文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_163

2008/02/25

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 【1】 前書
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遥彼方「みなさま、こんばんは、遥彼方です。」

言村律広「ミ、ミズをくれぇ〜。言村ですぅ。」

遥 ・・)つ□

言村「ありがとう。このミミズで魚を釣ります。」

遥「どうぞどうぞ。」

言村「どうもどうも。……しかし今号は水びたしですね。」

遥「ですねー。今回の掲載作は、赤井都さん「水面」 そして新連載の、遠野浩十さん
  『水車はまわりつづける』です。……赤井さんのは相変わらず素敵な空気感です。」

言村「なんでしょうね、一回読んだだけだと、少し不思議な感じで、もうひとつ理解しき
   れない気がします。」

遥「秋祭りの場所って、あの世とこの世のあわいさみたいなとこなんかな、って思いまし
  た。」

言村「ああ、秋祭りってそういう感じあるかもですね。」

遥「ね。日本のお祭りって、そういう側面があると思います。逆に言うと、だからこそこ
  の静かな行事が「秋祭り」なんだろなあ、とか。なんとか。」

言村「そうですねえ。収穫祭みたいなのもあれば、静かなのもありですよね。」

遥「さて、『水車はまわりつづける』ですが。昨年12月の末に、創作塾『波紋』の面々に
  より行われた競作イベント「波王戦」において、一位に選ばれた作品です。」

言村「よあけ波王!」

遥「波紋について、言村さんから少し説明をお願いしてもよろしいですか?」

言村「え、なんたる事前打ち合わせ無しの無茶ブリ(笑)……ええとですね。波紋は、創
   作塾とか言いつつも、その実は、参加者が好き放題に競作イベントをぶち上げて、 
   みんなで遊ぼうという集まりです。……というかまあ、なんか最近そんな感じにな
   ってます。良いことです。」

遥「まあ、そんな感じですねー(笑) 競作とあと、今回はリレー小説も行われまして。
  次回はそちらを掲載する予定ですので、お楽しみに。」

言村「あのリレーかあ。なんか、まあ、お楽しみにどうぞ。……ところで「水車〜」の紹
   介文を考えたんだけど。

遥「おお。」

言村「よんよんよすっけ、ぐーるぐーる。よっすっけが回ーる、まわーる、まわ〜る。水
   車だよー、よすけ水車ー♪」

遥「却下!」

言村「うは、即刻!」

遥「てか全然そういう話ちゃうし!」

言村「いいじゃーん。」

遥「というわけで、ええ、いい加減長くなったのでこの辺で! 雲上第163号、お楽しみ下
  さいー。」

言村「お楽しみくださいませませ。」

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 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第48回
                 著/赤井都
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 …………………………………………… 水面 ……………………………………………

 秋祭りの会場は山に囲まれた野原。広い空の下にこの辺の人がみな集まる。
 野原に来る道はない。野原から行く道はない。それでもみなはいつのまにか野原に現れ
て、思い思いに座っている。
 祭りといっても、なにかするわけでもない。ただ風の音を聞いて、広い空にかかった筋
雲の変化を見て、知り合いどうしは話をする。一年に一度、ここに来れば、みなに会える。
この辺にいる人はみな、今日という日にここに来る。
 なんでもない秋の一日だ。カレンダーに印も何もついていないのに、空の色はきのうと
もあすとも変わらないのに、ふと時を知って、ここに集う。
 わたしも来られた。わたしはさざめきと乾いた葉ずれのなか、人から人へあいさつにま
わる。足元に草の踏みしだかれる音、耳元に風鳴り。その音の向こう側で、遠く近く、懐
かしい顔がわたしをのぞきこむ。かんたんに近況を話して、うなずきあって、また別れる、
人から人へ。ふと野原のはずれに出る。知った人のもとはこれでもうすべてめぐったと思
う。知らない人の顔は霧をかぶったように目の中で隠されるから、お互いすっとすれ違う。
ひといきついて、ひとりですすきの間に座って、思い出した。わたしはここへ、Tと会え
ることを期待して来たのだった。
 Tとは年々疎遠になっていた。わたしのみっともなくて恥ずかしい青春時代は、かつて
Tによって救われた。年月がその当時わたしが内包していた問題のほとんどを解決してし
まい、わたしは次第に落ち着いたおとなになり、一方でTは年を取った、それでもまだ老
人になるよりはずっと前、Tは病を得た。それでも去年の秋祭り、Tは来ていた。いいや、
そのときTはもう死んでいたはずだ、でもまだこの秋祭りには来ていて、わたしは小さな
猫をTに紹介した、これがわたしが産んだ卵から生まれた子です。
 猫はすぐに草にまぎれてどこかに行ってしまい、わたしは今のこの時を夢だと思った。
けれど夢からは醒めず、夢は続いていて、わたしは今年の秋のTを待ちつづけた。
 山に囲まれた広い丸い空。その下で、すすきの野に座って、わたしは心を澄ませて、空
と同じように広げた。心は空と同じような丸く広い水面になり、次第にみずいろに静まっ
ていく。風がたてた波紋が端からまた消えて、わたしは水底で長い間待った。
 Tは現れない。みずいろの幕を上空に張って、わたしはTが触れてくれるのを待ってい
る、水が揺れて懐かしい波紋が広がるのを待っている。Tは来ない。
 待ちつづけるうち、もうほんとうに行ってしまったんだとわかってきた。
 だから何も云ってくれない。わたしはこの秋祭りに、猫の毛を重ねて初めて上梓した本
を持っているのに、Tは来ない。Tに見せたかった、それなのにTは本について、いいと
も悪いとも、なんとも云ってくれない。
 もうほんとうにTはいなくなってしまった。この野原の近くにはいない、遠い遠いとこ
ろへ山の向こうのもっと向こうに行ってしまった。会いたかった。力なく垂れた手の甲が
本のやわらかな表紙に触れている。涙がゆっくり冷たく目尻を伝い流れて、心の水面につ
とんつとん落ちて、心はもっと広い湖になる。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第164号(3月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】創作塾『波紋』冬合宿企画〜競作「波王戦」 第一位作品
            「水車はまわりつづける」
                                           著/遠野浩十
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 創作塾「波紋」とは。創作団体「雲上回廊」から派生し、小説のスキル向上を目指して
日夜活動している団体(団体?)のこと。
 「雲上」ではこれよりしばらく、12月28日から29日にかけて新宿のとあるネットカフェ
で行われた『波紋』冬合宿で生み出された作品たちを紹介していきます。
今回は、<渇望>をテーマに据えた競作「波王戦」にて第一位に選ばれた、遠野浩十さん
の『水車はまわりつづける』その第一回をお送りします。
 人生を掛けて追い求める、静かな情熱の物語です。

 …………………………………………… 第一話 ……………………………………………

 街の中央には巨大な水車がある。
 街のどこからでもその姿は見えるけれど、中央通りに面している僕の家からは、街のな
かでもとくに水車を眺めるのに適していると思う。夜明けごろ、太陽は水車ごしに顔をだ
す。朝一番の光が、回転する水車の動きにさえぎられながら、ゆっくりと町全体にふりそ
そぐ。僕はその時間のその風景が大好きだった。
 学校では、いろいろなことを教えてくれるけど、僕が毎日楽しみにしているのは、歴史
の時間だ。この街がいかにして発展していったのか、歴史学の祭文先生は僕らに教えてく
れる。
「この街の歴史は、地底大河の発見から始まります。地底に川幅数十キロもの大河が流れ
ていることを世界で始めて発見したのは外国の学者です。しかし、当時は彼の論文はその
国でまったく見向きもされなかったそうです。なにしろ誰もが馬鹿馬鹿しいと思ったそう
だからね。地面の下になにがあるかなんて、普通の人は興味をもってなかったし、知りた
いとも思わなかった。生活の外にあることに関して、人はまったく何も考えないのだから。
――あ、あ〜、話がずれたね。この街の歴史のことだ」祭文先生は、咳払いをひとつして、
教室全体に意識を向けなおした。「その学者の論文を真正直に受け止めたのが、私たちの
国の学者たちだ。地底に巨大な川があるとして、どうかにしてそのエネルギーを有効利用
できないものか、と。そして数十年の研究の末に、みんなの知っているのあの水車を作ろ
うと決意した」
 祭文先生が窓の外を指差した。
 僕を含めた生徒全員が、その先を見る。
 そこには、この街がつくらられる以前から休むことなく動き続けている、この街のシン
ボルがある。
「この街の工場やみんなの家庭、それにこの学校にも、あの水車のエネルギーが使われて
います。具体的には」先生は天井の蛍光灯を指差した。「この街で使われているすべての
電気エネルギーは、あの水車がまかなっているわけだ。それと、ほかにはバスもそうだね」
 バスはこの街の主要な交通手段だ。路面に刻まれた一本の細い溝の上を走る箱型の乗り
物で、街の端から端まで、いつも何本かのバスが走っている。
 バスも水車のおかげで動いていることを知ったのはつい最近で、それまで僕は、あれは
運転手が自分で(自転車みたいに)走らせているのだと思っていた。僕はバスに乗ったこ
とがなかったのだ。科学の時間に、地下に埋められたケーブルからエネルギーをもらって
動いているのだと教えられたときは、だからとても驚いた。
「この街が数十年のうちにこの国になくてはならない主要都市として発展したのも、すべ
てあの水車のおかげです。しかし、水車を作るのはとても大変なことだった。この国の何
十人もの学者たちが知恵をしぼり、計画を完成させるまでに数年、それを実行するための
準備に数年、そして計画が始まってからも大きな問題は何度もうかんできました」
 祭文先生は黒板に簡単な図を書いた。
「計画のなかで、もっとも大きな問題だったのは、地底大河の深さです。この一本の線が、
私たちが歩いている地面です。その上が地上、下の部分が地下。地底大河は地表からうん
と深い場所を通っているので、うんと深い穴をほらないと、その水を水車で汲むことはで
きません。そして、水車自体もその大河のエネルギーをうんと使うために、非常に大きく
する必要がありました」
 そこまで説明してから、祭文先生は教室全体をあらためて見回した。無言のまま、生徒
全員の了解を確認しているような、そんな素振り。
 もちろん、僕ら全員、先生がなにを確認しているのかわかっているし、この後に続く先
生の言葉も知っていた。
 先生はほんの少しだけ顎を動かしてうなずいたような動作をした後に、「アイス、それ
からロック」と、僕とロックの名前を呼びました。
「きみたちのひいじいさんたちが、その問題を解決したのです」

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第165号(3月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

 創作塾「波紋」mixiコミュニティ...http://mixi.jp/view_community.pl?id=1027483

 …………………………………………… つづく ……………………………………………
________________________________________
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     掲載作品数 ―――― 過 去 最 多

      総ページ数 ―――― 想 像 超 越

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                 文芸スタジオ回廊: http://magazine.kairou.com/
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 【3】 編集後記
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遥「今回のテーマは……。」

言村「よあっけ水車ー、まわるーぅ、るるるーまわる〜ぅいえーいっ♪……あ、あれ、も
   う後記、始まってる?」

遥「うん。」

言村「おおお! 歌って踊っている場合ではなかった!」

遥「折角久しぶりの登場だというのに……。」

言村「……それで、なんだっけ?」

遥「今回のテーマについてです。」

言村「ああ、テーマね。なんだっけ?」

遥「ミミズ。」

言村「ああ、それか。「ミ、ミズをくれぇ〜。」ですね。」

遥「私はですねー、今回は掲載作のタイトルが両方水がらみだから、そのあたりでひとつ、
  と言ったんですよー。」

言村「え、だから定番ネタじゃない?」

遥「いや、そこで定番ネタがミミズに化けるあたりが言村さんだなあ、と思って。」

言村「え、これもしかして言村しかられるの図?」

遥「いえ。単に感想を述べているだけですが、何か。」

言村「なんか、最後の「何か」とかあたりが、微妙にコワイよう。」

遥「気のせいでしょう。」

言村「う、うん。そうだと思いたいね。」

遥「さて、まあそんな感じで今回も後記を迎えたわけですが、今回から「回廊」の広告を
  掲載してます。三号連続で。」

言村「そういえば。久しぶりに広告作った。」

遥「久しぶりに広告作ってもらった(ってか初めて?)言村さん、ありがとうございます。」

言村「いえいえ。初めて作ったのは、もうずいぶん前で、私が編集長やってた頃ですが、
   いろんな迷惑メールとか未承諾広告とかを参考にしました。」

遥「そんな人聞きの悪い……(笑)」

言村「いやあ、奴ら、こんなときくらいしか役に立ちませんからね。」

遥「まあ、確かに(笑)。 15号で一旦お休みとなる「回廊」ですが、その分皆気合十分
  でやってます。乞うご期待!」

言村「交互期待! 期待と不安が替わりばんこにね。」

遥「だから人聞きの悪いことを云わないっ。では、また次号でお会いしましょう。さよう
  なら。」

言村「さようなら。ばははーい!」

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は3月15日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

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