文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

全て表示する >

雲上マガジン vol_122

2006/12/25

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第122号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/12/25
                     http://unjyou.kairou.com/

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 短期集中連載『二人の記念日』            第1回
 【3】 桂たたら『塑性言論』          第9回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 オンライン文芸マガジン「回廊」第九号はお楽しみいただいているでしょうか?
 早くも編集部では次号以降の予定について話し合いが行われています。雲上もさらにク
オリティを高めていくつもりなのでよろしくお願いします!
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 短期集中連載『二人の記念日』            第1回
                 著/守護雷帝
 ──────────────────────────────────────

 さて、今月、来月と再来月の25日号は赤井さんにお休みいただいて、期待の新鋭の作品
を三回に分けて掲載します! 甘甘な恋愛小説をご堪能ください。

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 冷房で二十六度に保たれているリビングは、彼にとって一番快適な環境だった。
 午前十一時。すでに外はじっとしていても汗が滑り落ちるくらいに暑く、蝉達は嫌味な
くらいに元気な合唱を響かせている。
 それに比べれば、リビングは天国のような空間だ。堕落とそしられようとも、彼は冷房
こそ人類の発明の中で最も偉大なものだと信じて疑わなかった。
 その恩恵を最大限に受けつつ、彼は大きなソファーに仰向けに寝転がり、文庫本を読ん
でいた。
 足を伸ばしながら、柔らかいソファーに包まれて読書にふけるのは、彼にとってこの上
ない贅沢だった。部屋にも冷房はあるが、このソファーがあると思うと足は自然とリビン
グに向き、半日近く動かない事もしょっちゅうだ。
 特に、今は夏休みである。両親が共働きということもあって、日がな一日、冷房に当た
りながらソファーで読書をしているのも珍しくなかった。
「そろそろだな……」
 彼は、ちらりと時計を見てつぶやいた。
 午前十一時五分四十七秒……十一時くらい、という約束だったから、いつもの通りなら
もうそこまで来ているだろう。今まさに、チャイムを押そうとしているかもしれない。
 彼の恋人は、約束の時間に対して六分単位で動くという奇妙な癖を持っている。デート
では時間の六分前に到着するように現れ、何時くらいと言えばプラス六分でやってくるの
だ。付き合い始めた当初こそ不思議に思ったものだが、一年も経つとそれが当たり前のよ
うになっていた。
 出迎えてやるか――そう思い、本にしおりを挟んで起きあがる。
「実はもう来てたりして」
「うおっ!?」
 いきなり背後にわいた声に、彼は弾かれたように振り返り、危うくソファーから転げ落
ちそうになった。鼓動が体を突き破りそうで、思わず胸を押さえる。
 そんな彼を見て笑っているのは、少女だ。ソファーの背もたれに顎を乗せて、とても意
地の悪い笑みを浮かべている。微笑んでいればそれなりに愛嬌のある整った顔立ちをして
いるのに、これでは台無しだ。
 小憎らしい笑みを向けられて腹が立たない事もないが、爛漫な笑みを見ていると、その
怒りはすーっと消えていってしまう。惚れた弱みだな、とは友人の言葉だが、彼自身、そ
れを否定する事はできなかった。
 まだ跳ねている心臓を落ち着かせようと深呼吸し、彼は少しだけ少女を睨んだ。
「また勝手に入ってきたのか?」
「だって入ってきていいって言ったじゃん」
 少女はけろりとした表情でそうのたまった。彼は、小さくため息を吐く。
「あのなぁ……いや、確かに言ったけど。まずはインターホン鳴らせよ。それで出てこな
かったらって言っただろ」
「鳴らしたよ。でも出てこなかったじゃない」
「嘘だな」
 彼は、頬を膨らませた少女の抗議を一蹴した。
「また読書してて気づかなかっただけじゃないの?」
 読書に集中しすぎるのは、彼の悪い癖だった。ひどい時には、真横で鍋がひっくり返っ
てもまったく気づかないくらいだ。当然、インターホンに気づくはずもない。一度それで
こっぴどく少女に叱られたことがあり、それからは少女が遊びに来る時に鍵を開けておく
習慣がついていた。
 確かに、それからも何度か少女の来訪に気づかなかったことがある。そのたびに色々と
イタズラを仕掛けられているが、そればっかりは彼としても強く怒れるものではない。少
女の「彼女が来るっていうのに他のことに気を取られてる罰だもん」という言葉にも一理
ある。
「いや。今日はそこまで本に入り込んでなかった」
 だが、今回は違う。本に没頭していたわけでもないし、記憶が飛んだ覚えもない。第一、
時間に合わせて本をきちんと閉じたのだ。それなのに脅かされるのは、理不尽としか言い
ようがない。
 とはいえ、これがじゃれつきの一種であることを、彼はきちんと分かっていた。もし本
当に気づかなかったのであれば、少女はもっと過激なイタズラを仕掛けてくるだろう。
 要するに彼の咎め立てているような態度は、仕返し……というか、じゃれ返しているよ
うなものである。
「んー……ごめんね?」
 だから、少女は反省したそぶりもなく、上目遣いで小さく舌を出した。
 少女もそれくらいは承知なのだ。この程度で彼が怒るわけない――いや、怒れないのだ
と、見破っているのである。
(……分かっててやってるからタチ悪いんだよなぁ)
 彼は、根っこのところで少女に逆らうことができない。どんなことでも、最後には「し
ょうがない」と許してしまうのだ。もちろん、少女が無神経に一線を踏み越えないように
気を配っているからである。付き合い始めの頃はぎくしゃくすることもあったが、もう加
減が分かっているため、いい意味で容赦が無い。
 それがまた心地よいと思ってしまう辺り、もう致命的に手遅れなのだろう。
「とりあえず座ってな」
 それでも、ささやかな抵抗とばかりに、少しぶっきらぼうに言って背を向ける。
「はーい」
 明らかに楽しんでいる声が返ってきた。キッチンに向かいながら、彼はこっそりと苦笑
する。
 これがいつものパターンだった。少女が思うままにじゃれて、彼が苦笑して受け止める。
 一見して彼が振り回されているだけだが、これが少女なりの甘え方なのだ。それが分か
るからこそ、彼はこの気安い関係を悪くないと心から思える。
 付き合い始めたばかりの、何をするのも恥ずかしくて手探りするような感覚も悪くはな
かったが、彼は今のような地に足が着いた関係の方が好きだった。
(色々と突飛だったからなぁ)
 何をするにも彼の予想を裏切り、また少女自身がそれを楽しんでいる節もあって、最初
の頃は、毎日気が抜けなかった。
 そうした日々の始まりとなったのは、告白の日だった。
 ちょうど一年前の八月三十一日。夏休み最後の日に、彼は少女に誘われて遊園地に遊び
に行った。きちんとしたデートをするのは初めてで、ガチガチに緊張していたのを、彼は
昨日の事のように思い出せる。
 少女がくるくると表情を変えるのを見ているのが楽しかった。時間が経つのも忘れてい
て、気づけば名物の花火大会が始まっていた。
 それからのことは、少女の言葉や自分の言葉、周りの状況なども鮮明に覚えている。そ
れこそ、ふとした拍子に思い出してしまうほどに。

*  *  *

 夜空に溶けるように消えていく花火の残滓を、目が自然と追いかける。
「そういえば、知ってた?」
 ふと、呟きが彼の耳をくすぐった。
「何を?」
 彼は、怪訝そうに隣に立つ少女を見やる。イルミネーションに照らされた薄暗がりの中、
ノースリーブから覗く肩の白さがやけに印象的に映えていた。
 少女は、首だけをゆっくりと彼に向ける。
「今日ね、あたしの誕生日なんだ」
 さらりと告げられ、彼は一瞬言葉を失った。意地の悪い笑みを浮かべながら、少女はじ
っと彼の様子をうかがっている。
 彼はしばし呆然としていたが、すぐに我を取り戻して目を見開いた。
「……え、マジで?」
 思わず確認する彼に、少女は無言で頷いた。
「う、わ……ちょ、え、俺、何も用意してな……」
 途端に狼狽し始める彼を、少女は無言のまま楽しそうに眺めている。そんな少女の視線
に気づき、彼は取り繕うように咳払いをした。
「えっと……おめでとう」
「うん、ありがとう」
 少女の満面の笑みを見て、彼は自然と口元をほころばせた。だが、すぐにはっとなって
その笑みを引っ込めた。
「でも、ごめん。その、プレゼント、用意してなくて……」
 誕生日だなんて知らなかった、という言葉は飲み込んだ。そんな言い訳じみた言葉を少
女に言いたくはなかった。
 まるでそんな彼の内心を読み取ったように、少女はクスクスと笑う。
「いいよ。だって、あたしも言ってなかったし。でも、プレゼントは欲しいから……ねだ
ってもいいかな?」
「ん、ああ、あんまり無茶を言われると困るけど……」
「無茶……かもしれないけど、ダメ?」
 少女は、小動物がするように、上目遣いで首を小さく傾げる。
 ドクン――と、何の前触れもなく彼の鼓動が跳ねた。
(ヤベ――)
 心臓の辺りから焼けそうな熱が吹き上がってきて、彼は軽い目眩を覚えた。
 今までに見た事のない仕草に、心臓が早鐘のように打って今にも爆発しそうだ。
(可愛い……)
 どこか潤んだような瞳や、整った眉、わずかに微笑を浮かべる唇――何気なく見ていた
少女の顔が、やけに鮮明に映る。
 活発さや明るさからくる魅力では――彼がいつの間にか、何となく好きになった少女の
顔ではない。
 目の前にいる少女が、自分にとっての「女の子」であることを、彼は、初めて意識した。
(うあ……)
 途端、急速に熱が顔まで上がってくる。まるで頭から熔けそうなくらい熱いのに、足下
から浮きあがっていきそうだ。
 心地よさにくらくらする。それが少女の魅力に負けた証だと、彼はまだ気づいていない。
 彼は、知らずに胸元を押さえた。あふれ出しそうな感情をどうしたらいいのか、もてあ
ますように。
 だが、彼の口は独りでに開き、言葉を紡ごうとする。まるで、彼とは違う彼が、どうす
ればいいのか知っているようだ。
「いや……まぁ、その……ダメってことはないけど……」
「ホント? ならね、あたし――」

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第125号(1月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載エッセイ『塑性言論』        第9回
                 著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 連載エッセイ第9回。一撃必殺のギャグの秘訣とは!

 …………………………………………連載エッセイ…………………………………………

 桂です。

 *

 僕「また来たよ! どうも!」
 ソト「ちょっと受けたからってまたこんなネタ。二番煎じじゃないの」
 僕「話してくれてありがとう!」
 ソト「キモ」
 僕「あ、流行のアレですか。素直になれないけれどホントは好きな、流行のアレですか」
 ソト「なんで二回言うのよ」
 僕「しかしアレですね。勉強できない子、という萌えもあるよね」
 ソト「そうなの?」
 僕「コンプレックスになっているところが良いのですよ」
 ソト「ふぅん? よくわかんないけど。そういうのって一般的なのかな」
 僕「あたりまえだのクラッカー」
 ソト「え? なに? 誰?」
 僕「タバコ好きなのもポイントが高いと思われます」
 ソト「私がタバコ吸ってると、みんな、厭な顔をするけれど。そう言ってくれる人って珍
しい。中学生なんだから当たり前だけど」
 僕「しゃがれ声とか、良いよね! ヴィクトリカとかストライク」
 ソト「私、声、しゃがれてる? ヴィクトリカさん、という方は、しゃがれ声なの?」
 僕「……話が噛み合わねー。つーかツッコミがいねー」
 ソト「……なによう」

 *

 昔の人は良い事言った! 「ギャグは範囲が狭いほど面白い」、と!

 *

 1・お金の使い道

 ハヤテ「お金お金って……。少しは節制を考えてみてはいかがでしょう……?」
 桂雪路「なんだとー! 先生だぞー! バカにすんなー、ギャピー!」
 ハヤテ「幼児退行しないでください。それはそれとして、いったいなににお金を使ってる
んですか……?」
 桂雪路「いろんなところに寄付してるよ。研究室とか孤児院とか、ボランティア団体とか」
 ハヤテ「え……。そんなオチ?」
 桂雪路「黙ってろ」

 2・マリアさんが来る!

 マリア「もしかして生徒会長さんのこと好きなんですかー?」
 ハヤテ「な、なにを急にそんな……!」
 マリア「強く否定するところがまた怪しいですねー」
 ハヤテ「ち……! 違いますよ!」
 マリア「汗をかいたな……」
 ベロンッ
 マリア「この味は……! 嘘をついてる『味』だぜ……。綾崎ハヤテ!」

 なんだかんだでハヤテ君はまんざらでもなかったそうな。

 3・ターズレフォンカスチードシモンパイ

 サクヤ「ああ、そういや、ナギがチーズレモンカスタードシフォンパイを食べたいってゆ
ーてたな」
 ハヤテ「う……。作ったことのない料理ですが、分かりました。三千院家の執事として、
どこに出しても恥ずかしくないものを作って見せましょう」

 ハヤテ「できたー! お嬢様ー、お嬢様が食べたがっていたパイが出来上がりましたよー」

 ハヤテ「……なんだこれ」
 サクヤ「ターズレフォンカスチードシモンパイ」
 ハヤテ「ないよ!」
 サクヤ「ウチとお前の合作だから、ウチも味見せんと」
 ハヤテ「なにをしましたか!」
 サクヤ「これならナギに出せる」
 ハヤテ「どこを出すんですかっ! 空じゃないですか!」
 サクヤ「ウチが食べたかっただけなんやー。しかし、アレやな。一人で食うと腹がもたれ
るな」
 ナギ「ハヤテ。こいつ梱包して、適当に南さんち宛てとでも書いて、架空の住所に送り付
けとけ」

 *

(そせーげんろん二回目休み)

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第125号(1月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

*****◆◇作者と読者を繋ぐ〜オンライン文芸マガジン『回廊』最新刊 Vol.9◇◆*****

    それは純粋にして、妖しく……はかなくして、強きもの
    古くより表現者の心をふるわせる、至高の題材──《少女小説》特集

*********【未明の第九号】(http://magazine.kairou.com/)絶賛公開中************

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は1月5日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年12月25日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
           unjyou@ml.kairou.com
       購読の解約および、公式サイト:
           http://unjyou.kairou.com/

       (c) unjyou_kairou 2006 all right reserved

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
Score!: 90 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。