文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_115

2006/10/17

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第115号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/10/17
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第8回
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        第6回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 ひさしぶりに会った後輩が、劇の脚本と演出をやったと云っていました。
 若い才能に嫉妬です。
 オチはありません。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第8回
                 著/赤井都
 ──────────────────────────────────────

 時に清新、時に残酷。超短編界屈指の言霊遣い、赤井都の作品を集成! 今回は三作品
を掲載します。

 ……………………………………………………………………………………………………

 ある晩のこと ほどよく酔った帰り道 ヒールの間に何かが挟まって転んでしまった 
膝から赤い血が沁み出した 靴の踵を折ったのは尖った小さなものだった 両手に片ほう
ずつ靴を提げて 裸足で街かどまで歩き ガスの青い灯で調べると 靴の裏に空からおち
て死んだ星が刺さっていた なんだつまらない! 靴ごと橋の下へ投げてしまった
 金曜日の夕がた 花屋へはいると 硝子ケースから薔薇を取り出していた一人の婦人が 
硝子に映る私の目を見た 私と婦人の目が合わさった 婦人は振り向いて直に私の目を求
めた
「あなた」
「なに?」
 と横を向いて蘭を見るふりをすると
「水曜日の夜をおぼえています」
 と云う
「そんなこと……」
 と呟くと
「そんなことではないわ!」
 婦人はたいへんな権幕でどなった 薔薇の赤で頬を打たれただけで 私は戸口の外に跳
ね飛ばされ 石畳の上についた膝に血が沁みていた

 ……………………………………………………………………………………………………

「今晩も上から見てるだけなの」
 出すあてのない手紙を飛行機の形に折って飛ばしたら
「あ痛た ――!」
 お月様が眼をおさえて地に飛び降りた まずいことになったから慌てて逃げた お月様
は追いかけてくる 私はミュールを鳴らして逃げた 夜目にも白い花畠 フェンネルと松
虫草がふわふわ香る牧の中 街の灯は丘の後ろに消え 花畠を横切る線路の踏切で 鼻先
を二両編成の最終電車がすれすれに過ぎた 女性の車掌が窓枠に肘をついたまま気をつけ
ろと合図を送ってよこした その時には首筋をお月様に掴まれて 猫のように持ち上げら
れ 電信柱が目の前に近づいてきたと思ったら 電線に髪がバチバチと鳴って焦げ臭い小
さな稲光が走った
 気がつくと私は花と靄のただ中に仰向けで 空ではお月様が知らん顔をしている 暗が
りで紫かピンクか判らない柔らかな松虫草を腕いっぱいに摘んで帰った 家に着くと躯じ
ゅうが痛み出して 花の香りの漂う床に就いた
 朝になって水色の窓をあけると 外に見覚えのある人がいて
「ごきげんよう ご気分はいかがですか すてきなヘアスタイルですね」
 にこやかに微笑んで声を掛けてきた
 たれだったかしらと窓を背にして鏡に頭を映すと 髪はちりちりに逆立って見事なアフ
ロスタイルだ 目を上げるとテーブルの上の花束は一びんの薄荷水に変っていた

 ……………………………………………………………………………………………………

 ある晩の舞踏会からの帰り途 自動車の鼻先が街かどを廻ったとたん 流星と衝突した 
慌てて私はボンネットの瑕を調べ
「気をつけてよ!」
 と云った
「ハンドルの切り方がなってないね」
 と流星はそっぽを向いて行こうとした 私は流星の前に足を横に出し 流星はつまづい
て転びながら私のドレスの裾を引っ掛けてもろともに引き倒した 私と流星は絡み合って
転がった 頭に飾った花が散って髪がほどけた 流星が向きを変えるたびドレスの襞に穴
が開き 少し離れたところでポプラの枝が落ちてガス燈のガラスが弾け飛んだ 私は流星
に平手打ちをくらわし 流星はハネ返って火傷するぐらい私の唇の近くを掠めて失神させ

 私は二時すぎにポリスに助けられて家へ帰ったが 玄関を閉めるとすぐにピストルに弾
丸をこめて屋根へ登った 煙突のかげに隠れて待っていると ほどなくシューというかす
かな音が空を伝わってきた 頭の上を通りすぎるまで待って ねらい定めてバン! 流星
はふらふらした弧をえがいて 月光に煙っている遠くのガラス屋根の上に落ちて 粉々の
花火を蒔いた
 私は階段をかけ下りてリキュールを一杯あおり 柔らかなベッドに潜り込んで寝てしま
った

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第115号(10月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        第6回
                 著/川西素浪人
 ──────────────────────────────────────

 連載小説第六回。いよいよクライマックス近し!

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 襲われたのは虫明に肝試しを提案していた生徒達。
 最初は、虫明の言葉に自重していたが、丸目が退治したという記事が出て、その後、丸
目脱獄の記事などで、通り魔事件の印象が薄れてしまったのと、その間に通り魔事件が実
際に起きなかったために、やはり丸目が“退治”したと、勝手に理解してしまったのだ。
 週末に示し合わせた生徒達が肝試しを行い、あっさり通り魔の被害にあってしまった。
洒落で通り魔退治と題された肝試しは通り魔に返り討ちにされるという最悪の形となった。
 肝試しをしていた生徒は全部で12人。その内襲われたのは、4人。
 1人は全治2ヵ月の大怪我を負わされた。
 月曜日を待たずして、一連の記事を書いた新聞部の部長、副部長や、抜け出した生徒に
気づく事が出来なかった担当の風紀委員、そもそも発案者だった三年生などが生徒会と風
紀委員会に呼び出され、事情聴取兼叱責を加えられていた。
 既に事態はいつもの門限破りとは違う次元の問題になっていて、教員達にも報告がいっ
ており、理事会でも話題が出たという。
 ……と、いうような話が週明けの教室で噂されていた。教師からも、そして生徒会や風
紀委員会の方からも公式な情報は全く流れてきていない。事態がかなり深刻な上に、警察
沙汰になりかね無い問題も孕んでいる。こういう場合、表向きはなかった事にしておく、
というのが体面重視の学院の体質であり、常套手段であった。
 しかし、寮生が起こした事件だけに、教師などに連絡が行く前に寮の中で既に話が広が
っていて、隠した所でまるで意味が無かった。
 
「あー。やっと来た来た。あんた遅い時はホント遅いよね」
 丸目が教室へ入ると、何故か自分の席に虫明が座っていた。
「何で恵がウチのクラスにいるんだよ。しかも、あたしの席を占領すんな」
「また通り魔が出たっていうニュースは聞いた?」
「あたしの質問を無視するな!」
 丸目はいきなり虫明を怒鳴りつける。
 その様子に、虫明はニヤリと笑う。からかっているのだ。
 丸目の表情が更に険悪なものになる。実は丸目の方も虫明がからかってそんな事をやっ
ているのは十分わかっている。
 しかし、分かっているだけに更に腹が立つのだ。怒りの抑制が効かないのは、気分屋で
ある丸目の一大特徴と言っていい。
 暫く間があってから丸目は鞄を机の上にやたら丁寧に置いた。相手にしてもしょうがな
いと、無理矢理怒りを押し殺したらしい。
「で、何しに来たんだよ」
「ん? 通り魔の事に決まってるじゃないの」
 虫明は椅子から立ち上がった。
「ま、ここじゃ、あれだし。ちょっと来て」
 虫明はそう言うとさっさと教室を出て行く。と思ったら、手だけが残ってドアからおい
でおいでをしていた。
「…………」
 丸目は渋い顔をしたものの、すぐに虫明の後を追った。
「寮生が通り魔にやられたってニュースはまだ聞いてない?」
「下駄箱で小耳に挟んだ」
 後を歩きながら丸目が答えた。
「なら話が早いわ」
 虫明は軽く笑って、立ち止まった。
「ここなら変な邪魔は入らないでしょ」
 そこは西棟の端にある資料保管室前の廊下だった。ここは古くなった資料や余り使わな
い教材などが部屋の中に仕舞いきれずに廊下まではみ出していて、その陰に隠れてしまえ
ば、非常に人目につきにくい。先週、一時丸目はここに潜伏していた。
「そういえば千早は教室にいなかったけど、まだ来てないの?」
「あたしが知るか。さっき来たばっかりなんだぞ」
 不機嫌そうに丸目が言った。
「で? 通り魔がなんだって? 退治でもするのか?」
「そうそう! あんたにしては良く分かってるじゃない!」
「え、ホントにするのか」
 適当に言ってみただけだったので丸目は目を丸くした。
「当たり前でしょ。ウチの生徒がやられたんだよ? 同級の子もいるんだよ? よりにも
よって寮生が。しかもウチの寮の生徒なんだよ?」
(あたしにはまるで関係ないのに)
 不思議そうに聞き返す虫明を見て、丸目は心の中で溜息をついた。
 寮生は自宅などから通ってくる生徒に比べて縦横の絆が非常に深い。寮内の掃除等が寮
生の当番制であったり、食事も土日は自分達で作らなければならなかったりなどと寮生同
士が一緒に行動する機会が非常に多く、交流が深まり易いからだ。
 勿論、逆に険悪になる事もあるのだが、基本的に寮生は連帯意識が強く、寮生―個人の
問題を寮生全体の問題として考えやすい。
「あんたは一度通り魔をぶちのめしてるから、やりやすいでしょ」
「何であたしがそんな事をしなきゃならないんだ?」
「だから、言ってるでしょ、ウチの寮生がやられたんだよ?! しかも、同じ寮にすんで
いる子、あたしの友達もやられてるの!」
 実際には、落人脱走の騒動もあって虫明もすっかり肝試しのことは忘れていたのだが、
事件がおきた後になってみればもっときちんと止めておけば良かったと後悔していた。
「……敵を討ちたいんなら、恵だけでやれよ。恵も長刀やってるだろ」
「あのね。効率ってモノを考えなさいよ、相変わらず考えが浅くてバカだね、落人は」
「……バカ?」
 再び丸目の眉の角度が危険なものになった。教室でこんな表情をしていたら、周りにい
る生徒が慌てて楠木を連れてくるだろう。
 しかし、虫明の方は全くそんな事は気にしない様子だった。もしかすると彼女と長く付
き合うにはいっそ気にしない事がコツなのかもしれない。
「一人よりも二人の方が、効率が良いに決まってるでしょうが。それに落人は一度通り魔
をボコボコにしているんだし。きっと通り魔連中から恨まれてるよ?」
「連中?」
「あれ? そこまでは小耳に挟まなかったんだ」
 虫明は立っているのが面倒になったのか、廊下に積みあがっている椅子を引っ張ってき
て、それに座った。
「少なくとも二人いるみたいだよ、やられた人の話だと」
「へーェ、やっぱりか」
 前に丸目が叩き伏せた時、倒れていた通り魔が短時間でいなくなったのは、やはり仲間
が回収したという仮説が正解だったのだ。
「もしかするともっといるかもしれないけどね。かなり凶悪な連中みたい。周りの状況を
掴ませる前にあっという間に立てない状態にするみたいだから。……あんた、よく叩き潰
せたよねぇ」
「まあ、あたしは天才だからな」
 さっきまで不機嫌そうにしていた丸目は途端にニヤニヤとふんぞり返った。
 彼女の機嫌の行方は糸の切れた凧のように何処へ行くか分からない。
「なら、通り魔退治手伝ってよ。天才だったら余裕でしょ?」
「まぁ、ね」
「それに通り魔の正体がどんなヤツか気になるでしょ?」
「……それなりに」
 虫明は丸目の好奇心の強い性格を巧みに刺激する。
「それに、あんな卑怯なヤツを退治するなんて痛快じゃない?」
「…………」
 悪者退治。些か子供っぽいが、確かに痛快である。少なくとも丸目も虫明も痛快な事だ
と思っている。痛快で、しかも、みんなの為にも良い事だ。であれば別にやっても問題な
いだろう。……本人達は本気で嫌がるだろうが、二人の精神構造はかなり似ている。
 丸目は虫明の言葉を反芻するように暫く考えていたが、やがて口を開いた。
「……わかった。やってやるよ」
 丸目の返事に虫明の表情が明るくなる。やっぱりね、という風にニヤリと笑った。
「ホント? 後で裏切るのは無しだかんね」
「あのなぁ、あたしがそんな事するか!」
「んじゃ、放課後になったら、あたしの部屋に来てね。寮で作戦会議だから」
「オマエの方こそ、今更怖気づくなよな」
「するわけないでしょ!」
「ああ! こんな所にいた!」
 鋭い声がして、反射的に二人は声のした方に顔を向けた。
 楠木が立っていた。彼女は二人の様子を疑わしげに眺める。
「何でこんな所に二人でいるんですか?」
「いや……あたしが落人と教室で話すと、周りの人達に要らぬプレッシャーをかけちゃう
でしょ? だから、まだ時間もあるし、人のいない所で」
「…………」
 虫明はエヘヘと軽く笑ってみせる。
 しかし、楠木は無言のままだ。そして、疑わしげに眺める視線も全く変わらない。その
視線に耐えかねて、丸目が口を開いた。
「な、なんだよ、千早」
「……まさか二人で通り魔退治するとか変な事考えてないでしょうね?」
「え?」
 こういう時の千早の勘は非常に鋭い。そうでなければ、二人の喧嘩を上手く有耶無耶に
する事は出来ないだろう。元々、勘が鋭いのか、丸目と虫明が矢鱈と衝突する為に、勘が
鋭くならざるを得なかったのか、そこの所は分からない。
「するか、そんなメンドくさい事」
 即座に丸目が否定する。こういう時の呼吸はとても他の人間に真似が出来ない。
「大体、風紀委員達が目を光らせてる中でそんな事したら、指導室送りに決まってるよ」
「……」
 楠木は沈黙したままだった。全然納得していないらしい。
「……落人は先週風紀委員に追いかけられてましたよね?」
「ああ」
「恵も巻き込まれてウンザリしていましたよね?」
「それが?」
「ここでまた騒げば本当に指導室監禁ですよ?」
「……いやだからわかってるってば!」
 さり気無く、しかし、実際には一生懸命二人は否定したが、楠木の疑わしそうな表情は
中々変わらなかった。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第118号(11月05日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は10月25日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年10月17日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
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