文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

全て表示する >

雲上マガジン vol_158

2008/01/05

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第158号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/1/5
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第45回
  【3】 雲上読書会 Vol.1


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────
 あけましておめでとうございます。遥彼方です。

 本年最初の配信となります今回の小説は、赤井都さんの「旅の思い出」「ぐる神社」。
 そして今回から「雲上読書会」なるものが始まります。大体月に一度の頻度で、Web上
の文芸誌から作品をひとつ選んで感想を述べ合ってみよう、というものです。一発目とい
うことで今回は『回廊』からです。
 それでは、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ。 

後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第45回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 …………………………………………… 旅の思い出 ……………………………………

 いつだったか、北海に行きました。
 深い緑の海のおもてに、白い泡が飛んでいました。
 二年だったか、一年半だったか、思い出せないずいぶん前のことです。
 そのとき、人魚をつれて帰ってしまったようなのです。
 頭の中で、二年だか一年半だかをかけて、孵化しました。
 小さいです。手のくぼみの中で、潜水できるぐらい。
 小指の爪の五分の一ほどのほっそりした体で、既に一人前のまなざしをしています。
 ほとんど透き通っていて、同じくらい透き通った声で、月に歌います。言葉はわかりま
せん。
 じゃこ一匹を、三日かけてようやく食べきります。
 ワイングラスに棲んでいます。人魚にとっては、広大なガラスの宮殿です。
 今秋のボジョレーヌーヴォーが出ました。グラスを間違えないように、気をつけて酔っ
払います。
 ソファに背を埋めて目を閉じると、人魚の歌う海が目に浮びます。
 白く泡立つ緑の海です。
 あらあらしく、冷たく、激しい海です。
 難破船が幾つも眠り、魚は巨体でたけだけしい海です。
 人魚は歌っています。あおぐと月がゆらゆら、水底のコインのように揺れています。旅
の思い出は、小さな小さな体で生きています。

 …………………………………………… ぐる神社 …………………………………………

 木造長屋でわたしは見ている、この近隣の観光パンフレット、なんだ知らなかったこん
な場所があったんだ。古い江戸から残っている幾つかの場所、町のあちこちに点在してい
る。わたしは一日で順に巡ってみようとパンフレットのページをめくる、電気はつけずに
窓際に座って白い日陰の光を手元に受けて。
 載っているのはさすが水の都江戸、水にまつわる場所が多い。塔に寺社仏閣、ナポレオ
ンフィッシュが二頭いる寺だとか。そうだ早く水神の話を書き上げなくちゃな、また取り
掛からなくちゃ、止まっているところから直していかなくちゃ。今のうちに資料集めって
ほどでもないけど水に関係するものは何でも見ておこう。
 ページをめくっていくと、ぐる神社というものがある。ぐる、は、かわうその江戸名だ
とか。ぐる神社には今でもしっかりかわうその神がついているので、信仰を真にもたない
人が参詣すると食われてしまって神社の外に帰ってこられないのだとか。行きたいけど万
が一ということもあるからぐる神社は飛ばそう、そうか鳥居の外からのぞくだけなら、外
を通り過ぎるだけならだいじょうぶだな、それだけでも神社は見えるし。今はなにしろあ
の話を書き上げる前だから、事故に遭いそうなことは控えなくちゃ。
 そうだこんな夢を昨日も見たぞ、なんだっけカードがあって山だったっけ。
 そして目覚めた。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第159号(1月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
  
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 雲上読書会Vol.1
 ──────────────────────────────────────
(1.ごあいさつ)

遥彼方(以下、遥)「本日はみなさま、雲上読書会にお集まりいただきありがとうござい
ます。Web上に無数に存在する文芸誌のなかから作品を選んで、それを読んで感想を言い合
ってみよう、という企画です。」

言村律広(以下、言村)「いえーい!」

桂たたら(以下、桂)「オウアー」

遠野浩十(以下、遠野)「ひゃっほー!」

遥「始めに、簡単な自己紹介をお願いいたします。」

桂「回廊で小説をいくつか、雲上でグダグダエッセイを連載している桂たたらです。ライ
トノベルとアニメと萌え漫画が守備範囲のアニオタにしてロリコンでございます。よろし
くおねがいします。」

遠野「回廊で校正を担当しているよあけです。最近のマイブームは、大学の後輩がよく口
にする「死とはなにか?」という哲学的命題です。よろしくおねがいします。」

言村「ノイエー!(挨拶) 言村律広です。雲上でも回廊でも特にこれといって何もして
いないアヒルです。よろしくお願いしますぞ。」

遥「よろしくお願いします。で、司会進行は私、いちおう「雲上」編集長な遥彼方です。
さて。今回は、まず一回目ということで、雲上の姉御的存在であるところの「回廊」から
一作選んでみました。
雑誌は文芸スタジオ回廊による『オンライン文芸マガジン 回廊』(http://magazine.ka
irou.com/)。2004年から現在に至るまで13号(創刊準備号含め14号)を発行しています。
てか雲上を取ってる方なら知っておられますよね。実験小説からプロ作家インタビューま
でわりとなんでもありの雑誌です。
 作品はその『回廊』12号より、秋山真琴『ノイエ・エイヴィヒカイト』です。12号の特
集「世界の終わり」のために書かれたものです。

(2.『ノイエ・エイヴィヒカイト』あらすじ)

 終焉を迎えた世界にたった一人取り残された「僕」は、どうやっても死ぬことができな
い。「僕」は自分の胸に問いかける。自分という存在は、どこから生まれてきたのか?
 やがて、生きとし生けるものは皆海から生まれ、また海へと還ることを繰り返している
のだと思い至る。「僕」は海へと向かい、全てのいのちがひとつながりにたゆたう「海」
となる。そのうちに「海」は疲弊した地球を捨て、宇宙へと飛び立つ。
 【本編 http://magazine.kairou.com/12/index.html

(3.それでは、)

遥「……読んだときの第一印象としては、みなさんどのように感じられましたか?」

言村「勤め先に居る海さんという人を思い出してしまいました。」

桂「初めて読むタイプの小説だなあと感じましたね。」

遠野「「つまりイデの力ってことか!」って思いました。あと、火の鳥も思い出しました。」

桂「え、ボケる流れ!?」

遠野「え、まじめな意見じゃね!?」

言村「まじめですよ。」

遠野「まじめだよね。」

言村「もちろん。」

桂「私がKYだということか……。世界は広かった。」
遠野「広いですね。なにしろ超銀河団まで話が広がりますからね。」

桂「SFですよね、SF。」

遥「短いながらかなりSFしてますよね。
『火の鳥』は遥は全部は読んだことはないのですが、例えば、輪廻とか、いくつかの世界
を横断する存在とか、その辺で近いのかなと思うのですが。よあけさんの印象もそんな感
じですか?」

遠野「それもありますし、火の鳥の、未来篇だったと思うのですが、世界がほろんだあと
に一人だけ生き残ってしまった男の話があるのです。その男は最終的に神となって地球に
再び生命を誕生させるのですが、「ノイエ」の冒頭がその話を連想させました。」

遥「ほおお、なるほど。」

遠野「世界の滅亡から、再生が始まるまでを描いているという点では、共通していますし。」

遥「桂さんはどうでしょ。初めてというのは、具体的には、どのあたりがそんな感じでし
た?」

桂「もうこれは単なる私の読書幅が狭いというだけの理由なんですけれどね。ジャンルが
SFというだけで既に新鮮でした。スターウォーズすら見ていないんですよ。」

遥「それはそれは。SFは良いですよう。何がSFって、「せかいは滅びた」から始まって、
海に飛び込み、その海が宇宙へ飛び出して行ってしまう超展開ぶりが素敵にSFだと思いま
す。」

桂「そういう想像力があるっていうのは、うらやましいですね。こればっかりは、後天的
に身に付けられないセンスのようなところに頼るところが大きいのでしょうし。」

遥「私が個人的に強く感じたのは、この作品、具体的な風景とか視覚に関する描写がほと
んど無いんですよね。とても抽象的なところで話が展開される。私は普段風景を思い描き
ながら本を読む人間なので、最初はこの話をどう捉えていいかわからないようなところが
あった
のですが、逆にそれが新鮮でもありました。」

言村「ずっと独り言ですしね。」

遠野「主人公の描写すら、具体的なことはほとんど書かれてないものね。」

遥「なんか、巧く云えないのですが……視覚の外というか、言葉でだけ表される世界とい
うか、そういう位置で話が進む印象を受けます。独り言で思い出したんですが、私、読み
始めたときは「海の記憶」は主人公の妄想じゃないかなと思いました。」

言村「ああ、そうかもしれませんね。妄想までは思わなかったけれど、脳内で完結してる
話だっていう印象はありましたよ、私は。だから逆に宇宙まで行くSFというよりは、エッ
セイめいた感じがしました。」

桂「冒頭が突拍子もないからかも知れないですね。となると、私が気になるのは、どのあ
たりから遥さんが妄想ではない、と考えるに至ったか、という点ですね。」

言村「それは聞きたいですね。」

遥「飛び込んだ辺からですかね。妄想とも本当ともつかない「海」がどんどん膨らんでい
って、宇宙をも含んだ世界を取り込んでしまう、その膨らみ方が個人的にはわりかし気持
ちよかったりするのですが……言村さんの「エッセイめいた」というのも面白い見方です
ね。」

遠野「仮に「海」が主人公の妄想や幻想だったとしても、彼の主観では自意識が宇宙全体
に広がっていくのが実感できているわけですから、それはある意味で真実といえる気もし
ます。妄想でも現実でも、主人公にとっては違いがない、みたいな。」

遥「たしかに。基本的にものを考える主体が主人公しか存在しない物語だから、主人公の
ふれたものがすなわち真実……。」

言村「年代記の終わりの絶望を食い止めることができる唯一のものとして、海をヒーロー
化してるけど、そんなに活躍しないというか決意を語って終わっているので、もっと長い
話のプロローグのような感じもあるかなあ。」

遠野「確かにプロローグっぽいですよね。でも、このあとの展開を語られても、ただひた
すら海が大きくなっていくだけの話になって、つまらない気もする(笑)」

言村「そりゃ、そうですね(笑)」

遥「ここで終わるから「終わりが始まりに繋がる話」として成立するのであって、この先
が語られるとしたら、星がひたすら呑み込まれていくわけだから、ひたすら終わっちゃう
話になりそうな気もします。」

遠野「この小説での「世界の終わり」っていうのは、つねに「次の始まり」を意味してい
ますよね。だから、ひたすら終わっちゃう話であると同時に、ひたすら始まっていく話に
なるのかもしれない、と今思いました。そういう見方すると面白いような気もします。」

遥「そっか、常に始まりを予感させながら終わっていく、といいますか。そんな感じでし
ょうか。」

遠野「そんな感じです。「世界の終わり特集」に寄せられた原稿ですから、作者の秋山さ
んは、「世界の終わり」に対する自分なりの定義をこの作品で表現したのだと思います。
ラストの二行を読むと「世界の終わり=新たなる始まり」みたいなことが書いてあるし、
「世界の終わり特集」なのに、タイトルからして「新世界」ですからね。」

遥「「世界の終わり=新たなる始まり」と繋がるのは、進取的な秋山さんらしい気もしま
すね。考えてみたら、この話のラストはちょうど一個目の星を呑み込んだ「始点」だから、
テーマ的にもラストをひとつの頂点にしているように感じます。……あと、何か印象に残
ったことはあります? 勤め先の海さん以外で。」

桂「話が難しいのだもの。萌えキャラがいねえぜ! とか、そういうのは流石に(汗)」

遠野「じゃあいかに海に萌えたか語ってくれよ。」

桂「そろそろ大陸萌え、海萌え、地球萌えに宇宙萌えの時代だと思うんですよ。」

遠野「すごいスケールでかい萌えだな(笑)」

遥「じゃあ、そろそろこの辺で。みなさま、今日はありがとうございました。お疲れ様で
した。雲上ではこれからも時々読書会を行おうと思っています。取り上げてほしいWeb雑
誌、小説がありましたら編集部までお気軽にご連絡ください。それではー。」

桂「了解しました。それではお疲れ様でしたー。」

遠野「お疲れ様でした。」

言村「ノイエお疲れ様でした。」



◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────

 雲上編集部より新年のご挨拶を申し上げます。

 ――明けましたからって、べつに貴方のためにおめでたいわけじゃないんだからねっ!
 とはいいつつも、今年も『雲上』はあなたの生活に小さくとも幸せを添えるメールマガ
ジンでありたいと奮闘努力してゆく所存でございます。
 あなたの今年が幸福に包まれますよう祈念しますと共に、本年も『雲上』をよろしくお
願い申し上げます。
(言村律広)

 ――あらためまして、明けましておめでとうございます。今年は『雲上』をより幅広く
柔軟なメールマガジンに育ててゆくことを目標に、がしがし頑張って行こうと思います。
 今年が雲上にとって、みなさまにとって、良い年となりますように。……えー、相変わ
らずあんまり面白いことが言えないだめだめな編集長ですが、そこは別な方向からカバー
していきたく存じますので、生あたたかく見守っていただけると幸いです。
 これからも『雲上』を、よろしくお願いいたします。
(遥彼方)

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は1月15日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

 また、雲上読書会で取り上げるWeb文芸誌、作品も募集しております。自薦、他
 薦は問いません。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… テーマ ………………………………………
  
  10/15...「結婚しました」
  10/25...「真夜中の仮想パレードへようこそ」
 11/5...「六年目の結末」
  11/15...「ただいまママー」
  11/25...「王手!」
  12/5...「海岸の白い貝殻」
  12/15...「がばちょ」


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2008年1月5日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       言村律広
       ご意見ご感想:
           info@kairou.com
       購読の解約および、公式サイト:
           http://magazine.kairou.com/unjyou/

       (c) unjyou_kairou 2008 all right reserved



規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
Score!: 90 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。