文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_139

2007/06/05

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第139号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/6/05
                     http://magazine.kairou.com/unjyou/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第26回
 【3】 宮本淳世「怨時空」           第1回
 【4】 文芸座談会               第1回
 【5】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 みなさまこんばんは、ご無沙汰しておりました。
 キセンさんに代わりまして6月から当『雲上』の編集長をつとめさせて頂きます。遥彼
方でございます。
 編集長だなんて、肩書きはなんだかものものしいのですが、ほわんと楽しめる雲上を目
指していきたいなあ、と考えております。
 ふつつかものですが、何卒よろしくお願いいたします。
 それでは、どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第26回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 繊細に浮かび上がる、ふたつの夢のものがたり。

 …………………………………………… 「夢」 …………………………………………

 私はユニコーンになった。
 深く枝が垂れ重なる。青い水のような月光。森の下草を踏んで、私は駆けた。
 追われていると判っていた。幾つもの足音が背後で左右に振れている。
 何度目かに小川を渡ろうとした時、腹が熱くなった。蹄が岩を滑った。ささった矢羽が
揺れている。体を立て直して走り出すと、血が風に黒く流れた。
 丘の上に吟遊詩人がいる。私は姿を見せるのも構わず、森を飛び出し、牧場を駆けた。
大きな樹の陰に、小さな家がある。私は木の扉を首で押し開けて中に入った。尻で扉を閉
める。尻尾の一振りで物が倒れる狭い部屋。夜明けにはほど遠い。家を囲むように、狩の
角笛と犬の吠え声が闇に散らばる。
 詩人は眠っていた。私は額から伸びる角を詩人の胸に置き、詩人の夢に入り込んだ。
 詩人はどこか遠い宮殿の庭で、苦吟していた。王にほめられる歌をつくろうとして、で
きないでいるのだった。それは詩人の未来なのかもしれない。
 私は詩人の前に現れた。詩人は私の姿に驚き、竪琴を取り落とした。私を殺しなさい、
と私は云った。私を殺して、私の角に私のたてがみを張り、私の歌をうたいなさい。私が
はんだ草の夜露に映る星影を、私が口をつけたせせらぎの銀色を。
 私を殺しなさい。私を殺せば、あなたは私を歌える。
 私は今夜殺される。どうせ死ぬのなら、詩人の腕の中で死にたい。そうすれば、私は長
く生きられる。竪琴の枠として、竪琴の弦として、竪琴から流れる音として。
 首を傾けて、詩人に心臓の位置を見せながら、私は詩人の足元に落ちているのが、私の
体から作った竪琴だと気づいた。これはまさしく詩人の未来だった。

                  * * *

 牢の固いベッドで、詩人は眠っていた。野にいた時は自由で孤独だった。ユニコーンの
竪琴を手にしてから、洗練と技術と名声を手に入れ、宮殿に召された。しばらくは豪奢な
生活を楽しみ、それから夜明けの森の匂いが恋しくなった。かつての闇夜に逃げ込んでき
たユニコーンそのままの白昼夢の後、詩人は王の歌ではなく森の歌をうたいに行きたいと
申し出た。王は籠の扉を開けて鳥を逃がそうとはしなかった。歌えなくなった鳥は首をは
ねられる。
 疲労の後の不安な眠りが詩人の胸を浸していた。詩人は私の夢にやってきた。
 詩人は私に物語をうたい、覚えておいてほしいと微笑んで消えた。朝に詩人は殺される。

                  * * *

 私は売り出されていない作家だ。夜更けに散文を千字タイプし、夢見る。ユニコーンの
夢を。

 …………………………………………… 「夢2」 ………………………………………

 Kは私の理解者だ。
 Kとはめったに会わない。会うと、Kの髪に触れたいと思う。
 Kに抱かれたくて、Kに抱かれる夢を見た。しかし私の腕を掴んでいるのはKの形をし
 たであって、その魔の爪先が右手首に食い入る。血管の薄い壁がその爪に押し破られそ
 うで、抱かれると私は逃げたかった。
「マカ、ハンニャハラミタ!」
 夢の中にあって私も私ではない者になっているようで、覚えのない言葉が口から二度、
 繰り返し出た。魔は消え、私は右手首に小さな血豆をつくって目覚めた。マカって何だ
 ろう。荒れた古い庭の隅に天幕が貼られ、皆が私を祝っている。手入れされない枝が黒
 ずんで闇に垂れ、遠くに多くの気配がある。天幕の端にしつらえられた床に横になり、
 密な草の匂いをかいで、これもまた夢の中だと気づいていた。ならば眠らないほうがい
 い。なお深く迷宮に入り込んでしまう。しかしもう眠りに引き入られていた。
 そして目覚めた。今、ここに。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第140号(6月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 怨時空 第1回
                 著/宮本淳世
 ──────────────────────────────────────

 滲み出す憎しみ、日常にゆっくりと広がる歪み。
 ひとの闇と業をめぐる、不穏でミステリアスな物語。
 
 ………………………………………… 第一章 ……………………………………………

  秒針は音もなく時を刻み、熱を帯びた視線がへばりつくようにその後を追う。長針と短
針が真上で重なり、城島は息を飲む。直後、秒針が現れ何事もなかったように時を刻み続
けている。あれほど待ち焦がれた瞬間が、あっけなく通り過ぎて行った。
 城島はほっとため息を漏らし、煙草の煙を胸いっぱいに吸い込むと、そのまま息を止め
た。心に巣食っていた不安から開放されたのだ。頭がくらくらしてくる。そして煙を一気
に吐き出す。歓喜が脳を痺れさせた。時効が成立したのである。
 心に深く突き刺さっていた矢じりが、まるで日差しに晒された氷のように溶けてゆく。
その傷跡にはこそばゆい感覚が残されているだけだ。心の底から笑いがこみ上げてくる。
思わず大声を出して笑った。これまでの鬱積をいっきに晴らすように心の底から笑った。
 すると、寝室のドアが突然開かれた。高揚し高みに達しようとしていた心が一瞬にして
しぼむ。そこに見たものは、むくんで膨れ上がった顔、ぶくぶくの首筋、妻、泉美の無残
な姿だった。妻が腫れぼったい瞼を上げ、くぐもった声で怒鳴った。
「あんた。いつまで起きているつもりなのよ。もう12時過ぎよ。いい加減に寝なさいよ」
「明日、私、早いんだから」
「ああ、分かった。もうすぐしたら寝るよ」
と、吐き捨てるように言って、心の中で舌打ちした。城島は立ちあがると食堂に席を移し
た。もう少し飲むつもりである。しらふであの女の隣のベッドに寝る気にはなれない。ま
して時効成立の祝杯には、取って置きのブランデーを開けるつもりだったのだ。
 しばらくして妻の高鼾が響く。城島はふんと鼻を鳴らしブランデーを喉に流し込む。熱
い流れが食道を通って胃に広がってゆく。あの事件のことを思い出す度に不安に駆られ、
胃がきりきりと痛んだ。それも昨日までのこと。警察が突然尋ねてくることはないのだ。
 城島は晴れ晴れとした思いを噛み締めた。思えば長い15年間であった。いろいろとあ
ったが、まずまずの人生だ。一つ難を言うとすればあの女房だろう。まったく痛恨の極み
である。城島は深いため息を漏らした。

 3歳年上の女房、泉美は銀座のバーのホステスだった。そんな生業の女と結婚すると知
った母親は予想通り狼狽し、そして頑強に反対した。その説得には一月も要したが、母親
の言うことも理解出来た。母親はこう言ったのだ。
「お父さんが財産を残してくれたとはいえ、母子家庭ということで大変だったの。だから、
貴方には私の期待に、それなりに応えてもらいたいわ。私の期待って過大かしら。普通の
女性と結婚してもらいたいだけなのよ」
そう言って、城島を睨んだ。
 これまで城島は母親に逆らったことなどない。期待通りに生きてきたのだ。何故なら、
城島は母親を心から愛していたからだ。気風の良い親分肌で、頼られるとどんなことでも
人肌脱いでしまう。城島はそんな母親に愛情と憧れを抱いていたのだ。
 だからこそ、自分の伴侶にも母親の面影を求めた。しかし、そんな女性が何処にでもい
るわけではない。結局、経験を積んだ年上の女性が一番それに近かったのだ。城島は母親
にこう言って説得にかかった。
「泉美は母さんに良く似ているんだ。この年になるまで、僕は母さんのような女性を探し
てきた。そして漸く巡り合えたんだ。泉美は、性質も雰囲気も母さんにそっくりなんだ」
 この時、母親は既に68歳になっており、若かりし頃の面影は皺の中に埋もれていたの
だが、確かに泉美は母親の若き日を彷彿とさせる何かを持っていた。城島は目に情愛を滲
ませ、じっと母親の目を見詰めた。
 精一杯厳しい顔つきをしていた母親は、一瞬相好を崩しそうになるのをようやく堪えた。
もうひと息だと思った城島は、最後の台詞を吐いた。
「母さんと結婚するわけにはいかないだろう。だからせめて似た人とそうしたかった。分
かってくれよ、母さん」
母親は俯いて、ふーと息を吐いた。しばらくして顔を上げるといつもの優しい顔に戻って
いる。そして微笑みながら言った。
「あんたには負けたわ。分かった。認めてあげる。そこまで言われたら、反対出来ないも
のね。じゃあ、認めてあげるから、そのかわり、すぐにでも子供を作りなさい。私、早く、
孫の顔が見たいの」
城島は母親と視線を合わせ、にこりとしてその手を握った。城島が30歳の時である。

 結婚当初、泉美は多少肉付きの良い方だが、肉感的で十分魅力的だった。ボリュウムの
あるその肉体に城島は溺れた。母親のおっぱいをまさぐる乳飲み子のように、城島は泉美
を片時も離さなかった。しかし、幸せとはそう長続きしないものなのだ。
 泉美の妊娠を知って、城島は心から喜んだ。と同時ににんまりもした。母親も結婚は許
してくれたものの、どこかにわだかまりがあるらしく、それまでと打って変わって、財布
の紐をしっかりと締めてしまった。
 城島はお金にルーズで、独身時代から給料だけでは足らず、母親に小遣いをせびるのを
常としてきた。それがぱったりと途絶え、経済的に青息吐息に陥っていたのだ。しかし、
もし子供好きな母親に赤ん坊の顔を見せれば、それも一挙に挽回できる。
 二人は子供の誕生を心待ちにし、指折り数えた。泉美は幸せの絶頂だった。城島はそん
な泉美をいとおしく眺め、いたわり、家事までやってのけた。しかし不幸は突然やって来
た。流産だったのである。しかも、泉美は子供の出来ない体になってしまったのだ。
 勿論、城島もがっくりしたが、泉美の落胆ぶりは見ていられないほどであった。その日、
二人は病院の一室で抱きあって泣いた。泉美が不憫でならなかった。しかし、子供が出来
ないと知った母親がどう出るか。それを思うと暗澹たる気分に襲われたのも事実だ。
「貴方のお母様は私を憎んでいるのよ。子供の出来ない体になった私を追い出そうとして
いるわ。今日も電話してきて、流産したのは私が仕事を続けていたからだと非難したの。
でも、私は先生のアドバイスに従っていた。決して無理をしていたわけじゃないわ」
「分かっている。君に責任なんてない。それにお袋が非難したというけど、そんなことな
いって。君は言葉に過敏過ぎるんだ。いいか、俺は、君を愛している。たとえ子供が出来
なくても一緒だ。お袋が何と言おうと、この俺が守ってやる」
「本当、あなた、本当なのね」
こんなやり取りを何度重ねただろう。確かに、母親は泉美を憎み始めている。そして、嫁
姑の仲はそれまで以上に険悪になっていった。泉美の愚痴と涙が城島を追い詰める。二人
に挟まれ右往左往する毎日が続き、次第に泉美の涙が重荷になっていった。
 暗い顔を突き合わせて食事をしても味も素っ気もなかった。そして深いため息。初めの
うちこそ優しく慰めようという気持ちも起こったが、四六時中となるとその気も失せる。
無視することが多くなり、終いには、うんざりして憎しみさえ抱くようになった。
 或る日、帰宅すると家の中は真っ暗である。居間の電気を点けたが、誰もいない。寝室
を覗くと、部屋の隅で何かが蠢いている。びっくりして目を凝らすと、泉美がうずくまっ
て泣いているのだ。ぞっとすると同時にうんざりした。寝室のドアを思いきり閉めた。
 毎晩銀座で飲み歩き、帰りも遅くなった。憂さを晴らすために浮気にのめり込んだ。職
業がら、タレントやモデル志望の女達との接触も多く、若い肉体をむさぼった。二人は口
をきかなくなり、互いを無視するようになった。この頃、泉美の食欲が爆発したのである。
 ぶくぶくと太って、醜くなっていった。最初のうちはストレスによる過食症かとも思っ
たが、城島を睨みつけるようにして飯を口に詰め込んでゆく泉美を見ていて、それは少し
違うような気がしてきた。
 しかし、醜く太ることが、美意識の人一倍強い城島に対する復讐だと知った時は、呆れ
ると同時に慄然とした。ある日、口喧嘩をして、城島が怒鳴った。
「自分のその姿を鏡で映してみろ。俺に相手にされたいのなら、そのぶくぶくの体を何と
かしろ。今のお前はトドだ。声までトドそっくりだ。喉がつまったようにゲコゲコ言いや
がって、何を言っているのかさっぱり分からん」
これに対し泉美が言放ったのだ。
「あんたになんて、もう相手にされなくってもいい。もっと醜くなってやる。醜くなって
復讐してやる。あんたが悪いのよ。私を構ってくれないあんたの責任よ」
そう言って、城島を憎悪の眼差しで睨んだ。城島はその形相を見てぞっとした。返す言葉
もなかった。
 離婚は何度も考えた。しかし、それを思い留まらせたのは、或いは、二人が共有した深
い悲しみ、そして幸せだった頃の共通の思いに他ならないが、何よりも離婚に伴う財産分
与が大きな理由だったのである。
 高層マンションの最上階。そこから眺める夜景は世界を独り占めしているような錯覚を
起させる。城島はそれをこよなく愛した。マンションの頭金は母親が出したが、月々のロ
ーンは泉美と折半で、離婚した場合は当然売却せざるを得ない。そのことを思うと躊躇せ
ざるを得なかったのである。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第140号(6月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 文芸座談会          第2回
 ──────────────────────────────────────

 さる5月7日、文芸スタジオ回廊(http://magazine.kairou.com/)に創作者がふたたび
集結。「魅力的な人物を書く(描く)ために行っている努力」をテーマに、それぞれの創
作スタンスについて熱く語り合った、その記録。

 ………………………………………… パート1 …………………………………………

秋山真琴(秋 山):
言わずと知れた「回廊」編集長。小説に「廃墟と都市」(「回廊」第十号)など。

踝祐吾( 踝 ):
「回廊」コラム班長、製作班長。連載コラムに「積読にいたる病」、小説に「さよなら、
異邦人」(「回廊」第七号)など。

遥彼方( 遥 ):
「雲上」編集長、「回廊」編集部員。連載コラムに「旧式ラジオ」、小説に
「Phantasmagoria-Melanchoria」(「回廊」第七号)など。

六門イサイ(六 門):
「回廊」副編集長。小説に「歓喜の魔王 FRUDEN・ALBERICH.」(「回廊」第十号〜)など。

芹沢藤尾(芹 沢):
小説に「陽炎の夏」(「回廊」創刊号〜)など。

博美(博 美):
イラストレーターとして活動中。

雨街愁介(雨 街):
小説に「雨日」(「回廊」第九号)、超短編に「DO YOU KNOW WHERE THEY ARE GOING?」
(「回廊」第十号)など。

秋田紀亜(秋 田):
コラムに「電気羊の夢を見る者たち」(「回廊」第六号」)など。

遠野浩十(遠 野):
小説に「ラーメンを食べに行こう!」(「回廊」第九号)など。

キセン:
「雲上」編集部長。小説に「Don't Trust Over Zero.」(「回廊」第十号)など。

からすとうさぎ(烏 兎):
小説に「ラストパピヨン」(「回廊」第十号)など。

秋 山:うし、じゃあ、そろそろ始めますか。じゃあ、今日は踝さんから。

 踝 :おおう、僕からですか。まぁ、簡単に言いますと、その人物のバックボーンを決
    める、というところですかね。僕自身は「書きたいシーンが最初にあって、その
    シーンのために作品を構築する」ような人間なので、そのシーンを魅せるために
    は、やはりそのシーンに見合った人物造形を作ったりするんですよ。なんで、最
    初に人物のプロフィールを簡単に決めておいて、そこから話を展開させていくと、
    人物が勝手に動いてくれます。ただ、細かくやりすぎると逆にそれに縛られるこ
    とになるので、短編作品の場合は結構ざっくばらんに考えたりします。その辺は
    掌編と短編と使い分けるような感じですかねー。ぶっちゃけ掌編だと人物設定全
    くしないので。逆に短編は登場人物一覧表を作らないとかけない。

秋 山:と言うことは、魅力的な人物像を作ることは特に意識していない、というわけで
    すか? 結果的に魅力的になることはあれど。

 遥 :キャラクタが主軸、というよりは、まず物語あってのキャラクタ、というか。

六 門:掌編のような短いものは、逆にキャラが濃いと邪魔になったりしますねえ。

 踝 :んー。魅力的な人物像を作るためにはそれに見合ったプロフィールなり、過去な
    りがあって、その辺の設定を作者が念頭に置いて描くことにより、結果的に人物
    造形の味わいが増す……みたいなことを考えたのですが。うーん、確かに「こー
    ゆーキャラであーゆー事をやりたい」ってのが出発点であることは確かですね。

六 門:いわゆる英雄譚が、まず英雄ありきみたいな。

秋 山:おや。「書きたいシーンが最初にあって、そのシーンのために作品を構築するよ
    うな人間」なのに「こーゆーキャラであーゆー事をやりたいってのが出発点」と
    いうのは矛盾しているのでは?

 踝 :書きたいシーンの中には「書きたいキャラクタ」も含まれるんですよ。ただ、別
    に他人にその人物について語らせなくてもいいんですよ。あえて語らない事によ
    る描写(例えばキャラの仕草とか)が魅力にも繋がるとか。そのクライマックス
    だけが、頭の中に映像として浮かんじゃうんですね、僕の場合は。人物造形の中
    には「いわゆる萌え要素ですよ」ってのも含まれるかも知れない。まぁ、そんな
    ところですかね。

秋 山:言うなれば、嵐の山荘で事件を解決する探偵のために、山荘と探偵と被害者を考
    え出す、みたいな?

 踝 :極端に言えばそうかも。

秋 山:と言うことは、かんたんに物語が先行して、人物が追随するというわけではない
    ですね。まずクライマックスシーンがあって、そこに至るまでの物語と人物など
    全てを用意する、ですね。

 踝 :うん、まぁ「クライマックスシーンがあって、そこに至るまでの物語と人物など
    全てがある」に集約されちゃったので、それに到るために人物をしっかり肉付け
    しておく、というのが僕のやり方ですかね。以上です。おしまい。

秋 山:じゃあ、次はネタを振らないと喋らない奥手な芹沢に振ってみようと思います。

芹 沢:主役と脇役を書き分けるってところかな。ストーリーを「主役に何をやらせたい
    か」「脇役はそのために何をするべきか」を分けておく。んで、主役は「何をす
    るためにどうするか」「なぜそれをしたいのか」を明確に出す。それに違和感を
    出さないように、バックボーンに「過去」を置いたり、人物関係を利用したりす
    る。ファンタジー系や伝奇系なら、どういう能力を与えるか、なんかも考えるの
    がそれに加わる。

 踝 :目的意識みたいなもんを、登場人物に設定する、みたいなものですか。

芹 沢:まず主人公を作って、それからそれが目的を達成できる、ひいては活躍できる物
    語を構築しますから思い付きを逆算してストーリーを作るので、正直物語は後付
    けに近いです。

 遥 :何らかのハイライトがあって、そこからまず人物が立ち上がってきて、その人物
    とハイライトから物語が立ち上がる?

芹 沢:ハイライトがあって、その場面にいる人物がいて、その人物にその場面を演じさ
    せるために物語が立ち上がります。

秋 山:では、次は初登場の博美さん。じゃあ、博美さんはイサイどんの知り合いなので、
    司会パス。

六 門:とりあえず勘違いが広がっているようだが、厳密には博美さんはイラストレータ
    ーさんじゃないのよ。まあ「物語をつくる人」という括りでは我々と同業という
    ことになりますが。その上で、博美さんがキャラクターをつくる際に心がけてい
    ることなどを教えてください。

博 美:わたしは小説じゃなくて漫画なのでちょっと違うかもしれないんですけどね。

 踝 :あれ、漫画描く人でいらっしゃいますか?

博 美:目指しているだけですよ。投稿なんどかしたけどカスリもしないぺーぺーです。

秋 山:やっぱりこのテーマは、小説書きより、絵描きが答えてこそ意義あり! ですよ。

博 美:魅力的な人物ですか。一時期アホみたいに何事にも動じないキャラばっかつくっ    てたなあ。最近そうでなくなりましたが。 動じないのがカコイイと思っていた    のかも……。 

 遥 :漫画だと、例えば人物の表情とか服装とか、小説より細かくダイレクトに見せる
    ことが出来ると思うのですが。その辺りとキャラの立ちかたについての関係づけ
    というか、工夫というか、ありますか?

 踝 :イラストレーターの描画法と漫画描きの描画法では違いますからねー。

六 門:遥さんやぶっさんが言うように、確かに媒体によってはキャラの表現法は違って
    きますね。それでも、プロフィールとか、基本的なところではまあどこでも通じ
    るものがあるかなと。

博 美:絵は、たたずまいというか、表情というよりたたずまい重視ですね。ポーズとは
   また違う、なんて言ったらいいのか。

 遥 :背中で語る、みたいな。

 踝 :雰囲気、とかそういう感じでしょうかねー。

六 門:イラストや漫画では、キャラのヴィジュアル面の表現に大きな力を発揮しますが、
    キャラの実際の言動とかプロフィールとかイデオロギー?何かは、小説でも漫画
    でも設定する上では同じなのではないかと。博美さんはそこらへんの造詣はどう
    ですか?

博 美:立っているだけの絵で こいつできる!って感じてもらえるような絵を目指して    いるというか。なんとも言葉にするのむずかしいのですが。

六 門:風格、ですかね。まあ、風格というのは、モノクロに対するフルカラーみたいな
    ものというか。

雨 街:大友克洋の絵みたいなのが理想、っていうことですか(画風とかそういうのでは
    なく)。

博 美:はい。

 踝 :雰囲気でがっしがっし、というのはありますね。参考になります。次の方に移り
    たいと思いますが……よろしいでしょうか?

秋 田:では、イラストについていいですか。今、ペンタブレットが復活したので、久し
    ぶりに女の子のイラストを描いていますが、表情を描くのが全体の7割以上占め
    ました。以上です。

(司会 六門→遥)

 遥 :じゃあ、よあけさん。

遠 野:ええと、僕は人物を描くのに力を入れてません。単純に実力不足で、そこまで頭
    回す余裕がないのです。今まで書いた小説の登場人物は、ほぼ全て適当に書きま
    した。しかし、最近はちょっと変わってきまして。ついこないだ書いた、40枚ほ
    どの短編――「秋山真琴は怯まない」という短編があるのですが、それを読んで
    もらった方に、キャラが立ってて面白い、といわれたのです。

 遥 :作者の全然意図しないところで、魅力的なキャラが出来上がってた、ってことで
    すかね。

遠 野:えー、実はこの小説、主人公に特定のモデルがいるわけですよ。で、その人物が
    魅力的だと思われたのは、モデルがいたからかなあ、と思ったわけです。自分と
    しては深く意識せずに、魅力的なキャラが書けたのです。モデルがいるというの
    は、その登場人物を意識しやすいということなのかな、と。

 踝 :特定のモデルって……タイトルのごとくで?

遠 野:で、僕が信じている言葉の一つに、高橋源一郎の「小説には自分の知っているこ
    としか書くことができない」というのがありまして、ああ、やはりそうなのかな
    と実感しました。だから最近は、登場人物に関してもそうですし、まあ、ほかの
    小説の中のことについては、なるべく自分の知っていることを書こうと意識する
    ようになりました。

雨 街:ヴィトゲンシュタインの『語りえないことについては沈黙しなければならない』
    と一緒ですね。

遠 野:たぶん、それに近いことなんでしょうね。知らなかったら、その対象を知る努力
    をしたりとか。

キセン:そうするとアレですね、小説家は多様な経験を積み重ねないと駄目だ!!という
    ことですかね。

遠 野:そうとも言えるし、そうとも言えないと思います。歴史に残る小説を一編書いた
    作家と、多くの名作を残した作家とで、どちらが偉大かという判断はつけられな
    いと思います。つまり、そういうことです。

 遥 :自分からそれほど遠くないものを見つめなおすことで、結果として(キャラクタ
    だけでなく)魅力的なものが生まれるわけですな。

秋 山:第12号には「夜明けの終わり」を書くといま決めたよ。最初のシーンは公園だな。
    ブランコに変な男の子が座ってるの。

 遥 :人生経験は絶対ものを言うんだろうなあって思います。これは全然経験してなく
    てわからんから書けんっていうの、たくさんある…。

 踝 :自身の引き出しを広げておくのは創作一般に言えることではありますね。

遠 野:作家の基礎体力的な意味では、経験が多いに越したことはないのでしょうよ。で
    も、意識しすぎるのもどうかと。

キセン:書くジャンルにもよるけど、どちらか一方だけではだめなのかな。経験による職
    業ものミステリにこそ細部には想像力が必要だし、幻想文学でもその下支えをす
    るのは現実の経験によるディティールだろうし。

遠 野:バランス感覚は、完全に「書くジャンル」に左右されると思うよ。ジャンルや作
    家によって必要とされる能力が違うということ。「何処を目指すか」という視点
    がこの問題を解決するはず。

烏 兎:想像力と経験力はRPGの魔力と腕力みたいな関係かと思います。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第140号(6月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 6月はこんな感じでお送りいたします。あと、編集長は交代しましたけれど、引き続き
作品募集も行っております。我こそは! という方はぜひ編集部にご連絡くださいませ。

*公式サイト
http://magazine.kairou.com/unjyou/
*編集部
info@kairou.com

 次回の配信は6月15日を予定しております。では、またお目にかかりましょう。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年6月5日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:遥彼方
           キセン
       ご意見ご感想:
           info@kairou.com
       購読の解約および、公式サイト:
           http://magazine.kairou.com/unjyou/

       (c) unjyou_kairou 2007 all right reserved

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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
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