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輪廻(とき)の白い帆

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中世時代の伝説を加えた、BL(ボーイズラブ)系小説。兄弟愛がメインのシリアスストーリー。



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最終発行日:
2007-05-19
発行部数:
37
総発行部数:
1200
創刊日:
2000-04-24
発行周期:
不定期
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非表示

輪廻(とき)の白い帆 第三十二回

発行日: 05/19


07年5月19日発行(不定期)
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

      輪廻(とき)の白い帆 第三十二回

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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                   HP版「輪廻(とき)の白い帆」
    http://www.geocities.jp/noel_naru/tokiho/tokiho.htm
同じ作品ですが、HP版を本編としています。設定や序章(中世時
代の説明)が出ています。初めての方はこちらもご覧ください。
カットされてそうな時、HP版を見ると載ってるかもしれません^^;
 ★HPのほうが早くアップされます。早く見たい方はHPを♪★
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・「輪廻の白い帆」第三十二回
・コメント
・おくづけ
============================================================
【第三十二回】

 夕日が差し込む二人きりの部室で、友輝は言葉がないまま手を握
り締めていた。
 未智がイゾルデ姫だった……予想が突然確信に変わり、どう言っ
たらいいのか頭が混乱している。ずっと探していた姫……心が折れ
そうなくらい、愛しくて恋しくて。見つけたら、真先に抱き締めて
ずっと探していたことを告げようと思っていた。でも、今目の前に
してしまうと、何を言いたいのか言葉が出てこない。何かを告げな
いと……こんな機会はもう二度とこないかもしれない……。
「未智ちゃん……」
「はい?」
 いつもと変わらない笑顔を見せる未智に、友輝は唇を噛みしめて
一言ずつ言葉を選ぶように口にする。
「その夢……オレも見ていると言ったら……驚く?」
「え……」
「オレが……その…トリスタンなんだ。その夢は、前世のことで…
…未智ちゃんはイゾルデ姫で、オレは……トリスタン。オレは、ずっ
と……ずっと、イゾルデ姫を探していた。この世界に生きていると
思っていた……」
 友輝の言葉に、未智は一瞬目を丸くする。でも、次の瞬間には今
まで以上の笑顔を見せていた。
「やっぱり……あの夢は、前世のことだったんですね。私、あの夢
を見るたびにトリスタンは友輝先輩がいいなって思ってたんです」
 笑われると覚悟していたが、未智の意外な反応に今度は友輝の方
が驚いてしまう。未智は、はしゃぐように次々とイゾルデ姫のこと
を語った。マルク王のこと……国を追放されたこと……ハープのこ
と……。友輝が思い出せずにいた出来事も、未智の口から聞くと鮮
明に蘇っていく。
「そこで……姫はオレを待っていた」
「そうなんです。すごい…っ。私と先輩、本当に同じ夢を見てるん
ですね!」
「未智ちゃんは……本当にイゾルデ姫なんだ」
「……私じゃ、嫌でしたか?」
 照れた笑いをする未智に、友輝は懐かしさを感じた。きっと、前
世のイゾルデもこんな笑い方をしていた……。心の奥がざわつくの
も、トリスタンが懐かしがっているからに違いない。
「ずっと探していた姫が未智ちゃんでよかった」
「私も……探していたんです。トリスタンを……ずっと。先輩でよ
かった」
 胸に飛び込んでくる未智を、友輝は強く抱き締めた。自分の奥に
いるトリスタンは、心をざわつかせるだけで何も言ってはこない。
でも、嬉しいに決まっている……。
 友輝は、未智を抱き締めながらトリスタンの想いを確かめるよう
に自分の心の中を探っていた。この熱くて痛い想いは、きっとトリ
スタンのイゾルデ姫への想い……。
 この時の友輝は、そう信じて疑わなかった。
「私と先輩は、前世から繋がっていたんですね。嬉しい…っ」
 友輝の腕の中で、未智は陰がある笑みを浮かべていた。背中に回
した手は、強くシャツを握り締めていて、少し震えているのが友輝
にも感じ取れる。それが、今は素直に嬉しいと思えた……。

 耳障りな椅子の軋む音……。決して広いとは言えない未智の部屋
には、ファッション雑誌と混じって似合いなヨーロッパの民俗学の
本が並んでいた。
「何が言いたいの?」
 座っている椅子を軋ませながら、未智は冷たく鋭い言葉を投げる。
 側のベッドに腰を下ろしている茂流は、そんな未智を軽蔑するよ
うな目で見つめた。無言で叱っているようなその視線に、未智はわ
ざと冷めた口調で言い放つ。
「お兄ちゃんが言いたいことはわかってる……。私がやっているこ
とはいけないと言うんでしょ。なら、知っているのに何も言わない
お兄ちゃんも同じよ。私がやっていることを止めない……。本気で
止める気があるなら、友輝先輩に何か言っているはずでしょ」
「……言って…いいのか?」
「今更、何を言うの?私が悪いって言うの?」
 軋む椅子から立ち上がると、未智は茂流の前に立ち塞がる。それ
は、茂流へ『邪魔しないで』と言っているようだった。
「未智は、それで満足か……?」
「満足よ!私は、ずっとトリスタンが好きだった。だから、ここに
いる。先輩の側にいる……。それの、何がいけないの?」
「未智っ」
 叱るような強い口調で制すると、茂流は未智の肩を掴んで覗き込
む。
「本当に……こんなことがしたかったのか?友輝が……好きなんだ
ろ」
「私は……悪くないっ。悪いことなんてしてない!」
 茂流の視線から目を逸らすと、未智は唇を噛みしめた。
 動き出した……これは、未智が望んでいたこと。間違っていると
言われても、望んできたことを信じるだけ。今は、この想いに従う
だけ。誰にも、邪魔はさせない……。
 未智を見つめる茂流は、遠い昔に見た妹の姿を重ねていた。あの
時の妹も、今と同じことを言っていた。そして、あの時の自分も止
めることができなかった……。

 幸せになってくれ……聖の優しく強い言葉が、今も珂也の胸に響
いている。聖が背中を押してくれている気がする。
 休み時間。珂也は、友輝に会うために二年の教室へ向かおうとし
ていた。それを、未智は目の端に映して慌てて後を追う。二年の教
室に向かうため、珂也が階段を上がろうとした時……背後から聞こ
えた足音と共に、突然腕を掴まれる。細い指が腕に食い込み、糸で
縛り上げられたような痛みが走った。
「っ!」
 振り向くと、そこには未智が立っていた。微笑んでいるのに、そ
の目は冷たく、珂也を射抜くような鋭さがある。何かを感じ取った
のか、珂也はビクリッと体を強張らせた。心の奥が震えている。つ
いていってはいけない……そう何かが告げているのに、手を振り払
うことができず、引きずられるように非常ドアの奥まで連れていか
れる。非常階段の柵に投げ出されるように、珂也の腕はやっと解放
された。
「先輩に会いに行くの?」
「……そう…だよ」
 怯えた声はか細く、階段を吹き抜ける風に掻き消される。未智の
目は、珂也を真っ直ぐ見つめ、その視線の奥に見える陰に珂也は恐
怖を覚えた。
「いつも一緒にいる三年生……つきあってるの?」
「違うっ!」
「あの人は誰?」
「美術部の……部長」
 止めようとしても、声の震えが止まらない。それくらい、珂也は
未智に怯えていた。
「そうじゃない。それは、今の……わからないならいいわ」
「何を…言っているの?」
 珂也に詰め寄ると、未智は怯える様子を嘲笑うように頬に触れて
きた。目の前で見る未智は、今まで見たことがない憎しみとも悲し
みとも取れる表情をしている。その理由が、珂也にはわからない…
…。
「……弟になれて満足?」
「え……」
「本当は、私の立場になりたかったのよね。でも、私は渡さない…
…あの時の私も、渡さない一心だったの。でも、あなたは心を持っ
ていってしまった。私がどんなに欲しても手に入らなかったもの…
…」
 珂也は、言われていることが何一つ理解できなかった。未智が何
を言いたいのか必死に考えるが、考えるほど頭が真っ白になってい
く。
「渡さない……友輝先輩は渡さないっ!白い帆は上げさせないっ」
 白い帆……。
 未智の口は確かにそう言った。それが鍵のように、珂也の脳裏に
は次々と出来事が浮かんでは消えていく。考えてはいけない……思
い出してはいけない……そう思っているのに、未智の視線はそれを
無理にこじ開け、出来事を引きずり出していく。
 誰かが言った……。
『姫を伴って帰ってきたら………白い帆を…さもなくば……黒い帆
を上げ…』
 私は乗っている……白い帆を上げて……白い帆を……。
「白い……帆…」
 珂也の口から漏れた呟きに、未智は触れていた頬をぶつ。乾いた
音が階段に響いていく。
「まだ気付いてないの?それとも、気付かない振りをしているの?」
 未智は、失笑のような笑みを浮かべると額がつきそうなほど顔を
寄せた。珂也の耳元に、暗示のようにそっと囁く。その囁きは、珂
也の心を狂わせていった……。
「友輝先輩は、トリスタンよ……」
 友輝兄が……トリスタン…ッ。
「私がイゾルデ姫になってあげる。白い帆を上げるのは私……あな
たじゃない。あなたは、白い手のイゾルデになる……」
 イゾルデ……白い帆……トリスタン……白い手のイゾルデ……。
 珂也の頭の中で、何度も言葉が繰り返される。自分の意識が飲み
込まれていくような感覚。立っていられず、珂也はズルズルとその
場に座り込んだ。
「僕は……違うっ」
「私の気持ちを知るといいのよ。私が、イゾルデ姫になるの」
「違う……っ」
 珂也の呟きも聞かず、未智はフッと暗い笑みを投げてドアの向こ
うの廊下へと消えていった。残された珂也は、風が吹き抜ける階段
で一人震える体を抱き締める。自分が何を言われたのか、どこにい
るのか……自分は誰なのか……混乱してわからなくなる。
「僕は…っ」
 違う……白い手のイゾルデじゃない……。イゾルデ姫……白い帆
を上げていたのに……間に合わなかった。もう……トリスタンに会
えないっ。
「友輝兄が……トリスタン?僕は……」
 イゾルデ姫……。
 珂也の中に、イゾルデ姫の想いが鮮やかに蘇っていく。叔父の仇
だったトリスタン……でも、恋をした……ハープを教えてくれた。
愛してくれた……裏切ってマルク王に嫁いだ自分を許して、それで
も愛し続けてくれた。交換した指輪……待っていてくれると思って
いたのに……白い帆を見たはずなのに……。
 トリスタン……っ!
「くっ……やめて…っ。僕が……壊れる」
 一気に流れ込んできた記憶と想い。珂也の小さな心は、何が正し
くて何が過ちなのか、もう理解ができなくなっていた。受け止めき
れない想いに、涙が溢れ出す。その涙さえ、自分のものなのかもう
わからない……。
「友輝兄……助けてっ」
 珂也は、誰もいない非常階段でそのまま意識を手放していた。


【コメント】
 もう何も言いません……相変わらずな更新ですみません!気付い
たら、最近はプロットを提出している以外、人が書いた文章を校正
したり、修正したり……と、そんなことばかりやっていた気がしま
す。文章自体を書くのは久々だな〜と、書いていて少し虚しくなり
ました。でも、書くことはやっぱり好きなので、書いている間はす
ごく楽しかったです(^^ゞなら、もっと書け!と言われそうです
が(笑)
 今回の未智と珂也のシーンを読んで、「??」と頭が混乱してい
る方がいると思います^^;「イゾルデ」が二人出てきました。イゾル
デ姫は、トリスタンの想い人……白い手のイゾルデは、トリスタン
の友達カヘルディンの妹です^^;ややこしいですね……すみませ
ん(泣)白い帆の話は、「序章」をご覧下さい♪いつも未智を書く
時は「怖いくらいひたすら真っ直ぐ」と思っているのですが、段々
と悪女になってきているような……。でも、女の子が自分の想いだ
けで突き進むのもアリだと思っているので、これからも残酷なくら
い突き進んでほしいです(^^ゞ真実を知ってしまった珂也、相変わら
ず一人何も知らない(ある意味鈍感?)な友輝……これから、慎重
ながら急に話が進む予定です。(プロットもそう作ってあります^^;)
なるべく早く更新できるよう、これからも頑張りますので、懲りず
に最後までお付き合いよろしくお願いします。

◇…………………………………………………………………………◇
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