文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_118

2006/11/15

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第118号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/11/15
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第11回
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        最終回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 二日前にやったテキストプレイのせいで、いまだに右肩に痛みを感じます。今季絶望。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第10回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 時に清新、時に残酷。超短編界屈指の言霊遣い、赤井都の作品を集成! 今回は二作品
を掲載します。

 ……………………………………………………………………………………………………

 建て込んだ中の借家なので、日は窓の端に当ってすぐによそへ遷ってしまう。しかし本
を読むにはむしろ都合がよい。時を意識しない薄暗い中で、蛍光灯をつけて錬金術の本を
読む。
 祖父母からもらった古い箪笥の上に、祖父母の骨はある。
 二人とも汗水流して死ぬまぎわまで働いた。私は若い躯を持ちながら、奨学金をいいこ
とに、本来の分野から外れた勉学に励んでいる。
 もう少し前にこの研究に取り掛かっていれば、祖父母を温泉に連れていってやれたかも
しれない。私の前の学校の近くにテレビに取り上げられた温泉宿があり、二人は興味を示
していた。私は学校とアルバイトの往復で、祖父母は毎日生き物相手の休みない労働で、
三人で遊ぶ計画は実現しなかった。
 祖父母の骨に見下ろされて、私は錬金術の本を読んでいる。欠けているペエジが何箇所
もあるのが問題だ。
 午後深くもなると、眠くなったので眠気ざましに指先に音が欲しくなる。祖父を偲んで
常のおやつだった落花生の殻を割ってみた。殻は白く乾いた粉になって本のペエジに飛び
散り、そういえば祖父はいつも、散らかすと云って祖母に叱られていたと思い出した。
 錬金術の材料を混ぜるときには、落花生の殻を割るように強く混ぜる必要がある。うん
と散らかるから、祖母が云うように、あらかじめ新聞紙を広げておいた上でやることにし
よう。

 ………………………………………………明日………………………………………………

 「うまいんですけど、心に響きませんね」
と人に云われた。私は竪琴を持って野に出た。風に向かって奏でてみた。それでも音色は
変わらないように思われた。
 嵐が近づき、天が地に向かって破れ落ちる。凍えた腕に、濡れた竪琴を抱えて震えてい
た。あたりはひたすら冷たく遠く、くっきりとそのものであり、草は草、雲は雲として在
った。あまりにもはっきりとしすぎていて、物が揺れる隙に一角獣の幻影すら見ることが
できなかった。
 雨を受けた足から根が生え、頭に鳥が巣をかける。腕は動かしつづけたので、蜘蛛も近
づかない。
 そうして五年がたち、私はやっぱり同じ音を弾いている。指に触れるのは目の前の弦だ
け、人の心の琴線はいまだに掠めない。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第118号(11月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        最終回
                 著/川西素浪人
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 連載小説、ついに最終回!

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 それは巡回中の警察官だった。
 学院側が通り魔対策として近所の警察署に巡回の強化を頼んでいたのだ。
 勿論、丸目と虫明はそのまま寮へ帰された。勿論、強制送還されるついでに、軽く事情
が聞かれ、説教を受けている。
 普段であればその事自体も事件となって、寮で騒ぎになる所だったが、その夜は違って
いた。彼女達が連れてこられる数十分前、通り魔集団が一網打尽に掴まったという情報が
入って、それどころではない大騒ぎとなっていたのだ。
 丸目と虫明は、いかにも学校に遅く残っていた風を装って寮に紛れ込んだが、その騒ぎ
のせいで途中風紀委員に見つかる事も無く、虫明の部屋まで行き着くことが出来た。

「……やっぱり、外へ出て退治しようとしていたんですね?」
 次の日。寮生だけでなく通いの生徒も通り魔が捕まった事を朝一でばら撒かれた新聞部
の号外で知って、校内中が大騒ぎになっていた。その片隅で、丸目と虫明は楠木に説教を
受けている。
「まあ、大事には至らなかったんだから……」
「そういう問題ですか?」
 楠木は呆れて溜め息をつく。
 机の上に置かれた新聞部の号外を指し示す。そこには何処から仕入れたのか、通り魔犯
人の情報が詳しく書かれていた。
「こんな危険な人達なんですよ?」
「こいつらなんて相手になんねーよ。事実、あたしは叩きのめ」
「そういう問題じゃありません!」
 丸目の不満そうな声を楠木が遮った。
 捕まったのは同世代の高校生。しかも、その大半が少女だった。丸目が叩きのめしたの
も少女で、そもそも、彼女が病院で入院した事がきっかけで通り魔を捕まえる事が出来た
らしい。大怪我をしているのにも拘らず、何処でどうして怪我をしたのか、絶対にいおう
としなかった為だ。
 蹂躙倶楽部。通称JRC。通り魔はそういう名前のサークル活動だった。暗い通りで人を
襲う。それも完膚なきまでに叩きのめす。それが唯一の活動内容である。
 少女達は通っている学校でイジメ問題を起こして、謹慎処分を受けていた事のある生徒
達だった。彼女達はその後、学校内ではなく外に活動場所を求めるようになったらしい。
最初は、面白半分で夜の暗がりから人を驚かしていたが、あっという間にエスカレートし
ていった。蹂躙倶楽部という名前はその頃、誰かがふざけ半分で付けたという。
 逆にその名前が彼女達の活動の方向性を決めたのかもしれなかった。
 少女達は実際には非力である分、悪戯した後の反撃を恐れていた事もあり、いきなり、
そして、徹底的に叩きのめす事によって反撃できないようにしていた。仲間に数人の少年
が混じっていたのも、万が一、反撃された時の為の保険だった。相手を叩きのめせば叩き
のめすほど、更に暴力を欲するようになっていった。それは今から振り返ればとても不思
議な事に誰もそれを止めようという意識が無かったと一人の少女が語っているという。
「とりあえず、一網打尽に捕まったし、一安心は一安心ね」
 他人事のように虫明が紙面を見ながら頷いた。
「でも、なぁ……結局、あれだけ気合を入れて退治に出かけたのに、何処にも記事になっ
てないよ。何処にも!」
 虫明の予定では、この紙面で自分が警察から表彰を受ける記事が載っている予定だった。
「寮生に怪我させたヤツに天誅を加えられなかったし……捕まった子達を厳罰にしてもら
うように運動しなきゃ」
「あたしはもう手伝わないからな」
「怖気づいたの?」
「!」
「ホント、もういい加減にしてくださいよ……?」
 虫明の言葉に目を吊り上げた丸目が言い返す前に、楠木が押し殺した低い声で二人を睨
み付けた。
「わかったわかりました。もう十分に反省してるから、いい加減解放してくれないかなぁ?」
 虫明はいささかうんざりした声を上げて立ち上がった。
「そろそろ、授業も始まる事だし、わたしは教室に戻るね」
「あっ。ずるい!」
 虫明がそのまま今日一日、楠木から逃げるつもりである事を悟った丸目が不満の大声を
上げた。
「そんじゃね〜」
 勿論、丸目の声など気にもせずに、さっさと虫明は教室から出て行く。楠木は諦めたよ
うに肩を小さく落とし、ため息をついた。
「くそ、恵のヤツ、相っ変わらずキタネエなあ」
「でも、怖いですよね……」
 教室のドアを睨みつけている丸目の横で楠木は号外をもう一度手にとって、しみじみと
呟いた。
「ヒステリーみたいなもんだよ」
 丸目は視線を楠木の方に戻した。
「集団ヒステリーなんじゃないのか。エスカレートの仕方もそうだけどさあ、頭でっかち
のヤツラが集まると碌な事にならないって事だろ」
「はあ……」
 楠木はいまいち丸目の言っている意味が分からずに首を傾げた。丸目はその様子に言い
直す。
「通り魔で集団リンチなんて、とてもまともなヤツがするような事じゃない。大体、リン
チ自体、ヒステリックなもんだろ? その癖、警察には捕まらないようにするわ、自分達
は安全なように心がけるわ、妙なところじゃ頭良いし。準備にも時間かけてるし、要する
に暇だったんだろ。暇で何して良いか分からずに変なことやらかすなんて子供だし、それ
が高校生なんていってるんだから、いかにもよくいる頭は良いけど心はガキレベルってや
つじゃないか。大方、自分達のやったことだって自分の都合の良い様に理屈をこねて自己
正当化してたんだろうさ」
「何か……もっと他の事に頭を使えば良いのに……」
「だからガキなんだろ。時間の使い方を知らないままレベル低いまま」
 丸目が突き放したような冷たい口調で言う。
「全く、少しくらいは感情や衝動の抑制とかできないのか?」
「…………」
「あ? あたしは違うぞ!」
 楠木の視線に気づいて、丸目は慌てた。
「あたしはあんなに頭良くないし。やつら、単なる遊びでリンチしてたけど、あたしは人
に暴力なんて――」
 丸目が反論しようとした時、教室備え付けのスピーカーからチャイムがなった。
 続けて放送部と思われる声が教室に響く。
『風紀委員会から通達です。1年B組の丸目落人さん、1年F組の虫明恵さん、至急生徒
指導室へ来てください。来られない場合は、委員会の方から出迎えさせていただきます。
繰り返します……』
 ざわついていた教室がしんと静かになり、全員丸目の方を注目していた。
 丸目はといえば呆然として目を見開いている。
「……昨日は目立つ前に警官とは別れたし、入る時だって大騒ぎしてたから誰も気付かな
かったはず……大体、あたし達が部屋に戻った後で風紀委員が点呼に」
「あー……落人さん?」
 恐る恐るそばに居る同級生が声をかけた。
「昨日の抜き打ちの在室検査は、三十分とか一時間とか不定期に何度かやってたんだけ
ど……?」
「な……」
「自業自得です」
 同級生の言葉に固まってしまった丸目に冷たく楠木は言い放った。
「今日という今日はみっちり絞られてきてください。たまにはいい薬です。私はこの件に
ついては味方しませんからね」
「落人っっ!」
 ものすごい音を立てて教室のドアが開かれた。息を切らして立っているのは自分の教室
に戻ったはずの虫明。そのまま駆け込んできて丸目の腕を引っ張る。
「逃げるよっ!」
「あ?」
 先ほどの放送で呆然としていた為か、丸目の反応が珍しく鈍い。そしてそれが致命傷と
なった。
「虫明がいました! 丸目もまだ教室に!」
 二人が動き出す前に更に腕章をした生徒が数人教室の中へ飛び込んできた。風紀委員で
ある。虫明は彼らから逃げてきたらしい。その中の一人の生徒が二人の前に立った。
「丸目、虫明両名、昨日の門限破りの件について、事情を伺います」
 そしてそのまま二人を囲んで拘束しようとする。
 腕を後ろに取られるのを避けながら虫明が悪態をつく。
「落人がっノロノロしてるせいでっ」
「あたしのせいじゃないだろっ……放せ! 糞風紀!」
 丸目は腰払いをかけて風紀委員を床に投げた。引っくり返った風紀委員の足がぶつかっ
て近くの机が倒れる。どこからか悲鳴が上がった。
「く……もうあたしだけでも……」
「二人を拘束しろっ! 逃がしたらこのクラス全員が罰則だ!」
 虫明がそのまま教室から逃げようとした所に更に上級生の風紀委員が教室の中へ駆け込
んできた。その風紀委員の言葉でクラスの他の生徒も、二人を捕まえようとする。結果、
丸目と虫明はもみくちゃにされ、二人を中心に、教室は蜂の巣をつついたような大騒ぎに
なった。
 
 ――結局、丸目と虫明の二人が翌日の裏新聞の号外トップを飾る事になる。

 終

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は11月25日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年11月15日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
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