文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

全て表示する >

雲上マガジン vol_144

2007/08/15

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第144号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/8/15
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」        第31回
 【3】 エッセイ『塑性言論』           第16回
 【4】 編集後記


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 みなさま、こんばんは、遥彼方です。
 今日は8月15日、そう、「雲上」の姉貴分であるところの「回廊」の発行日でございま
す!! 「雲上」ともども、こちらもよろしくお願いいたしますね。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第31回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 あかるく美しいのに、どうしてかかなしい春の時間。

 ……………………………………………… 青空 ………………………………………………

 こんなことがありました
 前の文を書いてから 八度強の熱で四日臥せりました 盆栽の梅は満開になりました 
猫飯のようなとろとろの粥をぴしゃぴしゃ啜って 日の光が強くなったのを感じます 何
をやろうと思っていたのか 熱で言葉がほぐれて宙に逃げて 忘れてしまって いろいろ
どうでもよくなりました 眠っている間じゅう 家の北側や南側で猫のさかる声がしてい
ました 湯たんぽのさめた水を呑んでくれた かわいかったあの黒猫も 四日前と同じふ
うではもうないかもしれません ちょっとがっかりしているうちに日差しは春です 空っ
ぽのまま春が来てしまいました そんなことがありました

 …………………………………………… わがまま ……………………………………………


はるのはなさくやまみちで
みちにまよってなきました
ドレスをてらすこもれびが
ちらちらうつりしろびかり
こまかなレースをみにまとい
かぜあたたかくかみかるく
はなとりどりにかおりたち
とりはさえずりみちひろく
いずみみどりにすんでいて
やまどこまでもあかるくて
くつあたらしくあしにそい
そんなにわたしはめぐまれて
それでもわたしはなきました
そんなにこのよがきれいでも
わたしはそれでもなきました

あたたかい布団に入りました 昼間に太陽の光を吸わせたふかふかの布団 洗いたてのカ
バーが頬に触れて きもちがいいです
それなのに 三時間たっても四時間たっても眠れなかったです

すてきなレストランです 海際の席に座ってなんでもすきなものを注文していいよと言わ
れる幸せ おなかもへっています おいしそうなものが卓いっぱいに並べられます どれ
も食べてみるとおいしくて それなのに 食事の最中に つまらないことでけんかして 
食べ物の味がなくなってしまいました

育てた花が咲きました 色も香りもすばらしいのに それなのに 楽しめません 花が散
るより早く 花に飽きてしまいました

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第145号(8月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 エッセイ『塑性言論』            第16回
                著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 今回は真面目に? 物語の紡ぎ方についてのいくつかの思索。
 
 …………………………………… そせいげんろん ………………………………………

 小説でも漫画でも、作品内の整合性をないがしろにしていては、説得力のある作品は紡
げません。

 整合性とは、物理法則を初めとした力学的なルール、行動原理に関わる人物の心情や精
神の一貫性、作品世界の歴史や成り立ちなどの背景、などについてです。

 これらに、少しでも矛盾が存在すると(より正確に言うならば受け手がその矛盾に気付
くと)、その作品のリアリティが大きく減衰します。

 が。

 それら矛盾を全て排除し、がっちりと硬く組まれた作品を作ろうとすると、こんどは、
自由な発想を束縛する力が生じます。

「どうせ、誰もそこまで真剣に読んじゃいねーよ」

 と、まあ、そこまで言うと言い過ぎな感もありますが。

 演出を重視するため、スピード感を重視するため、といった理由なら、そんな些細なこ
とは無視するに十分な理由となるでしょう。

 で、そんな風に整合性をあまり気にせずさくさく作ってしまうと、

「力学的にこの動きはおかしい」「設定的にこの台詞は不自然になる」「キャラの性格が
一貫しなくなりそうだ」

 というように、後になってから設定の矛盾が発生し、
 その矛盾を解消するために作者が打つ手を、

「後付設定」と呼びます。

 後付を後付と思わせないのが、本当に上手い人といえるでしょう。

 これは後付だ、と思わせないためには、いくらか物語に「あそび」を持たせておくこと
が重要です。
 いかようにでも解釈できるような、のびしろのような部分。
 受け手には、そこが「設定的に未定」なのか「整合性のある設定が隠されているのか」
なんてこと、分かりませんしね。

 個人的には、それが上手な人ほど、作品の量産が可能で、スピード感のある作品を作れ
るのではないかと感じています。
 例えばあの元准教授のミステリ作家とか、あの年を取らない少年漫画家とかですね。
 ベストセラ作家に要求される、重要な能力のひとつでしょう。
 行き当たりばったり、とも換言できるかも知れません。

 ……後付を怖がらずにざくざくやっちまいましょう、という話。

 いえ、自己弁護じゃないですよ。

 *

 久しぶりに小手先の技術の話。

 作品には必ず「視点」が存在します。
 登場キャラクタであったり、第三者的な神の視点だったりするもので、そこを通じて、
受け手はその作品に触れることになります。

 そういう意味では、作者は、受け手がどこから物語に触れることになるかということを
完全にコントロールできます。

 例えば、ここにひとつの物語があったとしましょう。
 人口は数千人ほどの、日本の山奥の山村です。時代は、まあ昭和の後期ぐらいとでもし
ておきましょう。
 そこにはたくさんのキャラクタたちが登場することになります。そのキャラクタたちは、
いくつかの偶然を経て、お互いに殺しあったり助け合ったりするドラマを、受け手に見せ
てくれます。
 受け手が見るのは、その時代、その場所、その人物たち、だけ、です。
 さらに言えば、作者が「見せたい時間」と「見せたいシーン」だけを、受け手は見せら
れることになります。
 それはごく普通のことであり、一個の作品として確立されているなら、むしろそうであ
るべき、と断言しても良いでしょう。

 そして、

 突然、
 限られた人たちにだけ、

 ふつ、

 と情景が湧き上がることがあります。

 それは、その作品のキャラクタが違う場所で活躍する物語であったり、
 その作品の場所で、違う作品のキャラクタが冒険する物語であったり、
 そこよりも少しだけ時間の進んだ世界で人の物語であったり、

 します。

 そしてそれは、本当にその作品を愛した人にだけ訪れる幻想です。

 それらの幻想は、作者が作った物語には存在しないシーンであり、冒険であり活躍です。

 それを具体的な形にして、それをまた従来とは異なる「視点」でもって受け手に見せる
こと、
 それが、作者に可能な、受け手への最大のサービスなのではないかと思います。

(まあ、鬼曝し編の話です。圭一という外部者から見た雛見沢ではなく、日本という国家
単位から見た雛見沢というニュアンスの違い。そして夏美の可愛さは異常)

 *

 少し話を掘り下げましょう。

 この話は、以前、『塑性言論』内でお話ししました、「物語の最後における主要人物の
客観視」の応用ですね。

「終わった物語」は、既に受け手の一部へと取り込まれています。受け手は、確かに、視
点キャラクタと一緒に泣き、笑い、興奮し、冒険して、敵と戦い、勝利を分かち合いまし
た。

 自己の同一化ですね。

 だから、

「視点人物の客観視と評価」とは、
 
 とりもなおさず、

「受け手自身への評価」

 と繋がることになります。
 少なくとも、そういった幻想を生み出します。

 その視点キャラクタが優秀であればあるほど、

「受け手自身が高い評価を下された」

 と感じられることになります。

 作品例を挙げるにも枚挙に暇がありません。古今東西、物語の視点キャラクタとは、大
なり小なりそうした役目を担っているのです。

 ここで受け手が感じる「優越感」の値の数値化が可能ならば、それと作品の売り上げと
を比較検討してみたいと私などは思います。きっと比例関係に違いありません。

 これらの優越感や達成感といった感情は、全て幻想に過ぎませんが、そういったメカニ
ズムが存在するということだけでも知っておくと、受け手が触れて気持ちの良い作品とは
どんなものなのか、ということが少しだけ理解できるのかも知れません。

 ちょっと長かったかな、と思いつつ桂でした。


 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第145号(8月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。

 なんといいますか、塑性言論が真面目になると独特の手触りがするように思いますよ。
 現在進行形で元准教授のミステリ作家の作品を読んでいるところで、実はこれまで教授
だったと勘違いしてて、まあでも似たようなもんかしら(ちがうとおもう)。ミステリと
いう枠組みでは「後付け」はまた違った影響をもたらすのですかね。 
 飛行機のでてくる話が好きだったりします。映画になるらしいです。

 引き続き原稿、募集中でございます。編集部までお気軽にお問い合わせください。
 それでは、また。 

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は8月15日を予定しております。では、またお目にかかりましょう。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。
 
 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com


   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年8月15日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       ご意見ご感想:
           info@kairou.com
       購読の解約および、公式サイト:
           http://magazine.kairou.com/unjyou/

       (c) unjyou_kairou 2007 all right reserved

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
Score!: 90 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。