文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_114

2006/10/08

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第114号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/10/08
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第7回
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        第5回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 知り合いがバンドをはじめました。
 僕は雲上をとっくの昔にはじめています。

 なんかもう、いろいろ通り越してシュールですね。
                                     後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 連載超短編「赤井都超短編集」      第7回
                 著/赤井都
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 時に清新、時に残酷。超短編界屈指の言霊遣い、赤井都の作品を集成! 今回は一作品
を掲載します。

 ……………………………………………………………………………………………………

 夜も更けたころ高い窓枠の下に寄り掛かってギターを聞いていた まだ練習しはじめら
しい爪弾きがぽろぽろと街路に降る 黄色い光が四角い窓の形で石畳の中程に落ちている 
その光の中に猫の影が現れたと思ったら ひょいと影のまま窓の外に抜け出して なにく
わぬふりで路上を歩き始めた オヤ! 私はその後をつけた 影の猫は路地を横切り ひ
とけのない並木道をまっすぐに歩いていく 飼い主に知らせるべきかと思ったが その人
のギターより他を私は知らない 路面いちめん月が並木の影をたいそうにおもしろく変え
ている 妙に私の靴音だけが響くと思ったら 影の猫を既に見失い 一人で町外れの門を
抜けるところだった 町を取り巻く川の流れにかすかなギターの音が混じっている のぞ
きこむと千々に砕けたお月様が四角い形に広がってホロホロと揺れていた

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第115号(10月15日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載小説「後ろ手にドア」        第5回
                 著/川西素浪人
 ──────────────────────────────────────

 連載小説第五回。

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

5
「千早もいつまでも気鬱になってない!」
 庭園のベンチでパンを食べながら虫明は隣に座っている楠木に声をかけた。
「あんたのした事は全然正しいと思うよ?」
「まあ、ええ……」
 購買部から買って来たパンを手には取っているものの、楠木は口にしていなかった。ど
うやら食べる気になれないらしい。
 実は楠木が丸目を風紀委員会へ連れて行ったのだった。今回の件だけみれば特に丸目は
悪い事をしたともいえず、むしろ、通り魔に襲われそうになった被害者でもある。通り魔
を捕まえる為にもここは協力しておいた方がよい。そう説得して嫌がる丸目を委員会棟へ
引っ張っていこうとしたところ、途中で現れた風紀委員にそのまま連れて行かれてしまっ
たのだ。
 丸目が捕まったという話になったのは最後に丸目が罵りながら風紀委員に連れて行かれ
る所を見た生徒がいた為だろう。
「でも、もう少しで納得しそうだったんですよ……?」
 無念そうに呟く楠木。どうやら最後にきちんと説得できないまま、丸目を風紀委員に引
き渡した形になってしまった事に自責の念が押し寄せているらしい。
「そんな事まで気にしなくて良いっての」
 いつまでも同じ事を言い続けている楠木に対し、虫明は少しイライラした口調になる。
「だってどっちにしろ、風紀には話とおしとかなきゃずっとあのバカは追い回されるんで
しょ? その上、あのバカが逃げたらあたし達まで追い回されなきゃいけないし?」
「きちんと説得できてれば私も心配してないんですけど」
 楠木がそこまで気にする理由がさっぱりわからず虫明は首をかしげた。
「とにかく、千早ー。あんた、少しあのバカの事気にしすぎ、自分でバカやって風紀に追
い回されてるんだから放っておけばいいんだって」
「だれがバカだ!」
「ひっ」
 いきなり背中から、ベンチ裏から唸るような声がして、虫明はベンチから飛びのいた。
その声に楠木はポカンとした表情のまま振り返り、ベンチの後ろにある垣根に声を投げる。
「落人……?」
「人のことをバカバカ気軽に……恵、オマエはいつもいつもあたしの悪口ばっかりだな!」
 がさがさと耳障りな音の後に出てきたのは、身体に落ち葉をまとわりつかせた丸目だっ
た。丸目は頭を低くし、身体をベンチで隠すようにしている。
「あ、あんた……なんで……?」
「事情話したのに生徒指導室で謹慎してろとか言い出したので逃げてきた」
「ああ、やっぱり……」
 単純明快な丸目の言葉に楠木は片手で顔を覆った。既に昨日一回は逃げている。その上
基本的には問題児だ。だからその罰も含めて風紀委員会がすぐに解放しないのは分かって
いる。そして、それを丸目が我慢できないのも目に見えていた。
 一方、虫明の方は顔色を変える。今、一緒に居る所を見られれば、三人まとめて指導室
行きだろう。言い訳した所で、風紀委員にとってみれば丸目一派として抜け出した手伝い
をしたと思われるに決まっていた。
「ああああんたねえ……! そんな時にあたし達の所に来るな!」
「まずは落人をどこか逃がさないと……」
「逃がしてる間にあたしらまでつかまるって!」
 楠木の言葉に噛み付く虫明を横目で見つつ、落人は冷静な声で言った。
「千早は恵のバカを連れていって。あたしは暫く隠れるから……あ、ついでにその千早の
パン置いていってくれないか? 風紀委員のやつら昼飯も出さずにあたしを監禁しやがっ
て……!」
「え……これですか?」
 楠木が無意識に抱えていたパンの袋を差し出すと、丸目はさっとその袋を奪い取る。
「とりあえず、放課後まであたしは何とか逃げ回るから」
 そういい残すと再び垣根の中にもぐりこんだ。
「風紀に何か聞かれてもあたしの事は内緒にしておけよ!」
「え? え? 落人?」
 楠木が声をかけてももう返事は無かった。虫明は大きくため息をついた。
「垣根伝いにどっかいったんでしょ。庭園の垣根は冬でも枯れないから、今でも隠れやす
いし、大丈夫なんじゃないの? ……全く、計算づくなんだか、たまたま逃げ込んだんだ
か……」
「はあ……」
 呆れたような、困ったようなため息を楠木はついた。
「だからきちんと説得して今日は我慢してもらいたかったのに……」
「ま、逃げ出されて風紀も面目丸潰れだし、いい気味なんじゃないの?」
 ケラケラと軽く笑う虫明に楠木は更に重い溜息をついた。
「わかってます? 面目潰れたからには次は風紀委員会の面子にかけても探し出すって事
ですよ?」
「え?」
「つまり、昨日よりも私達がマークされるって事です」
「……あ」
 虫明の表情が凍った。しかも、今回は何の因果か丸目の居場所を知ってしまった。素直
に言った所ですぐに帰してくれる風紀委員でもないし、自分達が喋ったら丸目だって黙っ
ていないだろう。猛烈に怒ると同時にある事無い事を喋って二人を巻き込んでしまうに決
まっていた。
「その上――」
「あ、いたいた!」
 楠木の憂鬱そうな言葉をいきなりハリのある声がさえぎった。
 次の瞬間、二人は数人の生徒に取り囲まれる。
「ぐ……新聞部……」
 呻いた虫明の声すらも蹴飛ばすようないきおいで新聞部はメモを片手に質問を開始する。
「はいはい大正解! 朝、風紀委員に拘束された丸目落人さんが脱走されたそうですが、
関係者として一言おねがいします!」
「あのバカの関係者にしないでください」
「じゃあ、一般生徒として感想を一言。まさかあなた達が彼女を匿ってるとかないですよ
ね? 知っているなら居場所は? 知らないのなら思いつく場所ってありますか?」
「……」
 ああいえばこういう。マシンガンのように繰り出される質問に早速虫明はクラクラして
きた。こうして騒いでいれば風紀委員もやってきかねない。
「だからきちんと説得したかったんですよ……」
「……なるほど」
 楠木の言葉の真意を今更ながらに虫明は把握する。
 丸目の脱走劇は、翌日には「狂犬、風紀委員会より脱獄」と題した裏新聞の一面記事と
なった。
 丸目はそれから週末まで逃げ続け、剣道部などに隠匿してもらったりして校内を賑わせ、
そして、その間、楠木の指摘した通り、楠木と虫明の二人も風紀委員や新聞部に追い回さ
れる事になる。
 週明けもこの捕り物が続けられると思われたが、再び校内は通り魔の話題に席巻された。
 
 週末に肝試しと称して無断で寮を抜け出した生徒が、通り魔に襲われてしまったのだ。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第116号(10月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。
 ところで、僕がバンドをやるとしたら、ときどき機械のボタンを押したりひねったりす
る人をやりたいです。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は10月15日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年10月08日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
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