文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_165

2008/03/15

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 【1】 前書
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 みなさま、こんばんは、遥彼方です。明日から東京に行ってみます、そろそろ荷造りを
しなきゃなりません。
 さて、今回は『波紋』冬合宿企画の第二弾、リレー小説と、遠野浩十さんの小説をお送
りします。

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 【2】創作塾『波紋』冬合宿企画〜リレー小説          第1回
                  著/言村律広・雨下雫・秋山真琴・遠野浩十
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 創作塾「波紋」とは。創作団体「雲上回廊」から派生し、小説のスキル向上を目指して
日夜活動している団体(団体?)のこと。
 初回の担当は言村律広さんです。どうぞ!

 …………………………………… ―― 第一話 ―― …………………………………

 夜を駆けるのに、理由などいらない。
 君を好きだってことが、まったく接点がなくても断言できるように。まだ見ぬ君。存在
するかも分からない君。
 君は二次元の存在かもしれないね。でも、僕は三次元的な闇の中を、次元を超える脚で
駆けるよ。

 二つの山脈に挟まれ、海に面して町はあった。
 山からの風は強く、冬は北風として人々を震えさせる。その山脈は北風山脈という呼び
名であり、地図上での名称を使うものは、ここには居ない。居れば、余所者だとすぐに知
れるのだ。
 もう片方の山脈を、美人山脈と呼ぶ。伝説に由来する名前だ。
 片鞠田麻椎《かたまりだ・ましい》の住む町。
 転がして、くっつけろ!

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第167号(4月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】創作塾『波紋』冬合宿企画〜競作「波王戦」 第一位作品
            「水車はまわりつづける」       第2回
                                           著/遠野浩十
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 第二回は、<渇望>をテーマに据えた競作「波王戦」にて第一位に選ばれた、遠野浩十
さんの『水車はまわりつづける』その第一話後編をお送りします。
 人生を掛けて追い求める、静かな情熱の物語です。

 ……………………………………… 第一話(承前) ………………………………………

「たまんないよな! ひいじいさんなんて会ったこともないってのに!」
 学校からの帰り道に、ロックはよくふてくされた調子でそんなことを言った。
ロックはこの街と、それからあの巨大な水車があまり好きではなかった。なぜかというと、
この街にいるかぎり僕ら二人は、伝説の穴掘り士ロックのひ孫と、伝説の建築士アイスの
ひ孫でしかなかったからだ。
「俺は冒険家になりたいんだ。地底大河の水車なんてどうでもいいよ。俺は世界で最初に
地底大河を発見した、学者であり冒険家だった外国の偉人にこそあこがれるね」
「ロックのひいじいさんは冒険家みたいなもんだろ。誰も行ったことのない地底まで穴を
掘り続けたんだから」
「だけど世界的な発見はできなかったんだ、うちのひいじいさんは。言われたとおりに穴
を掘ってただけだったんだよ。俺は嫌だね、そんな冒険は」
 ロックはそう言うけど、僕は逆に、自分のひいじいさんの功績を素直に誇りに思ってい
た。
 この街は、水車が完成したあとにつくられたらしい。巨大な水車を中央に配置するよう
にして、街もデザインされ、地下には水車のエネルギーを町全体に伝えるケーブルが設置
された。
 この街を動かしているのは地底大河とそこに作られた水車で、その水車を作るのに最も
貢献したのが、僕とロックのひいじいさんなのだ。
僕とロックのなかには、この街を最初に動かした男たちの血が流れている。そう思うと、
僕の体の内側から不思議な興奮がわきあがってくるのだ。
「お前はさ」とロックが言った。「将来は、あの水車の整備士になりたいんだよな」
「うん」と僕は答えた。「ロックは世界的な発見をする冒険家になりたいんだよな」
「もちろんだ」
 ロックはそう言ってから、街の中央部、水車がある方向を見た。
 僕もつられてそちらを見る。
 水車の全体像は建物に隠れていて見えないけれど、それでも建物の高さを超えてゆうゆ
うと回転しつづける水車の姿は確認できる。
「でかいな」ロックがぼそっと言った。「あれでも、地上に出てるのは全体の半分で、も
う半分は地底大河の流れにつかってるんだから、すごいでかさだよな」
 そう言ったロックの目は、冒険家になる夢を語るときと同じくらい、楽しそうに見えた。
「うん」
 僕は答えて、安心した。ロックはやっぱり、あの水車が嫌いなわけでもないし、まして
自分のひいじいさんの偉業が嫌いなわけでもないんだ。
 この街にいると、自分の才能を決め付けられているみたいで、それが嫌なのだと思う。
「おたがいさ、絶対に夢をかなえてやろうな」
 ロックが言った。
「もちろん」
 僕が答える。
 そして僕らは、自分たちの家に帰るために、別々の岐路に着いた。
 このころはまだ、僕らのまわりには夢を語る環境と生活が用意されていた。それはこの
先もずっと続くと思っていたけれど、実際にはそうではなかった。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第168号(4月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

 創作塾「波紋」mixiコミュニティ...http://mixi.jp/view_community.pl?id=1027483

 …………………………………………… つづく ……………………………………………
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 【4】 編集後記
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 如何でしたでしょうか。
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http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は3月15日を予定しております。

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