文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

全て表示する >

雲上マガジン vol_183

2008/08/26

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 1000字企画「雲上の庭園」     作品掲載 第3回(募集第1回)
 【3】 後記

 ……………………………………………………………………………………………………
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 いよいよ「雲上の庭園」の作品掲載の最終回です!
 配信日がズレてすみません。どうぞみなさま、お楽しみください。
 お気に入りの5作への寸評も絶好調お待ちしておりますよ!


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 雲上の庭園           作品掲載 第3回 (募集第1回)
 ──────────────────────────────────────

 前々号、前号、今号に掲載の作品を読み、気に入った5作に【寸評】を書き、応募
フォームからお送りください。
 寸評の〆切りは9月7日です。
 作者名と作品に寄せられた寸評は9月15日の『雲上』から掲載します。

              【寸評】応募フォーム:http://magazine.kairou.com/info/contact.html

 ……………………………………………  庭  ……………………………………………

   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【51】──┨ 眠り疲れて

   見る夢見る夢、あまりにリアルで、現実と混同する日もある。知
  り合いのセラピストは「最近、お疲れじゃないですか?」という。
   いや、これは昔からだ。

  「俺はもう死ぬんだ」と再び親がわめきはじめた。普通の病人なら、
  家族は涙するところだろうが、何十年も前から「俺が死ねばいいん
  だ」といってきた男なので、同情されない。「さっさと死んでしま
  え」と怒鳴り返しても、むろん死なない、しおれない。「俺を小説
  にでも書けばいい」という台詞は皮肉のつもりらしいが、もう何度
  も書いている。読んでも自分と理解できないだけなのだ(おまえの
  頭の悪さは、海外にまで知られているんだよ)。醜いまでに元気な
  病人で、医者が「何を食べても大丈夫ですよ、それで救急車で運ば
  れる可能性は、ご家族が交通事故にあう確率以下です」と太鼓判を
  押したぐらいだ。

  「お父様は本当に闘病中だったのですね」というメールが届く。そ
  の小説を書いたのは何年も前で、親の病気が判ったのはつい最近だ。
  いわゆる現実がおいついてきた、というやつだが、予想したわけで
  もなんでもない。「純然たるフィクションです」と返信する。こん
  なくだらないことこそ、夢であればいい。病気であろうとなかろう
  と、年をとったものが先に死ぬのが順序というもの、今さら慌てる
  必要もない。

   眠りたい。疲れがとれない。疲れがたまると、夢のリアルさが増
  す。

   いつもの買い出し、いつもの坂道。「危ないぞ」とトラックに怒
  鳴られて、慌てて自転車のハンドルを切る。ブレーキがきかない。
  たしかに古い自転車で、あちこちきしむ音もするが、私はブレーキ
  はいじらない。そこにうっかり油でもさしたら、どんな目に遭うか
  知っているからだ。なぜなら小学生の頃、父が余計なことをして……。
  「おまえの自転車、チェーンがうるさいからなおしておいたぞ」帰
  宅すると、父が玄関先でニヤニヤしていた。「ブレーキが甘かった
  ろう?」

   だめだ。もう眠れない。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【52】──┨ 野田と寺山は海へ行く
      
        朝早くからこれといった荷物も待たず、野田と寺山は電車に乗る。
        環状線を三回周り、溜まった遠心力に弾かれるように南へ。ローカ
        ル路線を走る電車には人が少ない。お喋りな彼らは会話を途切れさ
        せることはないから人気のなさは気にならない。二人で暮らした部
        屋には、雑多なゴミが堆積していて、原色に溢れていたが、電車の
        中は木の色に統一されて自然光が乱舞し、野田と寺山はお互いの顔
        の上に踊る影と光の移り変わりに陽気になっている。電車は山間を
        行く。稜線の端から時折掠める空は素晴らしい青だ。重い鉄の扉が
        開く音がして、野田と寺山が座っているボックス席のある車両に白
        いドレスを着た10歳くらいの少女がやってくる。少女は、両親が離
        婚する話し合いの間田舎の祖父の家に一時引き取られることになっ
        て、親たちに気兼ねしたった一人でこの電車に乗り込んだのだった。
        最初に座った車両には人っ子一人おらず、窓の虹彩が歪み眠って起
        きたら遠くで声が聴こえるので、いつのまにか出立したときに降っ
        ていた雨が止んでいるのにも気づかず、野田と寺山のところまでぐ
        らぐら揺れる車内を歩いてきたのだった。この小さな陳入者を男た
        ちは一切気に止めない。彼らはこれから海へ行くのだ。話題は太陽
        と砂浜、それに水着を着た若い娘たちとその水着を脱がすことで持
        ちきりなのだ。場末の酒場に貼られた色褪せたポスターのように少
        女は立て膝をして野田と寺山の座っているボックス席の向かいの席
        に一人でちょこなんと座り、やっと一人になれたのだと思う。快活
        な男たちの声を聞きながら目を閉じているのは心地よい。男たちは、
        いつも女の話ばかりをしているのだが、しかし少女には男たちが本
        当に好きなのはお互い同士なのではないかと思えてしかたがない。
        男たちの声にこめられた相手を信じ切った調子、疑いのない、自慢
        と自負をこねあわせ、互いの経験と能力を競い合う調子の掛け合い
        は、どんな恋の語らいよりも熱っぽく少女の妄想を擽るのだ。少女
        は瞼を開け、野田と寺山を交互に観察する。野田は少し背が低く、
        華奢なのが寺山だ。冗談を言うときに自分も笑ってしまう朗らかさ
        が寺山にはあって、野田はそれに冷静かつ的確で辛辣なコメントを
        返す。男たちが男たち同士でいることに、どうしてあたしはこんな
        にドキドキしてしまうんだろうと思う。海はまだ遠い。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【53】──┨ 月狂い

  「満月の夜には、気が狂う者が出るそうだ」私はそう言って、月見
  酒の杯を傾けた。吹き抜ける風が肌に心地良い。
  「月には人を惑わす力がある、とは言いますね」妻は少し笑いなが
  ら答える。
  「そう……月自体は自分で光を放つこともできないのに、その反射
  光を浴びて、正気は狂気に取って代わられ、人は狼に姿を変える」
   私は暗い空に浮かぶ満月を見据えた。暗幕にぽっかりと開いた穴
  のように、月はあちら側の光をこちら側に漏らしているかのように
  見える。
  「でも」妻は言う。「月は同時に、生命の源でもあったのだそうで
  す。数十億年の昔、月の引力のおかげで潮の満ち引きができ、海中
  の物質が攪拌されて、最初の生物が生まれたのだとか」
  「そう。月はこの世に命を与えたもうた、というわけだ。しかしね、
  その話は、僕が言った狂気の話とも、まったく矛盾しないんだよ」
  私は妻に向き直ると、説明を始めた。
  「月はね、ただその引力で海を揺り動かしただけじゃない。海を
  漂っていた化学物質に、直接作用したんだ。言ってみれば、そう、
  月の力でこれらの物質が、狂ってしまったのさ。狂ってしまったか
  ら、色々とありえないことが起き始めて、結局生命という存在が生
  まれてしまったんだ」私の右手が痙攣を始めている。左手がゆっく
  りと持ち上がる。
  「だから、僕たち地球上の生き物はみんな元から狂っていると言っ
  ても過言ではないし、誕生から何億年もの間月光にさらされ続けて
  いるのだから、これはもうとても普通じゃあないんだよね」私は自
  分の口元が緩んでいくのを感じた。
   私の口はまだ何か言葉を発しているようだったが、もう私には聞
  こえなかった。ゆっくりと立ち上がり、妻の白い首筋に両手をかけ、
  力を込める。これは自分が為さなければならないことなのだ。
   ふいに力が抜け、全身に何か妙な感覚。これは、痛みか。これは。
  いや、これは毒か。自分は今、何をしているのだろう。風が気持ち
  いい。酒に入れたのか。これは?
   私は縁側から庭に転げ落ちた。見上げると、妻の顔。風が気持ち
  いい。妻の両目は満月のように丸く、薄い唇は三日月のよう


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【54】──┨ ゴーレム
      
         土に還るという言い回しがありそれは得てして死を暗示させるが
        そうした解釈は果たして間違いではないか。体の殆どが土と同化し
        ていながら兵士は無意識にそう感じる。これは死という終わりでは
        なく一粒ひとつぶが誕生なのだ。自分は那由他に分かれ生き続ける。
        全ては繋がっている。兵士の意識は途絶える。
         水で浸した滑らかな泥を盛って僧侶らは不眠不休で作業を続ける。
        祈り。完成の後に貼る呪符はもう用意してある。うつらうつら同じ
        夢を見る。
         ゴーレムの巨大な土塊の拳が殴る。あらゆる骨が砕かれる音より
        一瞬だけ早く兵士は叩き潰される。左側頭部が左肩に一瞬で押し付
        けられ顎から下は首の付け根部分より食い込み見えない。まだ辛う
        じて息のあるその兵士をゴーレムは虎の体躯が如く腕でもって自分
        の胸へ取り込む。再び体中の骨が砕ける音が鳴る。
         自然と共に暮らしている。祖先の心が眠るこの地を離れる訳にい
        かない。老人や子供は殺され男は強制的な労働の為連れていかれ女
        は犯される――夷狄として。今こそ迫害に向わなければならないし
        この教会だけは守らねばならない。
         空き地の一角に少し盛り上がった場所がある。そこに芽が生えて
        いる。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【55】──┨ 醜い子

   みんな知っている、ミィちゃんは醜い。私だってそう思う。醜い
  子は生まれたときから損をしている。だってミィちゃんはいつも泣
  いているから。この間も女子たちに教科書を隠されて、廊下で泣い
  ていた。それもやっぱり醜いからだ。隅っこでうずくまっている
  ミィちゃんの背中を、私はなでてあげた。ミィちゃんは、私を親友
  だと思っている。
  「ずっと友達でいてね」そう言ってミィちゃんは笑った。私はぱち
  ぱちと二回瞬きをしてから、同じように笑って見せた。ミィちゃん
  はうれしそうだった。
   私は一日のだいたい半分くらいをミィちゃんと過ごし、もう半分
  を他の女子たちと過ごした。ミィちゃんが居ないときはその醜さに
  ついて、みんなとたくさん笑いあった。ミィちゃんの事が嫌いなわ
  けではないけれど、それ以上に私は自分が可愛くてたまらなかった。
   ミィちゃんはいつも笑いながら、ウソの笑いが出来ないからいじ
  められるんだと言っていた。泣いていないときのミィちゃんは、太
  陽から生まれた子共みたいに元気で活発だった。はきはきとしゃべ
  るし、自分の意見もはっきりと言える。自分にウソはつきたくない
  んだと、いつも言っていた。そういえば教室で一番可愛い女子に意
  見を言ったときからいじめは激しくなっていったように思う。でも
  やっぱり醜いからミィちゃんはいじめられてしまうんだと、私は
  思っていた。
   ある日、ミィちゃんがいつものように廊下で泣いているのを発見
  した。後ろからそっと声をかける。ミィちゃんが振り返った。
  「大丈夫だよ」
   ミィちゃんがそう言って笑った。真っ赤にふくらんだまん丸の
  ほっぺたを左右に引っ張ったような笑顔だった。心臓が、一回り大
  きくなったみたいに、どきんと鳴った。
  「大丈夫だから、1人でも」大粒の涙を流しながら、ほっぺたをぐ
  いともちあげたミィちゃんは、私の目を見ずにそう言った。
   ウソの笑いだ。
   ミィちゃんはそのまま私に背中を向け、ゆっくりと歩いていって
  しまう。鼻がつんとして、私の目から涙がぽろりと落ちた。
   ミィちゃんは醜い。でも、私はその笑顔が大好きだった。ミィ
  ちゃんはもう、私に笑いかけてはくれない。灰色をした雲の気配に
  気が付いて、その身をとおくへ隠しこんでしまった。広がった雲は
  ただざあざあと、冷たい雨を落とすことしか出来ないっていうのに。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【56】──┨ 幻葬物語
      
         そうして、いくつかの物語を経て、少年と少女は荒廃した世界に
        たどり着いた。
         眼下に広がる砂漠は地平線まで続いている。少女はその一握りの
        白い砂を手に取った。それらはまるで砂浜のそれのように、冷たく
        さらさらしている。少女の手の間から砂がすべて落ちてしまうと、
        少女は愛おしそうに落ちた砂を見た。
        「その砂の中には、いくつもの物語の記憶が詰まっているんだ。君
        は物語の記憶を再生するために、何度もここに訪れている。だけど、
        君はそのことを覚えていないのだろう」
         少年の視線の先には、空まで伸びる細長い塔がある。その周囲に
        は螺旋階段があり、それもまた空まで続いている。
        「僕はいくつもの君を知っている。いろんな世界で、君はあらゆる
        形で生き、物語を見てきた。そして、いつも最後はここに戻ってく
        る。でも、もう終わりは近い。ほら、よく耳をすませてごらん」
         少女は耳をすます。ぎしぎしと何かが軋む音とともに、ごうんご
        うんという地響きにも似た音が聞こえた。
        「世界の終わりの歯車が軋みをあげているんだ。もうじき世界が崩
        壊してしまう。君と僕はここでお別れなんだ。君はまたこの記憶の
        砂になってしまう。君は日の出と共に、僕たちの物語が偽りの物語
        だったことに気づいてしまうだろう。
         だから、この最後の物語の名は幻葬物語。僕たちの幻想を葬るた
        めに、覚醒を前にしての最後の物語なんだ」
         低い咆哮が世界に響き渡る。それは塔からだった。塔の螺旋階段
        は部分的に破壊し、破片が地上に落ちる。塔はその身体をゆっくり
        と傾かせていく。世界の終わりでは歯車が崩壊し、さまざまな大き
        さの歯車は、折り重なりあうようにして砂漠に沈む。砂漠にはいく
        つもの亀裂が走る。それは少年と少女のところまで及び、彼らを分
        かつ。少女は手を伸ばしたが、少年はその手を取らなかった。
        「いつかまた。僕と君の歯車が回り始め、再び物語が動き出すとき
        まで」
         灰色の空が落ち、ガラスが割れるかのような音と破片が飛び散る。
        世界が暗闇に包まれた。物語の断末魔が響く中、少女はもう一度、
        少年に向かって手を伸ばす。
         少女は最後に、物語の記憶から見つけ出した少年の名前を呼んだ。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【57】──┨ 無垢な人形娼婦と無慈悲な女衒の
           ┃   信じがたい悲惨の物語

  我が日本国においては売春防止法(昭和三十一年五月二十四日法律
  第百十八号)第三条の規定により「何人も、売春をし、又はその相
  手方となつてはならない。」ということになっている。ただし、売
  春防止法においては、売春をした者への罰則規定はあるものの、そ
  の相手方となった者への罰則はない。一方、児童買春、児童ポルノ
  に係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年五
  月二十六日法律第五十二号)第四条により、「児童買春をした者は、
  五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」とされている。
  なお、同法に定める児童とは十八歳に満たない者をいう。さて、こ
  れら二つの法律において規制されるのは人が行う売春行為に限られ
  ており、人以外の動物が売春を行っても当然に処罰の対象となるこ
  とはない。とはいえ、我が国には動物の愛護及び管理に関する法律
  (昭和四十八年十月一日法律第百五号)という法律もある。同法に
  は動物の売春行為を直接禁止する旨の文言はないものの、第四十四
  条第1項の「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以
  下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」又は同条第2項の「愛
  護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させ
  る等の虐待を行つた者は、五十万円以下の罰金に処する。」という
  規定は解釈次第では動物の売春にも適用される可能性が考えられる
  ところであり、予断を許さない。どうしても動物をして売春をさせ
  る業を営みたい者は哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの以外の動
  物、すなわち両生類や魚類等に客をとらせるのが無難というもので
  あるが、果たして蛇や亀や鮫や鯉などに欲情し、交情の対価として
  金銭を支払っても構わないと考える者がどの程度存在するのかは不
  明である。さて、ここに一人の男がいて娼館を経営している。彼は
  遵法精神に溢れ、決して売春防止法にも児童買春、児童ポルノに係
  る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律にも違反せずに男た
  ちの欲望を満たして莫大な利益を上げている。彼の娼館で働いてい
  るのは少女の姿に似せて作られた人形たちである。人形は人ではな
  いから客をとらせても法に触れることはない。また、人形は哺乳類
  にも鳥類にも爬虫類にも属さないので、傷つけようが虐待しようが
  法的には全く何の咎めもないため、嗜虐心の強い客の好評を得てい
  る。もちろん、その娼館が少女性愛者にとってパラダイスであるこ
  とは言うまでもな


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【58】──┨ ゆらぎの神話 変遷する世界観
      
         今は昔、神話の時代にペレケテンヌルという神様がいました。こ
        の神様の仕事は一定の期間ごとに世界を滅ぼして再創造することで
        した。世界の有り様がどうであろうと滅ぼす時間がきたら洪水でな
        ぎ払いました。そして原初の沈黙に新たな文明発生の兆しを埋め込
        んで次の世界滅亡の時を待つのでした。
         あるときペレケテンヌルは世界を滅ぼうとしましたが、失敗しま
        した。洪水を起こしたのですが、まるで先回りされたかのように対
        処されて、そのとき繁栄していた者達は生き延びました。
         世界の滅亡と再創造がペレケテンヌルの仕事です。再び試みたと
        き、1人の人物が現れました。この人物はアルセスと名乗り、剣を
        抜きました。
        「ペレケテンヌル、あなたを討伐して我々の世界を救う」とアルセ
        スはいいました。再生と滅亡の繰り返しをアルセスは発見し、世界
        を救うための対策を立て、その最後として神を殺しに来たのでした。
        「私が滅びと再生を求めているのではない。世界がそれらを求めて
        いるのだ。私は必要をただ満たしているだけだ。私を倒しても何も
        変わらない」
        「あなたのやり方を許容できない」
        「ならば私を倒した給え。そして代わりに世界に滅亡と再生を与え
        るがいい」
         ペレケテンヌルは姿を消してアルセスに神の力が満ち始めました。
        同時にアルセスは世界から要求されました。滅びと再生を実行せよ、
        洪水で、乾きの風で、星の雨で、地表をなぎ払えと。どの手段もア
        ルセスは認められません。けれどもどこかで世界の要求を呑まなく
        てはならず、アルセスは争いの種を蒔くことにしました。
         これ以来、世界は戦乱と平和が交互に訪れるようになり、いつし
        か戦乱を招く者とそれを終わらせる者はアルセスの眷属と呼ばれる
        ようになりました。世界は滅びと再生を内包するようになったので
        す。
         けれどもそんな世界を許容できない者が現れました。そのアルセ
        スの眷属は戦乱を鎮めたあと、世界の果てを目指しました。そこに
        は零落した神がいて、人に知恵を授けるというからです。アルセス
        の眷属は殺しすぎたことを後悔していました。そして旅の果てにア
        ルセスの眷属は神に頭を垂らしていいました。
        「ペレケテンヌルよ、私は世界に疑問がある」


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【59】──┨ 夜間飛行

   灯かりのついていないリビングにテレビだけがついていた。その
  前で妻が腰をおろしている。どうした、と口をついて出かけた言葉
  はスクリーンの画像を見て消えた。飛行機が大空を飛んでいる。テ
  レビの映像ではなく、この年、大学を出た息子が、実家用にと購入
  した家庭用ゲーム機の画像だった。妻は瞳を潤ませてスクリーンに
  見入っていた。
   もともと、わたしも妻もゲームには興味がなかった。息子がおい
  ていった数多くのゲームソフトにも関心はなかった。だが、ひとつ
  だけ例外があった。それが飛行機を操縦するソフトだった。
   わたしたちは飛行機が好きだった。はじめて知りあったとき、妻
  は空港に勤めていた。ほんとうはパイロットになりたかった。遠い
  目をしながら、しばしば彼女はそう語った。部屋には飛行機の写真
  が多く飾られていた。イギリス製の飛行服とゴーグルまでが揃えら
  れていた。すぐに私も飛行機が好きになった。休みの日はふたりで、
  結婚して、息子が生まれてからは三人で、しばしば空港に出向いた。
   その空港にも近ごろは足を運んでいない。七年前に脚を悪くして
  から妻は外出の機会が減り、空港にゆく折りも少なくなった。
   最近のゲーム機のハイスペックとソフトの本格ぶりには目を見は
  るものがあり、飛行機にはことのほかうるさいわたしたちでさえ、
  満足のゆく画像であり、内容の充実ぶりでもあった。操作がわから
  ないときは息子に遠距離電話をかけた。息子は驚いていたが、喜ん
  でもいるようだった。彼はわたしたちほどには飛行機に興味を持っ
  ていないはずだが、それでも子供の時分から、慣れ親しまされてき
  ただけに心のどこかでおぼえていたのだろう。母への孝行心もあっ
  たにちがいない。
   初心者だった妻は、こつを呑みこむと、めきめきと腕をあげ、た
  ちまちエースパイロットになり、国家から勲章を五つと胸章を七つ
  授与された。富を得た彼女は自作のセスナで世界の空へと飛び立っ
  ていった。グランドキャニオン。アステカ。アンデス上空。万里の
  長城。アンコール・ワット。
   妻が歓声をあげる。日没をはるかに過ぎて、世界は夜を迎えてい
  た。彼女のセスナはパリの上空を飛んでいる。ライトアップされた
  エッフェル塔ときらめく街の灯が出迎えてくれた。妻はなおのこと
  表情を輝かせて、彼女の空を自在に駆けめぐった。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【60】──┨ ワンスモア
      
        世界は変わってしまった。
        それはもう、劇的に。
      
        今まで何不自由なく暮らしてきた身ではあったが、新しい世界では、
        僕なんぞ楊枝の窪み程の価値も無かった。革命を起こすにも、相応
        の権利が必要なのだという事を知った。
        命まで尽きかけ、この世の総てを失ったかに思えたが、しかし、未
        だ僕の自由になるものが一つだけ残されていた事に気づいた。
        僕の頭の中だ。
        僕は世界を再建した。僕が望む世界を。
      
        僕の傷はすぐさま全快した。当然だ。僕の、いや俺の世界なのだか
        ら。気分がよくなり周りを見渡してみる。
        「皆、見て!あそこに素適な殿方が!」
        どこからとも無く、叫び声が聞こえた。女どもだ。すぐさま周囲を
        囲まれてしまう。
        へッ、キャーキャーうるせー奴等どもだ。ちょっとは静かに出来な
        いものかね。
        女どもは少しでも、俺にひっ付こうと必死だ。互いに押しのけあい、
        占有面積を増やそうと争いが起きている。激化する争いをよそに、
        俺は悠々と町を闊歩する。女達は俺に迷惑をかけぬよう、細心の注
        意を払っているらしく、行動に支障が出ることはまったく無かった。
        こいつらは、神を愛するように俺を愛しているのだ。
        ふと、前方に目をやると、数十人の男達が固まり、羨ましがるよう
        にこちらを見ていた。
        「なんだ、ボケナス。文句があるか」
        俺が睨んだ瞬間、男達は土下座をして必死に許しを請う。
        「めめめ、滅相も無い!気分を害されたのなら謝らせていただきま
        す!」
        気分が良い。近づいて男の一人をひっぱたいてやった。顔立ちもよ
        く、立派な体つきの男だった。今まで何不自由無く暮らしてきただ
        ろう。イラつかせる奴だ。男は悔しそうに此方を見たが、結局、何
        も言えず下を向いた。
        ケッサクだ。
        俺は、その男をさらに辱めてやることにした。どうせ俺に逆らうこ
        となど、出来やしないのだ。徹底的にやってやる。
        「男共は、こいつをリンチしろ。女共は、こいつを徹底的になじれ。
        死ぬまでだ」
        刑は完膚なきまでに執行された。
        口惜しかろうと、死に顔を覗き込むと、男は何故か幸せそうな表情
        で事切れていた。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【61】──┨ 枯れたプラスチックフラワー

   俺には夢がなかった。夢はとてもすごい物らしい。それがあれば、
  こんな腐りきった世界でも、強く生きられるらしい。ならば、どう
  しても手に入れたい。だけど、俺には夢が見つからなかった。テレ
  ビに映る人を見ても何とも思わなかった。むしろ、芸能界って裏事
  情が大変なんだろうなと同情するほどだった。音楽を聴いても、す
  ごいとは思っても憧れなかった。カラオケで歌うと皆に薄笑いを浮
  かべられるからだろう。小説や漫画を読んでも同じだった。憧れな
  かった。夢を見たりはしなかった。おかしい、眠くなれば夢は見ら
  れるのに、どうして叶えたい夢は見られないのだろう。夢がほし
  かった。高校時代、俺には夢を語る友人がいた。そいつの夢は小説
  家になることだった。学校が終わると、友人との付き合いよりも小
  説の技術を磨くことに時間を削った。「俺も本当は遊びたいよ。そ
  れに、がんばっても、評価が良いわけじゃない。でもさ、それでも
  いいんだ。もう、あきらめてラクになるより、努力して苦しんだ方
  がラクになっちまったから」苦笑いで語った友人の顔は、とても輝
  いていた。悔しかった。どうして、そんな顔になるのか。あまりに
  も悔しくて、俺はそいつの夢に夢を見た。いや、嘘だ。確かに同じ
  光かもしれない。だが、あいつの夢が太陽ならば、俺の夢は蛍光灯
  ぐらいだろう。いや、それ以下か。偽物で走るのはきつかった。常
  に酸素がダンベルのように重かった。何でこんなものを背負って走
  れるのか。友人を化け物のように錯覚した。だがそれは気のせいだ。
  だって、俺の夢はあいつの夢とは違い偽物だから、エネルギーにな
  らないだけだ。俺は三十になっても偽物を背負い続けた。偽物と本
  物の差は埋まらなかった。友人はもう夢を叶えていてプロの小説家
  になっていたが、俺は小説家志望という嘘をついたただのフリー
  ターだった。悲しすぎて、俺は自殺することにした。遺書に俺が書
  いた小説を読んでくださいと言えば、誰かに知られると思ったから
  だ。だが、死んでも花は咲かなかった。きっと、プラスチック製
  だったのだろう。俺が書いた小説は遺族ぐらいの目にしか入らず、
  それだけで俺の存在は終わった。小説家になった友人は、新しい世
  界を築き、今でも走っているらしい。けれど、俺は違う。新しい物
  を誕生させる友人とは真逆。そう、俺は現実を終わらせてしまって
  いた。プラスチック製の花だが、枯れる事だけは出来るらしい。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【62】──┨ 旧い人に聞く
      
         ひょんなことからいわゆる「旧い人」と知り合った。先日聞いた
        のはこんなことだ。
      
         ねえ高橋くん。君は数字を愛する連中に会ったことあるかい?
        「数学者、とかですか?」
         ははは。違うよ。もっと野蛮な連中さ。連中はね、何故だか本当
        に数字が大好きなんだ。見たことのない数字を見つけると、ついつ
        い欲しくなっちまう。そんで我慢できなくなって、その数字を盗っ
        ちまうんだ。
        「数字を盗む?」
         そうだよ。でもいくらアレな連中でも数字だけを盗む訳には行か
        ないから、数字のついたものをかっぱらうんだね。
        「なるほど」
         そいつらに貨幣の存在を教えたやつがいるんだよ。悪いやつだよ
        な。案の定、連中もこりゃすごい、似てるのに一枚ずつ数字が違
        うってもう大喜び。
        「ああ、通し番号ですね」
         それそれ。それでもっと欲しくなって、我慢を知らない連中は早
        速盗んだんだ。ごっそり三万枚。それが三億円事件だよ。何年前か
        な、聞いたことくらいはあるだろ。
      
         僕が素直に驚いていると旧い人はにやにや笑い、バカだな、ケッ
        サクなのはここからなんだと肩をぶつけてきた。
      
         でも連中、かっぱらった一万円札をいっこいっこ確認して、大変
        なことに気付いたんだよ。もう持ってたんだ。
        「持ってた?」
         そうだよ。持ってたんだ。今まで集めた中に、同じ数字のやつが
        あったんだ。
        「贋札、ですか?」
         あたり。お陰で連中、すぐにもっとたくさん貯めてあるトコやろ
        うよって息巻いてたんだけど、いっぺんに冷めて興味なくしちまっ
        た。あの際限と我慢を知らない連中がだよ。
        わかるかい。君らの貨幣経済を救ったのは贋札さ。皮肉だよな。こ
        ういうのを必要悪っていうんだろ。たぶんさ。
        「うまく出来てますね」
      
         僕の相槌が気に食わなかったのか、ふん、と旧い人は鼻を鳴らし、
        つまんないよな、と少し冷たく呟いて消えた。七月のことだった。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【63】──┨ 旧い人と会う

   旧い人に聞いた話である。

   君たち人間は、背丈より高い箱に入って暮らしてるようなものだ
  ね。高橋くん。
  「なんです、いきなり」
   僕はあなたと同じ人間ですよ、なんて中から語りかけるけど、ホ
  ントかどうかなんて誰にもわからないんだ。もしかしたら中身はワ
  ニかも知れなくて、でも箱しか見えないから取って食われるまでは
  信じるしかない。
  「それって認識論ですか」
   なんだそれ。箱の話だよ。あんまり口挟まないで聞きなよ。
   ええと、そうだね。箱って言ったけど、君らの着てる箱には天井
  がなくてさ、気の利いたやつなら簡単に覗きこめるんだよ。背伸び
  しなくても見える。
  「はあ」
   で、お前ホントは鼠じゃないか、って囁いてやると皆ビビるわけ
  だ。まさか本当の姿がバレるなんて思ってないからね。
  判らないって顔してるな。しかも今、君、ロールケーキのこと考え
  てただろ。なんでロールケーキなんだ。関係ないじゃないか。
  「な、なんで判るんです」
  箱の天井がないって言ってるだろ。わたしたちには判るんだ。そう
  いうことだよ。
  「すみません」
   まあいいや。面白いのはこっからさ。大体の人間ってさ、自分の
  頭の中を覗いてる奴の言うことなら何でも信じちゃうんだよ。
   あいつお前のこと好きだぜとか、お前の隣人って人殺しだから気
  をつけろよとか、適当に言っても信じちゃう。まったくチョロいっ
  たらないんだ。
   で、わたしのことを信じきってる奴に言ってやったわけ。向かい
  のやつに気を付けろ、ありゃ視線で人を石にする妖怪だぞ、って。
  「どうなったんです」
   思い込んだあまり、目、合わせたら、ホントに石になっちまいや
  んの。カッチコチだったよ。

   旧い人はひとしきり笑った後、思い込むって怖いよなァ、と僕の
  肩を叩いた。そして小さく呟く。もっと沢山の人間がいっせいに思
  い込んだらどうなるのかな。見てみたいよな。
   大きな地震の起こる前の晩だった。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【64】──┨ 薔薇の悪夢を視る
      
         崇高な目的と酷薄な手段がせめぎあっていた革命の時代、パリに
        いた詩人、アレクサンドル・メア。薔薇に執着し、それ以外のすべ
        てを彼は拒絶した。幼少のとき、動けるようになった彼は常に、部
        屋に飾られた薔薇に触れようとしていた。慌てた両親が薔薇を部屋
        から動かすと、途端に暴れまわる。仕方なく薔薇はふたたび部屋に
        置かれたが、棘は慎重に取り除かれていた。すると翌朝、薔薇はす
        べて手折られていた。棘のある薔薇に戻すと、メアは喜んでそれを
        弄んだ。そのとき棘でできた幾多もの傷は、生涯消えることがな
        かったという。
         その詩においても、あらゆる隠喩は薔薇のためにあった。精緻な
        文章で綴られる彼の詩はやがて上流階級のサロンで評判になったが、
        そうした世界を彼は病的なまでに拒否した。革命のなか、煽動的な
        発言を繰り返した彼は断頭台の露となったが、それはテルミドール
        の叛乱の前日のことだったという。
         小出版社に勤めているわたしはメアの全三巻となる選集の刊行を
        計画していた。小部数、高価格の書物となるが、メアの作品にはい
        まだわずかながら熱狂的な支持者がおり、それにもかかわらずこれ
        までほとんど翻訳がない。伝手をあたって翻訳者を探した結果、私
        立大学の若い准教授が見つかった。連絡を取ったところ、実は彼も
        またメアの支持者で、以前から翻訳にも興味があったのだという。
        依頼は快諾され、順調に作業は進行していたようだった。
         彼が変死するまでは。
         作業の途中に突然椅子から転げ落ち、そのまま息絶え、傍らには
        一本の薔薇が落ちていたのだという。そのようなことがあると、引
        き継いでくれる翻訳者が早々に見つかるわけもなく、やがて遺され
        た訳稿は机のなかにしまわれた。
         先日、ふと思い出し、訳稿を取り出したわたしは息を呑んだ。あ
        きらかに見覚えのない文章が、中絶した箇所から続いてたのである。
        それどころか以前の訳稿にも数多くの修正がなされ、翻訳の精度も
        上がっていた。メアが見ていた現実が、より魅力的なかたちでそこ
        に提示されていた。もしかしたらあの准教授はメアのいる世界へと
        旅立ち、そこで彼に教えを乞うているのかもしれないと、わたしは
        思う。その証拠に、メアの原稿がすべてそうだったように、その訳
        稿の文字は赤い薔薇の色に変わっていたのである。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【65】──┨ 首の無い人形

   人の形が浮いている。爛れて斜めに伸びる細腕は、電信柱の線ら
  しい。
   オレンジ色の灯かりが部屋に満ちるとそれらはすぐに姿を消した。
  何かが乾いた音を、立てている。
  「あのね美紅(みく)、私と一緒にさがしてほしいものがあるの」
   ゆりかはカーテンの布地を握りしめ、力を抜いて、指を開いた。
   皺くちゃになったその生地が、じわりじわりと歪んだ形を蠢かす。
  「人形を、さがしてほしいの」
  「どんなおにんぎょさんかしら?」
  「首の無い人形よ」
   ゆりかは恥ずかしそうに、瞳を泳がせかよわく俯く。
   すると耳に裂かれた黒髪が、音も立てずにしとりと垂れた。
  「小さな頃に、私が頭を潰したの。一人でさがして見つけだして、
  ごめんねって謝るの、なんだか、怖くて……」
   突然美紅の手の甲に、鋭いかゆみがじわりと疼く。そこに思わず
  爪を立てると、ゆりかと同じようなことをしていた幼い頃の、記憶
  が瞼にふと湧いた。
   どこに行くにも握りしめ、持ち歩いていた可愛い少女の人形が、
  いつの間にかに壊れているのに気がついた。それがなんだか不愉快
  で、だからなおしてあげると嘯いて、もっとこわして遊んでた。鋏
  で咎めて手足をジョキンと切り落とし、髪に指を絡めて引き千切る。
  するといつも仲良しだった人形が、不気味な出来損ないにしか見え
  なくなった。
   遠くで誰かが泣いている……。
  「いいよ。一緒にさがしてあげよ?」
   やがて二人は物置小屋へと赴いて、湿った匂いに包まれた。
   ゆりかは爪先立ちになって背を伸ばし、両手を棚の上へとさしの
  べる。つられてクリーム色のセーラー服もぴんと伸び、狭間の肉が、
  ぬるい外気に露わとなる。そしてゆりかは古びた箱を、黒い奥から
  取りだした。箱の中には頭を踏み砕かれた、着物の人形朽ちている。
   飛びでたガラスの眼球が、美紅の携帯電話に照らされて、やけに
  キラキラ光ってる。
   だから美紅は、その古びた箱ごと踏み潰してやったのだった。
   そしてゆりかの耳元で、ぽしょりと何かを囁いた。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【66】──┨ 再誕
      
         夢の中に入り込むような、微睡みに揺られた目覚めだった。空っ
        ぽになったはずの心が疼き、何ひとつ生み出すことの出来なかった
        この身体から赤い血が、ゆっくりと這うように零れていく。
         朝の陽光に目を細め、少女は瓦礫の楽園で吐血した。
         螺旋階段のように、終焉へと落ちていくこの大地で、昨日、ひと
        つの戦いが終わった。
         刹那のものであると知りつつ、それでも自分達が命を賭して勝ち
        取った、これはいったいなんなのか。
         少女は、必死にその意味を捜し求めていた。女としての未来を奪
        われた身体で、ヒトとして在りえざる力を与えられた自分にとって、
        それが、死んでいった仲間達への、精一杯の弔いだったから。
         何故、自分なのか。
         仲間達から、最後に残された自分。
         自分を、最後に残した仲間達。
         聖女でも魔女でもない自分を受け入れ、そしてともに戦い、死ん
        でいった仲間達と、自分が何を掴もうとしていたのか。
         少女はその答えを、この朝に求めた。
         刻まれた呪詛と共に穿たれた穴は、少女の持つ異能の悉く拒絶し、
        この朝日の中に、その最期を確約した。
         荒廃し、無人と化した、地雷と爆弾のみが存在を許される、この
        瓦礫の楽園で、朝霧の奥から、答えが顔を出す。
         おそらくはそうであろうと予感していた通りに、少女は涙ととも
        に、そのときを迎えた。
         血と泥にまみれて流す、滂沱の涙だった。
         おそらくはこの街がはじめて迎える、爆発と銃声が眠る朝を、彼
        女は精一杯享受した。
         間違っては、いなかった。
         震える身体を強く抱きしめて、徐々に失われていく意識の中で、
        その確信を愛おしむ。
         私たちは、この朝を迎えるために戦ってきたのだ。
         この世界の深淵で、何者にも侵されない瞬間を掴むために。
         最後の力で、彼女は世界に自分を解き放つ。
         いつか写真で見た、どこか遠くの国の風景。
         花に彩られた、子供のような楽園を心に思い描き、顕現される。
         地雷によって守られた、二度と人が足を踏み入れることのない楽
        園の中心、どこにでもある、ありふれた朝の中で、彼女は穏やかに
        瞼を閉じた。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【67】──┨ 遥かなる希み

   ああ、あの子が泣いている。
   俺はこの結末に何もできず、ただ拳を握りしめ、あの子の元へ──

   火焔が逆巻き、全てを焼き尽くそうとしていた。もはや、何階何
  層にも渡って構築されていた図書館は、巨大な虚のごとき空洞と化
  していた。壁際に残った書架が辛うじてここが図書館だったことを
  示している。
   その中心に少女がいた。十二、三歳ほどの小さな少女。書の守護
  者《ライブガディア》。
   黒と赤のフリルタンクトップから覗く首と肩は細い。パニエス
  カートが火焔が起こす風になびく。手には鈍色に輝く両刃の
  魔器《まき》、ギルガドール。灰が雪のように彼女の髪に舞い落ち
  る。もみあげの辺りだけ伸ばした蜂蜜色の髪。大きな瞳をうろんげ
  に細める。
  「紗波《さなみ》……っ!」
  「……これで郁斗《いくと》はもう自由だよ」
  「でも紗波、これでお前の時間は、動き出してしまうんだぞ」
  「……わかっているよ」
   唇を噛み、紗波は青い瞳を俺に向けた。
  「わかっていない! これはお前にも死が訪れるということなんだ
  ぞ!」
  「わかっているよ。私は成長して、老いて死ぬわ。でも此処があれ
  ば、郁斗は記録管理官《マスターオブロールズ》として、一生縛り
  付けられる。現実の、世界の悲しみも絶望も、全て受け入れなけれ
  ばいけないじゃないっ。そうやって、郁斗は傷つき続けていくじゃ
  ない」
  「そんなことは、ないさ」
  「私が嫌なの! これは、私のせい」
  「紗波。もういい自分を責めるな」
  「違うの。私はこれまで何人も見届けてきた。でも郁斗は違うの。
  私、郁斗が好き。郁斗がいつか消えてしまうのは堪えられないっ」
   言葉が俺に染み入るように入ってきた。苦しみも、悲しみも、解
  き放つように。
   俺は、気づいた。
  「っ、郁斗……」
  「紗波。希んでいたのは、俺も同じだったんだ。だから、」
   紗波が迷子のように、瞳を揺るがせる。
   俺は紗波を抱きしめ笑顔で、言った。

  「一緒に行こう。これから生まれる現実へ」


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【68】──┨ 新しい現実の誕生
      
         現実が現実となって己の眼前に表出せらるるときに、初めてぼく
        は現実を現実の物として納得し、反芻し、やがて享受する。
         逆に言えば、そのように目の前に突きつけられるまではそれが現
        実に起こっている自分の現実だとは受け入れがたい、いな否定する
        と言うことだ。
         よく言えば注意深く、悪く言えばあきらめが悪い。
         だが現実なんてそんなものだ。
         現実の多くは非情で無情で、慈悲もなく許容もなく、ただただ自
        分に重くのしかかってくるものでしかない。僕はしばしば逃避し、
        忌避し、目をそらせ、先送りし、事実を認めず、真実を歪曲させ、
        そうすることでやっと、傍目にちらりとばかり現実を見ることが出
        来る。
         一方で夢のような幸福のような、にわかには信じがたいのは同じ
        だが、だが異なるのはまじまじと見つめれば見つめるほどに胸が暖
        かなもので満ち満ちてゆく。それもまた事実であり真実であり、現
        実であるときもある。いとおかし。
         現実は相反する二面性を併せ持つが、共通するのは、良きにつけ
        悪しきにつけ、自分にとって新しい出会いが始まることだ。
         新たな価値観、新たな思想、新たな視野、自分にとっての、初め
        ての遭遇。
         生命の息吹に似たそれは何よりも芳しく、誕生は至上の幸福なの
        ではないだろうか。
         そう考えたとき、どのような現実も事実も真実も、にわかに異
        なった色合いをにじみ出させてくる。
         新しい現実が眼前に立ち現れたとき、悲憤慷慨するような辛い現
        実か、有頂天外し破顔一笑するほどの幸福な現実か、それは実際に
        触れてみなければ分からない。
         でも触れる前に、僕たちは新しい現実の誕生という萌芽に、思わ
        ず頬の力がゆるんでいるはずだ。
         そうしておそるおそる手を伸ばしながら、ぼくらは新しい現実を
        迎える。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【69】──┨ テンケーカイ

  彼女の居場所は空の彼方、三角と丸をいくつもくっ付けた変な形の
  塔の先。
  ポン、ポン、ポンと遠くの方で音。街のみんなに6時を知らせる。
  青が褪せつつある空の遠くの方で夕焼けが始まっている。もこもこ
  と可愛らしく盛り上がった雲の端、徐々に金色に染まっていく。
  彼女の放ったテンケーカイが、雲間を並んで飛んでいく。渡り鳥み
  たいに行儀いい。
  彼女がテンケーカイを放つところを一度だけ見せてもらったことが
  ある。
  彼女はたいてい寝起きみたいに不機嫌で、めったに僕に優しくしな
  い。だけどその日は「工場で半導体にワイヤーを付ける僕の仕事が
  いかに世の中の役に立っているか」って話を感心した顔で聞いてい
  たから、自分の仕事も自慢したくなったみたい。
  彼女は一度も入れてくれたことのなかった部屋に「ちょっと来い」
  と僕を招いた。部屋に入って驚いた。床から本が高々と積み上げら
  れ、その隙間に埋もれるようにパソコン。
  壁にはベタベタとポスター、メモ、新聞の切抜き。とにかく秩序が
  存在しない。
  その道具は本を積重ねた上に適当に置かれていた。ガラス製のキセ
  ルみたいだった。
  「あ、これ、ビードロだよね」
  「いやちがう。ぽっぺんだ」
  「同じものじゃ?」
  「ちがうぞ、バカめ」
   彼女はビードロを口に当てると背筋を伸ばし息を吹いた。ビード
  ロの先に張られたガラスがにょにょにょと膨らむので、ますます力
  んで顔を真っ赤にし、息を吹き込いた。すると、ポン!と大きな音
  がしてシャボン玉みたいなテンケーカイが生まれた。それは、
  ちょっと迷った感じで部屋の中をくるくる回り、ふわりと窓の外に
  飛んで行った。
  「6時じゃないのに飛ばしていいの?」
  「私が6時と決めているだけだ。本当は別にいつでもいいんだ」
  「そうなんだ」
  僕が感心したので彼女は誇らしげな顔をした。なんだかとてもかわ
  いかった。
   そのときの彼女の顔を思い出しニヤニヤしていたら、いつの間に
  来たのかテンケーカイが頭上でパチンとはじけた。僕の体にキラキ
  ラした光が降りかかった。
  「あ、彼女に会いに行こうかな?」
  不意に浮かんだ考えは天啓というには余りに些細で僕はまたちょっ
  と笑ってしまった。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【70】──┨ 魂の未分化フォーマット
      
        「おはよ。悪いけどコーヒー無糖でいい?」
        「ただいま。なに、また祟られたの?」
        「うん、ちょっと買い置き切らしちゃって」
        「三本足の機械の神様は性格が悪いから、目が合っても知らんぷり
        しとかなきゃ」
        「OK。特売あるから帰りに買っとくよ」
      
         ある年を境に、世界中で認識に異常のある子供が生まれ始めた。
        彼らの言動は、まるで別世界を見ているかのようにずれている。林
        檎を丸囓りしている時に、彼らは船の模型で遊んでいると主張する。
        眠り子や眠り人と訳された彼らの出生率は年々増加していて、僕の
        世代では既に四人に一人になっていた。
         不思議なことに、眠り人は社会生活に順応できる。食事、排泄、
        通学から労働まで。彼らはあくまで彼らの倫理で行動しているのだ
        けど、結果だけを見るとその行動は僕らの倫理に矛盾しない。たと
        えばいつも街道で踊っている眠り人は、なぜかちゃんと人や車や赤
        信号を避けて移動する。本人はただ気の向くまま踊り回っているだ
        けなのに、結果として偶然上手くいってしまうのだ。
         成人の五人に一人が眠り人という時代になった。でも、懸念され
        ていたほど社会の混乱は大きくない。意思疎通はできなくても、現
        実問題として眠り人は一丁前に社会生活をこなしている。社会は結
        局この現状を受け入れて、また何となく回り始めているのだ。
         僕らの世代、眠り人は既に当然の存在だった。だから年配の人々
        が彼らに抱く違和感が、僕らはどうにもぴんと来ない。下位のレイ
        ヤにある僕らの意識はばらばらにしか世界を認識できない写像だけ
        れど、その上層では根幹の世界をきちんと共有しているはずなのだ。
         眠り人の割合は今もどんどん増えていて、この分だとじきに人類
        の全人口とイコールになる。眠っていたのは我々の方だなんて極端
        な言い分も、最近はよく見かける。まあ、なるようになるだろう。
        結局、一意的だと思っていた僕らの世界認識が、実は結構バリエー
        ションに富んでいたというだけの話なのだ。
      
         そして、彼女は眠り人だ。僕と彼女の間にはどうやら時差がある
        らしく、生活時間が合わないのがちょっとばかし残念ではある。で
        も同僚にはイギリスの恋人と上手くやってる奴もいるし、このくら
        い大した問題ではないのだろう。だから今日も僕はおはようと声を
        かけ、彼女はただいまと返事をくれる。


   ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
  ▼ △
 ▼ △  【71】──┨ この美しくすばらしい世界

   わけのわからない因縁をつけられて不良にボコられるなんて時代
  錯誤も甚だしいが、そのせいで左足とあばらを骨折までする大けが
  して入院して出席単位がやばくて中間さぼっちゃってるっていう悲
  しい現実。
   そんな不幸がスパイラリまくって絶望のズンドコな僕のベッドサ
  イドにいるのは平木鏡美。別名「イインチョー」、その名の通りク
  ラス委員長なのである。面倒見が良くて世話焼きで成績が良くてメ
  ガネでツインテールで可愛くて、密かにあこがれの委員長。ちまた
  で呼ばれてる「かがみん」という相性が気に入ってて僕も勝手にそ
  の相性で呼んでる。
  「私の話聞いてる?」
  「あ、ごめんかがみん」
  「かが……何?」
  「なんでもない。それで、ええと?」
  「……もう。あなたさえ良ければ、学校のノートのコピーとってあ
  げるけれど、どうする? いらない?」
  「いるいるいる、ホントの本気で欲しいです、お願いします、委員
  長」
   顔の前で手刀をつくって懇願した。気にしないで、と彼女は言っ
  た。そして、付け足すように「あとね」と切り出した。
  「委員長じゃなくて、普通に平木でいいわよ」
  「かがみんじゃだめ?」
  「がみ……なんて?」
  「ううん、なんでもない、平木さん。ノート、ありがとうございま
  す」
  「そういえば佐野くん、中間受けてないんでしょ? 追試とか大丈
  夫?」
  「……ダメです。もうダメかもです。俺もう終わりです」
   嘆息する平木。ああ、あきれられてる。そして、仕方なさそうに
  平木が言った。
  「もし良ければ、分からないところ、見てあげるわよ、勉強。追試
  験の」
   というわけで、僕はこれから追試が始まるまでの何週間かを平木
  と時間を共に出来るようになったわけで。平木はお定まり通り「ま
  あ困ってるクラスメイトが居たら助けるのが私の役目だから」なん
  てことをのたまっていたわけだけれども、僕にとっては不幸中の幸
  いというかなんというか、うれしい現実がここから始まったわけ
  だった。
   その後のハナシとしては、まあ当然フラグも立つことも何も無
  かったわけだけれども、退院後は、平木とは前よりも少しだけ仲良
  くできるようになった。どっとはらい。


         ▼ △━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
        ▼ △
       ▼ △  【72】──┨ 黒髪の棘
      
         くっだらねえ、と思ってた。
         残業残業また残業。帰ったらシャワーを浴びて缶ビールを空ける。
        起きたらおざなりに洗顔して女性専用車両に乗る。CDをエンドレ
        ス再生にしてるみたい。
         男っ気なんて全然ない。化粧は社会常識程度。いくら華やかにし
        たって、職場の誰が見るってもんでもない。意味がない。実家から
        は、家電(イエデン)や携帯を通して爆撃を受ける。いい人がいるだ
        の、孫の顔が見たいだの。
         とにかくあたしはうんざりしてた。
         だからか、最初はそれをノイズだと感じてた。もしくは、指に刺
        さった棘のように。
         いつもの電車の中。四谷であたしの前を通り過ぎる。 田舎育ち
        のあたしでも知ってる、名門女子高の制服。黒髪が、セーラー服の
        白い襟の上でたゆたってる。
         あ、あの子だ。いつも見かける。細いけど色の濃い眉に、意志の
        強さを感じさせる。今時のギャルメイクとは全然違うけど、白い肌
        はファンデーションを使ってるあたし以上に透明感がある。
         いつも見かけるなぁ。
         その感想が崩れたのは、たまたま早起きしていつもより一本早い
        電車に乗った時だった。
         あの子をいつも見かけるんじゃない、あたしがあの子をいつも見
        ていたんだ。
         朝は欠かさずチークまでつけるようになった。マスカラで、より
        まつ毛が長く見えるように工夫した。amazonと楽天専用だっ
        たカードを持ってデパートへ行った。お客さん似合ってますよぅ、
        なんていうショップ店員の口車にも乗った。
         近づきたいなんて願望はないし、ましてや肉欲なんてない。あの
        子の眼に、醜く美しくないものを映したくない。あの子の世界を穢
        したくない。
         もう、くっだらねえなんて思わない。

 ……………………………………………  幻  ……………………………………………

 このコーナーに対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 後記
 ──────────────────────────────────────

 秋山真琴も申しております「お気に入りの5作を書いてください」。
 みなさまの忌憚のないご意見で、作者同士、また作者と読者の間で豊穣な交流が持てる
ことを期待しております。どうぞよろしくお願いします。


*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は09月05日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
Score!: 90 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。