文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_125

2007/01/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第125号
         毎月、05日、15日、25日配信         2007/2/25
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 短期集中連載『二人の記念日』            第2回
 【3】 桂たたら『塑性言論』          第10回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 レポートが終わりました。単位の前に定期を落としました。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 短期集中連載『二人の記念日』            第2回
                 著/守護雷帝
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 雲上史上最強のラブラブ小説第2回!

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 思い出を反芻しながら、彼は食器棚から少女専用のグラスを取り出した。何か形のある
物も、と思って、少女がねだったプレゼントとは別にあげたものだ。
 そのグラスを見ながら、彼は思わず苦笑を漏らした。
(ホントに忘れられないな、あの日のことは)
 確かに少女がねだったプレゼントは無茶なものだった。彼がそれまでに渡したどんな誕
生日プレゼントよりも。
 いや、モノとしては無茶ではない。高価なわけでも、入手が難しいものでもなかった。
 何が無茶かと言えば……とてつもなく恥ずかしい、この一言に尽きた。
(……キスしてくれ、だもんなぁ)
 もちろん、少女の事は好きだったし、告白するならその日がチャンスだとも思っていた。
あるいは、少女の方から告白してくるかもと考えなかったわけではない。
 だが、どちらにしても思いを告げるという普通の形だと思っていたのだ。
 ところが、実際には誕生日プレゼントにキスをねだってきたのである。後になって少女
から「絶対に忘れない告白でしょ?」と言われた時は、唖然としたものだった。
 それで、実際に忘れられないのだから、少女の策は見事としか言いようがない。
 始まりからして衝撃的だったためか、彼は少女と付き合っていて、飽きるということが
なかった。
 例えば、付き合い始めた直後の体育祭。徒競走に出場した少女が一着になったご褒美は、
お弁当を食べさせてくれ、というものだった。しかも、公衆の面前でだ。もちろん、その
後に彼が食べさせられたのは言うまでもない。嬉しいとか恥ずかしいとか言う以前に、頭
が真っ白で何も考えられなかったのはよく覚えている。
 例えば、クリスマス。雪の中でイルミネーションを見ていると、いきなりコートに潜り
込んできて抱きしめさせられた。じんわりと染み込んでくる少女のぬくもりと、温かいと
言って見上げてきた時の笑顔は、忘れようとも忘れられない。
 他にも数え上げればキリがないが……まるで推し量ったように、少女の言動は彼の心に
響くのだ。少しばかり無茶をすることもあったが、そんな少女を見ているのが純粋に楽し
くてたまらない一年だった。
 もう目を白黒させたり、慌てふためいたりするような驚きは少なくなってきたが、慣れ
とは恐ろしいもので、そういうイベントがないと物足りないとさえ思う。
 もし少女がここまで計算してあんな告白をしたのだとしたら……
(……ま、悪くはないか)
 彼は唇の端に笑みを刻む。考え方を変えれば、一年前の少女がそれだけ好きでいてくれ
たということだ。そして、今もまったく変わらず――いや、たぶんそれ以上に好きでいて
くれているということなのだから。
 彼は、冷蔵庫を開けて、悩むことなく麦茶を手に取った。オレンジジュースやミネラル
ウォーターなどもあるが、少女の好みは麦茶だ。彼はなみなみと麦茶を注いだグラスを慎
重に持ちながらキッチンを後にする。
 リビングに戻ると、少女がソファーにうつぶせに倒れていた。バッグが脇に投げ出され、
収まりきらなかった手が、床を撫でるように垂れている。
「……はふぅ」
 少女が恍惚とため息を漏らす。
 少女も、このソファーの感触の虜だった。時折、このソファーが目的で遊びに来るので
はないかとも思うが、くそ暑い中外に出なくても済んでいるのも確かで、あえて彼は追求
しないでいた。もっとも、彼氏の部屋よりリビングにいたがるのは、少しばかり複雑な気
持ちになるが。
「……せめてスカートくらい気にしたらどうだ?」
 彼は少女とは反対に重いため息をついた。
 ソファーへ飛び込むように倒れ込んだのだろう。ミニスカートがまくれ、健康的に日焼
けした太ももと、その上にある白い布地がわずかに見えていた。
「大丈夫、他の人には見せないから」
「……当たり前だろ」
 少し考えたが他に言葉が浮かばず、彼はそう言うことしかできなかった。
 話題を変えるように、テーブルへグラスを置く。すると、少女ががばっと起きあがった。
「ありがとー」
 少女は顔をほころばせて礼を言うと、麦茶を一気に飲み干した。
「はぁ……生き返る」
 息をついて、少女は肩の力を抜く。そんな少女の様子に微笑をこぼしながら、彼は向か
いに座った。
「外、どんな感じだ?」
「もう太陽がギラギラして何がそんなに憎いのかってくらい暑いわよ」
 外の暑さを思い出したのか、少女はイヤそうに顔をしかめた。
 窓の外では、目を焼かんばかりに日差しが降り注いでいる。見ているだけで体感温度が
上がりそうだ。
「……本当に暑そうだな」
 ちらりと目をやった彼もイヤそうに顔をしかめた。しかし、曇り空も色々と不都合なの
で遠慮したい。複雑な気分だった。
 今日は、二週間ぶりのデートだ。隣町の水族館に行った後、ショッピングモールで買い
物をして、夜には少し離れた遊園地に行って花火を見る予定である。
 ほぼ毎日顔は合わせていたが、お互いにバイトが忙しくてここしばらく一緒に出かけて
いない。だが、少女の誕生日ということもあって、今日だけは是が非でもデートに行く、
と決めていた。
 特に彼は、今年こそプレゼントを用意し、万全の体勢で少女の誕生日を祝うつもりでい
る。そんな記念日に、陰気な空模様など盛り下がることこの上ない。
「まぁ、でも、これだけ晴れてれば花火も問題なさそうだな」
 彼は前向きにそう言って少女に同意を求める。だが、少女は気まずそうにそっぽを向い
ていた。
「……どうかしたか?」
「その……今日の事なんだけど……」
 少女が、少し言いにくそうにしながら、投げ捨ててあった鞄を手元に引っ張ってきた。
そして、中から出した一冊のノートをめくってみせる。
「……おい」
 思わず彼は声を漏らした。
 その真っ白なノートは、夏休みの宿題だった。少女の一番苦手としている数学だが……
それにしても、夏休み最後の日に一問も解いていないのは明らかに危険だ。
「ごめん……大幅に予定狂っちゃって」
 一応はすまなそうにしているものの、苦笑いしているところから見ると、最初から彼を
アテにしているようだった。
「……まったく」
 呆れたように言いながらも、彼は立ち上がる。
 できれば外れてくれと思いながらも、どこかでこうなりそうな予感があった。小学生の
習性みたいに宿題を忘れるのは、毎度のことである。
 今回は誕生日という記念日だけに、少しだけ期待していたが、そうそう都合よくはいか
ないようだった。
(水族館は諦めた方がよさそうだな……)
 そう思いながら、彼はリビングを出ようとして――
「あ、ねぇねぇ」
 少女に呼び止められ、首だけで振り返って一瞬、固まった。
「よろしく」
 満面の笑みを浮かべる少女は、トランプを広げるように扇状にノートを持っている。そ
の数は、ちょうど宿題として出された教科の数と同じだった。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第128号(2月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 桂たたら『塑性言論』          第10回
                 著/桂たたら
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 桂たたらの頭の中、記念すべき第10回の内容は! ……えーと。

 …………………………………………連載エッセイ…………………………………………

 愛読書は「windows 100%」。

 どうもこんばんは、桂です。

 *

 さて今回は

「売れる作品三つの法則!」

 という話をしますよ! なんというか冒頭から胡散臭さここに極まれりみたいな雰囲気
ですが気にしない!

 まず結論から述べますが、その三つは以下のようなものです。

 1:ノーストレスであること
 2:美少女が出てくること
 3:ハッピーエンドであること

 それでは各要素について少し掘り下げて説明しましょう。

 *

 一つ目の要素である「ノーストレス」であること、というのは、受け手に対するストレ
スを極限まで減らすことを指します。

 どんな人でも、フィクションの中でまでストレスを感じたいとは思わないものです。
 だから、物語の主人公たちは、良い生まれ、良い血統をあらかじめ装備して、すべての
困難を打ち破っていくのです。

 そこに「乗り越えられない挫折」は存在せず、物語に起伏を与えるという意味での「乗
り越えることを前提とした挫折」が、演出として用いられるに過ぎません。
 その「乗り越えることを前提とした挫折」を、どれだけ乗り越えられなさそうに見せら
れるか、というのは、作者の腕にかかってきます。

 一時的なものとはいえ、主人公が挫折を経験すると、受け手もストレスを感じてしまう
のです。
 誰しも、なにをやっても上手くいかない主人公よりは、困難を乗り越え、強くなってい
く主人公を見ている方が楽しいはずです。
 ……はずです、といいたいところですが、そうではない物語を望む風潮も少なからずあ
るようですね。

 しかし、この「乗り越えることを前提とした挫折」ですら、受け手にはストレスとして
感じられるため、使い方には注意が必要です。
 それが多く続くと、受け手も不快を感じ、作品から離れていくことになります。

 不自由の無い仮想人生。
 ストレスを感じない物語。
 良いとこの生まれで挫折知らず。
 なんでも上手くいく順風満帆。

 これこそ、受け手が望む理想の形なのです。

 よく見かける、主人公が王家の生まれだったとか、勇者の息子だったとか、優秀な血統
であるというのは、苦労を避けるための装置というわけですね。

 さらに、「分かりにくい」話でも受け手はストレスを感じます。

 視点がころころ変わる話、キャラクタが多すぎて把握することに時間がかかる話、理解
できない専門用語がバシバシでてくる話、分かりにくい伏線の多すぎる話。
 これらにストレスを感じ、それが受け手を限定してしまっている可能性があるのです。
 もちろん、それが好きだという人も決して少なくはないでしょうが、老若男女総てをタ
ーゲットにする場合は、ストレスの少ない作品の方が、圧倒的に有利なのです。

 ストレスの少ない話の構造を、小説家の西尾維新氏は意欲的に取り入れています(戯言
シリーズの半分くらいしか読んでいませんが)。
 漫画家で言えば、やはり尾田栄一郎氏の「ONE PIECE」あたりが読みやすさでは抜群です。

 ストレスなく、かつ分かりやすく単純である。

 これが性別年齢問わずに受け入れられ売れるために、もっとも重要なファクターになる
のであると思います。

 *

 さて、二点目は美少女が出てくること、です。

 やはり美少女が登場していると場面が華やぐ、という効果もありますし、なにより「大
きいお兄さん層」というものに訴えかけることもできるのです。

 もう、それはもう無条件で。引き寄せられるわけです。まるで光に集まる愚かな蛾のよ
うに。ハァハァするわけです。あー、人型パソコンのちぃとかどっかに落ちてないかしら。
俺も拾いてえー! あ、美少女という概念については漫画版「舞-HiME」がすごいですよ。
美少女インフレ起こすくらい。

 もう、ちょっと美少女論で軽く一冊書けるくらい好きすぎて、現在、軽い興奮状態なの
ですが(キモい)、ここで「美女」でなく「美少女」でなくてはならない論拠を提示しま
すよ。

 良いですか、物語に登場する美しい女性といったら、無条件でハイティーンなんです!
 それくらいの年齢が、イヤラシイ話、年配の方々の親心にも、男性の方々のスケベ心に
も作用するんです!
 やはりここでもターゲッティングは老若男女!
 だから物語に登場する美しい女性は問答無用で17歳!

 以上だッ! 反論は受け付けないッ! 散れッ、木っ端どもがッ!

 ――閑話休題。

 ……さて。

 さらに、美少女効果は、そういった男性客をターゲットにするだけではありません。

 ここで、うろ覚えな話をすることをお許しいただきたいのですが、

 作家の福井晴敏氏が、映画化を前提とした小説の執筆を依頼されたとき、その作品の登
場人物を全員男性でいこうとしたところ、「女性も登場させてくれ」と言われたという話
があります(何度もいうようですがうろ覚えです)。

 なんでも、上映するにあたって、全員男性の映画では、女性客の動員が見込めないから、
ということらしいのです(オタクの場合は逆ですけれど)。

 男性客のみならず、女性客にも訴えかけることができる存在、

 それが「美少女」なのです!

 ここ、少女であることが大事なんですよ! 良いですか、美少女はッ! 全人類のッ! 
夢と希望なんです!(口角泡を飛ばしながら)

 ここであの衝撃的な台詞をパロるなら、

「美少女が嫌いな人間なんていません!」

 といったところですね。


 ……引きましたか?

 *

 ラストは、ハッピーエンドであること、です。

 これは単純に、バッドエンドとハッピーエンドを比べたとき、好きな人が多いのはどち
らかという話に過ぎません。

 意味無くバッドエンドにするようなストーリーなら、ハッピーエンドにしろ、というこ
とですね。

 鬱展開、鬱エンドを望むのはやはり少数派であるということでしょう。

 とりあえず、なにはなくともハッピーエンド! どうしても、という事情が無い限りは、
お父さんバッドエンドなんて認めませんよ!(個人的趣向)

 そんな後味の悪い話ばかり書いているから売れないんだよ、○○○ン!

 *

 次回は、要望があれば「お約束の大事さ」について語ります。
 なければ私の半生を綴ります。原稿用紙換算で700枚を超える長編です。
 お勧めは第二部「滑り台からダイブしてつくった額のタンコブと同じ位置に階段の角を
ぶつけたよ」編と、第五部「裏山探索してたらガチで遭難して泣きかけたよ十九歳」編で
す。

 長らくお付き合いいただいて申し訳ありませんでした、桂でした。

(BGM 6号さん「黄色いバカンス」)

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第128号(1月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

*****◆◇作者と読者を繋ぐ〜オンライン文芸マガジン『回廊』最新刊 Vol.9◇◆*****

    それは純粋にして、妖しく……はかなくして、強きもの
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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は2月5日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2007年1月25日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
           unjyou@ml.kairou.com
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最終発行日:  
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