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雲上マガジン vol_185

発行日:9/15

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 1000字企画「雲上の庭園」     お気に入りの5作 (募集第1回)
 【3】 1000字企画「雲上の庭園」       著者名リスト (募集第1回)
 【4】 後記

 ……………………………………………………………………………………………………
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 さて、第1回の「雲上の庭園」もいよいよ大詰めですね。
 今号では、気になる著者名が全て明かされますよ!


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 1000字企画「雲上の庭園」     お気に入りの5作 (募集第1回)
 ──────────────────────────────────────

 お気に入りの5作と寸評をお寄せくださったみなさま、ありがとうございます。
 選者ごとにお気に入りを紹介します。

 ……………………………………………  庭  ……………………………………………

【選】恵久地健一

   五作の選出にあたり、まず小説としての作法を個人的な基準とさせていただき
  ました。
   掌握小説とある以上、その内容は小説として成立させるべきですし、短い中で
  も起承転結の流れで読者の興味を牽引し、消化不良を起こさないよう一話を完結
  させる。限られた文字数でいかにそれを処理するかが書き手の技量だと、私的に
  は思います。
   今回は七十作以上から五作に絞るということで上の基準から判断しましたが、
  瞬間を切り取る詩作風の作品も面白く感じました。

 10┠──「レッド・プール」古川
   テーマである『新しい現実』との親和性は少し乏しいかもしれませんが、作品
  の力量は飛び抜けているように思います。
   自分の書く世界がきちんと確立していて、幻視というものを現実の中で身近に
  とらえる感覚を持つ作家さんだなと感じました。

 22┠──「伝道師」駿河捷克
   先にあげた基準どおり、短い中で小説の作法を良く処理した作品だと思います。
  「信号機のように機械的なティッシュ配り」などの表現も巧みですし、内容の方
  も今回のテーマに申し分ないと思います。

 42┠──「皆笑った」蜜蜂いづる
   選出の基準は同様ですが、娘の死というネガティブな内容を明るく仕上げてい
  る点も良いと思います。短い中で良く文章を洗練して収めた形跡も読み取れまし
  たが、「目に掘り込んだ」など若干の齟齬が見られる部分に推敲の余地を感じま
  す。

 48┠──「中古の新現実」荒霸鬼 謹和
   先の基準からかなり外れますが、一行のみで自己の作品に足りるとして提出し
  た作家さんの自負が好きです。同様の手法を取る作品が他にあれば、選ばなかっ
  たです。

 62┠──「旧い人に聞く」高橋白蔵主
   小説の作法に加え、言葉を複雑にするのではなく、平易な言葉で幻視的な内容
  を面白く表現できている点が良いと思います。小説は対人的なものなので、難解
  な言葉を多く知る人よりも、話の分かり易い人や、相手に合わせた話し方のでき
  る人に上手さを感じます。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】霞永二

 06┠──「部屋を明るくして離れてご覧下さい」市川憂人
   なるほどというネタを短く纏めていてよかったです。

 10┠──「レッド・プール」古川
   イメージが圧巻。  

 15┠──「不眠症」水池亘
   とぼけているなかに不気味さも少し感じさせる雰囲気が面白かったです。

 29┠──「荒野の呼び声」不狼児
   地の文と会話の意味がほとんど通っていないのに、妙に印象に残りました。

 32┠──「リヴァプール1790」雨街愁介
   短い制限のなかで世界観を感じさせるうえ、オチも鮮やか。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】仲町六絵

 11┠──「タンギング」恵久地健一
   前半を読んで、主人公は求道者だなあ、こういう実用的じゃないとこに凝るの
  は男性かなと思っていたのですが、女性だったとは面白い。幾何学的な柘榴の中
  の、アラビア式宮殿と踊り子の幻影がお気に入り。
   この女性、相手の男性を気に入ってもいるだろうけれど、別世界への入り口と
  して使用してもいるわけで、怖いような魅力的なような。

 33┠──「紅、暮れる世界」加楽幽明
   ヒトが最初に知覚できるようになった色は赤である、という説を思い出しまし
  た。
   証明の不可能な仮説ですが、野生生活を送っていた人類にとって、出血を知ら
  せる最も重要な色だった、という推測には頷かされました。
   さて、先天的に赤色を知覚できない人は、現在一定の割合で生まれており、生
  活するうえで様々な調整が必要になってきます。しかしこの作品のように、ある
  世代からいっせいにとなると、意味合いが違ってきます。赤の欠けた情景が、夕
  焼け、血液、炎と羅列的に語られて、主人公の世代からは世界観が一変してし
  まったのが伝わってきます。確かに、深刻な事態なのでしょう。
   しかし終盤、赤を知らないから他者への憐憫を知らず、戦争は悲壮さを増すと
  いう主人公と作者の主張に行き当たると、私は反論したくなるのです。赤が消え
  たのはきっかけの一つに過ぎず、世界を破壊していく力の根源は、もっと別のと
  ころ、人の意志にあるのではないか。「赤を知ることなく」が原因だと思ってい
  る限り、泥沼化は止まらないのではないか。そう、作中世界に向かって訴えたく
  なります。
   問題提起の力を一番強く持っているという意味で、この作品を「お気に入りの
  5作」に入れます。

 42┠──「皆笑った」蜜蜂いづる
   詰め込みすぎず、かつ整った私好みの文章で、読み終わる前にもうお気に入り
  候補と決めた作品です。
   最近だいぶ一般的になってきたレーシック手術が出てきまして、おおまかな手
  順やら費用の裏事情やら、細部が適度に書かれていて、お話の中でのリアリティ
  をちゃんと具えていると感じました。亡くなった娘の姿を視界にとどめる、とい
  うセンチメンタルな話では終わらず、娘が動き出して危機を知らせる、という怪
  談めいた展開も好みです。あと、「まさに目に入れても痛くない娘だ」でウフフ
  と笑ってしまいました。座布団三枚ぐらいあげたい。
   作品名は、『皆笑った』でなくてもいいかもしれません。ラストの三人が笑う
  場面は、タイトルにしなくても充分印象的です。作品名として最初に示してしま
  うのは、ちょっと勿体無い気がします。

 50┠──「ひとりうたい」添田健一
   語り手がどんな子か、そして作品世界で何が起こっているのか的確に伝えるた
  めに、一言一句までうまく制御して書かれた作品だと思います。学校を何ヶ月も
  休む子にはいろんなタイプがあるのですが、読んでいると「ああ、大体こんな感
  じの子だな。頭はいい方で、感じやすい子。基本的な礼儀も分かっていて、それ
  でいて学校生活には順応しにくい子…」とイメージが湧いてきます。私はネット
  ゲームを体験したことがありませんが、ゲームの周辺が、過不足なく書かれてい
  て臨場感がありました。地名は「モンテリアル教会の広場」「アルビオナの街角」
  のふたつしかなく、何が目的のゲームで、どんな世界設定なのかも書かれていな
  いというのに。過不足なく書く、という技術は大事なのだなあと実感した作品で
  す。また、全作品のなかで最も向日性にあふれていると思いました。
   ラストでタイトルの意味が分かる、という構成も巧みです。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   化粧っ気のなかった女性が突然おしゃれに凝りだす、そのきっかけは大抵恋
  だったり身近な女友達だったりで、この主人公みたいなのは珍しいと思われます。
  しかしこの作品を最後まで読んだ時、人が人に与える影響というのは、意外なと
  ころで生じているのだよな、と妙に納得しました。
  「意味がない」と思っていたことを実行するだけでも主人公の世界観は変わった
  でしょうし、また外見を変えることで周囲の反応も変わってきます。超自然的な
  ことも非日常的なことも何一つ起こってはいませんが、これもまた「新しい現実
  の誕生」でしょう。主人公の「くっだらねえ」過去の生活は、後になってみれば
  幻みたいに思えるかもしれません。

   他にも面白い作品が多数あり、勉強になりました。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】丹酌

 04┠──「Innocent Love」空虹桜

 08┠──「ロボットの脳」霞永二

 34┠──「白朱」長屋言人

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一

 71┠──「この美しくすばらしい世界」姫椿ひめ子

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】水野奏美

 03┠──「夢買い人」時磴 茶菜々
   読み終わって、なるほど!と手を叩いちゃいました。
   タイトルに目がいって、物語の中に入っちゃった。
   宝くじ、当たるといいなぁ。

 16┠──「万歳」水池亘
   ドキっとする感覚のある作品で、心惹かれます。
   文章の書き方が好みだったのもありますがテンポのいい1,000文字小説なので
  はないでしょうか。

 26┠──「小さいけれど、それは光」蒼ノ下雷太郎
   いいですねぇ。なんだか和んでしまいました。
   胃腸薬をプレゼントしてくれたおばあちゃんの台詞に仕事で疲れた自分が、泣
  きそうになるのを感じました。

 48┠──「中古の新現実」荒霸鬼 謹和
   まさか、一行で終わるとは驚かされました。
   これは確信犯の犯行ですね。

 55┠──「醜い子」あんず
   こ、これは。女の子独特の感覚というべきか。
   若き日の思い出を見ているような作品でした。
   ミィちゃんのウソの笑いのシーン。ズキンときちゃった。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】杉本@むにゅ(小田牧央)

 02┠──「七月二十三日早朝、大楠の前で」添田健一
   過不足のない描写、奥行きのある物語。小世界が鮮やかでした。

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   これは、続きを読みたいです。今後Fはマシンとどう接するでしょう?

 48┠──「中古の新現実」荒霸鬼 謹和
   ズルイ! と思いつつも、いちばん印象的な作品でした。

 67┠──「遥かなる希み」蒼桐大紀
   この情報量を千文字で語るトンガリ具合に惚れました。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   わかりやすい起承転結と、丁寧な細部の両立が見事でした。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】秀

 15┠──「不眠症」水池亘
   非常に短い文章なのですが、ミミズクが申し出るブラックな親切の語尾
  「…ほっほー」がアクセントになって、詩的な印象の残る作品でした。ただ、
  「沽券に関わる」という言葉がこの場で適切なのか、少々疑問に思いました。

 16┠──「万歳」水池亘
   テーマの発想が面白い作品でした。どういうことだ、と思って読んでいるうち
  に、読者も作者の意図にはまってしまう仕掛けがあって、楽しめました。会話も
  状況説明の部分もテンポのよい文章で非常に読みやすく、作品世界に入りやす
  かったです。

 36┠──「不徳の魚」あんず
   タイトルから引きこまれた作品でした。水の中で窒息しかけている私=不徳の
  魚という事実が、初めはじわじわと、そしてクライマックスに向かうにつれて劇
  的に明かされていく。この過程が何ともスリリングで、最後まで一息つかせず読
  ませる巧さが、短い文章の中で見事に凝縮された作品でした。

 55┠──「醜い子」あんず
   子供の社会での小さな確執が見事に描かれている作品だと思います。こうした
  テーマはやや重くなりがちで、どうしても自己中心的な視点で描かれがちですが、
  この作品はひらがなが多く使われていることもあって終始軽やかなテンポが流れ
  ていますし、お互いが傷つき、痛みを分かち合う脆い存在なのだということを静
  かに伝えてくれる、残酷だけれど温もりを感じる素晴らしい作品だと思いました。

 69┠──「テンケーカイ」伊藤鳥子
   童話的な世界での主人公たちのやり取りに、思わず頬をゆるめてしまいました。
  表現がとても分かりやすい文章で、読んでいて状況をすぐに頭に思い浮かべるこ
  とができ、微笑ましい二人を目の前にしているような、楽しく優しい雰囲気が心
  地よい作品でした。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】夏目陽

   これだけ作品数が多いので、出来のよさよりも私自身の好みで書きました。

 04┠──「Innocent Love」空虹桜
   今回、一番好きなのはこの作品です。何よりも作者のセンスのよさが光った作
  品だと思います。これからもこういう小説を書き続けて欲しいと思える作品でし
  た。

 06┠──「部屋を明るくして離れてご覧下さい」市川憂人
   これはアイディアの勝利でしょうか。新しい現実の誕生というテーマに対し、
  キャラクター論をそのまま当てはめるというのは上手い着想であったと思います。

 32┠──「リヴァプール1790」雨街愁介
   今回の作品の中でも一番タイトルセンスがよかったと思います。変に飾ってい
  るわけでもなく、それでいて中々思いつかない。内容も面白かったです。

 66┠──「再誕」芹沢藤尾
   雰囲気作りの上手い作品であると思います。他にもいくつか雰囲気作りの上手
  い作品もありますが、この作品の雰囲気は特に私の好みでした。

 67┠──「遥かなる希み」蒼桐大紀
   なんという中二病! だが、それがいい!
   ここまでたくさんの作品が同じテーマで書かれると似た作品も出てくるわけで、
  特にこの作品は自分の作品とのシンパシーを感じました。こういうのがあるとす
  ごく面白く感じますね。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】Narihara Akira

 22┠──「伝道師」駿河捷克
   最初はR・ダールの「豚」かと思ったが、これはむしろ足穂の世界。

 37┠──「叫び」安眠練炭
   様式美。
   洗練の方向によっては、夢野久作か山頭火になるか?

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   この結末しかない、というところで、一票。

 42┠──「皆笑った」蜜蜂いづる
  「え、うまいこと云えた? 誉めて誉めて」
  「ああ。心あたたまる、品のいい話だ」

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   自分を生まれ変わらせることができるのは自分だけだが、そのきっかけに感謝
  する、美しい瞬間をとらえている。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】高橋史絵

 11┠──「タンギング」恵久地健一
   ソムリエがワインの味を表現するかのように、男を味覚をつかって表現する女
  性。この女性にとって男は極上のワインなのだと思った。

 58┠──「ゆらぎの神話 変遷する世界観」bothhands
   古い世界秩序の打破と新しい世界の確立をめざす人々は実は無限のループに
  陥っているという矛盾が哀しい。

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
  「誰のことが一番好き?」という究極の質問に対してFが答えをだすまでに、彼
  女の中に葛藤というものがあったのかと気になる。

 55┠──「醜い子」あんず
   手に入れた新しい現実の中で、ミィちゃんは心の中で泣くことを覚えるのだろ
  うか。現実とは残酷だと思い知らされる。

 02┠──「七月二十三日早朝、大楠の前で」添田健一
   大ぐらいで怠惰な神様タルコ様に1票を!

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】姫椿ひめ子

 11┠──「タンギング」恵久地健一
   楽器演奏の技法とエロスを結びつけたのは秀逸。作者の楽器演奏技術から導き
  出されたであろう前半の描写は大変リアル。
   後半のエロス描写。
   官能、ではなくエロスとあえて書きたいのは、そこに優美さがあったからだ。
  ザクロや踊り子の描写は鮮やかで瑞々しく優雅に感じた。
   そして最後の嚥下の描写が、なによりも扇情的だった。

 14┠──「ここにキスして」渡邊利道
   華奢でロリータな少女を想像させられました。きっと彼女には白いフリル付き
  のキャミワンピースが似合うに違いない。
   崩れた着衣からキスしてまでが大変エロスであります。

 48┠──「中古の新現実」荒霸鬼 謹和
   1行で語り尽くされている今回のテーマ。変化球に圧倒されました。すごい。

 52┠──「野田と寺山は海へ行く」渡邊利道
   青年達の莫迦らしくも美しい青春のグレートジャーニーに胸打たれました。
   という感慨を抱いていたらお嬢系美少女の、裡なるBL心の覚醒物語でした、
  本当に(ry
   青年時代は有り余る体力のやり場に困るものです。そのことも十二分に伝わっ
  てきました。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   明日へのやる気が出てくる作品でした。
   人のために始めたことでも、それが自分の活力へとつながる様は見ていて元気
  づけられます。
   勝手に自分の創造した枠に他人をはめてるきらいはありますが、偶像を求める
  ことに罪はありません。
   ただたんに主人公が明るくなり、日常の中に希望を見いだせたことに安堵しま
  した。素敵な作品でした。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】長屋言人

 04┠──「Innocent Love」空虹桜
   認識が変われば、観察している対象──世界は変わる。色彩と音階のみで描か
  れる世界は、一体どのように感じられるのだろうか?

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   ラストの一行が良いと思う。他人を見ているつもりでも、その実見えているの
  はその人の中にある自分の姿。つまり、世界を見ているつもりでも見ているのは
  自分。世界が変わるということは、自分が変わるということなのだろう。

 50┠──「ひとりうたい」添田健一
   インターネットが発達して、そこにひとつの新しい世界ができたかのように錯
  覚することがある。多重のペルソナを持つ人で埋め尽くされた場所、それがネッ
  トワーク上なのかもしれない。

 66┠──「再誕」芹沢藤尾
  「新しい現実」ということは、今、そこにある「古い現実」を突き破り、壊すこ
  とから始まる創造の成果に違いない。それは、簡単ではなく、苦しく辛い、死を
  も恐れぬ戦いの果てにつかみ取られるもの。その戦いが明けた朝の太陽は、さぞ
  美しいに違いない。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   現実は、自分が変わればいくらでも変わっていく。腐ったようなやつはいつま
  でも腐り続けているし、輝こうとする人は、輝けるはず。そのきっかけが、ひと
  りの少女だっていいと思う。 

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】空虹桜

 07┠──「チャイカ」遥彼方
   さも当然のように異世界へフェードしていくけど、ちょっと待って!
   なぜかもめ?どうしてかもめ? 竜とかもめ?
   いや、タイトルがタイトルだからわかるのだけれど、わからないじゃないけど。
   竜のインパクトのが強いかなぁ。全体的にカッコいいんだけど。

 32┠──「リヴァプール1790」雨街愁介
   ホントのホントの1790年リヴァプールがどうだったか知らないのだけれど、妙
  な説得力を感じました。「ダンベル」以外に。
   産業革命あたりの歴史的背景が世界と異世界の滑らかな接合を促してるのかな。
   おおっ、なんかエラそうだ。

 59┠──「夜間飛行」添田健一
   素直に上手いなぁ。
   なんか口うるさそうな文学系の人も今時のキッズにも通じて、おまけにいい話
  なんだもの。
   世代に対して普遍的な物語を紡げるタイプの物書きではないので、羨ましかっ
  たりもしつつ、賞賛!

 69┠──「テンケーカイ」伊藤鳥子
   これは最後に漢字を当てなかった方が作品としては良かったと思うのだけれど、
  最後に漢字を当ててもらえなかったら、漢字が出てこなかった口なので、有り難
  いやら悔しいやら。
   タイトルと共に作中散乱するカタカナの存在感が上手いなぁと。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   前半ちょっとたるかった分、後半急展開過ぎてしまったのだけれど、これはも
  うアタシが推さないわけにはいかない!
   最後の一行が決まっていて、いいなぁ。 

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】添田健一

   72→18→7としぼってゆき、悩みに悩んだ末にこの5作を選びました。セレクト
  は苦しかったです。

 12┠──「7月25日4時43分12秒」蒼桐大紀
   せつない話ですね。季節の設定もよく、作品としての拮抗は整っています。
  「結局、」や「すると」など細部をしぼるともっと伝わりやすくなるのでは、と
  思いました。欲をいえば、最後に開いた携帯をいつ閉じたのかも知りたい。され
  ど、ラストの5行に深い余韻が残ります。末尾はことにすばらしい。

 25┠──「デリー大災害の一夜」小田牧央
   ドキュメントタッチの描写が臨場感を高めていて、雰囲気を醸しだしています。
  ラストは予測していた通りでしたが、これはこれで一本きれいに筋が通り、つな
  がりぐあいが痛快さをもたらせます。監督のすがたが街の災禍と人民の混乱ぶり
  を高みから見下ろして楽しんでいる暴君の姿とかぶりました。

 56┠──「幻葬物語」夏目陽
   点描画を見ているような印象の端整な物語です。世界の崩壊の歯車の音が迫り
  くるようす、少年と少女が無残にも引き裂かれてしまうあたりには荘厳ささえ感
  じます。きっとこの情景は無限なまでにくりかえされているのでしょう。

 64┠──「薔薇の悪夢を視る」佐多椋
   虚実まざわりあった世界観がめくるめくようで、幻惑されました。詩人の幼少
  のエピソードも一読忘れがたい。詩人の享年が知りたかったけれども、全三巻と
  いう語が答えてくれています。ラストの一文には技巧の冴えを感じます。

 72┠──「黒髪の棘」フルヤマメグミ
   まず冒頭にひきつけられます。どうなるかと思って読んでいると、日常が
  ちょっとだけ変わる。その展開のさせ方が秀逸です。大事件ではないけれども、
  確かに変化が起きる。世界はちょっとした行動で自分から変えられるんだって、
  希望を持たせてくれる。素直によい作品です。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】佐多椋

   どうも精神的によろしくない状況のせいか、《新しい現実》をポジティブに捉
  えることができないようで、それが反映されたセレクトになったようにも思えま
  す。また、《新しい現実》だけではなく、それがきちんと《誕生》しているかを
  個人的には重視して読みました。

 09┠──「哲 夫」あんず
   あるいは彼にとってこの試みは新しい現実を作り出すものではなく、むしろ現
  実を新しい現実で糊塗しようとするものなのかもしれません。

 25┠──「デリー大災害の一夜」小田牧央
   現実がフィクションを侵略しようとするさいに、フィクションが出来ることは
  何でしょうか。倫理的な側面も含め何度も問いかけられた問題をこの作品は描い
  ていますが、このテーマでそれをなぞったことが印象的でした。

 16┠──「万歳」水池亘
   他者への信頼はときに彼/彼女の首を締めることでしょう。オチは読みやすい
  ですが、シンプルな構図を過不足なく描いた作品です。

 70┠──「魂の未分化フォーマット」魔王14歳
   わたしたちは普段、どれほど自分の意志を言葉に乗せられているでしょうか?
  それぞれが見ている《現実》の相違がはっきりしているとき、むしろそこに誤解
  の余地はなくなるのかもしれません。

 33┠──「紅、暮れる世界」加楽幽明
   アイディアとしてはそれほど飛びぬけたものではありませんが、文字数内で
  《世界》をきちんと描いている点に好感が持てました。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】安眠練炭

   残念ながら、気に入った作品は三作しかありませんでした。

 15┠──「不眠症」水池亘
   不眠症というのは辛いものです。

 27┠──「するり」霞永二
   するりと読めました。

 29┠──「荒野の呼び声」不狼児
   トイレのことを俗に「コウヤ」と言います。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】三澤未来

 19┠──「オカルト判事遠山越前名裁き 第一話 ラーメン天一坊事件」安眠練炭
   ラーメン好きでマジック好きにはたまらないこのバカバカしさ。
   それでいて叙述っぽく一捻りしたラストにまた一笑。

 27┠──「するり」霞永二
   これ大好きです。テンポもリズムも、文章から受ける肌触りも絶品。
   するりするりと読めて、心地よさに包まれました。

 42┠──「皆笑った」蜜蜂いづる
   素敵な笑顔のラストに、哀しいけど癒されます。
  「誰がうまいこと言えと」の台詞が、とても胸を打ちました。

 55┠──「醜い子」あんず
   冷たい笑顔と、冷たい涙。喪失の切なさが溢れる、悲しい一編でした。 

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】駿河捷克

 02┠──「七月二十三日早朝、大楠の前で」添田健一
   非常に洗練された言葉選びがなされていて、全体として綺麗に整いつつもほん
  わかとしており、読んでいて心が温かく満たされるような文章となっている。ひ
  らがなとカタカナ、漢字の使い分けも見習いたいほど絶妙。

 27┠──「するり」霞永二
   擬音と抽象だけが並べられた文章なのにとても視覚的で、印象に残る。

 32┠──「リヴァプール1790」雨街愁介
   こういう「王道わけわからん系超短編」において、道理と不条理の分量配分と
  いうのは意外にデリケートで難しい技術だと思うのだけど、この作品ではそのさ
  じ加減が自然で、すっきりとしている。

 37┠──「叫び」安眠練炭
  『私』の一生が、13字×13行の匣にみつしりと詰まっている。怖い。

 50┠──「ひとりうたい」添田健一
   いろんな解釈があるのだろうけど、これは普通にいい話だな、と思った。嫌み
  のないいい話を書くのって難しい。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】渡邊利道

 10┠──「レッド・プール」古川
   幻想的なイメージが鮮やかでした。暗い感じが好きです。

 15┠──「不眠症」水池亘
   駄洒落に笑ってしまった。余裕のあるユーモアが好きです。

 27┠──「するり」霞永二
   うまいですね。リズミカルで楽しい。

 69┠──「テンケーカイ」伊藤鳥子
   集中一番面白かったです。イメージとストーリーがきっちりはまってると思い
  ました。

 70┠──「魂の未分化フォーマット」魔王14歳
   SFらしい理屈とファンタジックな情景が巧くマッチしていると思いました。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】高橋白蔵主

 02┠──「七月二十三日早朝、大楠の前で」添田健一
   夢の中の情景描写がすばらしく美しいですね。1000文字という制限を制限に感
  じさせない、すてきな作品だと思います。

 12┠──「7月25日4時43分12秒」蒼桐大紀
   いわゆる携帯小説的な素材で更正されているので一瞬アレかと思いましたが、
  個人的には、新しい世界の誕生、というテーマに、にもっともふさわしい作品の
  ように思います。

 22┠──「伝道師」駿河捷克
   あまり愛すべき姿っぽい豚が出てこないあたり、豚が嫌いなのかなと心配しま
  したが、昔の、フィルムで撮影された映画のような感じできれいでした。

 42┠──「皆笑った」蜜蜂いづる
   本当にうまいこと言いましたね。

 55┠──「醜い子」あんず
   ちょっと痛々しい感じがすてき。1000文字でもこういうものが書けるんだと
  思って少しびっくりしました。心に残ります。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】古川

 51┠──「眠り疲れて」Narihara Akira
   うちの父親を思い出しました。

 19┠──「オカルト判事遠山越前名裁き 第一話 ラーメン天一坊事件」安眠練炭
   プリンセス・テンイチボーの響きが好き。

 27┠──「するり」霞永二
   ときどき、するりとするりが混乱するけど、不思議な感じが印象深い。

 62┠──「旧い人に聞く」高橋白蔵主
   会話のやりとりがいいですね。2個目より、こっちのほうが好きだ。

 37┠──「叫び」安眠練炭
   映像として浮かびやすかった。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】あんず

 61┠──「枯れたプラスチックフラワー」蒼ノ下雷太郎
   誰しもがもつ劣等感を、とても上手に表現していると思います。 

 40┠──「生首」渡邊利道
   生首と普通に会話してしまう奇妙さに、とても惹かれました。

 03┠──「夢買い人」時磴 茶菜々
   最後が大好きです。妙に納得してしまいました。

 15┠──「不眠症」水池亘
   ひょうきんなミミズクの行動とのギャップが、面白かったです。

 16┠──「万歳」水池亘
   語られない部分を、とても上手に表現した作品だと思います。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】加楽幽明

 07┠──「チャイカ」遥彼方
   描き出されている情景が面白いと思いました。かもめが出てきた後に、何気な
  く出てくる竜というのも独特の空気を醸し出していると思います。綺麗と穢いが
  優しく混ざり合ったお話。

 10┠──「レッド・プール」古川
   ひたすら不条理に突き進んでいく展開が、最後まで息切れすることなく書けて
  いてすごいと思いました。ありえない状況なのに、蚊が群がってくる様子が頭に
  中にこびりつく厭らしさが素敵です。

 17┠──「魔女の花園」雨下雫
   世界観の一端を担う言葉選びが気に入りました。儚く無残で、それでも得るこ
  とのできた小さな幸せ。願いの成就がシニカルな内容で切なかったです。

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   少女の孤独が淡々と描かれているのがいいと思いました。最後の一言がすごく
  自然に発した言葉に思え、それまで機械的に思えた少女に確かな表情が宿ったよ
  うに感じられました。

 54┠──「ゴーレム」峯岸可弥
   凄惨な光景のはずなのに、すごく落ち着いた筆致で描かれていて、そのアンバ
  ランスさが魅力的です。感情の渦が何処に向かっていくのか。読んでいる自分ま
  で飲み込まれるような作品でした。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】蒼ノ下雷太郎

 56┠──「幻葬物語」夏目陽
   少ない文字数で作られた世界。
   だというのに、しっかりと目に浮かぶ物語を見せられた。

 24┠──「ケータイを持ったサル」蜜蜂いづる
   限られた文字数で自由自在に動く会話のリズム。お気に入りに選ぶほどだった。

 33┠──「紅、暮れる世界」加楽幽明
   一、二を争うほど面白かった。
   筒井康隆のニオイがあるが、ちゃんとした個性もある。すばらしい。

 37┠──「叫び」安眠練炭
   微妙に「新しい現実の誕生」というわけではないかもしれない。どうだろう。
   でも、あまりの面白さに入れてしまった。1000字よりも、はるかに少ない
  文字数で書いてあるのに、これほどまでの世界観。
   ちなみに一、二を争う作品。もうひとつはこれである。

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   限られた鳥かごで自由自在に踊る文章力と構成力。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】ふるやまぐみ(フルヤマメグミ)

 06┠──「部屋を明るくして離れてご覧下さい」市川憂人
   登場人物たちの“現実”がどんどん乖離していくのが素敵でした。

 25┠──「デリー大災害の一夜」小田牧央
  “新しい現実”についての解釈が目を引きました。

 63┠──「旧い人と会う」高橋白蔵主
   連作短編。どちらも素敵ですが、個人的な好みでこちらを。サンカもしくは山
  の民が、我々の文化・生活をどう見ているのか気になります。

 70┠──「魂の未分化フォーマット」魔王14歳
   時間を操る類の作品が多い中、個人の好みを通してこちらに。遠距離(?)恋愛
  が切なく、また可愛いのが高評価です。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】踝祐吾

 12┠──「7月25日4時43分12秒」蒼桐大紀
   今回の中で僕が一番推したい作品。後味は決して良くない、けれどすっきりま
  とまっています。シンプルかつ丁寧な描写に好感を持ちました。

 19┠──「オカルト判事遠山越前名裁き 第一話 ラーメン天一坊事件」安眠練炭
   ばかすぎる(褒め言葉)。あの展開にあのオチ、そう来るか! という内容が
  二転三転するも実は千文字。……参りました。

 38┠──「機械式による自我と自己愛の形成」恵久地健一
   最後に彼女が求めたものに対し、深く考えれば考えるほど何通りの解釈も出来
  る作品。落ち着いたSFというのが僕のツボでした。

 55┠──「醜い子」あんず
   なぜか、#12と対になる作品だな、と感じてしまいました(偶然かも知れない
  ですが)。彼女が足を踏み入れた修羅の道は、主人公には絶対追えない世界であ
  ること……と考えると戦慄すら覚えます。

 69┠──「テンケーカイ」伊藤鳥子
   後味のよく、一服の清涼感を覚える作品を。いいなぁ、ほんとうにいいなぁ。
  難解に行こうとしない、この爽やかさは何物にも代え難いです。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】市川憂人

 16┠──「万歳」水池亘
   今回企画の個人的最高作。ショートショートの見本。

 19┠──「オカルト判事遠山越前名裁き 第一話 ラーメン天一坊事件」安眠練炭
   こんな短い話に叙述トリックを仕込むあんた凄ぇよ。

 30┠──「その声は聞こえない」小田牧央
   完全に好みで選択。往年の世紀末SF的な雰囲気がツボ。

 36┠──「不徳の魚」あんず
   怖い話。最後の台詞が良。

 44┠──「第三の道」三澤未来
   良きショートショート。最後の締めが上手い。

 ◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇
【選】芹沢藤尾

 37┠──「叫び」安眠練炭
   作者の狙い通りな感想を。綺麗に整列した文章に感心した。

 56┠──「幻葬物語」夏目陽
   たぶん、読んだ中では一番素直に入ってくる文章。ひょっとしたら、影響を受
  けた作品が近いのかもしれない。タイトルがかけている通り、幻想的な世界観が
  ある。

 07┠──「チャイカ」遥彼方
   長編の中の一節を想像させる作品。これが終わりなのか、ここから物語が展開
  されるかは読者次第か。自分は黒幕の動機のような印象を得た。

 08┠──「ロボットの脳」霞永二
   これだから科学者ってヤツは……いいぞ、もっと没頭しろ。

 21┠──「無題」長屋言人
   いや、だってチャンバラ活劇ですよ(謎)

 ……………………………………………  幻  ……………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 1000字企画「雲上の庭園」       著者名リスト (募集第1回)
 ──────────────────────────────────────

 掲載時の作品番号に続いて、著者名、作品名をリストにしています。
 また、作品の一行目を引用しています。

 ……………………………………………  庭  ……………………………………………

 ☆【01】古川「何も無い」
   山々に囲まれ、飲み込まれそうな村だった。 …………

 ☆【02】添田健一「七月二十三日早朝、大楠の前で」
   大きな楠があるお寺の大池に落ちた春子ちゃんは幸いにもすぐに …………

 ☆【03】時磴 茶菜々「夢買い人」
   まずは仕事を辞めた。暇な時間が増え、対人関係のしがらみが …………

 ☆【04】空虹桜「Innocent Love」
  「群青」 …………

 ☆【05】駿河捷克「想像力」
   郊外の老朽化した一戸建て。二階の書斎にて、作家が小説を書い …………

 ☆【06】市川憂人「部屋を明るくして離れてご覧下さい」
   バス停の前で、麗子はヒマそうに空中浮遊をしていた。「遅いわ …………

 ☆【07】遥彼方「チャイカ」
   怒り狂った父は、大きな手で髪を引っ掴み、私を庭に放り出した。 …………

 ☆【08】霞永二「ロボットの脳」
   国際プロジェクトとして数十年が費やされた人間型ロボットの開 …………

 ☆【09】あんず「哲 夫」
   はじめまして。こういうところに登録するのは初めてでなにを書 …………

 ☆【10】古川「レッド・プール」
   肌に泥を塗る。黒と緑の混色で臭いがきつい。刷り込むようにし …………

 ☆【11】恵久地健一「タンギング」
   まず大きく口をあけて、舌をまえに出す。 …………

 ☆【12】蒼桐大紀「7月25日4時43分12秒」
  『もしもし──』 …………

 ☆【13】小田牧央「扉」
   波打ち際を歩く。夜明け間近の海岸、うつむき、ときどき目元を …………

 ☆【14】渡邊利道「ここにキスして」
  それはきっともうすぐ夜になる頃合で、どうしても眠たいから少し …………

 ☆【15】水池亘「不眠症」
   今日も眠ることができずに男は苦しむ。ふと窓を見るとミミズク …………

 ☆【16】水池亘「万歳」
  「なあ、人が爆発するところって、見たことあるか」 …………

 ☆【17】雨下雫「魔女の花園」
   何度目かの紛争も、どうにか幕を下したらしい。 …………

 ☆【18】蒼桐大紀「朝が怖い」
     こんなにも死にたいのに、自殺もしないで悶えているのは、結 …………

 ☆【19】安眠練炭「オカルト判事遠山越前名裁き 第一話 ラーメン天一坊事件」
   ラーメン天一坊の屋号を巡る一太郎と三四郎の争いはとうとう法 …………

 ☆【20】踝祐吾「検閲警察」
   カーキ色の、いかにも軍服といった感じの出で立ちの男は、僕を …………

 ☆【21】長屋言人「無題」
   雨中、わたしは男と対峙する。そこらへんの通勤電車に揺られて …………

 ☆【22】駿河捷克「伝道師」
   夜の街を歩いていると、黒ずくめで痩せぎすの若い男に呼び止め …………

 ☆【23】高橋史絵「小さい人魚の姫」
   人魚姫はお姉さま達がその美しい髪と引換えに海の魔女からも …………

 ☆【24】蜜蜂いづる「ケータイを持ったサル」
  「教授。お待たせしました。これが、出土した残骸と当時の資料を …………

 ☆【25】小田牧央「デリー大災害の一夜」
   一九八七年八月、インドの首都デリーを未曾有の暴風雨が襲った。 …………

 ☆【26】蒼ノ下雷太郎「小さいけれど、それは光」
   買ったカミソリで手首を傷つけた。けれど、命は切れなかった。 …………

 ☆【27】霞永二「するり」
   するりはするりするりとうごく。 …………

 ☆【28】雨街愁介「世界を騙したぺてん師はあまつさえ用なしの月に行ってしまった」
   クレーターから道なりに伸びる影は地球上における引力の作用や …………

 ☆【29】不狼児「荒野の呼び声」
   僕は荒野を作るために出発した。長い旅路の、まだ途中だ。僕の …………

 ☆【30】小田牧央「その声は聞こえない」
   息苦しさを感じた。おずおずと周囲を見渡す。透明な壁で二分さ …………

 ☆【31】秀信澄「罪過の薔薇」
   薔薇は、花弁を小汚く枯らしてしなだれていたはずだが、その時 …………

 ☆【32】雨街愁介「リヴァプール1790」
   飢え果てた男が残された力を振り絞り、湾岸の急な煉瓦道を這う …………

 ☆【33】加楽幽明「紅、暮れる世界」
   昔、この世界には赤っていう色があったんだって。いや、今もあ …………

 ☆【34】長屋言人「白朱」
   凍るように清浄な薄汚れた路地裏、僕はうずくまり、マイナスの …………

 ☆【35】不狼児「落下さん」
  【1】落下さんは落ちゆく人類から残り少ない財宝を毟り取る残務 …………

 ☆【36】あんず「不徳の魚」
   何も見えない。当然だ。水中、裸眼でものを見る機能など人間に …………

 ☆【37】安眠練炭「叫び」
  私は長い長い列に並んでいる …………

 ☆【38】恵久地健一「機械式による自我と自己愛の形成」
   Fはおさない少女のころ、部品の破損した機械だった。ある種の …………

 ☆【39】水野奏美「楠木と相棒」
  「海月のように漂いたい―― …………

 ☆【40】渡邊利道「生首」
  昼食を食べるために階段を下りると、ダイニング・キッチンのテー …………

 ☆【41】樹里「無題」
  襖を開けると倒れていた。倒れて、幾らかもがいたのかもしれない …………

 ☆【42】蜜蜂いづる「皆笑った」
   増田が事故で娘を失ってからしばらく行方不明だったが、やがて …………

 ☆【43】クサカベアヤ「巣窟」
   そら、遠くで悲鳴が聞こえる。きっとまた、誰かがこの村の奥に …………

 ☆【44】三澤未来「第三の道」
   ある朝、いつものように家を出る時だった。 …………

 ☆【45】渡邊利道「青い火」
  まだ眠っていなかった。寝床の中で瞼を閉じ自分の息の音を聞いて …………

 ☆【46】峯岸可弥「羽」
   君がいつどこに居ようともそこは必ず瑞々しい森だ。圧倒的な、 …………

 ☆【47】駿河捷克「輪舞曲」
   連綿とした荒野が続く。骸骨のようにやせ細った地獄の木々が、 …………

 ☆【48】荒霸鬼 謹和「中古の新現実」
  『君はすべてを忘れた。』 …………

 ☆【49】根多加良「社会人以下でも良い」
   子供のときの記憶はない。最初から大人として意識を持って産ま …………

 ☆【50】添田健一「ひとりうたい」
   みなさん、お待たせいたしました。吟遊詩人のマミコ。十四歳で …………

 ☆【51】Narihara Akira「眠り疲れて」
   見る夢見る夢、あまりにリアルで、現実と混同する日もある。知 …………

 ☆【52】渡邊利道「野田と寺山は海へ行く」
  朝早くからこれといった荷物も待たず、野田と寺山は電車に乗る。 …………

 ☆【53】駿河捷克「月狂い」
  「満月の夜には、気が狂う者が出るそうだ」私はそう言って、月見 …………

 ☆【54】峯岸可弥「ゴーレム」
   土に還るという言い回しがありそれは得てして死を暗示させるが …………

 ☆【55】あんず「醜い子」
   みんな知っている、ミィちゃんは醜い。私だってそう思う。醜い …………

 ☆【56】夏目陽「幻葬物語」
   そうして、いくつかの物語を経て、少年と少女は荒廃した世界に …………

 ☆【57】安眠練炭「無垢な人形娼婦と無慈悲な女衒の信じがたい悲惨の物語」
  我が日本国においては売春防止法(昭和三十一年五月二十四日法律 …………

 ☆【58】bothhands「ゆらぎの神話 変遷する世界観」
   今は昔、神話の時代にペレケテンヌルという神様がいました。こ …………

 ☆【59】添田健一「夜間飛行」
   灯かりのついていないリビングにテレビだけがついていた。その …………

 ☆【60】一ノ瀬 屠殺彦「ワンスモア」
  世界は変わってしまった。 …………

 ☆【61】蒼ノ下雷太郎「枯れたプラスチックフラワー」
   俺には夢がなかった。夢はとてもすごい物らしい。それがあれば、 …………

 ☆【62】高橋白蔵主「旧い人に聞く」
   ひょんなことからいわゆる「旧い人」と知り合った。先日聞いた …………

 ☆【63】高橋白蔵主「旧い人と会う」
   旧い人に聞いた話である。 …………

 ☆【64】佐多椋「薔薇の悪夢を視る」
   崇高な目的と酷薄な手段がせめぎあっていた革命の時代、パリに …………

 ☆【65】丹酌「首の無い人形」
   人の形が浮いている。爛れて斜めに伸びる細腕は、電信柱の線ら …………

 ☆【66】芹沢藤尾「再誕」
   夢の中に入り込むような、微睡みに揺られた目覚めだった。空っ …………

 ☆【67】蒼桐大紀「遥かなる希み」
   ああ、あの子が泣いている。 …………

 ☆【68】姫椿ひめ子「新しい現実の誕生」
   現実が現実となって己の眼前に表出せらるるときに、初めてぼく …………

 ☆【69】伊藤鳥子「テンケーカイ」
  彼女の居場所は空の彼方、三角と丸をいくつもくっ付けた変な形の …………

 ☆【70】魔王14歳「魂の未分化フォーマット」
  「おはよ。悪いけどコーヒー無糖でいい?」 …………

 ☆【71】姫椿ひめ子「この美しくすばらしい世界」
   わけのわからない因縁をつけられて不良にボコられるなんて時代 …………

 ☆【72】フルヤマメグミ「黒髪の棘」
   くっだらねえ、と思ってた。 …………

 ……………………………………………  幻  ……………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 さて、このあと「雲上の庭園」は第2回の作品募集へ向かうことになります。
 並行して掌編アンソロジー「幻視コレクション」の作成が行われております。今回の庭
園応募作からの選考会は先日開催されましたが、次号『雲上』では3人の選者による72作
全作選評を掲載予定……なのですが、各選者とも進捗はよろしくない様子。果たして!
 さらに「ハコニワ」企画が作品募集中です。無茶なルールで超短編を書こう!
 詳しくは編集部までどうぞ。


*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は9月25日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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