文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_119

2006/11/25

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第119号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/11/25
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第11回
 【3】 連載エッセイ「塑性言論」        第8回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 明日提出のレポートを100文字くらいしか書いていません。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第11回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 時に清新、時に残酷。超短編界屈指の言霊遣い、赤井都の作品を集成! 今回は二作品
を掲載します。

 ………………………………………… 石を温める …………………………………………

 池のほとりに世界の主が座って、世界の果を夢見ている。
 主が人間を夢見て人間が生まれた。主は生まれた人間に何の意味も与えず、ただもっと
遠くへ夢を移して眠り続ける。
 だから人間の幾人かが志願してこの世界を温め、人間が生きていける世界をつくってい
る。
志願者の集まりには、心の井戸を深く潜っていくと辿り着ける。私は井戸を抜け、池を囲
む森の外れを進み、石を温めている人たちを見つけた。その人たちがすばらしく見え、私
もそんなことをしたいと願って集団の端に加わった。五年座っていたが石は冷たい。その
時になって、与えることができる人間と、受け取るだけの人間がいるのかもしれないと思
った。
「なぜ、私はだめなのか」
 考えてみれば、私の尻はすぐ痛み出すために、石からたびたび降りてうつぶせで休まざ
るを得ない。根を詰めると微熱が出たり吐いたりして苦しい。自分が生きるだけで精一杯
で、人に何かを与えられるだけの力がないのかもしれない。
「温め方は、うまいですね。でも、それでは石の熱を引き出せません」
 そう評された。ほめられたのは、己に力がたりないぶん、効果を上げそうな温め方の研
究に精を出してきたからだ。
「空から気を吸い込んで、石に伝えなさい。自分は通り道として、触媒になるんです。石
を温めたかったら、あなたも回路を開く必要があります」
 そう助言された。それならば、自分の力がなくても、空の力を使えばいい。
「私にはそれができます。通り道になるのは、きもちいいですよ」
 息を吸った。ずっと座っていた。空を仰いだ。頭の芯から空を吸おうとした。尻をずら
せた。尻の下に手を入れて石を触ってみた。

 …………………………………………ガーディアン…………………………………………

 十時に起きて、曇っているけれど洗濯をしながら御飯を食べて、蒲団を畳んで、雨が降
ってきて、部屋の中に洗濯物を吊るし、メールをチェックしウェブページを幾つか調べて
いるうちにたいしたことのないページに入り込み、ただその暗さに吸引されて隅々まで読
んでしまい、そうして日が射さないまま夕暮れになり、御飯の支度に階下に降りた。ぱち
んと電気をつけて、部屋の隅にたまっている埃のような薄闇を追いやる。どこか遠くで日
が沈んでいる。見えないところで。
 米をとぎ、八百屋がおまけにくれた短いごぼうを洗い、皮をむき始めて、ごぼうだと思
っていたものが、河童の脛だったと気づいて急に鬱になった。
 土だらけ、毛だらけの脛を、たわしで強く擦ったのだ。それでも表面が汚いので、包丁
の背を使って皮をこそげたのだ。うっすら血のにじんだ白い肉が現れて、手から取り落と
した。
 突発的な鬱が来た。逆さに持っている包丁の刃で、自分の体を刻みたくなった。私をこ
のまま生ゴミに捨てて。
 だから、その包丁を離しなさい。私の肩の後ろで、私のガーディアンが囁く。
 深く息をついて、そのまま突き進んだらそれはそれでいいのに、とまた息を吸う。ガー
ディアンに逆らいたい。
 きのうのさんまのはらわた。おとついの鶏肉の塊。
 私の体がどうなるか、薄赤い繊維の断ち方を、私はリアルに想像できる。
 包丁を掌から離して、それが再び視野に入らないようにゆっくりと背を向け、二階に戻
って電気を全部つけて寝転んでいた。
 夫が帰ってきたとき、米だけは自動で炊けていた。寝ているんだ、また気分が悪いの、
と聞かれて、目眩がと応える。腹をすかせた夫がさっさと台所に立って、じゃあこの山芋
を擦っちゃうよ、とおろしがねを準備する。ごぼうだと思った河童の脛は、時期はずれの
細い山芋に変わっていた。それでも私はおろしがねの、輪になって尖った一つ一つの先端
が怖い。台所には怖いものがいっぱいある。
 風呂をわかし、いつになく丁寧に夫の背中を流してシャンプーもした。
 翌日はまた十時に目が覚めた、曇り。夫は既に出かけている。私はガーディアンと再び
夜までを生き抜く。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第118号(12月05日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載エッセイ「塑性言論」        第8回
                 著/桂たたら
 ──────────────────────────────────────

 連載エッセイ第八回。説得力のある言葉の作り出し方とは……?

 …………………………………………連載エッセイ…………………………………………

「ドージンワーク」を読んで漫画が描きたくなりました。なじみの気持ちが良く分かる。
 絵なんて小学生の頃の美術以来、ぜんぜんなんですけどね。

 さてさて、「塑性言論」で語られる創作論は、漫画にだって映像作品にだってあてはま
るのですよー!
 そう、言うなれば「塑性言論」はエンターテイメントについて語っているとも言えまし
ょう!
 私と同じように「ドージンワーク」を読んで漫画を書きたくなった人も、これを読めば
ストーリーの作り方がめきめき上達する!?
 そんな雲上連載「塑性言論」! 始まるよ!
(小手先の技術ですけどね!)

 *

 見せ場での演出方法のひとつに、

 繰り返し

 というものがあります。

 これはそのまま単純、同じ言葉を数回に渡って使用する、というだけの手法です。
 が、これがなかなか侮れない。

「ひぐらしのなく頃に」というノベルゲームで、主人公の少年が口にする「俺を信じろ」
という言葉。
 これがこんなにも(プレイしていない人はいろんな意味でごめんなさい)プレイヤの胸
を打つのは、その言葉が執拗なまでに繰り返されているからです。全部で何回言ったのか、
本当に数えるのも面倒になるくらい。

 これは極端な例としても、繰り返しはいろんな場面で見られます。

 お笑いの、いわゆるテンドンもそれですし、
 キャラクタ固有のキメ台詞もそうです。「やれやれだぜ」「グレート」「無駄」などな
ど。
(例が偏ってね?)(なによりも好きですから!)

 そしてポイントになるのは、

 シンプルな台詞ほど繰り返しに強い

 ということです。物質の構造と一緒ですね。

 これは読んで字のごとくなのですが、複雑な台詞よりは簡潔なものの方が繰り返したと
きに効果が上がるということです。
 いちいち「私のことを信じてほしい。それはこれこれこういう根拠があって……」など
と話されては、もはやギャグですからね。

 この繰り返し、「塑性言論」の二回目でお話した「物語の閉じ方」と通じるものがあり
ます。序盤中盤で出てきた台詞、キーワードを物語の最後において「繰り返す」のです。

 拙著「まつりの時間」において、語り部が、戦闘開始時と戦闘終了時に同じ台詞を口に
するのですが、それもこうした繰り返し効果を狙ったものといえるでしょう(うまくいっ
たかどうかは別として)。

 *

 さて、ご要望があれば次回はバトル演出についてお話しましょう。
 なければ桂の「うたわれるもの」レビューが掲載されます。PS2の初回限定版を買っ
た私ですよ! 自分で書いててそっちのほうがいいんじゃないかと思えるあたり悲しいで
すね!

 おはこんばんちは、桂でした。

(BGM Suara「君だけの旅路」)

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第120号(12月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は12月05日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年11月25日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
           unjyou@ml.kairou.com
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