるわけですね。どこか、Fの自我が分裂しているようにも思えます。その後の彼女が気
になる。(遥彼方)

☆Fを作る過程が実際的で、また各段階でのエピソードと会話のつくりも巧みで説得力が
あると感じました。単純な問答から、事情や先のことを読まないとならない問答へと複雑
さが増してゆく関係が面白かったです。(言村律広)

【39】──┨楠木と相棒

☆この作品は、今回、ご応募いただきました作品の内、選考会の前と後とで、もっとも評
価の変わった作品です。当初、秋山はこの作品を、ただのウェルメイドとして片付けてし
まっていました。読みどころが多いわけでも、取り立てて素晴らしい作品というわけでも
ないように考えていました。けれど、選考会において言村さんから「どうして楠木がアシ
ブミ族なのかを考えてみなよ」というようなことを言われて、はたと気づきました。だっ
て、アシブミ族……足踏み族なのです! 彼らは足踏みするばかりで一歩も前に進まず、
したがって想いも届けることができないのです。その事実に気づいた瞬間、一気に作品の
奥行きが増していくのを感じました。参りました。(秋山真琴)

☆シーンの切り替え方やせりふの唐突な挿入から、漫画の予告編のようだな、という感想
を持ちました。この題材の場合、小説としての枠に則ってもっと細やかに描写した方が、
魅力的な物語になると思います。(遥彼方)

☆一読してただの感慨の話かと思ったのですが、アシブミ族という名称や、想いを届ける
描写がないことや、楠木にそうする様子もないことから、実は届けないのではと思いまし
た。別に楠木に悪意があるわけではないとは思いますけれど。また、漂うということと、
詩の「消えていった」の繰り返しが重なって、届けられなかった想いの寂しさが染みてく
るように思いました。(言村律広)

【40】──┨ 生首

☆実に、実に素晴らしかったです。生首がダイニングのテーブルの上に乗っかっていると
いう奇想もさることながら、一陣の風の如く消え去った彼女を追い縋るようにして思い出
される遥か昔の記憶、空想。現実と幻想が完全に一致した、実に気位の高い作品であると
感じました。これは傑作ですね、文句なしに素晴らしかったです。(秋山真琴)

☆ただシュールなイメージが提示されているだけの話かと思いきや、余韻を残すラストに
なっていて、読み手の想像力を刺激する、興味深い作品になっていると思いました。(遥
彼方)

☆生首をここまで可愛らしく描写してみせる腕前に脱帽しました。思わず同棲いいなあと
思ってしまったくらいです。最後の思い出すシーンでの、窓ガラスに当たる雨が、まるで
血飛沫のように思えて、実に凄みがあると感じました。(言村律広)

【41】──┨ 無題

☆奇妙な味わいを持つ、奥深い作品でした。何と言っても気になったのは、この曖昧さで
す。時間軸が前後したり、記述が揺らいだり、当初はかれが祖父であるのかどうかさえ判
断しかねました。その模糊とした感じが好みなのですが、果たしてこれが意図的に書かれ
たものなのか、そうでないのかが分からないのが悩みどころです。そう、ふつうに読むと、
ただの下手な小説と読み取ることも可能なのです。もう少し意図的に濁しているのだとい
う演出があればよかったと思います。(秋山真琴)

☆なにか大事なものが欠落したような、静かな語り口がうっすらと不気味で、印象に残り
ました。(遥彼方)

☆もう少し、書き足りないのではないかと思いました。医者が来て何が分かるのかが不明
確な点などは、不思議の演出というよりは何かを書ききれていないのではと思いました。
また、祖父が臥せぎみであるのが「その頃」というのも、どこか時制が一致していない感
じがして、話に入り込みづらかったと思います。(言村律広)

【42】──┨ 皆笑った

☆愛があるなと感じました。読み手も含めて文字通り皆が笑うことのできる、実に素敵な、
微笑ましい作品でした。「誰がうまいこと言えと」まさにその通りなのですが、最後の一
行に至るまで、ずっと楽しませていただきました。うまい話ですね。(秋山真琴)

☆最新技術で死者をよみがえらせる、といった類のお話は、皮肉な結末をたどることが多
いように思うのですが、この作品にはそのようなところがなく、ハッピーエンドであると
ころが、逆に新鮮で面白かったです。(遥彼方)

☆結局、増田は目に娘を描かれたのではないのかもしれないと思いました。彼の娘に対す
る気持ちの強さが、そう見せているのではという気がします。ただそうすると、娘に触れ
られない悲しさも感じさせず呑気に笑っているのは違和感があるなあと思います。それだ
けでいいのか増田、というのが正直なところです。(言村律広)

【43】──┨ 巣窟

☆これはちょっと読みどころに欠ける作品ですね。落ちが弱いと言うか、事実上ないに等
しいため、ショートショートとして読むこともできず、文体や世界観が優れているわけで
はないので、雰囲気で魅せるにも至っておりません。精進してください。(秋山真琴)

☆噂の内容だけをただ並べていくだけの形式なので、やや弱いかなあ、と思います。(遥
彼方)

☆ほのめかしで終わっている上に、そこに迫力がほとんど感じられないので、なんともあ
まり思うことはありませんでした。とはいえ、相手からの見え方というのを、新しい現実
の誕生に結びつけたアイデアは独特だと思いました。(言村律広)

【44】──┨ 第三の道

☆これは気持ちの良いショートショートですね。日常にちょっとSFを交えつつ、ブラック
とまではいかないまでも、ちょっと意味深な結末。この語らなさ具合には洗練性が見て取
れます、読み手に対するアプローチが適切だなと感じました。(秋山真琴)

☆運命を選び取ることができるというアイディアが、きちんと掘り下げられていて、良か
ったです。Y字路が現れるというイメージもおもしろい。
(遥彼方)

☆何度か読み返していて、気になったのは、冒頭で家を出るときにはどちらの足から踏み
出したのだろう、ということでした。決まったことを続けるのも選択のうちなのだなあと
思いました。ただタイトルでネタばれですし、二分岐とか二分路とかでなくY字路と言っ
てしまっているので、読んでいて驚きはほとんどありませんでした。(言村律広)

【45】──┨ 青い火

☆うーむ。いかんともし難い作品ですね、これは。本質的には悪くないと思います。物語
の運び方や、文字の選び方には、手馴れた感を受けました。後は読み手次第でしょう。気
に入るひともいれば、そうでないひともいる。残念ながら秋山にとっては、あまり好みで
はありませんでした。もう少しリーダビリティを高めるため、読み手の関心を引くような
ものが仕掛けられていてもいいかなと感じました。(秋山真琴)

☆身動きが取れないというパラノイアックな緊迫感と、夢の移り変わりの表現が実に生々
しくて美しいです。(遥彼方)

☆ すごく描写力の高さを感じました。ただ終わり方がいまひとつ納得いきません。妻の
存在の実感が軸になるのだろうと思いますが、始めは改めて思うまでもない存在で、結末
で改めて気付いたとしても、不快の理由がよく分かりません。また寝息とかで十分気付い
ても良さそうなのにという気もします。(言村律広)

【46】──┨ 羽

☆この世界観は実に好みです。森のなか、君、そして天使。ガジェットそれ自体は大変な
好みですし、展開も悪くないです。けれど、敢えて言うならば、驚き、でしょうか、それ
が足りなかったように思います。もう一点、ワンポイントがあれば飛び抜けていたかと思
います。(秋山真琴)

☆文章にたいへん力がありますね。いつどこであっても瑞々しい森だ、というイメージは、
妙に想像力を膨らませられるものがあります。(遥彼方)

☆ 何事かを描こうとしているのだろうなあと、薄ぼんやりとは感じますが、いまひとつ
それが何かは分かりませんし、雰囲気も感覚できるほどに迫ってくるようでもなかったの
で、特に何も思いませんでした。かといって募集テーマに合っているようにも感じません
でした。(言村律広)

【47】──┨ 輪舞曲

☆ありがち……と言うのが、読後の第一印象でした。文体は洗練されていますし、文章は
流麗です。全体的に上手いのですが、この結末自体は実にありふれており、陳腐だなと感
じました。せっかくの技術が活かしきれていないと言いますか、残念な作品でした。
(秋山真琴)

☆途中で現実に戻ったのかと思いきや、やはり夢へ流れ落ちていく、一種の絶望感がたい
へんに私好みでした。(遥彼方)

☆イメージはとても鮮明で、町の描写などは愉快ですらあると思いますが、なぜ死ぬのか
とか、なぜ追いつかれてはならないのか、といったところで、いまひとつ説得力に欠ける
ように感じました。(言村律広)

【48】──┨ 中古の新現実

☆これはインパクトのある作品ですね。僅か一行、ズバリと切り込んでくる作品です。し
かも意味深。「新しい現実の誕生」というテーマに、真っ向から向かい合ってくるような
鮮烈な作品だなと感じました。後、どうでもいいですが、タイトルの中古の新現実と言う
のが、大塚英志が編集長の『新現実』を指しているのかなと、一瞬だけ邪推してしまいま
した。(秋山真琴)

☆ちょっと笑いました。小気味よいシンプルさで、素晴らしいセンスだと思いました。
(遥彼方)

☆忘却によって、中古のものでさえも、新たな現実として誕生するという瞬間ですね。強
烈にすばらしく練り込まれていると感じました。
(言村律広)

【49】──┨ 社会人以下でも良い

☆これはタイトルの勝利。社会人以下でも良い、という何もかもを肯定するタイトルから
して気に入りました。実を言うと作品それ自体の方は、やや冗長で、タイトルに見られた
斬れ味はないように思ったのですが、まあ、結末も気持ち悪さと美しさを兼ね備えた不気
味さを持っていますし、良いと思います。社会人以下でも。(秋山真琴)

☆たくましい壊れモノの美しさ。ラストの一行が、勢いがあってイメージが豊かで、とて
も好きです。(遥彼方)

☆ 全体的に、風刺といったらいいのでしょうか「一流の労働者」などの小気味良い皮肉
が散りばめられていて楽しいセンスだと思いました。後半は自由奔放になって、特に最後
はリズム良く決まっていて読後感も良かったです。(言村律広)

【50】──┨ ひとりうたい

☆傑作。自然に読ませる文章に、意表を突いた世界観、そして「ええっ、ここで終わって
しまうのー!?」という結末。これは紛うことなく傑作でしょう。余談ですが、『幻視コ
レクション』の編集中、最後までこの作品を巻頭にするか否かで迷いました。インパクト
のある作品です。(秋山真琴)

☆アイディアの勝利だな、と思いました。気取っていなくて、さわやかな読後感。(遥彼
方)

☆ 最後の部分にある「いまのわたしは、ひとりではありませんが」というのが少し引っ
掛かったので、読み返してみると「わたし」と「みなさん」=私以外でこの話はできてい
るのだなあと思いました。そうすると「わたし」の孤独感はよけいに増して、ひょっとす
ると最初の曲「ひとりうたい」が終わる頃に零時がやってきて、そのまま終わってしまう
のではという予感がしてきます。(言村律広)

【51】──┨ 眠りつかれて

☆ううむ。これは極めて後味の悪い、嫌らしい作品ですね。読了した瞬間に、思わず眉を
しかめてしまいました。こういう作品は嫌いだな、と思う一方で、読み手の感情をここま
で動かすことのできる文章作品には、純粋に感嘆もします。(秋山真琴)

☆現実と夢と小説とが入り乱れて、非常に(良い意味で)不気味な手触りの作品になって
います。どこまでが夢? 何が小説? 考え始めると混乱してしまいます。(遥彼方)

☆ どこまでが夢でどこまでが現実かがよく分からないものの、父親の狂的な言動が、際
立って面白く感じました。実際の父親ではイヤだけど劇中の父親としては歓迎、のような。
また「ご家族が交通事故に遭う確率」を上げる父は、自分が「救急車で運ばれる可能性」
を高めることで、死のうとしているのかな、という気もしました。(言村律広)

【52】──┨ 野田と寺山は海へ行く

☆評価に迷う作品でした。まず面白いことだけは確かです。けれど、この面白さは本来、
短編や長編において発揮される性質のものであるように思います。千字という領域におい
てではなく、もっと改行を増やして、紙面に余裕のある空間においてこの作品は本領を発
揮するなと感じました。(秋山真琴)

☆野田と寺山のおしゃべり、自分の状況とは関係のないところに飛んでいく少女の気持ち。
日常と非日常の間にたゆたうような空気が良いです。風景や心理の描写が繊細で、よく出
来た作品だと思います。(遥彼方)

☆少女のほうは旅の理由も何もかも現実的であるのに対して、野田と寺山は(この順が入
れ替わらないことにも意味があるのかもしれませんね)行動理由からして不明なのだけれ
ど、その存在感はあるので、少女が車両に入ってきてからが現実で、あとは彼女の妄想な
のではと思いました。腐女子の目覚めと読めばいいのかなと思いますが「海はまだ遠い。」
によって、彼女がこのあとも妄想を広げていく様子が暗示されているようで、読後感も広
がりがあって良いと思いました。(言村律広)

【53】──┨ 月狂い

☆これは、いかにもなウェルメイドですね。序盤で読めてしまう結末に、愚直に突き進ん
でいった作品です。その真っ正直さは厭うところではありませんが、やはり捻りに欠ける
ように思います。もうひと押し!(秋山真琴)

☆女性の象徴とされる月のイメージが「妻」の存在感を増しています。ただ、全体として
はやや新鮮味に欠けるかも。(遥彼方)

☆果たして人を殺すことが狂ったことなのかなあ、と思いました。まあそれはともかく、
月が海中の化学物質を狂わせたというのは面白い見方だなと思いました。また終盤の、力
が抜けてからの描写はうまいなあと思いました。(言村律広)

【54】──┨ ゴーレム

☆これは奇妙な、どうしてか深い愛情を覚える作品ですね。特に良いなと思ったのは短さ
です。この手のテーマを扱う作品では、どうしても言葉数が多くなってしまうのですが、
この作品においてはシンプルにまとまっているように感じました。良いですね。(秋山真
琴)

☆シーン転換が独特で、やや読みにくい印象もありましたが、そこが魅力でもある、不思
議な作品でした。最後の一行が美しい。(遥彼方)

☆被迫害側に迫害側の兵士が取り込まれるも、最終的に教会は無くなって、被迫害側は迫
害側に取り込まれる話なのかなあ、と思いました。どうも、観覧はできてもそれで快楽や
娯楽に繋がらないような感じで、訴えるものがあるらしいとは思うものの、もうひとつ実
感とならなかったように思います。(言村律広)

【55】──┨ 醜い子

☆く、これは、素晴らしいです、実に素晴らしいです。読み終えた瞬間、胸が痛むあまり、
その場にうずくまりそうになってしまったぐらいです。新しい現実の誕生というテーマも、
かなり嫌らしいかたちで描き出されておりますし、極めてレベルの高い、素晴らしい作品
です。(秋山真琴)

☆心理描写が瑞々しく、また生々しくもあって、読んでいて何だか自分の昔のことを思い
出してひりひりとしました。(遥彼方)

☆美醜の判定などは、時代や文化だけでなく分野や集まり毎にだってずいぶん変わって、
まるで集団催眠みたいなものだということを思いました。最後に出てくる灰色の雲は、
そういった催眠とかなのかなあと思いました。またなんといっても、ミィちゃんのウソの
笑いの表現が実に鮮やかで、その笑いが深々と響いてきて、ひどく心揺さぶられました。
(言村律広)

【56】──┨ 幻葬物語

☆荒野、少年、少女、物語。これらはいずれも秋山の偏愛するガジェットです。ですが、
それ故に見る目が厳しくなるようにも思います。読んでいて感じたのは、Sound Horizon
の影響が強いなということです。受けるイメージが全く同じなので、きっとSHの曲を聴き
ながら書いたのかなと思います。(秋山真琴)

☆世界観やイメージが独特で綺麗ですね。ただ、本当にそこしか無いので、物語としては
やや弱いかもしれません。世界観を消化するのにいっぱいいっぱいで、そこから一歩進ん
だ感慨を持ちづらい印象もあります。(遥彼方)

☆結末は印象的で良いと思いますが、全体を通して、塔の存在意義は無いと思いますし、
物語の実感も無ければ少年少女にも存在感が薄く、また少年の言動にはどうも整合性が無
いように感じました。(言村律広)

【57】──┨ 無垢な人形娼婦と無慈悲な女衒の信じ難い悲惨の物語

☆えぐい話ですね。よく練られた、技巧的な作品だとは思いますが、純粋にこの手の悪趣
味な作品が好みでないです。書くにしても、もう少し必然性が欲しいですね。
(秋山真琴)

☆これでも物語が途中で終わってしまったような印象。アイディアもいまひとつ独自性を
感じられなくて、少し物足りないです。(遥彼方)

☆女の子に蛇や亀や鮫や鯉の格好をさせたらどうだろう、というのは冗談ですが、動物売
春に話が展開してもなお、法律を引いて話すところまでは面白く読みました。ただ終盤は
平凡なところに落ち着いてしまった印象で、タイトルに「無慈悲な女衒」とつけることで
字数が足りないけど無理に人形の語りとほのめかそうとしているような感じもあって、残
念に思いました。(言村律広)

【58】──┨ ゆらぎの神話 変遷する世界観

☆良いですね。「ゆらぎの神話」はそれほど深く関わっていないので、もっと奥深い設定
があるのかもと思いましたが、同時にないかもしれないと考え、そのあるのかないのか分
からない、あやふやな感じを楽しむのもまた一興……と、大枠で楽しませていただきまし
た。よい作品だと思います。(秋山真琴)

☆スケールの大きさが、作品からあふれ出ることなくよく纏まっているように思います。
語り口と物語の構造が、この長さにちょうどよく合っていて、凄いなと思いました。(遥
彼方)

☆歴史は繰り返す、けれど少しずつ変わってゆく、ということが端的に表現されていて、
面白いつくりの話だなあと思いました。ただ世界観の変遷なのかなあというところは、
いまいち疑問に思います。(言村律広)

【59】──┨ 夜間飛行

☆素晴らしいです。タイトルも良い作品から拝借していますし、全体の流れも、極めてリ
ズミカルで、素敵です。いい作品だなと感じたのですが、選評の場で言村さんが「これっ
て、奥さんゲーム廃人になってるんじゃないの」と指摘を受け、再読してみたところ物語
の様相がきれいに反転していて驚きました。これは怖ろしい作品ですね。作者がどこまで
自覚的に書いたのかは分かりませんが、多様な読み方を許容する、良い作品であることに
は変わりありません。(秋山真琴)

☆仮想現実=新しい現実、というかたちで、わりと皮肉で閉塞的なものにとらえられがち
の「ゲーム」をうまく使っていると思います。(遥彼方)

☆子供も独立して、自由に時間を過ごしている様子ですが、なんだか夫などの周囲とのか
かわりを断って引きこもっているような、それでも「彼女の空」が彼女の空想のことで、
好きに過ごしているからいいのかなあと思いました。でも私はゲーム世界はプレイヤーの
空想ではなくて他人(製作者など)の空想なんじゃないかなあと思います。(言村律広)

【60】──┨ ワンスモア

☆うーむ、くだらない(きっぱり)。や、気持ちのいいぐらいに真っ当な作品ではあると
思います。しかし正直すぎます。ちょっと思いついてしまったので書いてしまいました、
という風な。もう一捻り欲しいですね。ワンスモア(秋山真琴)

☆立場によって人と、その人の世界は劇的に変わる、という話だと思いました。主人公は
リンチされる側ですが、彼はおそらく(彼が頭の中でそうしたように)機会が違えば加害
の側でもありえたのでしょう。(遥彼方)

☆事切れた男=僕なのでしょうか。だとしても構造としてはともかく、彼の思考の中で閉
じてしまっていて、劇的に変わってしまったという世界を読者が感じることもないので、
あまり思うことはありませんでした。(言村律広)

【61】──┨ 枯れたプラスチックフラワー

☆はいはい。だけで済ませるのも良くないので少しだけ。これは作品ではなく、ただの愚
痴ですね。夢はどこかに転がっていて、探したら見つかるものではなく、自分で作り出す
ものです。同様に自分探しも不毛です。それは旅をすれば見つかるのではなく、なりたい
自分になることでしか自分なんてものは出来上がらないからです。(秋山真琴)

☆語り口も展開も、抑揚に欠けます。主人公ははじめから、自分には夢がないと自覚し、
そのまままっすぐ終わってしまっています。おそらく、友人からの借り物にすぎたい
「小説家になる」という夢を、ひとときは本物と思い信じ込んだことがあったはず。そこ
から、やはり自分には真の夢がなかったのだと気づき絶望する、というくらいの起伏があ
るほうがおもしろいです。(遥彼方)

☆なんだか、すごくどうでもいい愚痴を聞かされた気がしました。「三十になっても」な
んて、七十や八十まで生きてしまう世の中で半分も生きないうちに何事かを成すなんて、
よほど恵まれている場合くらいなのではと思います。(言村律広)

【62】──┨旧い人に聞く

☆この連作は、今回の応募作の中では個人的なお気に入りです。まず、実話風の体裁が素
敵です。実際に語られる物語もさることながら「旧い人」という謎めいた人物に対する興
味もかきたてられますね。また、この「雲上の庭園」という初めて行う企画にいきなり連
作を投げてくるのもお見事と感じました。これは最初に行ったひとの特権ですので、是非、
次回の募集でもこのシリーズを続けていただきたく思います。応援します。(秋山真琴)

☆飲み屋で語らっているみたいな語り口がいいですね。連作でもっと見てみたいと思いま
す。旧い人の正体とか。
(遥彼方)

☆数字を愛する連中というのが、あまりに魅力的で、もっと彼らの活躍を見たいと思いま
した。それだけに結局は贋札と貨幣経済の話になってしまったのが残念でした。連中に限
らず贋札はがっかりするでしょうし。とはいえ結び方は爽やかで上手いと思いました。
(言村律広)

【63】──┨ 旧い人と会う

☆この旧い人というのは、昔の自分というか、経験や蓄積、偏見や先入観みたいなものに
近いのかなあという気がしました。結末と作品のメイン部分が繋がるようなそうでないよ
うな感じなのは、62番の作品もですが、どこか作者の見た夢の記録なのかなあという感じ
もありました。(言村律広)

【64】──┨ 薔薇の悪夢を視る

☆ 完璧。完璧です、これは。秋山絶賛。(秋山真琴)

☆詩人の薔薇への妄執、その詩人の描き出す世界に対峙する翻訳者の執念。たまらなく魅
力的な設定と展開ですが、それに比して語り口がやや淡々としすぎている印象もあります。
とはいえ、とても好きな話です。(遥彼方)

☆薔薇色の原稿というのは、なんだか魅力的ですね。メアの存在感がとても強く描かれて
いるので、メアのいる世界というのも突飛に感じませんし、中絶した訳稿の続きが生み出
され続けるというのも怪異とかでなくむしろ嬉しく感じます。メアの作品を読みたいと思
いました。(言村律広)

【65】──┨ 首の無い人形

☆最初の数行を読んで、著者が分かってしまいました。著者の感性とは、にじみ出るもの
ですね。他にも読んでいるうちに「あのひとの作品では?」と思い至ったものがありまし
たが、これほど分かりやすいものはありません。この個性は大事にしてください。(秋山
真琴)

☆クローズアップ、細部をじっとりとたどっていく視線、ストーリーと相まって一種病的
な美しさを持つ作品だと感じました。(遥彼方)

☆最近の人は携帯電話の液晶バックライトを光源に使うということを知らなかった一読目
には、なんで携帯電話なのかなあと思ってしまいました。最後の「ぽしょり」の内容はい
ろいろと想像できていいなあと思いました。人形=彼女たち自身のようでもあり、そうで
もない感覚は独特のものだなあと思います。(言村律広)

【66】──┨ 再誕

☆これはちょっと迷える作品だと感じました。じっくりと場景を想像しながら読むと、な
んだか素敵な楽園が脳裏に浮かぶのですが、やや物語感に欠けるように思います。もう少
しリーダビリティが高かったら、と思います。(秋山真琴)

☆ラストシーンとタイトルの重なりが、良い味を出しています。(遥彼方)

☆どこか魔砲少女の話と通じるものがあるというか、補完しあっているような印象も少し
ありますね。再誕というタイトルでありながら、生み出しつつも死んでしまうことや、た
だの誕生でなく再びのものであることなどが、イメージの奥行きを広くしていて、味わい
のある作品だなあと思いました。(言村律広)

【67】──┨ 遥かなる希み

☆千文字の掌編小説には少々、似つかわしくない作品ですね。やりたいことはおぼろげに
読み取れましたが、それにしては選択している言葉の幅が狭いように感じられました。
(秋山真琴)

☆これも長い物語からワンシーンを切り取ったような感じで、ひとつの作品としておさま
りきれていない。「図書館」、私情で破壊してしまっていいものだったのか? 何らかの
報復が来ないのか? と心配になってしまいます。
(遥彼方)

☆場面としては確かにドラマチックだと思います。しかしそこに至る経過が示唆しきれて
いないというか、盛り上がる過程なしにいきなりクライマックスで、二人の思いに読み手
の実感がもうひとつ喚起されないというか隔たりがあるように思いました。記録管理官が、
全て受け入れなければならないために傷つき続けるという設定は魅力的だと思います。
(言村律広)

【68】──┨ 新しい現実の誕生

☆一瞬、凄まじい作品を読んでしまったと思いましたが、再読したらそうではないことが
分かりました。洗練具合と奇想が足りません。(秋山真琴)

☆<新しい現実の誕生>に際して人はどのように反応するか、という話ですが、やや説得
力に欠けるように思います。「生命の息吹に似たそれは何よりも芳しく、誕生は至上の幸
福なのではないだろうか。」この感覚がどこから来るものかが分かりにくいです。(遥彼
方)

☆幸福についての記述はしみじみとして良いと思いました。とはいえ、テーマを論理ぶっ
て解釈を加えるのは作品作りの前段階でやることで、それをそのまま出してきたのは目新
しいというより作品に昇華しきれていない印象を持ちます。あまり上手くないコラムのよ
うに感じました。(言村律広)

【69】──┨ テンケーカイ

☆良い作品ですね。テンケーカイという謎の単語で、読み手の関心を引き付けておいて、
リズミカルな文章でポン、ポン、ポンと読ませてくれます。完成度の高い作品だと感じま
した。(秋山真琴)

☆まさにぽっぺんを思わせる、やわらかな語り口がとても良いです。じんわりとした幸福
感が、とても上品に、でも、しっかりと伝わってきます。(遥彼方)

☆微笑ましくて楽しい、ほっとする良い話だと思いました。テンケーが天啓なら、カイは
何だろうということが、どうも気になります。彼女のかわいさもよく伝わってきますが、
天啓や思いつきといったものが新しい現実の誕生と言うには、もうひとつ説得力は足りな
い気もします。(言村律広)

【70】──┨ 魂の未分化なフォーマット

☆傑作。最初の数行で読み手のハートを、完全に掴んでおいて、見事なSFせかいを中盤の
説明で展開し、そして甘く切ない結末。これは素晴らしいです。(秋山真琴)

☆緊迫しそうな設定に、主人公ののんびりとしたスタンスとの組み合わせが愉快です。世
代によって「眠り人」に対する考え方が異なるあたりとか、妙にリアリティがあって、面
白く読みました。(遥彼方)

☆四人に一人のあとが五人に一人だと減ってるんじゃないかなあとか、上層で根幹を共有
というのも違和感があるなあとか思いましたが、もしかして作者か読者も眠り人だってこ
とかと思って読み直してもみたのですが、どうもそれは思い違いのような気がします。た
だまあ世界認識がバリエーションに富んでいるというのはその通りだなあと思います。
(言村律広)

【71】──┨ この美しくすばらしい世界

☆面白くありませんでした。名前が鏡美なら、かがみんという愛称はふつうにありえそう
ですね。(秋山真琴)

☆ちっちゃなわくわく感のようなものが全体に漂っていて、でもそこから先には発展しな
いのがなんとも。ギャルゲ的な発想に対する一種の皮肉?(遥彼方)

☆地の文で、かがみんではなく平木と呼んでいることに、ああ仲良くなったんだなあと感
じました。ちまたの呼び名のかがみんでも、肩書きの委員長でも、会話当時の平木さんで
もないので、さんを取れるくらいに着実に距離を縮めたのかなと思いました。どっとはら
い、の意味はよく分かりませんでした。(言村律広)

【72】──┨ 黒髪の棘

☆今ひとつ、でしょうか。実は駆け込みで送ってこられたので、著者を知っている状態で
読んでしまいました。他の作品と比較して、捻りや結末の強さに欠けるように感じました。
(秋山真琴)

☆ちょっとしたところに転がっている、実際にも出会えそうな新しい現実、というアプロ
ーチが面白いです。(遥彼方)

☆見られていると思うと綺麗にしようとも思うというけれど、その理由が良く見られたい
からではないところが、意外性があって面白いと思いました。ただ主人公が女子高生に見
られているのかという点が疑問として残るので、そこに説得力があるともっと良かったと
思います。(言村律広)


 ……………………………………………  幻  ……………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 いかがでしたでしょうか。
 次回からは鵺屋イサイさんの新連載が始まりますよ! お楽しみに。

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は10月25日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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