文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_151

2007/10/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第151号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/10/25
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第38回
 【3】 エッセイ『塑性言論』           第17回
  【4】 編集後記


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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遥彼方「みなさま、こんばんは、遥彼方です。」

言村律広「真夜中の仮想(バーチャル)パレードへようこそ、言村律広です。読者のみな
さま、こんにちは。……あれ、こんばんは、ですか?」

遥「真夜中なんでたぶん「こんばんは」です。雲上は日の出を裏切って地平線を焼きつく
します(またわかりにくいネタを……)」

言村「うん、分かりません。」

遥「まあ、そのうち分かるとおもいます。ほんとは「夕日を裏切って」なんですけどね。
……それはともかく、です。今回の掲載作は赤井都さんの「人を見送りひとりでかへるぬ
かるみ」と、桂たたらさんの「塑性言論」です。」

言村「赤井さんの名作とたたらんの迷作の共演ですね。」

遥「絶妙のバランス、もしくはすごいギャップ。」

言村「後者に一票。しかし、赤井さんの作品、すごいですね。」

遥「すごいですよ。今いろいろ、この読んだ感じをどう表現しようか考えてたのですが、
うまく出てきません。」

言村「うん。確かに難しいですね。すごいことはすごいんですが。」

遥「すごく、読む方の想像をかき立てる物語だと思います。人によって様々に違うことを
考えさせるんじゃないかなあ。」

言村「この短い中に親子三代が全員とてもよく書き込まれているところとか、さすがの表
現力だと思いました。」

遥「そう。無駄がないなあって思います。」

言村「あと、全体を通して地に還るイメージがありますよね。それが生を想像させる気が
します。」

遥「ああ、たしかに。死で終わるんでなくて、輪廻を思わせる展開ですよね。」

言村「地面に根付いている感じがします。そしてひまわり。ですね。」

遥「ひまわりのあざやかなイメージのおかげで、全体的にも非常に締まりがある作品にな
ってると思います。」

言村「そうですね。確かに。」

遥「とにかく、ぜひにぜひに。みなさん、読んでください。」

言村「一作単体で掲載するほど、オススメですよ!」

遥「さて。次はたたらさんの「塑性言論」ですが……」

言村「ですが……」

遥「……ってか、前回の富士山の話はどこへ行っちゃったのでしょ?」

言村「え、続き、気になるんですか?」

遥「え、だって、気になりませんか?」

言村「あれだけ綺麗に前回を終わっておきながら、後半は、というのも忍びないじゃない
ですか。というか、すっかり時期も過ぎてしまいましたしね。あと「塑性言論」のカオス
っぷりに似合わないですよ。だから、途中でぶった切れているのが正しい姿だと思います
(無茶な主張)」

遥「……まあ、というわけで、今回はイメージを具現化する力から、優れた設定について
の話になだれこんでいます。」

言村「担当編集者としては、もっとカオスでもいいですけどね。」

遥「言村さん……ある意味、鬼編集者ですね。ある意味で。」

言村「まあ、鬼のあひると呼ばれる言村ですからね(人間ですよ)。」

遥「鬼であひるで人間なのですか。むつかしいなあ。
……それではこのへんで。雲上151号、おたのしみください。」

言村「お楽しみくださいませー。」

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第38回
                 著/赤井都
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 …………………………… 人を見送りひとりでかへるぬかるみ ……………………………


 ひまわり畠に衛夏は立っている。太陽の側から見れば、全部のひまわりが顔をこちらに
向けている。裏側から見れば、全てが後ろ姿だ。
 ひまわり畠の上空に、白い軌跡が伸びていく。衛夏の隣で同じように空を見上げている
母が呟く。
「棺桶が飛んでいく」
 衛夏の祖母は生きているときから、「飛んでるおばあちゃん」だった。新しい物好きで、
何でも試して、食べ物も服装も、自分の年齢にこだわらずに自由に選んだ。畠いっぱいに
育てていた豆も、遊びに行くたびに新しい品種に変わっていた。保守的な田舎で、そんな
気性では暮らしにくかったと思う。それでも祖母はせいいっぱい祖母らしく生き、やがて
体じゅうを黒色癌に蝕まれて、苦しんで苦しんで死んだ。そうした死に方はその村では平
凡なものだった。どうして苦しまないと死ねないんだろう、と母は嘆いた。祖母は遺言を
残した。ずっと地面に縛り付けられていたから、死んだら体を空に打ち上げてくれと。
 祖母が残した貯蓄に、祖母が耕していた土地をそっくり売り払って足して、大量の燃料
と固い被膜を買う金額にようやく届いた。堅苦しい法律に縛られない国境の向こうで、祖
母のむくろを大空葬にしてもらう。国境付近のひまわり畠で、衛夏と母は打ち上げを見守
った。大地をゆるがす衝撃と共に、こわばった冷たい体は飛び立った。きっと、がくがく
と衝撃で恐ろしげに揺れながら。
「うまく軌道に乗るのかしらね」
 地球を回る軌道にちょうど乗せるには計算が難しい。墜落してしまうことも、逆に宇宙
空間に果てしなく飛び立ってしまうこともあるが、それも了承してもらえるかと担当技師
に聞かれた。祖母はそこまで考えずに遺言したに違いない。地球を去って宇宙の闇に旅立
つことまでは望んでいなかったと衛夏は思ったが、今さら問いただすわけにもいかない。
失敗も承知のうえ、と母は同意書に署名した。
 棺桶は、もしうまく地球をめぐる軌道に乗ったら、ぐるぐると回る。地球の上を、何万
周も回る。それからあるとき、勢いを失って地球の重力に引かれてまた落ちてくる。大気
圏に突入するときに機体は燃えて、中にあった死骸も燃えて、地上からは流れ星として見
えるものになる。それで終わり。落ちてくるのが何年後か、何十年後かはわからない。
「これから、おばあちゃんの棺桶にいつも空から見下ろされているなんて、ぞっとしない
わね。死者の暴力だわ」
 母は憎まれ口をたたく。
「どの流れ星がおばあちゃんなのかが、わからないね」
 全ての流れ星が祖母に見えるかもしれない、と衛夏は思った。太陽の側から見れば、全
部のひまわりが顔をこちらに向けている。裏側から見れば、全てが後ろ姿だ。

---

 ひまわり畠に衛夏は立っている。隣に母はいない。母は川を流れていく。国境の向こう
で焼いて、全てを細かな灰にして、川に流した。このまま海へ流れ出て、やがて雲となり、
空から降り、また川を流れていく無限の循環に入るだろう。空には祖母がいて、今度から
飲む水の全てに母がいる。
 衛夏はこどもを産まなかったから、隣に子は立っていない。やがて衛夏が逝くとき、衛
夏は誰にも見送られないだろう。ひとりきりで苦しんだ後はどこに旅立とう。今、皆が後
ろ姿を見せている。死ぬことは転換だ。衛夏は太陽の側に回る。すると全てのひまわりの
顔がこちらを向く。
 流水葬にはほとんどお金がかからなかった。一人の体を焼くだけの、少しの燃料ですむ
からだ。燃焼技師たちが立ち去ったあとも、衛夏はひとりでゆっくりと母を見送った。や
がて川岸の葦からも、転がった石からも、川向こうの大木からも、どの物からも影がなく
なり、雨が降り始めた。衛夏はひまわり畠の中に身をかがめた。大きな葉が少しは雨滴を
さえぎってくれる。雨脚は強く、乾いた地面はたちまちぬかるみになり、衛夏はその中に
膝をついていた。母の体は濁流に飲まれて海へ走っていることだろう。皆が後ろ姿を向け
ている。ひまわり、こちらを向いて。しかしまだ衛夏は太陽ではない。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第152号(11月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
  
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 エッセイ『塑性言論』      第17回
                  著/桂たたら
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 ………………………………………… そせいげんろん ……………………………………

重要なのはイメージなのだ。

 強く強く、鮮やかに。
 触れられるくらいにはっきりと。
 色彩から光沢までを脳裡に描く。
 空間を認識して物理的矛盾を排斥する。

 そのイメージが明確であればあるほど、
 それは本人にとって再現するに容易くなるのだ。

 イメージを具現する力。
 それは限られた人間にだけ備わった特殊な力。
 固有で唯一無二の個人の空想を形にする能力は、
 しかし誰でも有しているわけではない。
 ――具現しよう。
 そう考えられる人にだけ与えられる資質なのである。

 自信を持とう。
 何かを具現化する意志を持ち、
 その術を持ち合わせているだけで、
 それは一つの才能なのだ。

 もう一度言おう。

 自信を持とう。

 秘められた想いを現すための行動は、
 それ自体が、既に才能なのだ――

 *

 ペンタブ(借り物)を握る。
 強いイメージは描いてある。空間把握はお手の物、色彩から構図の構想もばっちりだ。
脳内での映像の構築は、既に小説を書いていた頃に微量ながら培った能力だ。色々とやっ
ていると色々な場面で応用が利くものである。ストーリーだって、序盤でリーダビリティ
を発生させる方法や、無難に着地させてなんとなくまとまったように見える手法は(手癖
だが)少しだけれどモノにした。キャラが萌える状況を作る作業も、ある程度システム化
してあるのだ。
 そう、
 俺にやれんことはない!
 たとえそれが漫画だろうとも!
 うおりゃあ! と気合の掛け声。
 ペンタブが走る!
 sai(お絵かきアプリ)の上でポインタが駆ける!
 ――しかし。
 なぜだか、私が頭で描いた線の通りにペンが走らない。
 何度ペンを走らせようともぐにゃぐにゃとした線しか引けなかった(そう、まっすぐの
線が引けないのだ)。
 少し考え、なるほど当然のことだと思い当たる。
 脳がイメージしたところで、腕以下指先が、脳の出す指令に対応しきれないのだ。どう
しても指先と脳の間で齟齬が生じることになる。
 頭の中に文章が思い浮かんだところで、キーボードをブラインドタッチできなければ文
章の鮮度が失われていくのと同じことなのだろう。
 漫画の神様は、円だってフリーハンドで綺麗に描けたのだと言う。
 なるほど覚悟していたとはいえ、道は長いようである。
 まずはまっすぐな線が描けるようにならないといけないようだ。

 *

 これで終わってしまってはあんまりなので、
 最後にちょっとだけいつものお話を致しましょう。

『優れた設定』について。
 まあ、例を挙げれば、スタンドとか念能力とか、ミッド式とかベルカ式とか、そういう
のです。世界観設定、とも言い換えられますね。キャラクタの設定もこれに含まれます。
 これの判断基準は非常に単純で、それは

 読んだ人が再利用したくなるか否か

 というものです。再利用は二次創作とも互換可能ですね。
 二次創作が多いものほど設定が優れていることが多いので、参考になることが多いので
  はないかと思われます。
 何か設定を思いついたら、それを利用して誰かが二次創作できるか否かを考えてみるの
が良いかも知れませんね。それがイメージできれば優れている可能性があります。
 さらに、その思いついた設定を利用して、より魅力的に見せる技術(小手先!)にも、
少し触れておきます。
 その設定(特殊能力などが例として分かりやすいかと)を、端から端まで100%有効
活用しないこと。
 作者ですからその能力の有効活用方法を最も理解しているのは当たり前です。
 が、そこをぐっと我慢して、全貌を示さないのがコツです。
 その能力が強力なものであるほど、その手法によって能力の魅力が増すことになります。
さらに、設定の使われていない部分に、受け手が妄想を抱く余地が生まれるのです。
 例えばハンターハンターのクラピカは能力をまだいくつか隠しているし、パクノダは未
使用の能力を抱えて死んでいきました。団長の能力は制限付きです(制限もここに含まれ
ます)。ディオは完全に停止時間を無駄に(正に無駄に)過ごしていますし、承太郎の時
間停止は六部ではほとんど役に立っていません。三期では、八神はやてのレアスキル蒐集
能力は使われませんでしたし(死に設定説)、隊長クラスにはリミッタがかけられていま
した。そして作画が崩れていました(関係ない)。
 厚顔にも拙著で例を挙げるならば、まつりの時間におけるオーバーランがそれに当たり
ます。いくつかある能力の制限と、使用者の身体的な貧弱さは、そのためにありました。

 ちょっと、とか言いながら長くなってしまいました、申し訳ありません。

 ではごきげんよう。
  
   …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第154号(11月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!
  
◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
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遥「さて。今回も無事に、後書きまでやってきました。」

言村「今回の地雷は「真夜中の仮想(バーチャル)パレードへようこそ」でした。地雷と
いうか、出題テーマというか。

遥「もともとは仮装パレードのはずだったのが、ふとしたきっかけから仮想パレードに進
化しました。」

言村「まあ、誤変換が原因です。」

遥「ええ。」

言村「ちなみに仮装パレードをするのは私ではなく、編集長です。」

遥「はい。学祭で兎の被り物被って大学周辺練り歩きます。」

言村「みんなで参列しに行きましょう。」

遥「葬列ですか(笑」

言村「そうれつ。ところで(流す)、我々も出題テーマで何か書いたら良い気がしてきま
した。今ふと。」

遥「(流された)、うん、良いかもしれません。」

言村「まあ時間を見つけてみましょう。」

遥「ですね。リレーとかにしますか。」

言村「うわ、またハードルをあげちゃって。良いですね、やりましょうリレー。」

遥「というわけで、近いうちに突発的に何か起こるかもしれません。」

言村「何かってなんだろう、雲上廃刊とか?」

遥「えんぎでもないこといわなーい」

言村「ごめんなさーい」

遥「あ、あと前書きの地平線云々ですが、あれはSound Horisonというアーティストのあ
る曲の歌詞です。「楽園パレードへようこそ」ってせりふがその曲に出てくるんで、思い
出しただけです。」

言村「なるほどー。でも知らないの、Sound Horisonの曲は私。」

遥「面白い人には面白いですが、面白くない人にはあんまり面白くないバンドかもです。
遥は夏にライブに行きました。たのしうございました。」

言村「そういえば、旧式ラジオって復活したんでしたっけ?」

遥「まだです。・・・今一寸迷い中です。いろいろと。」

言村「なるほど。まあ詳細は聞かないでおきましょう(にんまり)」

遥「はい(汗) まあ、最近時間なく、音楽から離れ気味なんでどうしよう、というだけ
なのですがね。」

言村「まあそのうち輪廻しますよ(よく分からん)」

遥「ぐるぐるぐる。まあ、ぼちぼち考えます。
  では、このへんで。また次回、お会いしましょう。雲上では引き続き小説、エッセイ、
真夜中の仮想パレード小説、などなど募集中です。編集部までお気軽にお問い合わせくだ
さい。」

言村「結婚しました小説でもOKですよ!
   あと、普通に結婚しました報告でもOKですよ!」
  
遥「めっちゃ祝福しますよ!」

言村「編集部一同で大祝福しますよ!」

遥「それでは、さようなら。」

言村「また次回ー。」

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
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 次回の配信は11月5日を予定しております。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年10月25日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
 言村律広
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   ……………………………………… テーマ ………………………………………
  
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  10/25...「真夜中の仮想パレードへようこそ」

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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
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