文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_153

2007/11/15

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第153号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/11/15
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第40回
 【3】 連載小説『怨時空』            第10回
  【4】 編集後記


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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遥彼方「みなさん、まいどこんばんは、遥彼方です。」

言村律広「ただいまママー、言村律広です。」

遥「言村さんはさっき遠足から帰ってきたばっかりです。」

言村「会社はとても精神が遠くへ行ってしまう遠足です。」

遥「身体は会議室にいても、夢は野山を駆け巡ります。」

言村「お米を研ぎに行ったりね。お腹すいたりして。」

遥「米とぐの?! …まあ、今回の赤井都さんの作品は、お米を研ぐ音が印象的なのです
  けれども。」

言村「強引に繋げてしのいだことが、今までの『雲上』で何度あったことか。
   それはともかく、赤井さんさすがですよね。」

遥「明け方三時の暗い台所に響く米とぎの音。強烈な印象ですよね。米洗い婆。」

言村「一度は見てみたい気がしますね。」

遥「その正体が「幽霊」とか「守り神」とか、そういうふうに明確に規定されていないと
  ころが好きです。」

言村「私は、ぐるっと巡って「また米を買う」ときているところが、幻想から経済までと
   いう感じがして、おおっと思いました。」

遥「経済ですね! 日常の神聖さというか、そんな感じがします。」

言村「そうですよね。それに想像力の自由な飛翔っぷりが凄いですね。」

遥「ねえ。こっちの想像力まで刺激します。理想的な物語。」

言村「「怨時空」もまた想像力を刺激する回ですね、今回。」

遥「でしょでしょ? やばいですよ。事件は一息ついたところなのに、不穏さはピークで
  す。」

言村「これからどうなるんだ、と考えずにはいられませんね。」

遥「ね。この、ベッドに横たわる主人公をドアの隙間から見ている家族の…目!」

言村「ぞくぞくしすぎですよ!」

遥「果たしてどのような破局が待ち受けているのか。先の展開が気になって、どきどきす
  ること請け合いです。」

言村「もちろん我々は先を知っていますが、みなさんには内緒です:-)」

遥「ではでは、雲上153号、お楽しみください!」

言村「くださーい!」


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第40回
                 著/赤井都
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 …………………………… 水音とほくちかくおのれを歩ます ……………………………

 居間に皆が集まってにぎやかだ。夜遅くなっても話はいっそう盛り上がる。
 水を飲みたくなり、一人で暗い台所に入った。
 ――シャッシャクシャ
 誰がいる?
 ――シャッシャク
 近づくと、丸い背のまま振り向いた。ガラス玉の透明さのある目が薄明にちらりと光る。
米を洗っている祖母だった。
 祖母はついとまた背を向けた。明日のごはん、炊いとかなあかんやん。そう云われたよ
うで、その目から見える自分たちは、遊びすぎているように思えた。悄然と居間に引き返
す途中で、祖母はとっくに亡くなっていたことに気づいた。それから、振り向いた顔が、
祖母とはたいして似ていなかったことにも気づいた。

   ---

 ……明け方三時の台所には、米洗い婆が出ているかもしれない。じゃまをすると睨まれ
るから、そうっとしておくのがいい。婆が炊いてくれた米は、誰にも食べられない。婆は
いないから婆が洗った米もどこにもない。けれど婆がその家のために米を磨いでくれると、
きっといいことがある、とわたしは思う。家族の健康だとか、金運の向上だとか。婆が曲
がった腰でなお、家族のために陰で働いてくれているのだから、それはいいことがあるに
違いない。

   ---

 ……それはきっと、その家をずっと見守っている女たちだ。女たちが米を洗う。家族の
ために、毎日毎晩、米の粒をきゅしきゅし磨く。冷たい水を流して、きゅっきゅと洗う。
それが家族の力になり、家庭に持ち帰る金になる。それでまた米を買う。きゅっきゅと磨
く。
 そうした女たちのきもちと残像が、明け方三時の台所には、ふと現れるのかもしれない。
窓からの白っぽい薄明と、料理器具のつくる複雑な影が絡み合って、何度も取られた同じ
姿勢が、同じ場所に現れるのかもしれない。
 水が流れる。米の上を水が流れる。
 白い濁りが水中の糸となって立ち上がり、浮んで、流される。水を換えて何度も米は洗
われる。水音がする。シャボシャボ、シャボシャボ、いつまでも水音がする。
 わたしたちは歩いていく。シャッシャク、シャボシャボ、音を連れて毎日を歩いていく。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第154号(11月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
  
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 【3】 連載小説『怨時空』      第10回
                  著/宮本淳世
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 ……………………………………………… 第五章 …………………………………………


 その夜、城島はベッドに入ると、記憶に残る矢上のあの時の顔を思い浮かべた。薄い
唇の動きまで鮮明に覚えている。だが、鮮明な割りに実感が伴わないのだが、確かな記憶
として脳裏にこびりついている。どう考えても首になったことは事実としか思えない。
 しかし、何かが違う。そんな気がしてならなかった。それに不思議なことがもうひと
つある。それは眠気がないのである。いつもなら、食後すぐに睡魔が襲ってきた。今日は
食事を吐いたから、そうならないのかもしれない。
 しかし、待てよと思った。もし吐かなければ、香子の言った泉美を殺したという記憶
も矢上の記憶同様鮮明に思い出したのではないのか。その時、突然、泉美の言っていた言
葉が甦った。「翔ちゃんが、言っていたの。寝ている時に、奥さんが耳元で囁いているよ
うな気がするって」
 まして、「自殺するだ」という台詞は、担当刑事が城島に耳打ちし、自殺の線が濃厚だ
と密かに教えてくれた。まして、この件はマスコミには報道されなかった。しかし、香子
がその台詞を知っていたということは、屋上に駆け上がってきた泉美が「自殺するだって、
ふざけんじゃない」と叫んだのを直接聞いたのだ。つまり香子が泉美を殺したのだ。
 ふと、廊下が軋む音が聞こえた。電気スタンドの灯りを消して、布団をかぶった。布
団に少し隙間を開け、ドアの方を窺がった。ノブが回され、ドアが僅かに開かれた。窓か
ら射し込む月明かりが詩織の目を赤く照らし出した。外でしわがれた老婆のような声がす
る。
「寝ているかい」
詩織は大きく頷いた。詩織の頭越しに香織と香子の赤い目がドアの隙間から覗いた。城島
は恐怖に打ち震えながらも勇気を振り絞り、大きな咳をした。ドアはすっと閉められた。
城島は一睡もしないで朝を待った。そして夜が明けると逃げるように家を出たのである。

 高円寺の母親の元に身を寄せて、体の回復を待った。体調が戻るのに1週間かかった。
その間、母親は何があったのかしつこく尋ねたが、城島は固く口を閉ざしていた。眠気と
それに続く悪夢から開放されるのをひたすら待つしかなかったのだ。
 体調が整うと、会社に恐る恐る顔を出した。すると矢上が飛んで来た。
「部長、どうなさったんです。お休みは確か今週一杯でしょう。仕事のことでしたら、電
話して頂ければ、私が対応しておきましたのに」
この言葉を聞いて、騙されていたことをはっきりと思い知らされたのだ。結局、城島は首
になどなっていなかったし、山口の企画を大成功させ、二ヶ月の特別休暇をとっていたの
だ。その二ヶ月の間にあの悪夢がもたらされたことになる。
 秘書が応接テーブルの上にコーヒーを置いて出て行くと、城島は椅子から立ち上がり、
ソファに移ると、どっかりと腰を下ろした。ふーと長い息を吐くとともに胸を撫で下ろし
た。そして、おもむろにポケットから携帯を取り出し、電話帳のそのナンバーを押した。
 城島は、探偵の近藤に事情を話し、その後の調査に当らせたのである。数日後、近藤
から連絡が入り、例の喫茶店で待っていると言う。すぐに駆け付けると、いつもの席でに
やにやと笑いながら待っていた。城島が腰をおろすと、挨拶抜きで唐突に話し始めた。
「城島さん、命拾いしましたね。やはり、城島さんには5件、合計3億5千万円の保険金
か掛けられ得いましたよ。まったくあの女も大した玉だ」
「それと、警察の方はどうです。私が妻を殺害したと疑っているのは本当なのですか?」
「いや、その点は全く心配ありません。あそこの署長は知り合いだから、すぐに調べてく
れました。あれは、自殺以外ありえないという結論のままです。それより、あの家の所有
権が移転されてます。あの女、ケツに火が点いて、逃げ出したってわけです」
「保険会社の方はどうなっています。もし、保険がそのままであれば、私は命を狙われる
可能性がある」
「ええ、そっちの方もご心配ありません。保険会社にも話を通してあります。2度も保険
金を毟り取られたわけですから、保険会社の方も必死で彼女の行方を探していますよ」
これを聞いて、城島の心にようやく安堵の思いが広がり一挙に肩から力が抜けた。
 そして飯島のたどり着いた結論は、泉美を殺したのは香子だということだ。香子は城
島が狛江に泊まり寝入るのを見届け、後楽園のマンションに向かった。そして泉美に電話
した。城島がマンションの屋上から飛び降り自殺すると電話してきた、何とかして欲しい、
と。そして屋上に現れた泉美を、待ち構えていた京子が突き落とした。
 城島はそのことを死ぬまで胸にしまっておこうと決めた。泉美から解放されたことは
それで良かった思うし、これ以上香子を追い詰めることはしたくなかったからだ。香子は
二人の子供を養いつつ、また獲物を探しているのだ。自分にはもう関わりはない。

 忌まわしい事件が続いたが、今、すべてに終止符がうたれて、城島は満ち足りた思い
で自室の椅子に腰を掛け、深く長い息を吐いた。香子とのことは少なくとも3年という月
日を楽しんだのだから、十分元はとれている。
 城島は、若い肉体を弄んだ日々の記憶を手繰り寄せようとした。しかし、香子や子供
達の顔が思い浮かぶだけで、個々の記憶は浮かんでこない。浮かんでくるものは、あの悪
夢の時のものばかりである。3年という月日はどこに行ってしまったのか。
 いったい、香子はどんなマジックを使ったのだろうか。確かにあの家に引っ越して4人
の生活が始まった。そして、寝室での睦言や4人での団欒のひと時。その記憶の欠片も
ないということはどういうことなのか。まったくもって不可解というしかない。
 しかし、城嶋は全てを忘れることにした。念願の部長の椅子を射とめ、交際費は使い放
題、女など整理券を配りたくなるほど、向こうから近付いてくる。城島の人生はこれから
が本番となる。そう思うことで、心に残る不安から目をそらすことにしたのである。

  
   …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第155号(12月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
遥「というわけで、今回もそろそろおしまいです。」

言村「おかえりなさい、るーさん。」

遥「ただいまママー?」

言村「というのが、今回の出題テーマです。」

遥「「ただいまママー」の部分ですね。」

言村「ポイントは、ままま、のあたりですね。」

遥「まままー。なんかオペラ歌手の発声練習みたい。ママー、というと、思い出すのはパ
  スタなんですが。このところパスタばっかり食べてますよ。」

言村「三年前まで住んでいた東京都調布市の京王線調布駅の北口出てすぐのところに、す
   ごく気に入っているパスタ屋さんがあります。スープスパというやつかな。スパと
  いっても温泉じゃないですよ。」

遥「おいしいのですか?」

言村「おいしいのですよ。行ってみるといいですよ。」

遥「じゃあ、また東京に行ったら、行ってみます。因みに遥は先週の土日に東京にいまし
  た。文学フリマのため。」

言村「文学フリマ、盛況でしたか?」

遥「大盛況でした。おかげさまで、雲上回廊の新刊『7文字でつながる連作超短編を書こ
  う!』は完売でしたよ。来てくださった方、ありがとうございます。」

言村「7文字って、前の作品の著者名とかでもいいんですか?」

遥「著者名は無かったですねえ。というか、著者名織り込んだらその人登場人物になっち
  ゃうじゃないですか。」

言村「七文字以上の名前というのも珍しいでしょうしね。見かけたらご連絡ください(笑)」

遥「よろしくです。では、今回はこの辺で。」

言村「また次号をお楽しみにー!」

遥「雲上では小説、エッセイ、これまでのテーマに基づいた作品、募集中です。お気軽に
  編集部までお問い合わせくださいね。それでは!」

言村「おかえりママー!」


*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は11月25日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… テーマ ………………………………………
  
  10/15...「結婚しました」
  10/25...「真夜中の仮想パレードへようこそ」
 11/5...「六年目の結末」
  11/15...「ただいまママー」


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年11月15日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
        言村律広
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
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