文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_172

2008/05/27

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 塑性言論                 第20回 第3話
  【3】 赤井都超短編集              第52回
 【4】 後記

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 【1】 前書
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 みなさん、こんばんは、遥彼方です。
 機密性の高いマンションの部屋は暑くて、夜はなかなか寝付けません。
 先週はピーター・グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』を観ておりました。
 ……気になるのが結局、悪趣味な映画ばかりなのです。

 さて、今回は塑性言論の第20回と、赤井都さんの「蛇行した道沿いの市」を掲載いたし
ます。
 
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】   塑性言論         第20回  第3話(全4話)
                     著/桂たたら
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 時計の針は、反時計回りに、一秒ずつ

    もう一度 ―――― 時間の加速を……! ――――

 ……………… 「これも説明しておけというんです! 中途半端な!」 ………………

 小鳥の一瞬の驚愕を突くように、Aチームの残り二人が短く詠唱を行った。
 ――彼女は基本的に魔術的には全くの無防備である。今まで、相手の攻撃は全て、回避
するか、発動前に潰すかしていた。この状態で相手の攻撃を受ければ、気休め程度の防具
ごと、肉体へとダメージが通るだろう。そうなれば五体満足でいられるかどうかすら疑わ
しい。
 小鳥が覚悟を決めて、せめて急所だけは守ろうと身体を丸めた。――そのとき、視界の
端から影が飛び込んできた。
 彼女の目の前で、二つの身体が踊る。
「はっ!」裂ぱくの気合。
 相手チームの選手達は、側頭部と、みぞおちにそれぞれ踵と拳を叩き込まれて姿勢を崩
した。
 相澤と空が、小鳥をかばうように立つ。
「勘違いするな、お前を失っては勝利はないからな!」相澤がいう。
「絶対に負けない、チームを勝利へと導く人物のことをなんと呼ぶか知っている?」空が
いう。「この人に任せておけば大丈夫、そう思わせる人のこと!」
「それは、」「それを、」「エースというんだ!」相澤と空の言葉が重なる。
「エースの仕事はたったの一つ!」
「負けないこと、必ず勝つこと!」
 小鳥は彼らの言葉にきょとんと目を丸くした。
 ――いつのまに、仲良くなったのだろう?
 小鳥は苦笑しつつ、手もとの時計へと目を落とす。
 丁度、針が十二の位置へ戻ってきていた。



 あいつは何をしているんだ、と彼女は我が目を疑った。
 待ち合わせ場所にいつまで経っても訪れないものだからと探しに来てみたらこんな様子
だ。彼女は呆れてため息を吐いた。
 稲森志摩というのが彼女の名前である。新月小鳥の学友である。
 新月小鳥は、まるで瞬間移動でもしているかのような運動を行いつつ、相手選手の間を
縫うように動いている。
 ここに来たばかりの彼女には詳しいことは分からなかったが、これは試合のようなもの
なのだろう。相手への攻撃の許可と、目標の破壊という試験の性質を合わせて考えると、
おそらく戦闘系の資格試験に違いない。
「そんなの、あいつに一番不向きな試験だっていうんだ……」
 小鳥が相手選手に囲まれる。三人目までは上手く対処したが、その後ろにさらに二人が
いることに小鳥は気付かずに、一瞬だけ動きが鈍る。経験の浅さからくる視野の狭さが原
因だ。
 彼女は思わず目を覆いたくなったが、小鳥の危機は、同じチームのメンバの助けによっ
て回避された。
 まったくはらはらさせる、と手に汗握り、気が気でない状態で試合を見詰めていると、
隣で同様に試合に見入っている人がいることに気がついた。
 既にこの試合は他の参加者たちの注目の的となっている。それなのに、彼女がその人物
へと意識が向いたのは、この会場の雰囲気にそぐわないからだった。
 幼い子供がいる。彼女はそう思った。
 中学生くらいだろうか。自分よりもいくぶん年下に見える。彼女自身は高校生だ。印象
に残りにくい黒いショートヘアで、服装も黒のパーカにジーンズという目立たない格好
だった。
(男の子……? いや、女の子か?)
 自分に向けられた視線に気付いたのか、その子供は、彼女と目を合わせて小さく会釈を
した。
 そして、遠慮がちに口を開いた。
「あの、突然ですみませんが、お話があります。少々、お時間、よろしいですか――?」



 試験の全てが終了した。
 受験者全員が一箇所に集められる。結果の言い渡しがこの場で行われるためだ。
 名前が読み上げられていく。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第175号(06月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載超短編「赤井都超短編集」      第52回
                 著/赤井都
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 ……………………………………… 蛇行した道沿いの市……………………………………

 蔵が並ぶ街に来ました どの家の後ろにも蔵があって 道が蛇行しているので後ろの蔵
がよく見えます
 何が入っているの 聞きました
 古い夢がたくさん 若当主が答えました
 夢を絵皿にして市が立つというので 駅前のホテルに一泊して朝を待ちました
 古い絵皿が冷たい路面に直に並べられ その前の通りを たくさんの人がそぞろ歩いて
います 後ろにある蔵から絵皿は出てきたのでしょう
 最初の日に街を案内してくれた若当主の姿はどこにも見えませんが 絵皿の市はたしか
に開かれました それが本当に古い夢を固めたものなのかどうかは 手に取ってみてもや
はりわかりません
 どうですか 店番が勧めます
 いいですね すてきですね きれいなんだけど でも とわたしは自分でもわからない
理由で買い渋ります
 周りでも 人が目を輝かせて絵皿を取り上げては ふと何かに気づいたような 醒めた
顔で皿を下に置きます
 人の夢を買うのは難しいです
 それとも夢が古いから難しいのか
 いやこんなもの ただの骨董なのか
 でもね 時間を超えて ぴったりのものが見つかった時の喜びときたら すばらしいも
のですよ すれ違う人のことばが耳に入ります
 今朝はまだ 小躍りしている人の姿は見かけません

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第173号(6月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
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 いかがでしたでしょうか。次回はリレー小説の最終にして最長の話をお送りします。

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は6月5日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
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