文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_148

2007/09/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第148号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/9/25
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第35回
 【3】 コラム「塑性言論」            第16回
 【4】 編集後記


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────
 
 全集の第1集だけ本屋に見当たらず、しょうがないので第2集を買ってきました。

                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第35回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 花の散る、秋の夢。

 …………………………………………… かがみ ……………………………………………

 道ばたに、かがみが、すてられていました。
 すてられたのではなくて、だれかがおとしてしまったのかもしれません。
 かがみは、空をうつしていました。
 秋になって、かがみのまわりに、細いくきがのびはじめました。くきからは、あみめの
ようなはっぱがひろがって、空をおおっていきました。かがみは、みどりのはっぱをうつ
しました。
 やがて、くきの先に、まるいつぼみができました。
 いつのまにか、つぼみは大きくなり、ふくらんで、ゆるんで、花がひらきました。
 赤や、ピンクや、白の、コスモスの花は、風にゆれます。
 かがみは、ちらちらうごく色をうつしました。
 風がしだいにつめたくなって、あさばんには、しもがおりるようになりました。
 コスモスの花びらは、はらはらとちっていきました。
 かがみの上に、花びらがのりました。すぐに、風にふきはらわれてどこかに消えていき
ました。
 コスモスの、くきも、はも、茶色くちぢんで、土にかがみこんでいきます。
 かがみは、また、空をうつしました。
 

 ……………………………………… 確かな贈り物 …………………………………………

 私の庭に、足音が聞こえる。
 夜陰にまぎれて、花を踏みしだく音がする。私の庭に、死が来ている。
 死は花を足の下に折り、私の眠る窓の向こうに立った。
 私は眠りから覚めず、死に見つめられている。逃れられずに横たわった体のままに、星
が移っていくのを待った。やがて死は立ち去り、星は白い闇に呑まれて輝きをなくした。
壮大な絵が天に描かれ、曙は色の力を増していく。
 私は目覚め、鳥の声を聞いた。
 乱れた花の香りを嗅いだ。
 全世界が、寝台から降りた足元に打ち寄せ、また退いていった。
 窓を開けよう。
 死はその影すら見えず、草の露は乾きかけている。
 山の上で空は澄んでいき、早くも雲をうつろわせる。
 物事はうつろう。昨日は固かった蕾が開いている。昨日は美しかった花が散っている。
 私にも遠からず順番は回ってくる。
 心配することは何もない。このうつろう世の中で、信じられる唯一のことは、それがい
つか私の上で印を結ぶということ。解放はいつかある、他の去っていった人びとと変わり
なく。

 …………………………………………… 記憶 ………………………………………………

海岸に何人もで行って、波打ち際にいた。なんだか困ったことがもちあがった。急いで帰
った。
 場面が変わって、私は山道をトラックで走っている。荷台には野菜が満載されている。
市へ売りに行く途中だ。道の曲がり角の内側が、耕されて小さな畠になっていたりする、
限られた土地を道や畠に分けた、細い道を下っていく。しかし、何か困ったものに追いか
けられている。
 場面が変わって、私は市に着いている。両側の姉妹と一緒にテントをくぐって、長いベ
ンチの真中に腰掛けた。私たちの前には二人の男の人がいる。私が抱えている困った問題
を、この機会に相談しよう、と私たちは思っている。正面に座っている若いほうが言う、
「不思議だった話をしてください」。
 私は話す。海岸のこと、山道のこと。ずっと、悪魔に追いかけられていたのだと話しな
がら気づいた。私が話し始めたとたん、横に座っていた禿頭のほうが記録をつけ始めた。
私は、本当にこの人たちに話してよかったのか、不安になった。話すだけで厄介なことは
脹らむと知っているから。
 不安の中で目が覚めて、布団と天井だけの世界に私は転生していた。もう野菜を運ぶト
ラックも市もない。そのときになって、私をなぜ悪魔たちが追いかけていたのか、ようや
くわかった。私の魂はきれいで、きれいな魂を悪魔は欲しい。私の魂が悪いものだから仲
間を呼ぶのではなく、悪魔から遠いものだから悪魔を誘う。
 なんだ、そんなことはもうとうに物語に書いてあった。ケルトのお話に書いてあった。
自分の魂もそうだ、とやっと気づくなんて、遅い。
 けれど、その気づきこそが、話を聞いた二人の天使からの贈り物だと思った。あの二人
は本当に天使だったのだろうか。悪魔が来る家ではなく、天使が来る家をつくればいい。
 それから、時計を見て、この無駄な朝寝坊の、長すぎる睡眠とそこからくる罪悪感がこ
の夢を見せたのかと思った。朝は早く起きれば無駄な夢を見る隙はない。しかし夢の中で
生きたあの人生は、何だったのだろう。そうして生きていた人物は、私が目覚めれば全部
消えてしまったのだろうか。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第149号(10月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 コラム「塑性言論」            第16回
                著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 桂たたら、標高3000メートルに挑む!?
 
 …………………………………… そせいげんろん ………………………………………

 八月某日のことである。
 私は高校の頃の同期と総勢六名で日本一の標高を踏破した。

 文字通り、山あり谷ありの険しい道のりであった。

 これは日本一を目指して戦う男たちの、愛と勇気の物語である。
(CV:麦人)

 *

(いつもならここで話が逸れるけれど今回はもうちょっとだけ続くんじゃ)

 *

 八月上旬 ファミレスにて

 その日、私たちはサイゼリアの一角を陣取っていた。
「さて、ではそろそろ今年も、いつ富士山に登るかを決めなくてはならない時期に入った
わけだが」
 と、私が口火を切った。私については説明は不要だろうが、ここで一応説明を補ってお
くと、最近ついに小説を読まなくなり、萌えアニメと萌え漫画をむさぼるようになった生
粋のロリコンこと桂である。ちなみに最近は小説に飽きて漫画を描いている。
「行きたくありません」「行きたくありません」「行きたくありません」
 六人中三人が反対の声を上げた。まあ当然であろう、既に登山は五回目、しかも彼らは
高山病にかかるメンツである。
 こんな反対運動は想定内なので聞くだけ無駄なのだった。一度など、一人が半泣きにな
るくらいまでしつこく詰め寄ったことがあって、それが身にしみているのか、抵抗運動は
「いつ会社休み?」という質問のみで鎮圧することができた。
「高山病が」一人が弱弱しく告げた。
「うるせえ。お盆で良いよね」「……はい」
 ミーティング終了。

 *

 私の居住地は関東なので、富士山は東側の登り口が都合が良い。河口湖口、という登り
口である。新宿駅からバスでおよそ三時間ほど。そして自宅から新宿までが一時間強であ
る。富士山というのは意外と近い。
 新宿でバスに乗車する直前は気温が35度を超える猛暑だったのに対して、富士山五合目
に達して降車するととたんに外気が冷える。半そででは寒いくらい。
 この時点で時刻は薄暗くなってくる夜七時。赤茶けた山肌が頭上に望めた。雲が近い、
という経験はなかなかできるものではない。
 既にこの時点で青ざめた顔をしたのが数名。反対派である。「楽しみだね!」と私は声
をかけておく。私はドSなのだ。
 この登山口は大きな街があって、レストランやお土産屋などが立ち並ぶ、非常ににぎや
かな空間になっている。バスが続々と到着してはずらずらと人を吐き出してまたぞろ去っ
ていく。マイカーで来る人たちもぞろぞろと登山準備を始めている。
 この時間帯の登山者が多いのは、これから登り始めればちょうど御来光(日の出)が見
られる時間だからだ。
 ここで一時間ほど身体を慣らすのが通である。……というのは気取った言い方で、当た
り前のことなのだが、五合目ですら空気は既に薄く、いきなりの運動は身体に障るのだ。

「靴の紐は締めたか? 雨具の準備は良いか? 防寒具の用意は? 水分はすぐ摂れる状
態か? トイレは済ませたか? 神様に命乞いする準備はOK? ――では登山を開始す
る」

 ざく、と登山靴が砂利を踏みしめる音が耳に心地よい。
 肌を撫でる秋風のような冷たさが新鮮だった。
 ☆が(変換第一候補)頭上に瞬いている。富士山は日本で一番美しい空が見える場所だ。
森宮依人君など垂涎に違いない。
 空気が綺麗だ、という感想はきっと、思い込みではないはずだ。
 麓では花火が上がっている。花火を上から見るというのは、なかなかの贅沢である。

 五合目〜七合目

 ここは傾斜が比較的緩やかで、気温も低くなく登りやすい箇所である。その分、ペース
配分がポイントとなる。

 登り始めればなんのその、初めのうちは楽しいもので、反対派の彼らも楽しげに写真撮
影なんぞを行っている。去年も一昨年も山頂が近くなるにつれて辛そうにしていたのだが、
のどもと過ぎればなんとやらだ。

 太陽が沈んでから暗くなるまでの時間、というものがある。光源はないのに、まだ少し
だけ明るい時間帯だ。私はそれがたまらなく好きで、そんな時間に登山を開始するものだ
から登山が五回目だってテンションは既にほぼマキシマムである。
「ちょ! 下! 見てみ! 下! 明かりが! 明かりが! 街の明かりが!」
「うるせえ。恥ずかしいから黙ってろ」
 すみませんでしたー。
 下山者とすれ違うことも多いので、あまり恥ずかしい醜態は避けましょう。

 六人の中で私と同様のオタクが一人います。
「虹原いんくは俺の嫁」と私。
「じゃあパステルいんくは俺の嫁」と友人。
「ちょ」
「中の人がゆかりんなら俺は何でも」
「ゆかりんと言えば、ちょっと聞いてほしいんだ。ゆかりんの声をパターン分けしてみた。
一つ、幼女いんく、梨花ちゃま。二つ、現行いんく、小学生高町なのは。三つ、ナインテ
ィーンなのは、みんみん。そして四つ。百年を生きた魔女、フレデリカ。というの」
「なるほど。四種か」
「これを多いと見るか、少ないと見るか。どう思う?」
「中原とか沢城の芸風の広さに比べると少ないような気がするが、そもそもゆかりんはあ
の声音がアイデンティティだからなあ、あまり強引に声音を変化させる必要はないんだろ
う。というかいんくがなのはにしか聞こえない件」
「おまえらきめえ」
 と先行する友人からお叱りを受けました。
 すみませんでしたー。
 周辺に人が居るので、あまり恥ずかしい話題は避けましょう。

 七合目〜八合目

 ここから山肌が変質する。
 土は無くなり、小石と岩肌が露出してくるのだ。傾斜がきつくなり、手を使わないと登
れないような場所もある。
 傾斜が大きくなる、ということは、山頂までの道のりを大きく迂回することなく進んで
いるということだ。七合目までの緩やかな傾斜と比較して、頭上のルートが目視しやすく
なってくる。
 基本的には、登山道はじぐざぐで進んでいく。そのところどころに休憩用の山小屋が点
在していて、そこで休憩を挟んだり、食事を摂ったりできるようになっている。時期にも
よるが、山小屋は人がいっぱいで、そのベンチにすら腰掛けることができないこともある。
その場合はその辺で地べたに座って休みましょう。
 日が沈んで大分経つ。既に周囲は暗闇で、懐中電灯の明かりで足元を照らさねば歩行も
満足に行えない状況だ。
 ふと見上げると、点在する明かりが正弦波のような波を描くことになる。
 暗闇の海の中、数珠のように連なる一本の光の道。
 そしてその道は空へ続いていた。
 星へ手が届く。そんな幻想を抱く。
 もはや感嘆の一言である。

 だんだんと気温が下がり、突き刺すような冷風が肌を襲うようになる。

 富士山、八合目。

 富士山の真骨頂はここからなのだ。

 *

 が、
 以下は紙面の都合で割愛します。
 打ち切りみたいな終わり方ですが、要望があれば続きを書きます。

 おやすみなさい、桂でした。

(BGM 水樹奈々「星空と月と花火の下」)


 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。

 ラヴクラフト全集です。第1集を買っていった誰かがもし次を買いにきても、残念なが
らもうありません。(言いすぎ)
 クトゥルー神話、ネクロノミコンもこの人が考えたものだそうで。
 短編二つに長編一つ。現代のきらびやかな文章表現に比べると、どこか報告書めいたふ
うにも思える物語はいささか地味ですが、構成は堅実で無駄のないものに思えます。 

 とりあえず、RPGなんかでクラスを決めるときは(あれば)必ず死霊魔術師を選ぶ遥
のような人は必読です。たぶん。

 引き続き新たな原稿、募集中ですよ。編集部までお気軽にお問い合わせください。
 それでは、また。 

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は10月5日を予定しております。では、またお目にかかりましょう。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年9月25日 
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       ご意見ご感想:
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最終発行日:  
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