文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_103

2006/07/05

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第103号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/07/05
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 秋山真琴はいかが?「END END END」     第13回
 【3】 連載小説「彼女が愛したUFO」      第5回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

 暑いですか。暑いですね。蒸してますか。蒸してますね。嘘です。なぜならここは雲上
だからです。っていうか僕はメルマガ上の存在なので温度とか感じません。嘘です。

                                      後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 秋山真琴はいかが?「END END END」     第13回
                 著/秋山真琴
 ──────────────────────────────────────

 いらっしゃいませ、ようこそ秋山真琴へ。
 ご注文お決まりでしたらどうぞ。え、ええはい、こちら「え、終わり?」風味で、かし
こまりました。……マスター、十一番様オーダーいただきましたぁ! 瑶ちゃん「え、終
わり?」風味でひとつ!

 …………………………………………… 439文字……………………………………………

「それでは演算を開始する」
 厳かなる宣言と共にそれは始まった。打鍵の音。楽器と融合した機械は、緻密に計算さ
れた設計図に従い接続され、全てが完璧に有機的に接合されている。端末のひとつひとつ
に向かった技術士も一流ばかりだ。実験が始まって十五秒、空気が揺れた。震動は技術士
たちを苛ませ、その作業効率を落とした。しかしそれは当初に計算されていた誤差の内側
にある。針は伸びない。玉座にてただひとつ仕事をしていない王は行けると判断し、中止
の声を上げなかった。
 やがて、演算がピークを迎える。王の前に演算結果が表示される。近い将来、起こる事
実。未来の予測、歴史が現実を追い抜いた瞬間。王はそれを手にした。今や未来は王の手
の中にあった、王は喝采した。演算はさらに進み、表示される未来は、どんどん先のもの
になっていった。
 やがて、最後の未来が表示された。終焉。その後は、作業効率は無限大に上がっていっ
た。何故なら弾き出される数値はいずれも零なのだから。王は世界の終わりに到達してし
まった。

 ……………………………………………「到神」……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第104号(07月05日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載小説「彼女が愛するUFO」      第5回
                 著/夏目陽
 ──────────────────────────────────────

 連載小説第五回。悪化していく関係に主人公がとる行動とは……!

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 そんなことがたまったからだろうか。その日から十日後、私たちは初めて喧嘩した。始
まりはささいなもので、彼女がいつものようにUFOの話を始めたことだった。私はもう
UFOなんて聞きたくなかった。自分自身でも吃驚するほどの声が出た。まるで、今まで
溜め込んでいた不安が実体化したような感触だった。彼女の興味が一段と私から離れ、U
FOへと向くことを危惧していたのだ。私は無意識のうちに「もうそんな話はやめよう」
と言っていた。彼女は軽く首を傾げながら、「どうして?」と訊いた。その顔はあまりに
無垢だった。その無垢な彼女が私は怖かった。私は「もう嫌なんだよ」と言った。私は心
の奥底にしまっていた不満を爆発させ、彼女を厳しく批難した。言葉が口から止めどもな
く、あふれてきた。彼女は黙って、こちらを見ていた。まるで初めて怒られたような子供
の顔つきだった。唖然としているのか、口がぽかんと開いていた。だが、私の心は痛まな
かった。それが正しいと思っていたからだ。私は最後に「いつまでもUFOなんて幻想に
目を奪われているやつは嫌いだ」と言って彼女の部屋を出た。
 その夜は荒れた。和成の部屋で酔い潰れるまで飲んだ。私は酔い潰れるまで酒は飲まな
いことを心に誓っていた。だが、今日だけは酒の力に頼りたかった。和成はすでに私の酒
に付き合い、酔い潰れていた。何杯目だかの酒を飲み干すと、私はやっと泣いていること
に気付いた。ぼろぼろと大粒の涙が流れていた。服の袖でそれを拭う。何故、私が涙を流
しているのか、わからなかった。ただ、斎藤璃々子が原因でないことはわかっていた。自
分の哀れさにでもない。私はただ、彼女の信じるUFOの存在に涙しているのだ。現実に
生きる私にはどうすることも出来ない、非現実に住むUFO。私の口からは嗚咽が洩れ続
けた。
 そんな中、和成はよき相談相手になってくれた。彼は彼女を病院へ行かせることを薦め
た。だが、彼女はそれを拒んだし、どこもおかしくないと言った。頑なにそう主張する彼
女に、それ以上私は、病院に行くことを薦めることは出来なかった。
『例え歪みの中にいても……、中にいればいるだけ歪みには気付かない。だって、それが
当たり前なんだもの』と言うのをどこかで聞いたことがある。まさに彼女がその状況だっ
た。私は彼女に近づかないことにした。物理のゼミは欠席した。彼女からの着信を『ライ
ク・ア・ローリング・ストーン』が私に知らせたが、全て無視した。
 私はその時、相当落ち込んでいたらしい。その頃、和成は私を他校の子が来るコンパに
誘った。私は断ろうと思ったが、そんなことはお構いなしに連れて行かれた。私はそこで
真壁千秋という女性に出会った。派手な化粧、それに露出の多い服を着込んだ私の嫌いな
タイプの女性だった。体からエゴイストの匂いがぷんぷんとした。私は何度も吐きそうに
なった。彼女からは遠ざかろうと私は努力して、積極的に他の女性の話に加わった。他の
女性も私の嫌いなタイプだったが、真壁千秋よりも理解出来ないことはなかった。二十歳
近くと言えば、一番女性たちが輝く時期だろう。その時期に多少、化粧をすることはある
だろうし、好きな男のためなら露出の多い服を着るかもしれない。精一杯、背伸びをする
だろう。だから、ちょっと下手な化粧だって愛くるしく見えるし、本当は口下手なのに頑
張って話そうとしている女性には笑顔を見せたくなる。だが、真壁千秋と言う女性は何も
かもが打算的である。男に受ける化粧の仕方をしているし、男を口説く方法だってよく心
得ているようだった。彼女の周りには常に男性たちが輪を作っている。だから、私はこの
コンパが終われば、彼女はあの中の誰かと一緒になるのだろうと思った。
 だが、私と彼女はコンパが終わると自然に、一緒になっていた。何故だかはわからない。
彼女があの男達全員の誘いを断って私に近づいたのかもしれないし、そうでないのかもし
れない。お互いの携帯のアドレスを教え合うと、彼女の提案で私たちは近くのレストラン
に入った。私は彼女と初めて話をした。彼女は東京育ちらしい。家は両親の家からそう遠
くない場所にあるが、あまり両親を好きと思っていないらしい。「趣味は?」と私は彼女
に訊いた。「音楽を聴くこと」と彼女は答えた。私はそれを受け、「それじゃあ、ボブ・
ディランは聴くかな?」と尋ねると、「誰それ?」と言われた。彼女は日本のヒットチャ
ートの上位にある、永遠の愛を信じさせるような歌が好きらしい。私はそれらが大嫌いだ
った。十代のアーティストが増える中、私はそれらの曲を聴くたび、空虚な気分に陥った。
時に彼らは、まるで人生のすべてを知ったかのような歌詞を歌うことがある。そのような
曲を聴くたび、私はお前らに何がわかる? とテレビ越しに問い掛けた。彼女は「あと男
とセックスするのが趣味よ」と言った。私は、「それはとても率直でいい趣味だね。生殖
活動は動物の一番大切なことだからね」と返した。彼女の仕草一つ一つが妖艶で、男にセ
ックスを連想させる仕草が多かった。
「あなたは私とセックスする?」彼女は私に尋ねた。妙に女性を装う人が使う声だった。
私は「する理由もないし、しない理由もない」と答えた。「なら、しましょうよ」と、彼
女は私を誘った。私は彼女に言われるがままに従った。この選択に罪悪感はなかった。軽
く食べ物を胃に入れた後、私たちは適当なホテルを探した。別に料金の高さなど気にして
いなかった。ホテルなんてすべて同じような値段だと思っていたからだ。私たちは目につ
いたホテルに入った。部屋は彼女が選び、お金は私が支払った。部屋に着くと彼女はすぐ
さまシャワーを浴びに行った。私は二人が余裕で眠れる大きさのベッドに腰掛け、斎藤璃
々子のことを思い出そうとした。だが、思い出すのは昔の彼女ばかりだった。私に初めて
声を掛けた時の彼女。「フィリップ・マーロウですか?」と私の隣で訊いた彼女。喫茶店
で笑っている彼女。私の安楽椅子に腰掛けて目を瞑った彼女。微笑みながら『Hello, hel
lo, hello, how low?』と言った彼女。それに比べ、今の彼女はあまりにも不鮮明だった。
昔の彼女はよかった。昔の彼女はよかった。私の心はそう言い続けた。
 彼女が戻ってくると、今度は私がシャワーを浴びに行った。少しの熱めのシャワーを浴
びながら、私は今、何をしようとしているのだろうかと考えた。出会ってまだ、数時間の
女性と性交しようとしていることをもう一度、深く考えたが、やはり斎藤璃々子に対する
感情は何も湧きあがってこなかった。私がバスルームから出ると、真壁千秋はベッドの上
でバスローブを羽織って横になっていた。私は彼女の横に行き、寄り添うように寝そべっ
た。斎藤璃々子に寄り添ったときとは、何かが違った。私は彼女のバスローブをゆっくり
と脱がした。少しずつ彼女の肌が外気にさらされるたびに、彼女は鳴いた。その鳴き方が
気に食わなかったが、別に行為を止めるには至らなかった。すべて脱がし終わると、しば
し彼女の白い肌に見入っていた。体つきだけで言えば彼女は斎藤璃々子よりもずっと魅力
的だった。私はその首筋にキスをすると舌で彼女の肌を舐め回した。彼女は身をよじりな
がらさらに声を大きくし鳴いた。とても女性らしさを強調したか弱い助けを求めるような
鳴き声だった。首筋への接吻をやめると私は彼女を見下ろした。彼女はピアスをしたまま
だった。何となく私は、それを外さないでよかったと思う。そしてその思考に既視感を覚
えた。確か、村上春樹の小説にもそのような場面があったように思った。
「どう? 私の体は魅力的でしょう?」彼女は恥らう様子も見せず私に言った。私は嘘を
吐かず、「今までで一番魅力的だ」と言った。私は、私の唇と彼女のそれを合わせた。や
さしい接吻だった。私は激しく彼女を求めた。彼女もそれに応えていたし、人生の中で一
番良かったと思う。だけど、私にはどこか醒めた虚無感が漂っていた。
 私は、しばらく真壁千秋と連絡を取り合った。『ライク・ア・ローリング・ストーン』
は斎藤璃々子ではなく、真壁千秋からの連絡を教えるようになっていた。私はそのたび、
彼女の誘いに乗った。虚無感を振り払おうと無心に彼女と肌を合わせたが、それは大きく
なっていくばかりだった。
 和成に斎藤璃々子のことを訊いたことがある。彼女は講義をちゃんと受けているが、ど
こか視線は虚ろらしい。前までは講義に来ることに楽しみを見出していたのに。彼女がル
ーティンワークをこなすように講義を聞き、ノートを取っている姿を想像すると寒気を覚
えた。もう、戻れないところまで彼女は来てしまったのだろうか? 私は久しぶりに大学
へ行った。斎藤璃々子がいないはずの時間を選んだ。私は大学の図書館で精神の病につい
て調べた。斎藤璃々子のために行動したのは久しぶりだった。だが、医学書を拾い読みし
ても、何も彼女のことはわからなかった。彼女のような精神の病は突発的に起こるものが
ほとんどらしい。だが、そこには具体的な治療法のようなものはなかった。
 私は図書館を出た。それ以上、有益な情報があるとは思えなかった。赤、黄、朱色の葉
はすでに枝から落ち始めていた。空も朱色である。そろそろ夜に落ちるだろう。私は帰り
がけに自動販売機で煙草を買った。人気の少ない路地裏だったので私は人目を気にせず、
ケントマイルドを選んだ。マッチは途中のコンビニで購入した。誰もいないことを確かめ
て、くわえた煙草に火を点ける。感動も何もなかった。私の体は易々と煙を受け付けた。
紫煙を吐き出すと、それが目を刺激して、涙が出てきた。煙のためだろうが、もしかした
ら、本当に悲しかったのかもしれない。
 家に帰ると和成が私を呼んだ。和成の部屋に着くと私たちは適当に坐った。和成は「な
あ」と私に呼びかけてから話し始めた。
「本当は彼女のことを気になっているんだろう?」
 私は否定も肯定もしなかった。黙って和成の話を聞くことにした。「なあ、気になって
るんだろう? それじゃあ、どうして彼女の元にいかないんだよ」
 和成はそれからも言葉を続けたが、私は聞いているふりをしていた。きっかけが必要だ
った。単純なきっかけだ。別に彼女に会いに行ってもいいというきっかけ。それが訪れな
いだけである。それがあるなら私は彼女の元へ行くだろう。ただ、和成にそれを話しても
わからないだろう。私は和成の話を黙って聞き続けた。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第104号(07月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

━━━【オンライン文芸マガジン『回廊』最新刊 Vol.7 】━━━━━━━━━━━━━

 殺人者の少女 記憶に追われる男 恋に焦がれる人々 人ならぬモノ 白と黒の猫 
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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。
 ていうか、雲上はやっぱ寒いんじゃないですね。雲上ですからね。ほら、エベレストの
頂上とか相当寒いらしいじゃないですか。オチはありません。では、また、十日後に。

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は07月05日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年07月05日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
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