文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_156

2007/12/15

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第156号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/12/15
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第43回
 【3】 連載小説『怨時空』            最終回
  【4】 編集後記


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 【1】 前書
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遥彼方「みなさまこんばんは、遥彼方です。」

言村律広「がばちょ、言村です。」

遥「懐かしい感じのするあいさつですね(笑)」

言村「そうですね。これは短縮形で、フルサイズだと「どん、がばーちょーぉう」とかで
すかね。」


遥「ですね。さて今回は、赤井さんの超短編2作と、怨時空の完結篇、お送りします。」

言村「いずれ劣らぬ傑作ぞろいですね。」

遥「ですです。赤井さんのは、今回は夢ネタをふたつ選んでみました。」

言村「それも、なかなか繋がりありそうな感じがしますね。」

遥「そういえば。たまたまなんですが、そこはかとなく繋がってますね。
「夢電車」は遥いちおしです。」

言村「私は「見た夢」の方が平坦でいいなあ。」

遥「2編とも、それぞれ夢の別の側面に焦点を当てている感じです。お好みの夢をみつけ
てみてください。」

言村「最近夢みてないなあ。」

遥「私は無駄に寝てるので、無駄に見ます。でもあんまり覚えていないのが悲しいかな。」

言村「覚えてないから夢なんじゃん。覚えてたら体験になっちゃうもの。」

遥「そう…かなあ。まだ覚えている小さいころの夢とか、ありますよ。もっとも古い記憶
だと、夢かうつつか判断がつかない部分もありますけれど。」

言村「うつつでしょう、きっと(笑)」

遥「えー(笑) ……さて、次に『怨時空』ですが、とうとう完結です!」

言村「完結おめでとうございます!」

遥「しかし、また最初から読み返したくなること必至のラストです。」

言村「たしかに、そうですね。こういうことだったのか! ってなりますね。」

遥「あらためて。おっもしろいですよー。

言村「おっもしろいですよー。」

遥「では、「雲上」第156号、ごゆっくりお楽しみ下さい。」

言村「また後記にて!」


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 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第42回
                 著/赤井都
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 ……………………………………………… 見た夢 …………………………………………

 Lagavulinを飲んで帰ってうつらうつら、浅い夢が続いた朝方まで、ずっと電車に揺ら
れていた。何時間も同じ夢を見つづけた気がする。窓ガラスは半分反射してがらんとした
車内を映し、半分外の景色を映していた。私は窓に顔を近づけて、半分の外の景色のほう
を見ていた。色鉛筆で描いたような柔らかいオレンジの三日月が、空のあちこちを漂って
いる。それは、電車が丘のくぼみや丘の上を走るから、だから月も窓枠の中を上ったり下
ったりするのだろう。電車が走っているのは自然の中ではなく大きな町の脇で、青と紫の
色鉛筆が幾重にも重なって、ビルのシルエットをどこまでも続けていた。高いビルや低い
ビルが幾つも組み合わさって、小さな窓が板チョコレートの凸部のように整然と並んでい
る。それでもビルはその全体が斜めだったり、右半分がかすんでいたり、一本ずつ個性の
異なる木のように集合していた。それでも総じて町は生き物というよりも静かなオブジェ
として傍らにあり、電車は町に入るでもなく離れるでもなく、縁をいつまでも走っていく。
オレンジの細い月が、ビルに隠れたり、ビルから現れたりする。そのうち月が二つになっ
た。窓ガラスの反射が、そう見せるのかもしれない。どちらが本当の月なのか、両方とも
本当の月なのか、ここは月が増殖していく世界なのか、わからないままに私は窓に面した
座席で、ずっと電車に揺られていく。二つの月は、近づいたり離れたり、上ったり下った
りして、夕暮れの薄闇は濃くも薄くもならず、いつまでも電車は走っていく、それだけの
夢が、何時間も続いた。

 ……………………………………………… 夢電車 …………………………………………

 夢の国から帰らなくちゃ。もう夕焼け、ずいぶん遊んだ。くるりと振り返ると駅の階段。
駆け上がろうとしたところに、上のほうから人が降りてきた。
 あ。T中先生。
 いつものグレイのスーツのすそを、ひざの動きではねあげるようにして、とんとんと階
段の真中を降りてきた。
「T中先生」
 呼んだのは私ではない。太い柱の向こうから聞き覚えのある声。柱と姿が重なっていて
呼んだ人は見えない、でも声が誰のものか判ったから柱を透かして見えた。T橋先生だ。
もう何年ぶりだろう姿をはっきり見た。
 思い出せなかったし思い出さないようにしていた。
 T中先生もT橋先生も亡くなったと人づてに聞いた。もう既に何年も前に。
 二人とも互いに仲がよかった。だから駅前で待ち合わせて、二人で夜の街へ繰り出すん
だ、ああいいなあ。
 でももう日が暮れる、太陽の端がビルの陰に落ちる。早く帰らなくちゃ。
 二人が街に出るのと入れ替わりに、私は階段を駆け上がって、電車に乗った。
 そうして帰ってきた、今ここに。
 ぱちんと目覚めて思った。
 二人で呑みに行けるなんていいなあ。私は二人の生徒だった、私がおとなになった今で
も別世界の住人だ。私はここにいて、二人は夢の国で呑んでいる。それでも、T中先生と
T橋先生が教えてくれた古文によると、夢に現れるのは、私がその人のことを思っている
のではなく、その人が私のことを思っている証なのだから、呑みながらでもどういう形で
もいい、見ていてくれるのだと受け取った。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第157号(12月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
  
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 【3】 連載小説『怨時空』           最終回
                  著/宮本淳世
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 …………………………………………… 第六章 ……………………………………………

 城島は恐怖で失禁してしまった。涙と洟で濡れた唇を動かした。
「ここはどこなんだ」
「ここは、私が死んだ場所だ。あのホテルはとうに取り壊され、今は別のホテルが建ち、
ここはその壁の中、地上1メートルの所だ」
「地上1メートルだって」
「そうだ、空に生じた歪み、塵ほどの大きさもない、亜空間だ。現世と来世のちょうど境
目に出来た私の城だ。境目にはあやふやな領域がある。私の憎悪と復讐心がその領域の空
を歪ませて、この世界を作った」
「何を言っているんだ。さっぱり分からない。私はこの世の人間だ、こんな訳の分からぬ
世界には用はない。さあ、帰してくれ。お願いだ、元の世界に俺を戻してくれ。頼む」
「いいや、お前はこの世界の住人だ。私とお前、そしてここで私の胴体を形作っている篠
田。この世界には、この3人しかいない」
「馬鹿な、そんな馬鹿な、俺は40年も生きてきた。それがすべて幻とでもいうのか。こ
の目の前にある俺のこの手も幻とでも言うのか」
「なにー、お前の手だって、手がどうした」
目の前にかざした手が、指先から砂が零れように崩れていった。
「ぎゃー」
世界が崩れてゆく。城島が40年生きてきた世界が一瞬にして崩壊したのだ。城島は気が
狂ったと思った。目を閉じ、ひくひくとと震えながら狂気が去るのを待った。こんな現実
などありあえない。悪い夢だ、幻覚をみているのだ。
 十分に落ち着いたつもりで、恐る恐る目を開けた。目の前には自分の手が見える。ほ
っとして視線を上げて、再び城島は悲鳴をあげた。まだ少女が憎悪を剥き出しにして睨ん
でいたからだ。絶望とともに城島が叫んだ。
「俺の人生は何だったんだ。40年の俺の人生は幻で、あんたの復讐のために、この瞬間
のためにだけあったとでも言うのか」
「お前の人生なんて私が吹き込んだ記憶に過ぎない。今回、お前の人生の始まりは、あの
時効成立の時だ。あの時計が零時をさした瞬間から始まったに過ぎない」
「それじゃあ、この会社の連中も存在しないのか。志村もデザイナーの福田も幻なのか。」
「そうだ、お前の記憶を借りて、お前の心に映し出した幻だ」
「泉美も、香子もそうなのか」
突然、少女の顔が目まぐるしく動き、成長していった。動きが止まって、女が城島に微笑
んだ。城島は悲鳴をあげた。香子だ。香子もあの少女が歳を重ねた女だったのだ。
 またしても顔が動き、徐々に太り出した、ふくよかな顔になってゆく。少しづつ印象
が違ってきた。そして止まった。銀座のバーで出会った頃の泉美だ。それを見て、城島は
一際大きな声をだして泣きだした。
 顔は急激に太っていった。その変化は城島も知っていた。一緒に暮らしていたからだ。
突然、顔がぐしゃっと潰れた。城島は正視できずに、顔を両手で覆った。そして迷子にな
った子供が母親を捜して泣くように、しゃくりあげながら母を呼んだ。
「お母さん、お母さん。助けて、助けて、お母さん。こんなの現実じゃあない」
「城島、見ろ、私を見るんだ。現実を見せてやる」
見ると、泉美の顔が急激に動いて痩せてゆく。皺が増えて、最後には城島の母親になった。
我を忘れて叫んだ。
「お母さん、助けて、ここから連れ出して、頼む」
城島の一縷の望みは、裏切られた。母親の口からあのしわがれた声が響いたのだ。
「私はお前の母親ではない。本当の母親の記憶は消してやった。お前がこの世で唯一愛し
た女だったからな」
こう言うとけたたましく笑い続けた。
 城島は体中の力が抜けた。もはやこの現実を受け入れざるを得ない。ハンカチを取り出
し涙と洟を拭い、心を静めた。あのしわがれ声の主に交渉するしかないのかもしれないと
覚悟を決めた。城島は震えながら聞いた。
「本当の私の人生はどうなってしまったんですか」
「お前は、6年前に死んだ。本来であればあの世に戻って次ぎの出番を待っていればよか
った。だが、私がそれを阻止した。篠田も同じだ。篠田はもう少しで自分の創った地獄か
ら抜け出す寸前だった。それを私が掻っさらった。私の創った地獄に引き込んだ」
「私はどんな人生を送ったのです」
「社会的に成功し、老後は孫達に慕われ、好々爺を演じきった。幸せな一生だった。葬式
の時は、みんな泣いていた。死して後、そんなお前を待っていたのが、この地獄だったと
は、誰一人想像だにしなかっただろう」
城島は糸口を探していた。何とかこの世界から逃げ出さなければ。
「ところで、さっきから言っている、空って何です。」
「全てを包み込み、全てを生じさせている本源だ。宇宙そのものだ。私はその空の一部を
我が世界に変えた。死んでも死に切れなかったからだ。お前たち二人がのうのうと生きて
行くことをどうしても我慢がならなかったからだ」
城島は、やはりという思いを抱いた。やはり、少女の怒りや恨みを解消するしかないのだ。
そうとなれば話は早い。
「お嬢さん、あれは事故だったんです。それに私は貴方に手をかけていません。あの時、
貴方の首を絞めた篠田なんです。私はただ口を塞いでいただけです。もしそれで貴方の気
が済むのであれば、謝ります。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って城島は土下座した。大きな溜息が聞こえた。その溜息の意味を探ろうと視線を
上げた。城島はその光景を見て、恐怖に打ち震え悲鳴を上げた。
 5人の女達が城島を睨んでいる。詩織、香織、香子、泉美、そして母親である。城島が
心から愛した女達だった。全員が口を揃えて言い放った。
「お前は、まだこの世界から出られない。今一つ試練が残っている。私が味わった死の恐
怖が残されている」
 母親が大股で近付き城島の左肩つかむと、窓辺まで引きずっていった。城島は必死で抵
抗を試みたが、その力はこの世のものではない。城島の右手つかみレバーを握らせ、窓の
ガラス戸を開けさせた。
 詩織は机に駆け上りぴょんと飛んで城島の首にしがみついた。香織は城島の右足を持ち
上げ、香子と泉美が尻を押し上げた。城島は一瞬の出来事にあっけにとられた。首が窓の
外に出た。15階から見下して、恐怖に身の毛が弥立った。
 首にしがみ付いていた詩織が両手に力を込めて首を後に向けた。城島は篠田に向かって
涙ながらに助けを求めたのだが声はでない。篠田が呆然と見詰めている。秘書が叫んだ。
「どうなさったのです、部長。止めて下さい。……」
必死で握っていた窓のレバーを香子が指の一本一本剥がしてゆく。レバーから手が離れた。
城島は奈落の底を見た。女達が城島の体をビルの外に放り出したのだ。地面に向って落ち
てゆく。悲痛な叫びも、何かをつかもうとする努力も空しく、城島は奈落の底に落ちてい
った。
へたりこむ秘書に向って篠田が言った。
「申し訳ないが、私はこれでお暇します。あんたも見ていただろう。俺は何もしていない。
あいつが勝手に飛び降りたんだ。俺はこの事件とは何も関わりはない」
秘書は、顔面蒼白でただ頷いていた。篠田はその場から必死で逃れた。その後姿を見送り
ながら、秘書がにやりとして呟いた。あのしわがれた声だ。
「今度は、また、お前の番だ、篠田」
秘書は深いため息を吐いた。そして再び呟く。
「しかし、お前達二人は懲りない奴らだ。追い詰められれば常に犯罪を犯す。それさえ思
い留まれば、私の地獄から抜け出し、あの世に行けるというのに……」

  
   ……………………………………………… 了 ………………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
  
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 【4】 編集後記
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遥「ドン・ガバチョいいですよね。」

言村「あの、いかにも政治家らしい、口だけな感じとかがね。」

遥「ちっちゃいころ大好きでした。ひょうたん島。」

言村「あの島、どこまで流れていったんでしょうねえ。」

遥「ねぇ。」

言村「というわけで、今回のテーマは「がばちょ」です。別にドン・ガバチョに限定しま
   せんよ(笑)」

遥「たとえば「こちらが当社の新製品"がばちょ"になります」とか。何に使うんだ。」

言村「「そうですが、ば、ちょっと違うかもしれません」とかね。少し鼻が詰まってる感
   じで。」
遥「冬ですし。」

言村「洟垂れ小僧ですし。」

遥「拭こうよ。」

言村「だめだよ、あいでんててーなんだから(笑)……そういえば『回廊』も14号ですか。
   今日あたり?」
  
遥「ですね!ちょうど今日です。」

言村「遥さんも書いてますよね、もちろん。」

遥「久々に書いたんで、勘が鈍りまくりで、わりと大変でした。でも読んでいただけたら
  幸せです。……個人的に今回は『歓喜の魔王』が派手でいい感じだったかなあ。」

言村「私は「積読にいたる病」が載ってるかが気になってます。あまり『回廊』のこと最
   近は把握してないので、どうなのか、いち読者として楽しみですね。」

遥「雲上を読まれた方は、ぜひ、『回廊』もよろしくお願いします。」

言村「まあ『雲上』でプレビュー編やらなくなって久しいな、とか思ったのでした。」

遥「15号は復活しましょうか。インタビューとか。」

言村「めんど、いやなに。そうですね、それもいいかもしれませんね。」

遥「では、このへんで。また次号でお会いしましょうー。」

言村「お会いしまっしょおうっ!」

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*編集部
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 次回の配信は12月25日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… テーマ ………………………………………
  
  10/15...「結婚しました」
  10/25...「真夜中の仮想パレードへようこそ」
 11/5...「六年目の結末」
  11/15...「ただいまママー」
  11/25...「王手!」
  12/5...「海岸の白い貝殻」
  12/15...「がばちょ」


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年12月15日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
        言村律広
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創刊日:2003-11-08  
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