文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_141

2007/06/26

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第141号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/6/26
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第28回
 【3】 桂たたら「塑性言論」          第15回
 【4】 文芸座談会               第3回
 【5】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 みなさまどうもこんばんは、遥彼方でございます。
 非常に暑い日が続いております。遥の住む部屋はなぜか外よりも三度ほど気温が高い状
態で、あまりよろしくありません。夏は苦手です。

 今回の雲上に掲載した「文芸座談会」についてお知らせとお詫びです。
 本来は141号で配信する予定だった内容を、遥のミスで、先の140号に掲載してしまいま
した。
 この場を借りてお詫び致しますとともに、140号にて掲載予定だった内容を、今回掲載致
します。
 申し訳ありませんでした。今後はこのようなことの起こりませんよう、細心の注意を払
って編集して参ります。

                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第27回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 ひんやりと漂う冬の幻惑を二編。

 ……………………………………… みがきにしんの夜 ………………………………………

 米沢街道と越後街道の拠点である山中の城下町ですから みがきにしんのさんしょうづ
けという食べ物があって 磨き鰊ではなく身欠き鰊で 光りはしていますが縦の皺だらけ
の小さな切り身です 盛り付ける器も昔から土地で焼いています 器というのは四角い灰
皿のような形で 土の板を貼り合わせて緑色の釉薬を溶かし垂らしながら焼いたもので 
角型のその鰊鉢に 四角い鰊の切れを並べれば収まりがよいのです 蕎麦屋にあったので
その小鉢を一つもらって三合呑みました 外に出ると雪がかちかちに凍って静かで 景観
協定でつくられた昔風の家並みの格子戸から灯りが点々と漏れて 氷になった雪の表面を
光らせています 内戦で焼かれた町ですから江戸の建物は残っていないのです 空襲され
るほどはそれから発展しませんでした それでも今の通りには雪を載せた黒い軒が隙間な
く並んでいて 暖簾が真下に垂れている奥には人の気配がします 風はなく 空には大き
な帆布のような雲が音もなく航行していくばかりで 冴えた半月が鬼瓦の縁に掛かってい
ました 歩道の上は雪の板ががっちりと蓋していて 東軍墓地を過ぎた辺りの坂道はなお
さらつるつる滑ります 酔っていたのでなおさらつるつるに滑ります もしか滑って転ん
でそのまま寝ていたら死にますから 酔いつつも凛とした月光を浴びて慎重に歩きました
 負けた東軍の遺体は二月になるまで埋葬を許されなかったそうです 今は二月です 血
の匂いが肩の後ろで凍っています 身欠き鰊の山椒漬けはおいしかったです また食べた
いです

 ……………………………………… クリスマスのくま ………………………………………

 町の広場に緑と赤のテントが立った。ごちそう材料を買い物中のお母さんは、オリイの
手を引いてその横を足早に通り過ぎた。音楽がふわりと漂い、人の影が幾つも天幕に映っ
て揺れている。
 夕方、お母さんへのプレゼントをこっそり買いに出てきたはずなのに、そのお金でオリ
イはテントの中に入っていた。中にはベンチが何列も並んで、正面にステージがあった。
雪野原にぽつんと家が一軒建っている。その景色が強いライトを浴びていた。座席の前の
ほうはあらかた人で埋まって、隣のアパートの姉妹の姿もあり、犬の散歩中の老夫婦もい
て、どの背中もそわそわと動いていた。ピエロに手招きされ指さされるまま、オリイは真
中あたりに座って、前のおじさんの頭と肩が舞台の半分を隠していることに気づいたけれ
ど、すぐに隣も人で埋まって、身動きがとれなくなった。そうしたところで、ふんわりし
た雪のような帽子をかぶったお姉さんが、入口から舞台の上にのぼってきて、楽しそうに
手拍子を始めた。きゅうに音楽がにぎやかに変わって、舞台の上の家が回転した。家の後
ろには、くまのバンドがいて、いっしょうけんめい演奏していた。
 爪の生えた毛むくじゃらの手が小さなピアノの鍵盤の上を滑り、肩で拍子を取っている。
隣に立つ太ったくまは、ギターの弦を弾き、頭を揺らしている。耳もぴくぴく動く。打楽
器を受け持っている小さな三匹は三つ子かもしれない。サングラスの下からのぞく口元が
互いによく似ている。お姉さんが手拍子する横で、くまの楽隊はすっかり観客のほうに向
き直り、休む間もなく次の曲に入った。
「ほんもの?」
 小さな子の甲高い声が響く。
「そうよ。クリスマスの間だけ、山から下りてきているのよ」
「怖い? ひっかく?」
「ここから見ていればだいじょうぶ。ほら、静かに、そうっと見てましょうね」
 オリイはその子よりずっと大きかったから、一見して、くまはロボットだとわかった。
クラスの子は、勝手にしゃべる電話だとか、がしゃがしゃ走る機械犬とかを持っている。
でも、舞台にいるくまたちは、ほんとうに大きくて、赤いベストや派手なマフラーできれ
いに装っていて、おまけに時々、耳を片方だけ動かしたり瞬きしたりするものだから、見
ているうちにだんだん、やっぱりこれはほんものかもしれないと思ったりもした。くるん
と回転する瞼はプラスチックなのに、動きが怖いぐらい滑らかで、全員で取る足拍子がち
ょっと整っていなかったりする。しかもなんだかかわいそうなのだ。たくさんの人に見ら
れていても、きっと一度も撫でられたことがないにちがいない、とオリイは直観した。
 何曲か続けて弾き終えると、ぱつんと電気が消えた。暗い中を、くまたちはまたゆっく
りと回転していく。家の外側が見え始めた。皆はいっせいに立って出口をめざしたけれど、
最後まで舞台を見ていたオリイは、ピアノを弾いていたくまが、うなだれたまま硬直して
いるのを見てしまった。
 クリスマスの夜、オリイはお母さんに、ハート型に切り抜いた紙をあげた。お金は使っ
てしまったから、暖かい靴下は買えなかった。お母さんがくれたプレゼントは定規とコン
パスのセットで、お礼を言いながらオリイはがっかりしてしまった。オリイはお母さんに
とてもすまなく思った。ベッドに横になって、空の星を思った。思い浮かぶかぎり一番遠
くのまぶしい星に、オリイはごめんなさいと謝った。靴下を買えなくて、お母さんからも
らったものも喜べなくて、ごめんなさい。オリイが欲しいものはピアノ弾きのくまだった。
明日はテントを畳んで楽隊はよその町へ行ってしまうだろう。ピアノ弾きのくまを見世物
から助け出して、いっしょに逃げたいと思った。森に行って暖かい洞穴を見つけて二人で
暮らそう。
 パジャマのままベッドから抜け出したのは夢の中のことだったのかもしれない。雪の積
もった街路をはだしで歩いても、そんなに冷たくなかった。黒く沈んだテントの隙間から、
こっそり忍び込んだ。舞台の上には細長い寝袋が二つ並んで落ちていた。お姉さんとピエ
ロだとオリイにはすぐわかった。二人がすぐには目を覚まさないこともわかった。なにし
ろ星が叶えてくれた夢の中だから、オリイは何でもうまくできるはずだ。小さな家の後ろ
に回りこむと、くまたちがいた。暗がりのなかで、硬直した黒い影になっていた。一番左
側の手前の塊がピアノ弾きのくまだ。オリイは手を伸ばし、くまに触れて、ちょっと笑い、
それから泣きそうになった。くまは冷たかった。プラスチックで、スイッチが入っていな
いと重たくて、全く動かなかった。くまを揺さぶった。それでも目を覚ましてくれない。
遠くからはふかふかの毛皮に思えた手は、手を重ねると固い毛の先端がごつごつと突き刺
さる。
 揺さぶっていたら、飾りのひいらぎが落ちた。それを踏んでしまった。はだしの足裏か
ら血がにじんで、オリイは座り込んで本格的に泣いた。お姉さんとピエロが目を覚まして
ももう構わない。そんなことどうでもいい。ピアノ弾きのくまが動かないから、もう何も
かもいい。
 肩にそっと手が置かれる。くまが起きてくれたのだろうか。オリイは顔を上げる。振り
返って見たのは、真っ暗の闇。
「誰?」
「クラヤミ」
「それって、誰?」
「一緒に、家に連れて帰ってよ」
「嫌だよ」
「くまは連れて行けないよ。くまはお姉さんがすきなんだ。お姉さんはピエロがすき。ク
ラヤミなら、どこへでも行けるよ」
「嫌だ。やめて!」
 オリイは暗闇に飲み込まれて悲鳴をあげた。飲み込まれたはずなのに、暗闇はくるんと
オリイの内側に裏返る。オリイが外側になり、暗闇がオリイの中に入る。朝の光を浴びた
とき、オリイは暗闇を内側にはりつかせて目覚めた。
 ごちそうの匂いがしている。オリイの枕元にあるのは、定規とコンパスのセットだけ。
そうして内側には暗闇がいる。
 オリイは顔を洗って、鏡の中で、笑おうとしてみた。
 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第142号(7月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 桂たたら 『塑性言論』            第14回
             著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 欲しいものは自分でつくる!
 
 …………………………………… そせいげんろん …………………………………………

 魔法少女リリカルなのは StrikerS サウンドステージ01で風呂に誘われたときのエリ
オの態度に男気を感じました。
 それに引き換え淫獣ときたら……。
 まあ。しかし私は淫獣を支持しますが。

(なんというマイナーネタ。これは間違いなく読者をふるいにかけている)



 オッス、オタ桂!
 間違えた、オラ桂!



 今回の話は、桂たたらという人間に興味の無い人には至極つまらない話題になります。
ご注意ください。



 物書きであるならば、モチベーション、というものは大事です。
 それは目標と言い換えることもできるでしょう。
 いや、別に物書きでなくても人生に目標はあるもので、それが人生に彩りを与えます。
目標に向かって頑張る人間は美しい。

 私にもささやかながら、桂たたらとして、物書きとしての目標が存在します。
 本来、こうした自己紹介的なことは、連載当初に行うべきなのでしょうが、遅ればせな
がら、桂という人間を知ってもらう意味でもここで述べてみます。
 桂たたらの目標は二点。

 一、クロノトリガーのノベライズの執筆。
 二、主題歌を水樹奈々先生が歌うアニメの原作、脚本いずれかの執筆。

 いえ、クロトリノベライズには鳥山明大先生のカバーイラストが欲しいとか分不相応な
ことは言いません。もし付いたら嬉しさで失神、失禁、昇天する可能性がありますね。
 プレイ済みの方には、あの感動をもう一度味わってもらいたく、未プレイの方には、原
作をプレイしてみたくなるような作品を書いてみたいと思います。

 先に挙げた二点は、両方とも「桂が最も欲しい物語」であり、同時に「まだ世の中に存
在しない(私の理想の)物語」です。
 ならばどうするかというと、やはり自分自身で作り上げる以外にありません。

 これさえ叶えば、私はすぐにでもその場で筆を折る覚悟があります。
 名声は要らない。
 報酬も要らない。
 小説を書く能力の全てを犠牲にしても良い。
 私が、キーボードを叩く理由は、全てここに収束します。

 この夢を叶えるための最短距離を、これから私は行くつもりです。たとえその道が、物
書きとして多少歪であったとしても。

 二点目は、可能ならば、水樹奈々先生にメインヒロインを演じてもらうのが理想ですね。
これも「魔法少女リリカルなのは」の影響であり、現時点で桂たたらの構成成分は、なの
はとジョジョで二分されているといえるでしょう。あとはガンダムを少々。

 これからの桂は、水樹先生が演じやすいキャラクタを、作詞しやすい物語を書けるよう、
自らの作風を変化させていかなければなりません。
 とりあえず、私の作品がアニメ化されるところから始めなくてはならないわけですが。
それにはやはり意図して映像的な作品を作らなくてはなりません。さらに加えて、スクエ
ニ系列に身を寄せる必要もあるでしょう。道は遥か険しく遠い。

 いやしかし、ほんとう、誰かが「桂の最も欲しい物語」を書いてくれれば私が作る必要
はなくて助かるのですが、まあ世の中そう上手くはいかないわけで。

 やれやれだぜ。

(BGM 水樹奈々「BRAVE PHENIX」)

(そせーげんろん五回目休み)


 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第142号(7月5日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 文芸座談会          第3回
 ──────────────────────────────────────

 さる5月7日、文芸スタジオ回廊(http://magazine.kairou.com/)に創作者がふたたび
集結。「魅力的な人物を書く(描く)ために行っている努力」をテーマに、それぞれの創
作スタンスについて熱く語り合った、その記録。

 (以下の内容は、前回の140号にて配信される予定だったものです。紙面構成時のミスに
より、掲載順が前後してしまったことをお詫び申し上げます。)

 ………………………………………… パート3 …………………………………………

秋山真琴(秋 山):
言わずと知れた「回廊」編集長。小説に「廃墟と都市」(「回廊」第十号)など。

六門イサイ(六 門):
「回廊」副編集長。小説に「歓喜の魔王 FRUDEN・ALBERICH.」(「回廊」第十号〜)など。

遥彼方( 遥 ):
「雲上」編集長、「回廊」編集部員。連載コラムに「旧式ラジオ」、小説に
「Phantasmagoria-Melanchoria」(「回廊」第七号)など。

踝祐吾( 踝 ):
「回廊」コラム班長、製作班長。連載コラムに「積読にいたる病」、小説に「さよなら、
異邦人」(「回廊」第七号)など。

雨街愁介(雨 街):
小説に「雨日」(「回廊」第九号)、超短編に「DO YOU KNOW WHERE THEY ARE GOING?」
(「回廊」第十号)など。

芹沢藤尾(芹 沢):
小説に「陽炎の夏」(「回廊」創刊号〜)など。


(司会 遥→秋山)

秋 山:よし! それじゃあ、次はイサイさん、どうぞ。テーマ「魅力的な人物を書く(描
    く)ために行っている努力を教えてください」

六 門:私の場合、キャラと物語の関係は、卵とニワトリみたいな感じでしょうか。キャ
    ラを作るにあたって、「物語を内包した造形」というのを、心得ているんですよ。
    キャラがいれば話が出来る、みたいな。
 
秋 山:おっと、本格的ですね。

六 門:まあ、それが常に成功しているかはさておき、いつもそれを心がけています。基
    本的に私は自分のキャラが可愛い人なので、あらゆるキャラはほぼ全員「主人公」
    なのですね。器の大きさによって区別がつけられますが。器ってのはまあ、世界
    に与える影響の差でして。器の小さい主人公は、より器の大きい主人公の物語に
    内包され、脇役や悪役やらになったりします。

秋 山:なかなか、斬新ですね。

 遥 :イサイさんの小説って、キャラクタの掛け合いが面白いし、すごいこだわりを感
    じるのですがそれもやはり、キャラクタ造形の特性故でしょうか。

六 門:ええ、活き活きとしたキャラを書けるように日夜頭をめぐらしています。バック
    ボーンとか、シンボルとか、モチーフとか、(萌え)属性とか、そういった要素
    を搭載して、「二人揃えば話が出来る」キャラを作ろうとしています。そうした
    キャラに対して、世界(観)が用意され、ストーリーが出来ますね。悪く言うと
    キャラ主導というか。

 踝 :逆に言えば、キャラ全てに物語っつうか、バックボーンがあって、それを全ての
    キャラについて考えていたりするわけでせうか。

六 門:そうそう、それです。

秋 山:おや。実際には一人でも、その一人の中に他のキャラを内包させてやれば、いけ
    るんじゃないんですか?

六 門:うむ? すみません、ちょっと意味が分かりませんので、説明お願いします。

雨 街:キャラクター(記号)キャラ(内包された物語性)と分けて考えてみてはどうで
    しょう……って、伊藤剛の受け売りですが。

秋 山:久しぶりに伊藤さんの名前を見た……。たとえば二重人格とか。

六 門:そっちの意味か!

 踝 :二重人格とまでは行かないまでも、表裏の激しいひとはいるよね。

秋 山:まあ、二重人格は極論にしても、つまり、登場人物が世界観を内包した存在って
    ことですよね。で、その世界観は無数の人間と、それによって構成される社会か
    らなるわけですから。したがって、ひとりでもいいじゃん、と思いますです。た
    った一人を描くことで、世界観すべてを描ききる技量があればの問題ですが。

 遥 :実験小説だなあ。

秋 山:いえ、別に実験小説でもないと思いますよ。主人公がひとりで冒険する『モモ』
    とかはこの範疇に入ると思います。

六 門:ああっ……なんか魚の小骨飲んだような分かりそうで分からん感じ……っ。

 遥 :なんか、イサイさんの「世界観を内包した人物」と、秋山さんのそれとだとズレ
    がある気がする。

六 門:んん、ちょっと分かりかけてきたかも。

雨 街:笙野頼子あたりがそういうのをやっていたような。

 遥 :イサイさんのは…なんか、えーと。いつでもそこから物語を引き出せる存在って
    いうか。秋山さんのだと、「人物=世界そのもの」みたいな感じが。

雨 街:でも、そういう『万能』もいいですけれど、逆に一つの物語に特化したキャラも
    必要じゃないでしょうか?

秋 山:うーん、もう少し説明を試みてみよう。小説の登場人物に限らず、現実に存在す
    る人間は、みな「その瞬間にぱっと生まれたもの」ではなく、そこに至るまでの
    経緯、つまり過去のある人間ですよね。で、個々人の中にあるそういう過去、記
    憶、歴史はひとによって異なるわけで、これがそれぞれの「せかいを捉える意識
    =世界観」なのではないかと。当然、その世界観の中には、ほかの人間に対する
    思いや感情も含まれるわけですから、極論すればたったひとりでもせかいを描け
    るのではないかということです。

雨 街:つまり、一人のキャラを語ることが、すなわち世界を語ることになる、と。そう
    いうことですか。

秋 山:まあ、少なくともそのキャラにとってのせかいを語ることは可能ですよね。

芹 沢:物語を持ったキャラクターの共演と、キャラクターによる物語、の違いか? よけ
    い訳わからなくなった気もするが。

六 門:たった一人のキャラに、そのキャラと関わっている人たちへの思いやら何やら書
    き続けると、回想なりなんなりである程度対象となる他のキャラも出さなくちゃ
    いけないような気がして。

雨 街:確か、『石の中の蜘蛛』で主人公が部屋の中で音だけを頼りに前住んでいた女性
    の姿を探り当てるというのがありましたが、それと似ている気もしますね。

秋 山:あ、まあ、そうですね。回想の中に出すものを登場人物とすれば、二人以上にな
    りますね。でも、個人的には「私は昔から母の言うことに従って生きてきた」と
    いう文章がひとつだけあるからと言って、登場人物が主人公と母のふたりになる
    かどうかは首を傾げてしまいますが。

六 門:確かにそういう場合もありますが、全編その調子でいけるのかな、と思いまして。

秋 山:え、けっこうあると思いますけど。

雨 街:『ロリータ』とか?

六 門:遥さんがうまく纏めてくれて段々分かってきたやうな気がする。うーん、読んで
    きたものの違いかどうか分かりませんが。たとえば文庫本一冊ぶんくらいの小説
    があったとして、全編中に回想の中ですら他の登場人物と会話することも、他の
    人物の視点に切り変わったりすることもしない物語ってのは、どうも想像しにく
    いんですよね。あるのかもしれないけど、多分自分は書かないと思うです。30ペ
    ージかそれ以下の短編でなら、そういうのもアリかなとは思うんですが。

雨 街:『バルタザールの遍歴』とかは一人かはともかく、この論議にはかなり重要な示
    唆があるような気がします、が。

 遥 :「不思議の国のアリス」なんかもひとりっきり。

秋 山:バルタザールの遍歴!!先生! あれは示唆に富みすぎていて、逆に使えないと
    思います(笑)。『アリス』は登場人物出すぎですよ。猫とか女王様とか。

雨 街:なんてったって小説を静的戦略としてみている人ですからね。

 遥 :でも、全部アリスの夢でっせ。結局アリスひとりきりの物語なんじゃないかなあ
    ってちょっと思ったのですが。

秋 山:あ、そうだ。『風の歌を聴け』なんて主人公ひとりだけじゃないですか? まあ、
    バーテンとか出てきますけど。デレク・ハートフィールドという人物を内包して
    いるあたり、『風の歌を聴け』は、かなり自分の考える主人公ひとりだけで世界
    観を構成している小説であるように思えます。あと、芥川の『羅生門』なんてど
    う? あれは主人公や老婆がいるけれど、ほとんど人格が付与されていないことを
    考えると、登場人物ゼロの小説とも読めるかも。

六 門:羅生門は、さすがに読んでますね。うーん。羅生門は……確かに人格は薄いけど、
    人物は人物だしなあ、とも考えてしまう。
    何か段々出口が見えなくなってきた……

 遥 :抽象化されてますな、人が。なんか、人物を描くというより、「ヒトの業そのも
    の」を描いた小説だとは思う。

秋 山:まあ、でもイサイさんの定義では、世界観を内包した人物同士が接触することで
    物語が生まれるのでしょう? 羅生門のふたりは人物ではありますが、そこに物
    語があるかと聞かれたら「いや、ないでしょう」と思います。

雨 街:『さようなら、ギャングたち』とか、あ、本当に『電話男』は一人っきりですぜ。
    本気で。

秋 山:電話男! 初めて聞いた。ググろう。……電車男の二番煎じかと思ったら、文学
    っぽい。

 踝 :同じく、電車男、痴漢男、ヤンマーニ男に続く新作かと思った。

秋 山:騙された! 雨街さんに騙された! てっきりニートで引きこもりの主人公が、電
    話越しに脳内彼女と話す小説だと思ったのに……

雨 街:それは続編の『純愛伝』です。(マジ)

秋 山:>「電話男」が社会問題と化したある日、塾教師である「わたし」の妻が唐突に
    行った「電話男宣言」。「反電話男」の拠点となった塾と妻との狭間に揺れ惑う
    「わたし」が愛憎を超えて、ついに妻の宇宙に到達する純愛物語。
    「純愛伝」、すごい小説だなあ、おい。発行日が1986年ですって!

 踝 :テラ吹いた。

六 門:壮大だあ。

雨 街:小林恭二はいろいろヤバイですぜ。『宇田川心中』とかもかなりキテます。よう
    するに心中なのに東京の地下にダンジョンがあります。そこで冒険します(マジ)。

秋 山:……おや?どこかで見た顔だと思ったら、この人に会ったことありますよ。

雨 街:ええええええええええええええええええええ!

六 門:編集長、相変わらず顔広すぎす。

秋 山:一昨年のMYSCONに来てました。まあ、ちょっと会ったぐらいですけどね。

雨 街:ななななんあなななんなななななんなん(バースト)

 遥 :わーい、ねー、そろそろ戻りませんか、イサイさんと秋山さんのキャラクタ論の
    話しに。

秋 山:よし、戻りましょう。

六 門:それで。私の流儀ではたしかに羅生門の人物はキャラたりえませんが、まあ他の
    人物の流儀(この場合芥川氏)では、キャラなんだろうなあ、と思ってつい他人
    の書いたものだから、他人の流儀で作られているのはあたりまえー、あたりまえ、
    あたりまええ。

秋 山:この世界観話は戻っても延々と終わらない気配が濃厚なので、いったん置いてお
    きませんか。このままでは他のひとが喋れません。個人的には、初めましてな博
    美さんにお話を伺いたいところです。

六 門:ですよね、ちょっと長くなってしまいましたし。

雨 街:まあ、ぶっちゃけ、同じことをぐるぐるしていたような気も…。

六 門:(おもに認識のスレ違いが原因だったのかねえ……)

 遥 :(うちはそう思いますねぇ…でも、この話しはまた話題に上った本を読んでから
    話してみたい気がするですよ)

 …………………………………………… おしまい ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 
 気を抜いていたらえらいことになってしまいました。座談会が終わっていけない時に
終わってしまっていました。重ね重ね申し訳ありません……。

 引き続き原稿、募集中でございます。編集部までお気軽にお問い合わせください。
 それでは、また。 

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は7月5日を予定しております。では、またお目にかかりましょう。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年6月26日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       ご意見ご感想:
           info@kairou.com
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
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