文学

雲上マガジン

総合創作団体・雲上回廊が送るメール文芸マガジン。

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雲上マガジン vol_82

2006/02/15

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    メールマガジン『雲上』 〜読者へつなぐ〜         第82号
         毎月、05日、15日、25日配信         2006/02/15
                     http://unjyou.kairou.com/

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 ……………………………………… も く じ …………………………………………

 【1】 前書
 【2】 遠野浩十の究極連作「七十秒後の改行都市」   第14回
 【3】 キセンで超短編「結び目」           第5回
 【4】 霧生康平と世界の旅「ハサミとカミソリの少年」 第12回
 【5】 編集後記

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【1】 前書
 ──────────────────────────────────────

言 村:長めのトンネルを抜けちゃったりすると『雲上』も82号だったりします。みなさ
   んこんにちは、言村律広です。

 遥 :こんにちは、遥彼方です。

言 村:寒いですね。遥さんは雪国体験があるそうですね。

 遥 :寒いです。ものすごく小さい頃ですが、石川県に住んでいたころは、冬はずーっ
   と雪でした。

言 村:雪の壁とか見たことあったり?

 遥 :うーん、積雪量とかはあまり記憶がないんですけれど、歩道にはたいてい融雪の
   ための水が出る、小さい穴があって。それをふさいで遊んでました。

言 村:ふさいじゃダメじゃんっ!(笑)

 遥 :だってこう、ふさぎたくなるんですよ、ああいうのがあると…(笑)

言 村:まあ確かにそうですね。んじゃあ今号の『雲上』は寒いとふさぎたくなる82号と
   いうことで、みなさんお楽しみくださいー。

 遥 :どうぞごゆっくりー。

                                      後略。

◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【2】 遠野浩十の究極連作「七十秒後の改行都市」   第14回
                   著/遠野浩十
 ──────────────────────────────────────

 ここに在るのは果たして、詩か、小説か、短歌か……。鋭利な一行が全てを斬り裂く!

 ●前々回●
 秒針が一周すると時計は壊れ、時は止まったが、何かが流れ続けている。
 ●前 回●
『背後の空間を指して「それは何だ?」と訊くと「それは見えない」と答える。』

 ……………………………………………  斬  ……………………………………………

 途中は両極のどちらにも属さず、独立し、成立し、且つ常に独り。

 …………………………………………… つづく ……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第83号(02月24日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!


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 【3】 キセンで超短編「結び目」           第5回
                   著/キセン
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 キセンさんが闇に紛れるとき、その目は眩しさに細められ、恍惚に怖気を走らせる。
 キセンくんが歓喜に湧くとき、その頬は滂沱の滴りに濡れ、怒りに震えて肩が笑う。
 キセンちゃんが空を飛ぶとき、その足は地面を歩いていて、両腕は水をかいている。
 キセンが超短編を綴るとき、世界は変わる。

 …………………………………………… 超短編 ……………………………………………

 あぁ……もう終電出ちゃった? そっか……もうすることねえな。なんか他の奴帰っち
まったしな。
 もう二人しか居ねえんだからさ、腹割って話そうぜ、秘密を。お前もひとつくらいある
だろ?
 俺な、実は人間じゃねーんだ。糸人間。知ってる? 大体、9割9分7厘くらい人間な
んだけどな、ひとつだけ違うところがあって、結び目を解くと一本の糸になっちまうんだ。
ほら、俺の結び目は、ここ、踵のところ、な? ちょっとだけ引っ張っていいよ、ああ、
な、解けちまう。
 ああ、こら、もうやめろよ、お前……え? 何でお前も結び目があるんだ? え?
 みんなある? そっか、みんなあるのか、俺だけ知らなかったのか。ちょっと自慢だっ
たんだけどな、俺だけ特別だって。おい、こら、それはそれとして、やめろ、って、言っ
て、る、だ……

 ………………………………………… 「99.7%」 …………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第83号(02月24日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【4】 霧生康平と世界の旅「ハサミとカミソリの少年」 第12回
                  著/霧生康平
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 あなたは知っているか?
 我が永遠の旅路にあって、其を片時も残さずに記述し尽くす事における絶望の闇をも呑
み込まんとする方法を知っているか?
 霧生康平を知っているか?

 ……………………………………………霧生世界……………………………………………

「なんとかとハサミは使いようね」
 十年ほど前に姉が僕に向かってそういったから僕はどうやらハサミであるらしかった。
 いや、本当はそうでないなんてことは重々承知している。しかし当時小学校に入ったば
かりの僕にはそのなんとかの部分を類推することなどできるわけもなく、幼かった僕は単
純に自分はハサミなのだと納得した。その理解は胸の中の混沌にすっと降りてきて収まり、
あらゆる物を明確にした。幼さゆえの世界への好奇心もなければ、道理が分からないこと
に対する不安感もなかった。自分はハサミでありそれ以外の何物でもない。自己が定まっ
ているという安心感は穏やかな思春期へと繋がった。他の友達が恋に遊びに勉強にとせか
せかと走り回っている間、僕はゆったりと生きていた。あるいはそれは傍から見れば全力
で間違った生き方なのかもしれない。しかしそれでも僕は満ち足りていた。
 僕がハサミであることを受け入れたのにはもう一つ理由がある。それは僕の家が床屋を
生業にしていたためだった。ハサミなんてものは小さいころから見慣れていた。
 僕の人生はこのまま満ち足りたまま、穏やかに過ぎていくのだと思っていた。それが
あっけなく瓦解したのは僕が高校一年のとき、姉が唐突に──本人にしてみればよくよく
熟考した上で──家出をした。男の家を渡り歩いて日々を凌ぎ、家にもろくに連絡を入れ
ないまま夜の街で車に撥ねられてあっさり帰らぬ人となった。
 姉が死んだことそれ自体には何の感情も見出せなかったが、彼女の死に顔は僕に衝撃を
与えた。
 疲れきった人間の顔。生ぬるい諦観が顔全体を覆い、それでも尚諦めきれない欲望が顔
のそこかしこでアクセントを作る。ほとんどの人間になんの感慨も与えなかったであろう
その死に顔は、僕にとっては耐え難いものだった。汚い。穢れている。絶望的なまでにど
うしようもない人間の末期の顔。
 僕に絶対的な安らぎを与えてくれた姉が、ここまで生き汚かったとは思ってもみなかっ
た。
 それから先の僕の人生は、他の人間と同じように不完全なものになった。いや、もとも
と不完全だったのかもしれない。ただ、自分自身で完全だと信じ込むことができなくなっ
たというだけのことだ。平穏は茫洋とした曖昧さの中に閉ざされ、得体の知れない焦燥感
や不安感が気まぐれにやってきては体を焼いて去っていく。
 僕は自分の中の欠落を埋めるためにさまざまな代替物を探した。もはやハサミは僕の中
で形にはならなかった。

 ──何かと戦ってみたい。そんな馬鹿げたことを考えて手に取った武器は、ちっぽけな
カミソリだった。
 身近に在るもので、凶器らしい凶器。なぜか僕はナイフや包丁ではなく、カミソリを選
んだ。
 別に強いて誰かを殺したいわけじゃない。殺人嗜好はないし、殺人行為を代償にしなく
てはならないほどの空洞もない。
 僕が戦いたいと夢想しているモノは、怪異だった。
 宇宙人でもいい。竜とかもいいかもしれないし、吸血鬼だったりしたら最高だ。なんな
ら秘密諜報員や暗殺者でも構わない。
 日常と乖離した存在。そういったものと戦いたいと願った。無論、その願いがどんなに
空想的かなんて自分自身が良く知ってる。

 それでも、武器を取った。まるでお守りのように肌身離さず常に携帯していた。
 ──なればこそ、邂逅は必然であったのかもしれない。
 それは物事を成す最初の一歩。文を書くのにペンと紙を、料理を作るのに器具と食材を
用意するようなもの。
 真に才能あるものなら、それで十分なのだろう。たとえ無知であろうと天啓に導かれる
ままに成しあげるだけだろうから。
 たとえ小さなカミソリであろうと、それさえあれば後は何もいらない。僕がそれを武器
と認識していた以上、それは武器でしかない。
 今思えば、実に幼い思考だったと思う。自身を落ち着けるために『武器』を選ぶという
のは、いざという時に得意顔でナイフを抜き出すティーンエイジャーと何も変わらない。
概念としてのハサミと物質としてのカミソリには大きな開きがある。
 それでも、才能はあったのだろう。
 でなければ、目の前に『あれ』が現れることはなかったはずだ。

 邂逅は突然であり、突然ではなかった。
 予兆はまったくなかったが、それでも心のどこかでは確信していた。
 その証拠に、それと向かい合った次の瞬間にはカミソリを抜いて構えることができた。
 近所のコンビニからの帰り。日常の延長線上にそれは忽然と現れた。
 折りしも新月の晩。光源は公園に点在するライトぐらいしかない。

 それは夜が染み出したものだった。
 僕と同じ姿をした夜に動くもの。
 僕がカミソリを構えるのと同じように、奴は闇が詰まったコンビニの袋の影を振り回し
だした。
 闇の飛沫が音を立てる。背筋を凍らせる音だった。
 頚動脈を狙って突っ込む。
 振り下ろされる袋。
 前に進む勢いを殺さぬように回避。
 しかし、相手は慣性の法則など知らぬように、唐突に軌道を変える。
 左側に袋がぶち込まれた。闇が弾け、腕が潰れた。赤いはずの肉も飛び出した骨も闇に
覆われて見えない。はじめは気持ち悪さだけがあり、次に背骨が丸ごと氷柱に変わったか
のような冷たさが全身を駆け巡り、その後左側だけ熱くなった。
 しかしまあ、どれもこれも些事だ。
 肉薄する。闇の中で輝くものはないが、それでも彼の視線が自分を捕らえているであろ
うことはわかった。
 頚動脈があるであろう場所にカミソリを一閃。
 一瞬遅れて、大量の闇が傷口から噴出してくる。
 それをまともに浴びた次の瞬間、僕の意識は文字通り闇に堕ちた。
 
 気づいたときには、僕は公園で仰向けに倒れていた。
 コンビニの袋は元の場所に落ちたままだったが、左半身はなんの異常もなく、確かに突
きたてたはずのカミソリはいくら探しても見つからなかった。
 しかし僕は晴れやかな気分だった。あの闇に勝ったことを確信していたからだ。もはや
カミソリも必要なかった。
 再び僕の日常は穏やかなものに戻った。おそらくもう乱されることはないだろう。それ
もこれも、皆ハサミとカミソリのおかげだ。
 僕は将来、家業を継ごうと思う。

 ……………………………………………世界霧生……………………………………………

 この作品に対するご意見・ご感想は編集部まで:info@kairou.com
 次回は第83号(02月24日配信予定)に掲載予定です。お楽しみに!


◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆
 【5】 編集後記
 ──────────────────────────────────────
 前略。

 遥 :それにしても、毎日ほんまに寒いですねえ…

言 村:ですね。着ても着ても着足りませんね。服だるま状態ですよ。

 遥 :こういう季節は学校の制服が憎らしくなります。

言 村:スカート?

 遥 :ええ。しかも薄い。タイツは絶対に手放せません。

言 村:あれはあからさまに寒そうだよね。制服でなくても短い人とか、ちょっと信じら
   れないよ。

 遥 :言村さん制服がなくていいなあ…

言 村:へへー。いいだろー。まあズボンも膝のあたりは一枚だったりすると、時には寒
   いですけどね。

 遥 :膝は冷えますねー。

言 村:ですね。若者の会話じゃないけど、膝はつらいよね。

 遥 :ね。…ほんと、何歳だ雲上編集部(笑)

言 村:三人掛けて、ええと(笑)

 遥 :掛けますか!(笑)

言 村:繰り上がりのある掛け算は面倒だから、やっぱりパス(笑)

 遥 :ありゃ

言 村:こういうときこそ、あれだよ、「読者のみなさまの判断に委ねます」てやつ。み
   なさん、計算してみてくださいねー。

 遥 :よろしくですー。

言 村:ではまた次号、答えあわせ編でお会いしましょう!(嘘です)

 遥 :嘘かいっ! ではでは。次号もお楽しみに♪


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*編集部
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 続いて、読者状況に関して報告を。
 現在、メールマガジンの購読者数は103人。

『回廊』のダウンロード状況は、
第00号〜第05号:合計で7595。
[最新]第06号:ダウンロード版が323。


 次回の配信は02月24日を予定しています、それでは。

   ……………………………………… 公 募 ………………………………………

 本誌『雲上』では、アイデアと感動に満ちた作品を募集しています。

 対象は「文章で表現されるすべての作品」です。
 著作権等の問題が無ければ、既に何らかの形で公開された作品でも構いません。
 編集部では作者との共同作業で作品をより良くするシステムを整えております。
 たくさんのご応募を、お待ちしております。

         まずは編集部までご連絡ください:info@kairou.com

   ……………………………………… 奥 付 ………………………………………

       発行日:2006年02月15日
       発行元:雲上回廊
       発行者:秋山真琴
       編集者:言村律広
           遥 彼方
           恵久地健一

       ご意見ご感想:
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創刊日:2003-11-08  
最終発行日:  
発行周期:月3回  
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