文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン 第169号

2008/04/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第169号
         毎月、05日、15日、25日配信         2008/4/25
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 塑性言論               第20回 第2話
 【4】 後記

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 みなさま、こんにちは、遥彼方です。
 前回、リレー小説の続きを載せる、と書いてしまいましたが、勘違いで……!今回は塑
性言論の小説版、第20回の第2話をお届けです。
 バトルはますます熱さを増して、はたして、どうなることでしょう。

 これまでのお話は、このあたりで見ることが出来ます。
 
 第19回 第1話……http://www.melma.com/backnumber_102964_3966222/
 第19回 第2話……http://www.melma.com/backnumber_102964_3978984/
 第19回 第3話……http://www.melma.com/backnumber_102964_4000938/
 第20回 第1話……http://www.melma.com/backnumber_102964_4041021/

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】   塑性言論         第20回  第2話
                     著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

    一戦目の敗北

      ――そして 彼女は  時間を   止める――

 ……………………  ―― 二本目の開始合図の笛が鳴る。 ――  ……………………

 先ほどと同様、Dチームの五人が一斉にCチームの目標へと向かってくる。
 小鳥にも少し理解できた。全員で攻撃に移るというのは、完全に地力に差がある場合に
有効な手段なのだ。防御を考えずに打ち合って勝てるのは、相手が格下だからである。
 小鳥たちのチームは、今度は先ほどとは違う編成だった。斎藤以外の四名が全員、目標
の前で待機。
 斎藤は大きく離れた場所にいた。
 それを見て、相手のチームは少々注意を払うものの、目標への足を緩めない。もともと、
斎藤をマークする役目だった相手チームのメンバの一人が、彼の方へと針路を逸らせただ
けである。
 斎藤が、手に持った杖らしき棒の先端を正面に向ける。長さ五十センチメートルほどの、
単なる無骨な鉄棒である。
 もともと斎藤へと向かっていた一人に加え、もう一人が彼のもとへと向かう。斎藤の行
動に脅威を感じたのだろうか。
 ここで黒野、空の二名が斎藤のフォローへと向かう。二名以上の相手が斎藤のもとへと
向かうようなら、彼ら二人が斎藤を守るという手筈になっているのだ。
 斎藤の持つ鉄棒の延長線上に、相手のチームの防衛目標がある。鉄棒の先端に光が灯る。
それは段々と輝きを増している。
 突然、光が膨れ上がり、一条の光の柱が敵陣へと一直線に放たれた。
 黒野と空の妨害をすり抜けて、相手チームの一人が射線上へと身を滑らせる。そのまま
射角に対して身体を斜に構えて、その光の柱の軌道をわずかに逸らせた。
 光の柱は本来の針路を外れ、敵の目標を掠めただけだった。当然、試合終了の笛は鳴ら
されない。ダメージ不足だ。
 斎藤が舌打ちをした。黒野が「目標の護衛を!」と叫び、その声に反応するように相澤、
黒野、空が目標の近くへと集合する。しかし斎藤だけは動きが鈍くなっている。さきほど
の魔術の負担が巨大だったからだ。
 ――それと交差するように、小鳥が敵コートへと走り始めた。
「一分で良い、耐えてください」
 とだけいい残して。
 彼女のそれは事前の打ち合わせにない行動だった。
 小鳥と同じチームのメンバは、驚きつつも目標を護衛すべく行動する。
 敵のチームと小鳥が交差するが、誰も彼女の後を追わなかった。
「構わん、追うな! ヤツが目標を破壊する前にこちらが破壊できる、アレは無駄だ!」
 Cチームの目標付近、四対五で交戦が始まった。黒野たちは目標を防衛しながら戦わな
くてはならないのに対して、相手チームにはそれがない。マッチアップの度に、フリーに
なった一人が余裕を持って目標へと攻撃を加えればいいだけの話だ。
 空が相手の攻撃に大きくよろめいていた。その間に、防衛目標へと攻撃が数度加えられ
る。空が態勢を立て直し、再度突撃をしようと呪文の詠唱を行い、攻撃に移ろうとした瞬
間、試合終了を告げる笛が鳴る。
 相澤が毒づき、斎藤がため息をついた。黒野が視線を落とし、――だが、空だけが、違
うものを見ていた――彼女の姿を。
「Cチームの目標破壊を確認!」
 審判の声に、顔を伏せていたCチームのメンバも、勝利を確信していたDチームのメン
バも、揃ってDチームの目標へと視線を向ける。
 どれだけの力を加えたらあのような形状に変化するのだろうか、というほどに完全にひ
しゃげた灰色のサンドバッグが無造作に転がっていた。
 その横には、肩で大きく息をつく、小柄な少女の姿があった。

 一本ずつ取り合って迎えた、最終戦となる三本目。
 彼女は異常な能力を持っている、と判断したDチームの面々は、彼女に二人のマークを
割いた。そのうちの一人は、一戦目で小鳥と交戦した人物だった。
 二人が小鳥を前方から挟み込むように襲いかかる。
 ――対峙は一瞬だった。
 小柄な影が、相対する一人の懐へともぐり込み、小さな掌で相手の身体を大きく吹き飛
ばす。
 もう一人にできたのは、それを見て驚愕することだけだった。直後、子供のような大き
さの掌を腹に感じ、同様に吹き飛ばされていた。
 ……二度、小鳥の動きを目の前で見て、混乱する頭の中で彼は確信した。
 彼女の動きが、さっきよりも速くなっていることを。



 Dチームとの試合で勝利した小鳥達の所属するCチームは、もう一組の勝者であるA
チームとの対決が組まれた。
 Cチームの戦術は既に固定化されてきている。新月小鳥をワントップのアタッカとして
据えて、残りのメンバがそれをバックアップするという形である。
 既に彼女は異常な能力者として認識されているようだった。Aチームとの交戦時には、
最初から三人のマークがついていた。
 一人を突き飛ばし、二人目をかわし、三人目の足を払ったところで、彼女は息苦しさに
限界を感じて加速時間を解除した。
 しかし、彼女は予想外の出来事に目を丸くする。
 三人をかわした自分の目の前に、さらにもう二人が展開していた。
(五人、全員が私のところに――)
 ――戦術としては十分にあり得る。ルールは二本先取。ならば、最初の一本を犠牲にし
てでも、フルメンバで相手の人数を減らすことに費やすのだ。
(もう一度、時間の加速を……!)
 彼女は手に持った金色の懐中時計のスイッチを押し込んだ。
 しかし、ようやく慣れてきた例の感覚が、今度は襲ってこない。
「なんで――!」
 何度も押し込むが、スイッチが空回りするだけで、周囲に変化は全くおとずれない。
 小鳥は時計へと視線を落とす。
 時計の針は普段と逆方向、反時計回りに、一秒ずつ時を刻んでいる。
(もしかして、この針が十二に戻るまでは再起動不可能――!?)
 長く時間加速を行っていればいるほど、待機時間が長くなるということか。おそらく
クールダウンの時間が必要なのだ。
 こんなこと――初めて知った。
「あいつ――! 説明義務、果たしてねーじゃないですか……!」小鳥は小さく毒づいた。
「これも説明しておけというんです! 中途半端な!」

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第172号(05月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 編集後記
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 いかがでしたでしょうか。次回こそはリレー小説の続きをお送りします。

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*編集部
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 次回の配信は4月25日を予定しております。

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   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………
   
       発行日:2008年4月25日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
          言村律広
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