文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_157

2007/12/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第157号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/12/25
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第44回
  【3】 編集後記・拡張版


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 みなさまこんにちは、遥彼方です。今回の前書きは遥ひとりでお送りします。すっかり
寒くなりましたね。町にはイルミネーションが輝いてたり、商店街にはサンタルックの人
々があふれていたり(いや、あふれはしないか……)。
 遥はキリスト教徒じゃないのでクリスマス絡みの行事は特にしませんが、楽しまれてい
る方も多いことでしょう。
 そんな12月25日、今回の小説は赤井都さんの「墓がならんでそこまで波がおしよせて」
そして後記をいつもよりも拡張しまして、雲上編集部で今年の総括とこれからの展望を
(ゆるゆると)語ってみました。
 どうぞごゆっくりお楽しみください。

後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第44回
                 著/赤井都
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 …………………………… 墓がならんでそこまで波がおしよせて ………………………

第2554日目
 この魔法の島に閉じ込められ、はや七年が経つ。その間、日々の生活に追われ、魔法を
解き明かすどころではなかった。
 そうだ。何の気なしにこの島に漕ぎ渡ってきた日から、もう七年にもなる。なんと長い
一時停止をしていることだろう。
 ここに着いた日のことを覚えている。わたしは海を、遠くから一人で漕いでいた。来る
日も来る日も波ばかり見て、大海に囲まれている不安は耐えがたかったが、それでも我と
我が身を励まし、己の信じる方角に進み続けた。その日、わたしの目の前に、不意に陸地
が現れた。陸をめざしていたのだから、そこに陸があることを想定はしていたが、それで
もその近さは思いがけず、そんなにすぐ前に陸地があることに驚いた。わたしは勇んであ
と少しの距離を進んだ。舟の舳は、波を越えてまっすぐにこの島に突き当たった。わたし
は波頭を従えて広く伸びている海岸線に到着しようとしていた。しかしその前に、ぽつん
と飛び離れたこの小さな島に着いてしまった。
舟を止め、上陸し、そしてまさか七年もの間、ここから動けなくなるとは思わなかった。
わたしは今日も明日も、脱出の努力を続けるだろう。人として生きるのに必要な食事や睡
眠、日々の生活に関るもろもろの労働をこなしながら、その合間に舟を出そうとするだろ
う。このところのわたしが、たいして遠くまでも行かず、ちまちまと櫂を操っては、小さ
な魚を捕らえて喜んで帰ってきてしまうのだとしても。それでも舟を出しているとわたし
は言う。これから先、いつまでこの島にいるのか、いつかそれとも明日にも脱出の試みが
成功するかどうかは、わたしには予見できない。
 この浮き島は少しずつ漂流しているから、わたしが島から出られなくとも、勝手に対岸
との関係を変えていく。それでも、全体からみれば島の漂流は微々たる変化であり、対岸
の風景の、大きな岩の角度や木の葉の見え方は以前とは違うものの、依然として隔たりは
あり、島に乗ったまま岸には到着できなさそうに思う。それこそ魔法が働いて、一年に十
センチの距離ではなく、一気に百メートルを動くことでもないかぎり。
 どうしてこんなことになっているのだろう。わたしは、この島に着けばもうだいじょう
ぶだと思っていた。島で一休みしてから、もう二十分も漕げば、向こうに渡れるだろうと
思っていた。しかし、わたしは向こうにたどり着いていない。ずっとこの魔法に封じ込め
られた島の中で、広い対岸から隔たり続けている。
 魔法と書いたが、ほんとうに魔法だろうか。わたしを支配している物事の実態はよくわ
からない。ただわたしが何度舟を出しても、目指す対岸に着かなかったのは事実なのだか
ら、わたしはそれを受け入れた下で暮らしている。潮の流れ、天候、わたしの体調、いろ
いろな原因は考えられるが、ともかくわたしの身の内に、向こうまで行く力がなかった、
ということは事実としてある。どうしてわたしの腕にはあと数百メートルを漕ぎ渡る力が
ないのだろう。もはや大海にいるのではなく、小さいながらも島に着いてしまったから、
波から逃れたい一心が膨らまないのだろうか。しかし対岸に着いたとしても、足を踏み入
れたらすぐ、また海に出なければいけないと聞く。漕ぐことからは離れられない。
 皆が舟を出しているはずのその海はこちら側からは見えない。きっと、あの岸の崖を上
れば、その先にまた海が広がっているのだろう。岸に着いた舟はあちらへ行く。岸からこ
ちら側の海に出てくる舟は少ない。向こうの海はどんなだろう。よく言われるように、世
界の海は一つ、というのが確かなら、向こうがこちらにもきっとつながっているはずだ。
陸の内側にあるその海が、実際には海ではなくて、大きな沼ででもないかぎり。
 七年か。こんなにも一つの島にいたら、この島の岩の間から生える尖った葉の草も、小
さな浜に流れ寄る海草の味も、すっかり目に指に舌になじんでしまう。まさか愛着が湧い
て、よそに移りたくなくなったというわけでもあるまいに。わたしはわたしの小さな大地
を耕し、魚を干し、火を起こし、木陰から水を汲み、ここで生活するリズムをすっかり身
につけてしまった。人は環境に慣れてしまうものだ。聞きなれた潮騒、いつも潮だまりを
つくる岩、風の吹き方。小屋の前に植えた樹が育っていく歓び。ここがわたしの見つけた
陸地に間違いないのだとしたら、ここから脱出することは自分の土地を捨てることになり
はしないか。わたしが自分の土地から離れられないのは当然の魔法ではないか。
 なにしろ七年だ。この七年の間に、背後に散らばる島ではわたしの数少ない知り合いの、
大事な人たちがわたしとは関りなく時を迎え一人ずつ死に、崖の上に葬られた。何百キロ
と離れた遠くの島々の崖際が、振り返ると小さく見える。わたしの目の中にガラス玉が浮
び、その中に今の遠くの情景が閉じ込められている。波が押しては引いている。海際に積
まれた岩の塔に向かって、波が砕けて散っている。海鳥が飛んでいく。振り返るといつも
それが見える。そしてわたしはここにいる。わたしは自分の島から離れられない。来た方
に戻ることもできず、あちらにも行けない。波の遠くに四つの墓を見て、それでも押し寄
せていくのは波とわたしの心だけ、わたしの体はこの島にある。
 わたしがこの島で朽ち果てたら、石を積んでくれる人は誰もいないとしても、やっぱり
波に臨んで眠りたいと思う。いや、そんなことは考えなくてよい。わたしは明日も舟を出
すのだから。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第158号(1月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
  
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 編集後記・拡張版。雲上のこれまでとこれから。
 ──────────────────────────────────────

遥彼方「あらためましてこんにちは。遥彼方です。
    今年最後の雲上配信ということで、今回は後記をちょっと拡大しまして、言村さ
んと秋山さんと私とで、雲上の一年を振り返ってみたいと思います。よろしくお
願いいたします。」

秋山真琴「よろしくお願いします。」

言村律広「良いお年を。」

遥「言村さん、今はじまったとこ!」

言村律広「あれ、あれ?」

秋山「もー、リッチーはおっちょこちょいだなー」

言村「あ、よろしくお願いします。おやおや。」

遥彼方「さてー。遥は今年、キセンさんから雲上の編集長を託してもらったのですが、結
    局てんやわんやしたまま過ぎてしまった気がします。」

言村「よくやる気になったよねー。すごいよね。」

遥「ねー。高校でたらもっとヒマになるとおもったんですがねー。タスクを消化するのに
  精一杯で、あんまり前に進むことに意識が行かなかったのがなんともふがいない。」

言村「そういや、遥さん編集長になってから、購読者数が増えたんだっけ?」

秋山「増えましたね。今、160人ですね。」

言村「私がやってた頃って、たしか100人くらいだった気がしますね。」

遥「そ、そんなにいてはるのか……。ありがたいことです。
  言村さんには原稿の編集や校正をして頂いたり、前書きと後書きに付き合ってもらっ
たり、しました。どんな感じでしたか?

言村「いやあ、特に何ということもなく。むしろ私は今年就職して生活環境が変わって、
   その中で時間ぎりぎりなことが多くてすみません、ですよ。」

遥「考えてみたら、結構雲上チームの人って、リアルで環境変わってましたですね。
  うちと言村さんと。」

秋山「雲上チームって他に誰がいるんですか?」

遥&言村「秋山さん。」

秋山「あ、自分か。」

遥「秋山さんには……配信登録してもらったり、遥の紙面構成があちこちミスりまくりな
  のをフォローして頂いたりしました。」

秋山「それも最初のうちだけですけれど。ね。……あ、配信登録は毎回、やってますね。」

遥「ね。……作品的にはどうでしょう。何か印象に残ったものとか。」

言村「『怨時空』かなあ。」

秋山「前書と後記ですかね。」

遥「そこ?!」

秋山「いちばんの楽しみですね。」

言村「毎回綱渡りな感じがしてますよ、前書と後記」

遥「ねぇ。」

秋山「あのクォリティを維持するのは、大変でしょうね。」

言村「クオリティあるんだ、あれに。」

秋山「気軽に楽しめますからね。」

言村「今度じゃあ、秋山さんも一緒にやりましょう。」

秋山「はい。是非。」

言村「そのうち10人で前書とかやったらいいと思いますよ。」

秋山「それは逆に読みづらいような。」

言村「それが狙い。」

遥「前書きだけで内容の半分超えますよ。」

秋山「前書特集をすれば解決ですね。」

言村「半分は超えない方がいいですね。……ああ、特集ならOKですね。」

遥「だんだん何のメルマガかわかんなくなってきますね(笑)」

秋山「考えてみれば、雲上は実にフリーダムなメルマガですね。」

遥「あんまり方向性を定めたりせずに(できずに?)来ましたからねえ。」

言村「メガタマゴを食べてみたい。……雲上は、回廊でできないこととかやったら存在価
   値があるんじゃないかなあ、というのがコンセプトなので。たぶん。……ゆるゆる
  ですよね。」

遥「来年はもう少し、そのあたりもはっきりさせたいなあとも思います。もっと突き抜け
  たゆるゆるを目指したい感じです。」

言村「<貫け! おれのゆるゆる!>……電車に乗って出かけないと、マクドナルドのある
   ところに行けないんですよねー。」

遥「そこは敢えてチャリで。」

言村「チャリねえ。たしかに雲上は自転車操業な感じですよねえ。」

遥「余裕なかったですもんねえ。」

言村「まあたぶん、引継ぎしたての頃とか、私はネットから隔絶されていたので分かりま
   せんが、大変だったでしょうね。」

遥「慣れるまではかなり時間がかかりましたね。」

秋山「一度、コツを掴むことができれば、わりと楽にできますよね。基本を抑えた上で、
   遊ぶ余裕が生まれるような。」

遥「ああ、たしかに。来年は遊びたいなあ。ゆるゆるというか、もっと色んなタイプの文
  章を受け入れていけたらいいなあって思っています。」

秋山「どうせやるなら、面白く展開させたいですね。」

言村「縦書きで読めるようにするとか?」

秋山「それは、出落ちですね。」

言村「ずーっとスクロールして読んで、改行きたら、一生懸命上に戻るの。」

遥「ええぇぇぇ。なんというめんどさ。」

秋山「HTML化、とか。」

言村「HTML化かー。リンクとかもっと沢山掲載してもいいかもしれませんね。」

秋山「ユーザにやや負担をかけるので、読者はやや減るかもしれませんが、新規読者が急
   増するかもしれませんね。……そのまえに、編集部の負担が激増しますが。」

言村「ですね。」

遥「……HTML部門作ってぶっさん(注:回廊のHTML版担当)を召還しなくては(笑)」

秋山「リッチーがHTMLをアウトプットするプログラムを組めばいいと思いますよ。遥さん
   が手動で号数や日付を記入すると、勝手に作ってくれるのです。」

言村「最近、真っ当なプログラム書いてないからなあ、忘れがちですよ。」

秋山「真っ当でないプログラムなら書いているのですね。」

言村「ええ、仕事で。まあ仕事のコードの酷さといったら、という話は置いておきますが。」

遥「真っ当でないプログラムを書くお仕事……と言うとなんだか無駄に怪しげに見えます
  ね。」

言村「いえ、用途は真っ当ですよ(笑)」

秋山「まあ、リッチーの言うことですからね。」

言村「まあ、りっちーの言うことですからね。」

遥「ね。……あと遥がこっそり考えているのは、あちこちのWebマガジンを繋いでいけな
  いかなあ、ということです。ゲストを呼んだり、Webマガジンの読書会開いたりして。」

秋山「ほほう。それは面白い試みですね。」

言村「楽しそうですね。」

秋山「Webマガジンだけでなく、創作文芸サークルの方を呼ぶのも面白いかもしれませんね。
   コラボ企画とか。」

遥「皆でわいわいできたらいいですよね。……一年を総括するというよりはこれからの話
  が多めになった感じですが。じゃあ、最後にひとことずつ、来年の抱負とか、まとめ
とか、ボケとかつっこみとか、おねがいします。」

言村「ボケかあ、したことないから難しいなあ。」

秋山「来年、四年間を過ごした大学に別れを告げ、社会人になります。怪奇と幻想に耽溺
   しつつ、真っ当に生きたいと思います。」

言村「来年も真っ当に生きたいと思います。」

遥「インプットに精を出しつつ、雲上を育てつつ、来年こそは真っ当に生きたいと思いま
  す。じゃあ、この辺でおひらきとしますかー。みなさま、来年もよろしくお願いしま
す。」

秋山「よろしくお願いします。」

言村「ここだ! <良いお年を>!」

遥「そこだ!」

言村「ふ、決まった。」

秋山「ははは」

遥「ふふふ。読者の皆様も、よい年末年始をお過ごしください。フリーダムに発展してい
  きますので、今後とも、雲上をよろしくお願いいたします。それでは。」

秋山「また来週〜」

言村「また明日ー。」

遥「言村さんは明日も雲上を出すの?」

言村「毎日雲上汁を出してますよ。」

遥「なんだよ汁ってっ!」



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 次回の配信は1月5日を予定しております。

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 11/5...「六年目の結末」
  11/15...「ただいまママー」
  11/25...「王手!」
  12/5...「海岸の白い貝殻」
  12/15...「がばちょ」


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年12月25日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       言村律広
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