文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_第143号

2007/08/05

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第143号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/8/5
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第30回
 【3】 宮本淳世『怨時空』           第4回
 【4】 編集後記


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 こんにちは、遥彼方です。前回の配信が予告なく飛んでしまい、申し訳ありませんでし
た。何があったかというと、何のことはなく、また体調を崩してぱったり寝込んでいたせ
いです。そうしたら、とうとう8月になってしまいました。すこし呆然としております。
気を取り直していってみようと思います。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第30回
                 著/赤井都
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 辿り着く場所。ことばによって壁に留め置かれる光景。

 ……………………………………………… 箱 ………………………………………………

 それから夢を見ました 夢の中でも雪は積もっていて町歩きは続いていました 長方形
に囲まれた所にいました どこかから歩いてきてここに入ってどこかへ行く途中ですが 
どこへ行こうというあても特になく ここから出てもきっと同じような長方形の中に入っ
て 歩行が続いていくでしょう 筋違いと言うのです 筋違いという町のつくりかたをさ
れているのです 敵が攻めて来たときにまっすぐに進んでこられないように 曲がり曲が
りして速度が出ないように そうして角の先に隠れて待ち伏せしていられるように その
ように通りは直角に雁行していて 雁行と雁行の間に入ると 前も後ろも横も 家並みで
蓋をされた長方形の空間にいるのです 固まった雪の上に立ってぐるりを見回しています 
夜です 暗くてもう磐梯山は見えません スキー場の灯も見えません 暗い昔ながらの城
下町がひっそりと低い軒を連ねているだけで 人がいても気配はうんと奥の方で表には私
だけです 進めなくなってしまいました この町で私は敵です 私の生まれた町はここで
はない別の町です 私は直進できなくて留まる悪霊です 足の下で雪は冷たく冷たく 屋
根の上を風が吹き抜けていって そうして身体は透明になってさくさくちぎれて 流れて
外灯にまとわりついて じゅっと光りました ほんの一瞬

 ……………………………………… かわいいあのこ ………………………………………

 こんなことがありました
 寒いので湯たんぽを使います 昼前に湯がさめたところで栓をゆるめて外に出て まだ
少しぬくみのある水を植木鉢にざばざばかけました 盆栽の梅が三つ咲きました 風が冷
たいのですぐ家の中に戻って昼御飯の準備をしていると 外に気配がしました 窓からの
ぞくと黒猫が こぼれた水をぴしゃぴしゃなめていました 桃色の舌を出し入れして ぴ
しゃぴしゃなめていました そんなことがありました

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第144号(8月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 宮本淳世 『怨時空』            第4回
                著/宮本淳世
 ──────────────────────────────────────

 男の奇怪な死の裏にちらつく不吉な噂。
 ひとの闇と業をめぐる、不穏でミステリアスな物語。
 
 ………………………………………… 第二章 ……………………………………………

 その夜、妻の泉美は、10時過ぎに帰ってきた。ブティックは8時閉店だから遅いわ
けではない。城島は居間のソファにどっかりと座った泉美の前に写真の束を投げた。泉美
はすぐさま、写真を手にとってじっと見入っている。その目に涙が滲んだ。城島は数年前
に思い描いたストーリー通り、ここぞとばかりに叫んだ。
「このあばずれが、よくも俺を裏切ってくれたな。まさか、お前が不貞を働いていたとは
思いもしなかった。しかも、相手は俺の親友だった」
城島は怒りを込めて睨んだ。しかし、浮気相手が死んでしまっているので、迫力に欠ける
が、それはいたしかたない。泉美は写真から目を離し指で涙を拭うと、開き直って怒鳴り
返したきた。
「あんただって私に恋人がいたことは知っていたじゃない。でも、あんたが見たとおり、
彼は自殺してしまった。あれからもう一年になる」
怒りの顔はしだいに崩れて悲しみのそれに変わった。その目から涙が溢れた。何度もしゃ
くりあげている。ここで同情してはいけない。城島は怒りを奮い立たせた。
「でも、そいつが俺の友人だってことは分かっていたのか?」
「いいえ、貴方が、友人が自殺したって言って帰ってきた時、名前を聞いて驚いたわ。ま
さか、貴方の前で泣くわけにはいかないし、まいったわ、あの時は」
泉美は悪びれる素振りもみせない。城島は沸き起こる怒りを抑えるかのように、大げさに
肩で息をし、荒い呼吸を繰り返した。そして、無理矢理、怒りを爆発させた。
「ふざけるな、この野郎。許さん、絶対に許さん。離婚だ。もう沢山だ。お前の顔など見
たくもない。出て行け。さあ、早く、この家から出て行くんだ」
不貞の証拠をつきつけられ、離婚を申し渡されたのだから、泉美が出て行くのが当然なの
だ。裁判で争っても結果は同じである。
 泉美は俯いて、肩を震わせている。どうやら泣いているようだ。城島は、既に固く決
意していることを示すために、顎の筋を強張らせ、目を閉じて腕を組んだ。その時、城島
は泉美の異様な視線に気付いた。薄目を開け盗み見ると、その目は笑っている。口が割れ
唸るような声が漏れた。
「ずるい男だ。全くずるい男だよ。お前は」
動揺しながら城島が叫んだ。
「何だと、ずるい男だって、浮気をした女房が何を言っているんだ。盗人猛々しいとはお
前のことだ」
「じゃあ、この写真は何なの」
こう言うと、泉美はバッグを引き寄せ、中から何枚かの写真を取りだした。そして、城島
がしたようにそれをテーブルにぶちまけた。城島は指で一枚の写真の向きを直し、焦点を
合わせた。そして、目を剥いて驚いた。香子とホテルに入ろうとしている写真だった。
 テーブルに視線をさ迷わせるが、どれも似たような写真だ。泉美を見ると、刺すよう
な目で睨んでいる。
「私の方は過去の過ちで、もう終ってるわ。でも、貴方は、今現在、私を裏切っているの
よ。その女はいったい誰なの。今までの演技で、あんたが私と本気で離婚するつもりだっ
てことは分かった。でも、私には全くその気はないの」
「演技だって、それはどういう意味だ」
泉美は含み笑いをしていたが、徐々に声を上げ、最後には笑いころげた。気が狂ったよう
に笑っている。城島は苛苛しながら泉美の興奮が覚めるのを待った。ひとしきり笑うと、
泉美が冷たい視線を向けて言い放った。
「あんたはずっと前から、私に恋人がいることを知っていた。それを見て見ぬ振りをして
いた。それは、稼ぎのある私との生活を捨て切れなかったからでしょう。一銭も家に入れ
ず、遊び放題だ。それも悪くないと思っていたんでしょう」
「そんなことはない。俺はお前を愛し……いや、信頼していた。だから」
城島は、せせら笑う泉美を見て、さすがに自分でも恥ずかしくなった。矛を収める時かも
しれない。城島は狡猾そうな笑みを浮かべながら言った。
「いやはや参った。まさか写真を撮られていたとは」
鬼のような顔になって泉美が叫んだ。
「誤魔化すんじゃない。いったい誰なんだ。この女は誰なんだ」
城島は、言葉に詰まった。どうやら、泉美は香子が篠田の妻だったということには気付い
ていない。泉美はまるで山門に立つ仁王のように、恐ろしい形相で睨んでいる。城島は尋
常でないその様子に恐怖を抱いた。そして言葉が衝いて出た。
「分かった、もう、あの女とは別れる。だからもう何も言うな」
「本当なんでしょうね。もし別れなかったら、覚悟しなさい。慰謝料だけじゃないわ。こ
のマンションだって奪いとってやる」
「ああ、分かった。本当に別れるって。だから、落ち着けよ。俺は嘘は言わん」
こんなやり取りが30分も続いた。お互いに意味のない会話であることは分かっていたが、
少なくとも泉美の興奮を押さえるのには役立った。城島は話題を変えようと、おもねるよ
うに言葉をかけた。
「まったく篠田が、死んでしまうなんて、お前もショックだっただろう」
般若のような顔が、一瞬和んで、泉美は遠い目をして答えた。
「いい人だった。太った淑女が好きで、本当に私を愛してくれた。私の全てを受け入れて
くれた。私もあの人を愛したわ」
二人が絡み合う姿を想像し、城島はぞっとした。そんなことなどおくびにも出さず、懐か
しむように言った。
「本当に、あいつは良い奴だった。大学では一番気が合った」
「本当に良い人だったわ。それを、あの女房が殺したんだ。保険金目当てにね」
城島は、はっとして泉美を見詰めた。近藤と同じことを言っている。動悸が高鳴った。息
せき切って聞いた。
「女房が殺したって、どういう意味だ。お前にも言ったはずだ。あいつは、俺の見ている
前で、窓から飛び降りたんだぞ。香……」
慌てて言い直した。
「奥さんが殺したわけじゃあない。自殺したんだ。俺はそれをこの目で見ていたんだ」
泉美は首を左右に振って、口を開いた。
「篠田が言ってたけど、あの女は自分の思い通りに人を動かすことが出来るんですって」
「そんな馬鹿な。そんなこと出来るわけがない」
城島は篠田の死に行く姿を思い浮かべた。彼は床を這うように窓の所まで行った。そして
右足を開け放たれた窓にかけた。そしてからだ全体を持ち上げて飛び降りた。
 しかし、どの動作を思い出しても、どこかぎこちないのである。どうぎこちないかを
説明するのは難しい。ふと見ると、泉美がどこから出してきたのかピーナッツを次々と口
に放り込んでいる。頬を膨らませもぐもぐと噛み砕いている。
 恐怖によるストレスが食欲を刺激したようだ。ピーナッツを口に含んだまま、くちゃ
くちゃと音を立てながら言った。
「二人の子供も、あっという間に継母べったりになって、父親を疎んじるようになったん
ですって。考えられる、そんなこと。愛情を注いできた子供達との絆が跡形もなく消えて
しまって、むしろ子供の視線が怖いって、翔ちゃんは漏らしていた」
「しかし、それだって、こう考えることも出来る。子供は自分を本当に愛してくれる人か
どうか本能的に分かるんだ。まして子供にとって母親の存在は大きい。父親との絆って言
うけど、そんなもの本人が考える程たいしたものではないんだ」
泉美は城島の言葉など聞いていない。
「そうそうこんなことも言っていたわ。奥さんは、例えばお皿洗いをさせようと思えば、
翔ちゃんを睨むんですって。その視線には決して逆らえないって。恐ろしい。本当に恐ろ
しいわ。そんな人間がいるなんて」
「つまり、篠田は自殺するように仕向けられたってわけか」
「そうよ、そうとしか思えない。3億の保険証書を見つけて、問いただしたんですって。
そしたら、にっこり笑って、これであなたが死んでも大丈夫って言ったそうよ。自殺する
前、翔ちゃんの恐怖は頂点に達していたわ」
「篠田は、狂っていたんじゃないのか。奥さんの、その言葉だって、仲の良い夫婦であれ
ばブラックジョークで済んでいたかもしれない。奴は気が狂って自殺した可能性だって否
定出来ない。そうじゃないか」
「ええ、狂っていたのかもしれない。翔ちゃんは、会社でも使い込みがばれそうになって
いた。追い詰められていた。それが妄想を生み出したってことも考えられるわ」
「そうだ、そうに決まっている。そんな人を操る力なんてあるはずがない」
「ええ、私もそう思いたい。でも翔ちゃんが言った通りの死に方だったもの。」
「えっ、奴は、ビルから飛び降りるかもしれないって言っていたのか?」
「ええ、何度も何度も夢で見たそうよ。翔ちゃんが寝ている時に、奥さんが耳元で囁いて
いるような気がするとも言っていた。だからあんな夢を何度も見るんじゃないかって」
「しかし、耳元で囁かれたら目覚めちゃうだろう。眠ってなんていられないよ」
「私にだって分からないわよ、何があったかなんて。兎に角、恐ろしくて鳥肌がたつわ。
人間の意思を操って人殺しをするなんて、そんな人間がいるなんて信じたくない」
泉美は城島にしな垂れ掛かった。その体重を受けとめるのに腰を固めなければならなかっ
た。泉美はふるふると震えている。本当に恐ろしがってる。城島はしかたなく分厚い肉の
塊を抱きしめた。普段なら嫌悪感に苛まれただろうが、今は訳の分からない恐怖でそれど
ころではなかった。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第144号(8月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
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 前略。
  
 「怨時空」の不穏さにどんどん磨きがかかってきていますね。今回のような、キャラク
タの言葉のやりとりから、滲み出すように闇が垣間見えるのがなんともいえず。私も一度、
こういうのやってみたいなあと思ったり、しています。

 引き続き原稿、募集中でございます。編集部までお気軽にお問い合わせください。
 それでは、また。 

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*編集部
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 次回の配信は8月15日を予定しております。では、またお目にかかりましょう。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
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 たくさんのご応募を、お待ちしております。

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   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年8月5日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
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