文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_101

2006/06/15

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第101号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/06/15
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 秋山真琴はいかが?「NO NAME NEED」    第11回
 【3】 連載小説「彼女が愛したUFO」      第4回
 【4】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
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 ぺんぺけぺーん。101号です。犬ですね。101といえば。まあ、祭りのあと、とでもいう
のか、ゆるい感じでお送りしたいと思います。

                                      後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 秋山真琴はいかが?「NO NAME NEED」    第11回
                 著/秋山真琴
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 いらっしゃいませ、ようこそ秋山真琴へ。
 ご注文お決まりでしたらどうぞ。え、ええはい、こちらメタ風味で、かしこまりました。
……マスター、十一番様オーダーいただきましたぁ! 瑶ちゃんメタ風味でひとつ!

 …………………………………………… 322文字……………………………………………

――その名に懸けて、この逸話を物語化することを禁ず。
 書き出しからして不明瞭、意図は見えず、逆に興味をそそる。そうなることが予期され
たもののかたち、自覚を含む記述。とても自嘲的である。綴られている言葉は、言葉に非
ず、叫び、あるいは悲鳴である。読まされるものの興味は煽られない、何の変哲もない、
ありふれた悲劇の末端だと知るばかりだ。そうと分かっているのに記された理由、それは
自己の存在証明か。くだらないと一笑する。嘲笑われることを知っていながら、そうした
態度を取るのは道化に他ならない。而して作者は嘲られたいのだと読者は知る。そして望
み通りにそうする。誰も救いの手を伸ばそうとしない。
――故に、その名に懸けて、この逸話を物語化することを禁ず。

 …………………………………「ここではないどこかへ」…………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第102号(06月25日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【3】 連載小説「彼女が愛するUFO」      第4回
                 著/夏目陽
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 連載小説第四回。結ばれた二人に降りかかる異変とは?

 ……………………………………………連載小説……………………………………………

 それから私は彼女の部屋に行き、彼女からUFOのことについて、話を聞いた。彼女は
喜々としてそれらを語った。始まりは歴史からだった。それからそのUFOには誰が乗っ
ているのかだった。まるで講義を受けているような感覚だった。物理のゼミの時、彼女の
指定席は教授の一番前から私の隣に変わっていた。だが、依然として彼女は講義を聴くば
かりだったし、私は読書に励むばかりでそこに会話はなかった。私の周りにいる友人も、
私が物理ゼミを終えると彼女の部屋に行って、性交しているなんてことは誰も知らなかっ
た。
 夏休み、私は車の免許を取ることにした。彼女が突然、郊外に行きたいと言ったからだ。
そのために書店のアルバイトをすることにした。特別な技術がいらず、出来るだけ苦にな
らなくて続けられるバイトを探したところ、それしかなかった。私はほとんど裏方の作業
だった。力仕事が多かったが、発売前の雑誌をちょっとだけ確認したり出来た。見つかる
と怒られるのだが、私は見つからないコツをすぐに覚えた。
 バイト代は講習料に当てた。しかし、車を買うお金がなかった。貯金は約三十万ほどあ
ったが、それで買えるものか自信がなかった。私は実家にいる母に相談してみた。母はも
う十万を仕送りしてくれると約束してくれると共に「中古の車なんて十万でも買える車は
あるし、百万出しても買えない車もある」と言った。
 夏休みの終わり頃、免許を無事、取ることができた。私は結局、三十万弱する安い中古
の軽自動車を買った。それを彼女に見せると、「目玉焼きみたいですね」と言われた。確
かに外見が白でナンバープレートだけが黄色なのは目玉焼きに見えるかもしれないと思っ
た。その夜、私たちはその車に乗って人気のないところまで行った。車内ではずっとボブ・
ディランが歌っていた。
 道はいつも彼女が指した方を目指した。そして、ついたのは小高い丘の上だった。青草
が月の光で輝いていた。都会では見ることが出来ない光景に、私はしばし呆然とそれを眺
めた。ネオンに揺られる街並みもよいが、このような景色も嫌いではなかった。
 彼女は車の外に出て、空を仰いでいた。私が「何をしているんだ?」と訊くと彼女は、
「UFOを探しているんです」と言った。私は彼女の隣で同じように空を仰ぎ続けた。空
はいつもなら見ることが出来ないほど、澄み渡っていた。風が冷たくなってきた。いつの
間にか蝉の声は聞えなくなり、代わりに紅葉が始まる季節だった。そろそろ学校が始まる
時期でもある。夏休みは書店と自動車教習所、それに彼女の家に行っただけだった。それ
でも充実していた。彼女に喜んでもらうために、したことは無駄ではなかった。私たちは
寄り添い合いながら、朝が来るまで、空を眺め続けていた。
 夏休みも終わり、講義が始まる頃のことだった。私の生活リズムは夏休みのままで、ほ
とんどの講義を欠席していた。もう少し、アパートと大学の距離が近ければ別だったかも
しれない。雨が降ると、まず家から出ることすらしなかった。天気がよければ、学校に行
くよりも適当に散歩している方がいいと思った。ただ、物理ゼミだけは欠かすことがなか
った。
 だが、夏休みが終わってから一ヶ月が経った頃、斎藤璃々子は物理ゼミを休んだ。私は
いつものように講義を受けるために大学に行った。講義の六分前にはいつもの場所につく
ことが出来た。だが、いつもなら先に来ているはずの彼女がいなかった。私は席について
からずっと、講義に参加する人たちを見続けていたが、彼女の姿はなかった。講義が始ま
っても彼女が来なかった。私は彼女が途中からきても困らないようノートを取っておく。
だが、この時間、そのノートを彼女が見ることはなかった。
 私は心配になり、彼女の部屋を訪ねたが、インターホンを三度鳴らしても出てくること
はなかった。居留守ではないと思うが私は試しに、彼女の携帯電話に電話を掛けてみた。
耳をすませたが、部屋からは着信音は聞えなかった。
 私は家に帰ってから和成に聞いてみた。和成は彼女と他のゼミで一緒だからだ。和成は
私の質問に首を振った。「今日は来てなかったよ。珍しいね。あの子が休むのは」和成は
尚も話を続けようとしたが、私は礼を述べると自分の部屋に戻った。私はテレビをつけた。
首都圏ニュースがやっていた。午前中に起きた事故を報道していた。私はそれを見て、彼
女が事故にあったのではないかと思った。事故の被害者は彼女とはまったく関係のなさそ
うな名前をしていた。私は食い入るようにそれを見つめていたため、ほっと胸を撫で下ろ
した。だが、彼女と最後に別れた日からはどうだろう。私は家にある新聞をひっくり返し、
隅から隅まで読み漁った。しかし、彼女の名前はおろか、彼女が関係していそうな事故す
らもなかった。私は心配になった。毎日講義があろうがなかろうが、彼女の家に行き、イ
ンターホンを鳴らした。だが、彼女が出てくる気配は一向になかった。
 彼女が私の前に現れたのは六日後のことだった。ただ、彼女は今までとは変わり果てて
いた。掛け布団を纏った彼女は何かに怯えているようにも、誰かの攻撃から身を守ってい
るようにも見えた。彼女の瞳は焦点を結ばず、どこか空虚な先を見つめているようだった。
その視線が私を捉えた瞬間、私は恐怖を覚えた。目を合わせてはいけない。そう思ったの
だ。だが、彼女はそんな私に以前と変わらぬ声をかけた。
「こんにちは」
 私はその言葉に応えることができなかった。連絡の途絶えた数日間、彼女は実家に帰っ
ていようだ。父親が死んだらしい。彼女は実家で途方にくれている母親の代わりに葬儀の
準備をしたそうだ。彼女はその仕事の多さに、父親の死を悲しむことすらも忘れていた。
だが、こちらに帰ってきた時、急に悲しくなった。彼女は一晩中泣きはらしていたそうだ。
だが、今はもう大丈夫で、また明日から講義に出席すると言った。しかし、私の目には父
親の死によって彼女が受けた影響はそれだけのように見えなかった。彼女の中で何かがず
れた気がする。今まで噛み合っていた歯車が上手く回らなくなってしまったような、そん
な感覚。私は心配だったので、今日一日は彼女の部屋で過ごすことにした。彼女の寂しさ
を紛らわすためならば、抱いてやるつもりだった。だが、彼女は掛け布団に包まったまま、
微笑みながらUFOのことを語った。
 次の日、私たちは一緒に大学へ行った。大学についてからは別れたが、物理ゼミの時間
になると私の隣に彼女は坐った。私はいつものように読書をしながら、時々板書を確認し、
ノートに写していった。私は講義中、ちらりと彼女を見た。彼女はノートを取らず、代わ
りに絵を描いていた。UFOだった。円盤型のそれは今にもノートから飛び出して宙に浮
かびそうだった。「上手いね」と、私は言った。彼女は口元に笑みを浮かべながら、「こ
れが私の父を連れて行ったんです。これは宇宙の端のそのまた端の惑星から来たんです。
彼らは人を自分達の惑星へと連れて行くんです」
 私はそれを冗談として受け止めたが、言った本人は真面目そうな顔をしていた。私の微
笑みが徐々に苦笑に変わるのがわかった。そして、ついには笑うことも出来なくなった。
その日から彼女は、会うたびにUFOのことを話題に出した。「UFOとは私たちを幸福
へ導く象徴なんです。時が来ればすべての人間はそのUFOに連れて行かれ、宇宙を旅し、
ずっと楽しい気分でいられる惑星にいくんです。そんなUFOは絶対に晴れた満月の夜に
しか出てこないんです。昼間に出てくるUFOはすべて嘘なんですよ。だって太陽の光は
生命の象徴なのですから。生命は太陽の光を浴びて生きています。でも、満月の光という
のは太陽の光を反射したものなんです。したがって一度、死んでしまった光なんです。だ
から、月の光とは死の象徴なんです。そんな負の感情がたまる中で、彼らは颯爽と現れる
んです。負の感情を吹き飛ばし、私たちを救ってくれるんです。それも例外なく、全ての
人間をです。だから、私はUFOを見たいんです」それを聞いたとき、体に衝撃が走った。
それから彼女の言動は日増しにおかしくなっていった。UFOを見るためと言って、いき
なり摩訶不思議な言葉を発してみたり、変な動きをしてみたり。そんな彼女を周りの人々
は次第に避けていった。やはり、彼女は何かがずれてしまったんだと思った。父親の死に
よって何かが致命的なずれを起こしてしまったんだ。私はそう思うと同時に昔、彼女が言
った言葉を思い出した。
 しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている
資格がない。
 彼女は優しかった。私と時々、夕食を共にした時には、私の悩みをそのUFO論で解決
してくれた。彼女には確かに生きている資格はあったのだ。だが、彼女は何かずれてしま
ったため、しっかりしていることができなくなっていた。彼女は時々、布団に包まり、怯
えた。私はその言葉の通り、彼女が生きていられるのか心配になった。紅葉が目に見えて
わかる頃になると、満月の日を狙って彼女は私に、郊外に連れてって欲しいと頼むように
なった。私は彼女の申し出を断ることが出来ず、そのたびに彼女をあの丘の上の野原に連
れて行った。彼女は朝になるまで、空を見続けた。彼女は、「月の光は人間の体に負の感
情を与えるんですよ。だから、狼男はいるし、犯罪にも関係があるそうです」と言った。
そのためだろうか、まだそんなに寒くない季節にもかかわらず、彼女は厚着だった。私は
彼女をここにつれてくるたびに、その存在が遠くなるような錯覚を覚えた。彼女がUFO
ばかりに気を取られ、私を忘れているような気がしたからだ。彼女が愛しているのは私で
はなく、UFOのような気がした。私は空を見上げている彼女を見つめ思った。最後にキ
スをしたのはいつだっただろうか、最後に性交したのはいつだったろうか。別にそれらば
かり求めているわけではないが、そういった変化が私は気になっていった。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:unjyou@ml.kairou.com
 次回は第103号(07月05日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!

━━━【オンライン文芸マガジン『回廊』最新刊 Vol.7 】━━━━━━━━━━━━━

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◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。
 いかがでしたでしょうか。『雲上』では現在、作品募集を行っています。詳しくは下記
公式ページをご覧ください。
 100号を過ぎ、新しいステージへと進化した雲上はいかがでしたでしょうか? ――とい
っても特になにもありませんが。でも、新企画も着々と進行中……という噂ですよ?

*公式サイト
http://unjyou.kairou.com/
*編集部
unjyou@ml.kairou.com


 次回の配信は06月25日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:unjyou@ml.kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年06月15日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:キセン
           遥彼方
           言村律広
           恵久地健一
       ご意見ご感想:
           unjyou@ml.kairou.com
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創刊日:2003-11-08  
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